異世界だけど宇宙飛行士になりたい!~科学が異端なので命狙われてます~ 第1章

まことまと

第1話 プロローグ


『異世界だけど宇宙飛行士になりたい!

~科学が異端なので命狙われてます。~』




俺の名前は、黒野零史(くろのれいじ)。

地元の県立大学1年生。

宇宙大好き、宇宙人は居る派。


将来の夢は宇宙飛行士か、宇宙開発事業に従事すること。

成績は中の上あたりだけど、まぁ何とかなるだろう。

顔はそこそこ普通。


(顔は中の下とか思った奴!謝れ!顔「も」中の上だから!)


どこにでも居る、宇宙オタクの大学生。





3度目だ。


その日は、彼女のひとみちゃんとデート。

俺が宇宙が好きだと知った彼女が誘ってくれた、宇宙博物館へ行く事になった。


彼女も、星とか星座占いとか好きらしく興味がほあるというのだ。

絡めた腕に胸が当たってドキドキするのはお約束だろう。


その宇宙博物館は最近新しく出来たところで、近所のプラネタリウムに展示してある宇宙コーナーとは比べ物になら無い程の、見渡す限り「宇宙」「宇宙」「宇宙」!!!


はじめは良かったんだ……ひとみちゃんが、わからないところや不思議に思うところを質問して、俺がちょっと細かく教えてあげる。

そんな甘酸っぱいデートだった。


中盤あたりからは、さすが新しくできた博物館!新たに解明された研究発表やはやぶさ2の模型やその功績が事細かに!!

ネットで知り得る情報とはまた違った角度からの考察やJAXA提供の展示物には「最高」の二文字しか思い浮かばない。

あまりの興奮に何時間も飽きもせず隅々まで食い入るように見る。

1歩進んでは止まり、1歩進んでは止まり……。


もうそろそろ出口が近づいてきた。

館内は閉館時間が近づいているのだろう、蛍の光が流れている。

俺はブラックホールのイメージ写真が展示されている前に立っていた。

まるで本物のブラックホールを見つめているように、その暗闇に何か見えるのでは?というくらいの熱い視線をそそいでいる。

写真には、ブラックホールの真っ暗な球体の輪郭を滑るように金色の光があった。


(キレイだなぁ……こんなにキレイなのに、近づくことも見ることもかなわないなんて、大きすぎる力は孤独なんだな。)


ご存じだろう、ブラックホール。

簡単に言うと、超超超引力で近づくものは何でも飲み込むブラックホール。

光さえも逃れる事は不可能。

そう、吸引力のかわらないただ1つのブラックホール。

そこで俺は、はたと気がついた。


(あれ?俺ここに誰かと一緒に来なかったっけ??)


集中していたことで遠くに聞こえていた蛍の光が、とたんにダイレクトになる。

はっとして、振り返るとそこには……


「え、誰も居ない。」


もぬけの殻の博物館があった。

もう他のお客さんも帰ったのだろう、時計をみると閉館時間まであと3分だった。

出口の方にある土産物コーナーからはまだわずかに人のざわめきが聞こえてくるが、展示スペースにはスタッフの影すら見えない。


(……やばい!!)


ズボンのポケットから携帯を引っこ抜き画面をスライドすると、連絡アプリの通知が光っていた。


「ひとみちゃんからだ!」


【話しかけても生返事ばっかりで、私はお邪魔みたいなので先に帰ります。

もうあんたとは別れる!じゃあね!!】


「あぁぁぁああーーーーまたやらかしたぁぁああーー!!!」


そう、3度目だ。

宇宙における俺の情熱にドン引いて振られる事、3度目。


1度目は、中学生。

俺の部屋に遊びにきた彼女が、壁に貼ってある宇宙人や惑星やガンマ線で撮った宇宙写真のポスターに、ドン引きし終了。

……まだ手しか繋いでなかった。

宇宙人やエイリアンのポスターが怖かったのか?


2度目は、高校2年生。

天文学部の先輩で、夜間学習の星の観察中に。手を繋いだまでは良かった。

星空を見上げて彼女が右手で頭上を指差し「あの星が北極星かな?」と聞いたが最後。

「違います、あっちが北極星ですよ。北極星の見つける方法は3通りほどあるんですが……まずおおぐま座の……ベラベラベラベラ……カシオペア座からも……ベラベラ……あと、星が見えない時とかは分度器と磁石を……ベラベラベラベラ……」

あとはお察しの通りである。


そして、3度目が……今だ。

またやってしまった。

そんなにドン引きすることか!?

女子だってアイドルやアニメにキャーキャーするじゃないか!それと何が違うっていうんだ!


なんでサッカーボールのキーホルダーは良くて、ソンブレロ銀河のキーホルダーは駄目なのか。なんでだっっ!?

手作りだったからか!?


「はぁ……」


ちょっと落ち込んで溜め息は出たが、こんな事……宇宙の大きさから見る地球よりも小さな事だろう。

俺は携帯から顔を上げ、もう一度ブラックホールの写真を見た。


この広大な宇宙には、太陽系がすっぽりと入る……むしろ、太陽系が小さく感じるほどに大きなブラックホールさえ存在する。

そして何気なく、俺はブラックホールの写真を撫でるように手を伸ばしてしまった。

俺の指先がブラックホールに触れた瞬間、世界から光が無くなった。



どうやらトラブル発生みたい。

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