第2話 未知との遭遇
停電。それが1番近い感覚だ。
光という光が、バッと一瞬で無くなった。
ブラックホールの写真に触れた瞬間だったと思う。
(え?ブラックホールに吸い込まれちゃった?そんなバカな……。)
不安に肩がこわばる。
とりあえず壁に手をつこうと思って、目の前にあるはずの、壁を触ろうと手を伸ばす。
……サワサワ……あれ?もうちょい向こうか?……サワサワ……あれ?
首を傾げた。
(壁がない)
壁に当たってもいいや!と、思いきって数歩踏み出した。
(何にも当たらない。さっきまでここに壁が……あった、よな?)
今度は、両手を広げてグルンッと回ってみる。
「嘘だぁ……。」
これはどーしたものか、とりあえず危ないし、助けが来るまで座っていようかな?と思い、しゃがんで「よいしょ」っと地面に手をつこうとした所で気がついた。
「あれ、地面無い。……地面無いっ!?え?え???どゆこと??」
足元の更に下まで手を伸ばしても指先が何かに触れる事はなかった。
ついでに靴の底にも触れた。
「無いわ……地面無いわ……。」
ということは、どーやって立っているのだろう。立ってると思っていたけど浮いて居たのかな?
「あーだからどんなに走っても壁が無いのかぁ、その場駆け足みたいなね?……ってそんな訳ないよな!!!!」
(そもそも何で走れるんだ!)
トンネルを抜けるとそこは……そこは…………
「何処だココーーーーーー!!!!」
焦って、悲鳴もあげて、バタバタと暴れる……。
しばらく慌てるだけ慌ててから一息ついた。
ちょっと落ち着いて考えてみることにしたのだ。
俺って意外と順応能力高かったのかな、宇宙飛行士の訓練だ!とか言って、真っ暗な空間に閉じ籠る遊びをしていたのが良いのか。
(冷静になって、回りをよく観察してみよう。何か手がかりはあるはずだ。)
開いても閉じても真っ暗なのは代わり無いが、いちおう目蓋をゆっくりと開ける。
見渡す限り何も見えない、上下左右の認識すら曖昧な空間だ。
まるで、宇宙のようだと思った。
(本当にブラックホールに吸い込まれちゃったかも?)
膝を抱えてみたり、寝転がってみたり、出来もしない宙返りを試してみた結果、浮いていると言うの事は確信に変わった。
すると、ちょうどブレイクダンスのようなポーズをとっていた時だ。
その時、零史の頭の中に突然、音が……いや、声が聞こえてきた。
『/~'-:/^*::.,`………システムを円滑に進めるため、言語によるコミュニケーションを開始。』
意味不明な音の羅列が急に日本語になる。
『「脳」の構造情報を元に人格を形成しました。
零史(れいじ)のイメージをベースに、ハードを作成し、人格をインプットします。』
目の前の空間に光の粒子が集まり、丸い物体が出現する。
うっすらの光り輝く球体だ。
初めての光源に、眩しそうに顔の前に手をかざしながら、零史は内心ほっと胸をなでおろした。
(光って偉大だ。)
『おはようございます、マスター。』
(どこかにスピーカーでもあるのか?)
あたりをキョロキョロと見回すが、スピーカーらしきものは見当たらない。
段々この訳の分からない状況に感覚が麻痺してきたのか、光る球体にあまり驚いて居ないことに気がついた。
むしろ、ちょっと親近感すら感じてしまう。初対面だよね?
「あの~……俺、さっきまで確かに宇宙博物館にいたんですけど、気づいたらココにいまして。不法侵入じゃないんです。本当に!
ここが何処かもわからなくてですね……。
あの~、それで……貴方はどちら様ですか?」
初対面の人には、まずは敬語で接した方が円滑なコミュニケーションがはかれると俺は信じている。たとえ相手の姿が見えなくとも。
……俺の声、聞こえてるかな?
『ここはマスターの依拠(いきょ)であり、世界の外に作られた場所。何処でもあり何処でもないところです。』
(もしや、さっきから言ってるマスターって俺のこと?)
『私は、マスターの知識の1番近い言葉で例えるなら"マスターの衛星"です。』
(衛星?衛星……ってあの?月とか?)
そう考えた瞬間、目の前の球体が光だし、ぐにゃぐにゃと形を変えていく。
そして、30㎝ほどの……白くて耳の長いあの動物そっくりになった。
「う、うさぎ??」
『衛星から連想したマスターのイメージを反映し、意思の疎通をはかりやすい形態にハードを変更しました。以後"音"による意思の疏通を開始します……。「はじめまして、マスター。」』
ウサギが可愛らしく鼻をヒクヒクさせながら話しかけてきた。
もう一度言おう……話しかけてきた!!!
「は……じめまし、て。……黒野零史(くろのれいじ)です。」
とっさに名乗り返してしまうのは条件反射みたいなものなのです。
そう、俺のキャパは限界です。
……このウサギ、なんで木槌もってんだろ?お餅つくの?
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