第11話

ピコン!


僕はベッドから聞こえたラインの通知音にビクリと反応する。別に脅迫メールが来ているわけではない。

単に珍しいのだ。


僕のスマホは迷惑メール対策完備な上に、アプリの通知もほぼ全てをオフにしている。


唯一オンにしているのはメッセージアプリくらいだ。

そして、その中で僕に連絡してくる可能性のある人は四人しか居ない。


父親、大輝、雪菜、少し喋る知り合い。それくらいだ。


友達アカウントが居ないというわけではなく、二十人ほどいるのだ。


……ただ、それが殆ど飾りというだけだ。 


…自分で言ってて悲しくなる。


……気をとりなおしてスマホを見てみると、バナーに書いてある差出人は、”SETSUNA”とあった。

つい最近交換した雪菜のアカウントの名前だ。

僕はメッセージアプリを起動させ、雪菜とのトーク画面に移動する。


<トーク画面>


SETSUNA [久し振り!]


SETSUNA [この前のお出掛けの話なんだけど……]


SETSUNA [どうする?私の家と拓海の家って結構遠いよね?]


拓海 [高校の元寄り駅はどう?あそこなら僕も定期券で行けるよ。]


SETSUNA [うーん……]


SETSUNA [私は大丈夫だけど、拓海は遠いんじゃ?]


拓海 [大丈夫。どうせ電車で座ってるだけだし。労力から考えると雪菜の方が大きい事になる。]


SETSUNA [超合理主義………分かった。じゃあ、待ち合わせはそこで。]


拓海 [了解。次は時間だな。]


SETSUNA [うん。私としては長く遊びたいから……十時くらいに集合はどう?]


拓海 [うん。大丈夫。]


SETSUNA [本当に大丈夫?早かったら言ってね。]


拓海 [全く問題ない。というか、楽しみすぎて絶対早起きするから、遅刻は電車に乗り損ねた時だけだと思うけど。]


(既読後二十秒の沈黙)


拓海 [雪菜?]


SETSUNA [え?]


拓海 [大丈夫?]


SETSUNA [大丈夫!というか、拓海は時間の事より服装の事とか気を付けないと駄目だよ!]


拓海 [それは多分大丈夫……だと思う。]


SETSUNA [言っておくけど、私は思いっきりお洒落してくるから!]


拓海 [へえ!制服姿も可愛かったけど、やっぱり私服の方が可愛いはずだよね。楽しみだなぁ。]


(既読後三十秒の沈黙)


拓海 [……雪菜?]


SETSUNA [なにかな?]


拓海 [……本当に大丈夫?]


SETSUNA [大丈夫!せんぜんだいじょうふ!]


拓海 [……ふーん]


SETSUNA [それよりも!どこ行く?]


拓海 [……やっぱり○○周辺だろうな……]


SETSUNA[○○?私あんまり行った事ないな……]


拓海 [大丈夫。僕は勝手を知ってるから、服とか売ってる所は知ってるよ。]


SETSUNA [そう?なら良いんだけど……]


拓海 [そんなに心配なら、お出掛けのプランとか考えておこうか?]


SETSUNA [え、え?良いの?でも、ちょっとしたお出掛けだし……]


拓海 [うん。でも、○○に行くのなら帰りは夕方になるから、ちょっとしたお出掛けじゃ無いけどね。時間はあんまり無駄にしたくないし。]


SETSUNA [そこまで言うなら……お願いしようかな…]


拓海 [うん。]


SETSUNA [あ、ごめん!お母さんに呼ばれたから、また日曜日にね!]


拓海[うん。またね。]


* * *



雪菜とのトークが終わった後、僕はスマホをベッドに置きながら考えた。


(僕、何か変なこと言ったかなぁ?)


ズゴッ!


「ぎゃぁぁっ!」


(まただよ!何回めだよ!段々酷くなってるし!)


僕は誰かに殴られた箇所を手でさする。


……痛い。


(……本当に、誰に殴られてるんだろ……)


何故か反省の気持ちが湧いてくるが、一体何に反省しているのかもわからない。


取り敢えず、頭に氷嚢を当てることにした。


それからお出掛けのプランを考え始めたのだが……僕はふと思った。


(……これ、デートじゃね?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る