第39話

「あがったよ。拓海。」


雪菜の声が聞こえたので、クッションから顔を上げると、桃色のパジャマに身を包んだ雪菜が見えた。


風呂あがりということもあり、黒髪はしっとりと湿っていて、頬もほんのり赤くなっている。


…中々に扇状的だ……


しばらく雪菜に見惚れてしまっていたが、その雪菜にペシペシと頭を叩かれて現実に戻った。


「ほら、早く入ってきなよ。」


「はいはい……」


よっこらせっと立ち上がり、適当に自分の部屋から下着やらパジャマやらを出す。


最後に干して置いたバスタオルを取ると、風呂場に突入した。


…勿論、シャワーだけだ。

寒いけど、意地でもシャワーだ。





風呂から上がると、雪菜は僕の部屋のベッドに寝っ転がりながら、ラノベを読み耽っていた。


……でも、その体制は色々と不味いぞ?


……パジャマがはだけて真っ白な肌が剥き出しになっている…


「あ。拓海、あがったの?」


雪菜が首だけ起き上がらせて言ってきた。


「…あ、あぁ。」


捲れてる!なんか白い布が見えてる!?


「私、そろそろ寝たいんだぁ。」


「…そ、そうか……」


……不味い……


チラチラ見える白いブツが気になって、まともに思考ができない!


…クソっ!また見えた!


「一緒の部屋で良いよね?」


「わ、分かった……」


ヤバイヤバイヤバイっ!もう見えてるっ!目を逸せない!


「じゃあ……い、一緒に寝てね……?」


「あ、あぁ……」


…何やら変なお願いを聞いた気もするが、今の僕にはそんな事を気にする余裕は無い。


理性さんがその全力を持って三大欲求の一つに打ち勝とうとしているのだ!


……くっ!静まれっ!僕の心臓!


……………………


……………………


…………ふぅ。漸く収まった。


僕が勝利の余韻に浸っていると…


「じゃ、私は歯磨きとかしてくるから。」


「あ、うん。いってらっしゃい。」


雪菜はドアを閉じて何処かに行ってしまった。


「拓海……添い………キャーッ!」


閉まった扉からモゴモゴと声が聞こえて来るが、何を言っているのか分からない。


「……僕も歯磨きするか。」


そう呟き、僕も雪菜の後を追って洗面所に行った。


* * *


そして、それから数十分後。


僕は寝る前の準備を終え、部屋に戻ったのだが……


「雪菜、いるか……ってあれ?」


雪菜がいない。

歯磨きを終えて、部屋に戻っていた筈なのだが……


「……ん?」


……いや、よく見ると、僕のベッドの上の掛け布団が一部盛り上がっている。


ビクッと震えたあたり、どうやら布団に包まって僕から隠れているらしい。


「…ほら、雪菜。ベッドから出ろよ……」


呆れた僕が掛け布団を引き剥がした時だった。


「フシャーッ!!」


「うおっ!?」


突然布団の下から飛び出して来た雪菜が、僕の胴体を掴んだ。

そのまま、ベッドの中に蟻地獄の如く引き摺り込まれる。


「ちょっ!雪菜、何してんだ!?」


「……………」


ジタバタと抵抗するが、雪菜を蹴ってしまう可能性もあった為、強く抵抗できない。


と、その時。


「ピッ!」


僕の肘が何かを押し、明かりが保安灯だけになってしまった。

押したのは照明のリモコンのスイッチだろうか?


「…うわっ!」


そして、僕が驚いたその僅かな隙を雪菜は見逃さず、そのまま僕をベッドに引き摺り込んだ。



「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


薄暗い中、僕は背中に抱きついたままの雪菜に問う。


「………雪菜?」


「…なに?」


背中に雪菜の息が当たる。

少しゾワリとしながら、僕は聞いた。


「……なんでこんな事するんだ?」


すると……


「…一緒に、寝て欲しいから………」


「………そうか…」


…可愛いな!?


でもな!僕は抜け出すんだよ!


この体制では抜け出せないけど…


「…拓海。今どうやって抜け出そうか考えてるでしょ。」


……あれ?


「…何故それを?」


僕がそう聞くと、


「何となく分かった。」


と言い出す。


…マジで雪菜はエスパーなのかもしれない。


…そして、僕はダメ元で聞いてみた。


「…抜け出したら、ダメか?」


…すると、それを聞いた雪菜はキュッと僕の腰を抱き締めて、


「……行っちゃいや……」


と、寂しそうに言う。


…そんな庇護欲を誘う様に言われたら、振り払う事などできるはずもない。


そして……誤魔化していた僕の理性も……我慢の限界だった。



「…分かった。今日だけな?

…但し、雪菜は……」


「…?」


僕は腰に回った細い腕をそっと解き、雪菜の方に向き直る。


そして言った。


「……今夜は、僕の抱き枕な?」


「…へ?」



僕はそのまま、理解が追いついていない雪菜を抱きしめる。


甘い香りが鼻をつき、柔らかい感触と温かい体温が、雪菜を感じさせた。


溢れ出した若い欲望を解き放ち、かつ雪菜を傷つけない為には、これしか無いと思ったのだ。


「ふぁ……」


抱き締められた雪菜は、僕の胸の中で顔を真っ赤にしながら可愛く縮こまっている。


そして、僕はそんな雪菜の耳に囁いた。


「……色々としてくれたな。」


「ひぅっ!」


雪菜はビクッと震え、さらに縮こまった。僕はお構い無しに続ける。


「…あんな事されて、僕が我慢できると思うか?」


「ぅぅ…」


雪菜は真っ赤になった顔を僕の胸に押し付けて隠そうとする。

…だが、そうはさせない。


「はい、ダメ。」


スッと雪菜の顎の下に指を入れ、僕の方を向かせた。

 

「…………」


こちらを向いた雪菜の瞳は、暗い中でも分かるほどに潤んでいた。

そしてそんな雪菜の目を暫く見つめ、


「…おやすみ。」


と言った。


「…ぉ…すみ…」


か細く返事をした雪菜は、もう限界だったようだ。


僕は更に強く雪菜を抱き締め、眠りについた。






<作者より>


その場のノリとテンションだけで書きました……



…この2人、どうなるんでしょうね?

(ボクモワカラナイ…)



次回もよろしくお願いします!






























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