第18話
…ゴトンゴトン……ゴトンゴトン……
電車の音、振動。
それは人間の眠気を極限まで引き出すものであり、一度電車の中で眠れば大抵は降りる駅を逃してしまう。
僕も何度か苦い経験が………
ゴトンゴトン……ゴトンゴトン……
あぁ…眠い……だが、眠れない。
雪菜が寝てないのに、僕が寝るわけには……
そう思った時だった。
…ポスッ
(!?)
とんでも無くいい匂いがする………
恐る恐る横を見ると……
僕の肩に頭を預けて眠る雪菜が居た。
予想以上に顔と顔との距離が近いことに固まってしまった。
(……………)
「……スゥ……」
(……………)
ツンツン
「んぅ……」ニヘラッ
(可愛いな!おい!)
いや、本当に可愛い。例えるなら、甘えん坊の子猫の百倍は可愛い。
(もうちょっとだけ……)
ナデナデ……
(…………)
「…………」
(…………)
ナデナデ……
(……………)
「………んっ………」フニャァ
(……あ、鼻血出そうだわ。)
うん。可愛い。
* * *
「んー……っ!よく寝たぁ……」
「……………」
「あれ?起きてたんだ?」
「……………」
「た、拓海?大丈夫?」
「…………うん。」
「本当に……って!鼻血!鼻血出てるよ!」
雪菜はティッシュを出して僕の顔を拭いてくれた。
そういえば鼻血を出してから、ずっと賢者のような思考になっていた気がする。
「ありがとう。雪菜。」
「うん……?」
雪菜が疑問の眼差しを僕に浴びせていた時、車内のアナウンスがなった。
駅に着いたみたいだ。
…幸い雪菜の意識はそちらに行ってしまった。流石に雪菜の寝顔で鼻血を出したとは言えない。
ただのへんた……いや、ただの血圧上昇だ。
僕は勝手に納得して、雪菜に声をかけた。
「ほら、降りよう。」
「うん。」
僕と雪菜は駅に降り立った。
…朝、ここで待ち合わせしてからまだ七時間程しか経っていないのに、久しぶりに感じるのは、一日の内容がいつもより濃いからだろうか。
「じゃあ、行こうか。」
「うん……でも、本当にいいの?」
「大丈夫。流石に夜道で女子が一人なのは危ないからな」
実は、電車内で僕は雪菜を家まで送っていくと言っていたのだ。
雪菜は遠慮したが、僕の家に門限など無い。
補導される時間帯前までに帰ればいいので、家まで送るくらいはできる。
雪菜は僕の言葉を聞くと、ちょっと嬉しそうな顔をして、
「ありがとう」
と言った。ぼくは頷いて、歩き出した。
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