人間と灰喰らい-4

 無事に夜を越えて二日目。てきぱきと道具を片付けて出立の準備を整える。もっとも、荷物があるのはクレイだけ。灰喰らいであるティアは手ぶらなので、その間暇そうにクレイを眺めていた。



「ティアは何か荷物とかないの? 灰喰らいといっても何も持ってないわけじゃないよね」


 目的地に向かって地上を歩きながら、ふと気になったことをティアに問う。


「……必要なものは大体灰から作れるし、飲食物は私たちには必要ない」

「いや、まぁそうなのかもしれないけどさ……」


 見ればアクセサリーなども付けている様子もなく、物らしい物といえば普段着ている黒のゴシックドレスくらいのものだ。そもそも他の服装を持っているのかも怪しいのだが……。


「そもそも私が生まれたのは世界が灰色に染まってから。人間との交流もほとんどなかったし、物の入手手段は限られてるわ」


 旧時代の建物内に残されているものはあれど、基本的には灰から生み出せるようなものばかり。創造が苦手な灰喰らいであれば話は別なのだけどね、とティアは肩をすくめる。

 しかし飲食物などに関しては創造したところで見た目だけであり、おいしくもないし栄養価もないらしい。そもそも灰から生まれたものを食べる気にはならないけど。


「灰喰らいは別に万能でもなんでもないわ。ただ人間よりも少しだけ能力が違うだけ」


 気にした様子もなく淡々と話す。

 クレイからしてみればこの灰の世界では灰喰らいは凄いと思うし、現に今歩きながら灰を気にせずに会話できるのはティアの灰喰らいとしての能力のおかげでもある。万能ではないと言うが、不便なわけでもない。


 とはいえそれを言ったところでティアは表情一つ変えないのだろう。クレイは話の内容を変えながら、道中の時間を潰していく。


 灰物の危険は未だあるとはいえ、誰かとの旅はやはり楽しいものだ。ティアと出会ってからまだ二回目のたびであるが、クレイは改めてそう感じていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る