第31話
担任が来て朝礼が始まったが、特に行事などは無いので直ぐに終わった。
そのまま一時限目に入る。
担任は、黒板にそれぞれの委員会を書き上げると、
「今から委員会の名前を読み上げるから、やりたい委員会に手を挙げてくれ。」
と言った。
そして間をおかずに、
「あ、そうそう。学級委員はもう決めてるから。」
と言い出した。
何とも急で強引な決定だったので、みんながブーブー文句を言ったが、
「決定事項だ。大人しく流されとけ。これも社会に出た時の勉強だ。」
などと言う。
僕は担任が最初に宣言した時から諦めていたので、素直に受け入れた。
世の中には理不尽しかない。
これ真理。
「じゃあ学級委員は……えーっと……男子は間宮だな。それで、女子は月城……い、いや、佐々木にしよう。」
担任は一瞬雪菜の名を出したが、すぐに取り消した。
僕としてはとても嬉しいのだが……何故だろう?
さっき、教室の温度が急激に下がった気がしたのと関係があるのだろうか?
*
学級委員が決まった後、体育委員、保健委員、風紀委員と決まり、ようやく図書委員の番になった。
「じゃあ次、図書委員な。やりたい人。」
空かさずバッ!と手をあげる。
みんながザワザワとしているのは、雪菜も手をあげているせいだろうか?
「じゃあ図書委員はこの二人で----」
「俺も!」
「はい!」
「俺が!」
「っ!」
「………………」
やはり、現実はそう上手くいかないようだ。
…恐らく、雪菜と一緒の委員会に入りたいが為に手をあげた奴。
そんな輩が4人いた。
皆一様に僕を睨んでいる。
だけどな………
今回だけは譲る訳にはいかない!
僕も雪菜と一緒の委員会が良いんだ!
その思いを伝える為に、僕は担任をじっと見つめた。
「………………」
すると、担任も見つめ返して来た。
「………………」
「………………」
しばらく探り合った後、担任は僕にニヤッと悪戯っぽく笑いかけた。
そして言う。
「おい、そこの4人。」
「はい?」
一人だけが返事をした。
「お前らは次の文化委員希望って事にしておくから。」
「え!?」
「うそだろ!?」
「そんな……」
「くそっ!」
4人は思い思いに嘆く。
…信じられない事に、担任は僕の味方をしてくれたみたいだ。
もう一度僕は担任の方を見たが、既に担任は次の委員会を聞いている最中だった。
僕は心の中で深くお辞儀して、この人に対する評価を改めよう、と思ったのだった。
* * *
半日回って下校時刻になった。
僕は雪菜に帰ろう、と誘ったのだが、雪菜は申し訳なさそうに言った。
「ごめんね?ちょっと朝の件で……」
…告白か。
断るって言ってたけど……不安だ
な……
……でも、相手は本気でぶつかって来ている。
今日朝早く来て、下駄箱にラブレターを入れる事だって、とんでもない勇気が必要だったはずだ。
…そして、それを雪菜はきっと理解しているだろう。
…だから、もし雪菜が心を動かされたとしても、僕は何もしない。
…いや、する資格が無いのだ。
……なんて事を考えながら、僕は少しでも不安を紛らわせようとする。
そして、僕は雪菜に言った。
「じゃあ、僕は先に帰るよ。」
「そう……分かった。」
雪菜は少し寂しそうにしていたが、僕は雪菜を待ちたい気持ちを振り払った。
そして、そのまま帰路に着く。
…どうして、雪菜を待たないのか、と思う人もいるかもしれない。
待った方がいいのでは?と。
…でも、考えて見てほしい。
自分を振った女が、告白の直後に他の男と仲良く帰っているのを見たら、どう思うだろうか?
僕ならば、少し過激だが
「消えてほしい」と思う。
好きな女にも、そんな事をされればそのくらいには思う。
……要するに、雪菜の評価を下げるような事はしたくないのだ。
僕のせいで、雪菜が軽い女だと思われるような事は絶対にしたくない。
だからこそ、雪菜を残って待ちたい気持ちを抑えながら、僕は大輝達と帰った。
雪菜がいない帰り道は、どこか色褪せて見えた。
<作者より>
読んでくださってありがとうございました!
今回は少し少なめです。
いつもは当日の6時頃から8時頃まで執筆して、一話を完成させているのですが、今日は学校で進路の話がありまして、かなり遅くなってしまいました。
…皆さんはご存知無いかも知れませんが、実は僕達の代の大学受験から、
センター試験が廃止されます。
それに伴い、"大学入試共通テスト"というものが新しく導入されるらしいです。
なんでも、筆記が結構入るとか。
勉強、頑張ろう!
次回もよろしくお願いします!
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