第43話

その後も授業が続き(全て説教タイム)、昼休み(昼食を雪菜達と取ったので、男子に視線で殺されそうになった)が終わり、五時限目、六時限目と続いた。



「〜はい、それじゃあお終い。この後は終礼だから、座って待っててね。」


 六時限目の担当の教師がそう言って教室から出て行き、遂に今日の授業は全て終了した。


……因みに、今日の授業は全て説教タイムだった…


  隣の方を見ない様にしてそっと席を立った僕だったが、ガッチリと山崎さんに腕を掴まれる。


「さてと!結城君には何してもらおっかなー!」


「…え?…あ、あれ、本当にするつもりだったの?」


せめてもの抵抗で、「まさか本気とは思ってなかった作戦」を遂行したが、山崎さんは笑って流してしまった。

畜生。


「当たり前でしょー?何してもらおっかな……?」


「えぇ……」


嬉々として僕への罰ゲームを考えている山崎さんと、最後の作戦があっさりと破られ、絶望に浸っている僕。


「んー……じゃあ--------」


そう山崎さんが何か言いかけた時、教室のドアが勢いよく開いた。

見ると、担任が困惑した様な表情で教室を覗いている。


「結城!結城は居るか?」


「は、はいっ!」


突然名前を呼ばれて、返事の声が裏返った。

ざわめくクラスメイト達を無視して、僕は担任の方へ行く。

担任は僕に、「付いて来てくれ」と言うと、早歩きで歩き出した。

無言でスタスタ歩く担任の後を付いて行きながら、僕は考える。


 提出物とかの事かな?


…しかし、そう楽観していた僕は、到着したその部屋の扉を見て愕然とした。


“生徒指導室”


そこにはそう書かれていたのだ。

僕は不安げに担任に問う。


「先生、ここって…?」


「話は中に入ってからだ。先客が待ってる。」


「先客……?」


…そして、扉を開けた瞬間、僕は更に驚愕する事となった。


……そこには、神々しいスマイルを浮かべるイケメン、神崎先輩の姿があったのだ。



* * *



「…まぁ、とにかく座れ。」


固まっている僕に、担任がソファーを勧めてくる。硬直が解けた僕は、大人しくソファーに腰掛けた。


 ソファーに僕が座ったところで、担任が話し出す。


「えっと…まず、君を呼び出した理由を言おう。それは……」


と、そこで先輩が担任の話を遮った。


「先生。そこから先は俺が説明します。」


「…そうか。では頼む。」


担任は神崎先輩を少し眺めた後、その申し出を受諾した。

先輩は担任に一礼して、僕に話しかけた。


「どうして、こんな所に呼び出されたのかと思っているね?結城 拓海君?」


「…はい。」


「そうか………」


先輩は芝居じみた仕草でこめかみに手を当て、残念そうに溜息をつく。

 

「あの……僕、何かしましたか?」


「…本当に心当たりが無いのか?」


「…え?は、はい。」


はぁ…と、再度仰々しい溜息をついた先輩は、一枚の紙を鞄から取り出した。


「…これを見ても、まだ心当たりが無いと言うのか?」


「……!」


それを見て、僕は思わず息を呑む。


…その紙には、メッセージアプリののスクリーンショットが印刷されていたのだ。

…そして、何よりも驚いたのが、先輩のトーク相手の欄に、”天沢春菜”と書かれていた事だった。


 驚きを胸の内に隠しながら中身を見ると、そこにはこう書いてあった。


**


神崎

[一年の月城さんを結城拓海という輩が脅している、という噂は本当なのか?]


天沢春菜

[はい。この目で見ました。]


神崎

[そうか……具体的に、どんな手段で脅したとかは分かるか?]


天沢春菜

[…はい。月城さんの着替え中の写真をネタに、もし従わなかったらばら撒くぞ、と脅していました。]


神崎

[…分かった。教えてくれてありがとう。]


天沢春菜

[いいえ。先輩のお役に立てたのならば、私としても嬉しいので。]


神崎

[ありがとう。失礼するよ。]


天沢春菜

[はい。失礼します。]


**


「………っ!!」


写真を持つ手に力が入り、グシャリと嫌な音を立てて紙が歪む。


…だが、そんな事は気にもならない程……


僕は、かつて無い程に激怒していた。






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