第2話 転生

 案内所のドアを出て少し歩くと、白い部屋にたどり着いた。

 天井、壁、そして床。部屋のすべてが白で統一されていた。

 部屋の中央の、これまた真っ白なテーブルの上に、案内板はあった。

 書かれていることは全部で2つ。

 1つ目は、ドアに書かれたアルファベットが部屋のそれと一致していること。部屋から8つの通路が伸びているので、間違えないようにとのことだ。

 2つ目は、所持品の持ち込みが禁止だということ。支給されるリュックサックに必要物資が入っているらしい。


「それにしても、部屋を間違えるなって何回言えば気が済むんだよここは」


 そう愚痴をこぼしてから、俺は荷物をテーブルに置いて部屋Aへと向かった。



***



 5分ほどで着いた部屋Aには、ベッドと「要確認!」と書かれた付箋付きのタブレット端末しかなかった。 

 タブレット端末を起動させると、プレゼンソフトが開かれた。

 俺は付箋に従ってスライドに目を通す。


   異世界転生サービスのご利用、誠にありがとうございます。

   本サービスについての説明をいたしますので、最後まで確認願います。

                               (神崎葵)


「アオイさん、やればできんじゃん」


 案内所にいた29歳と同一人物とは思えないキャリアウーマンぶり。

 この荒木智也、ちょっと驚きました。


   初めに、今一度部屋の確認をいたします。

   この部屋はAです。

   部屋を間違えるとシステム障害が生じ、

   四肢がバラバラになった状態での転生となってしまいますので

   ご注意ください。


 アオイさん、俺、この部屋であってますよね? 

 バラバラになったりしませんよね?


   続いて、転生までの流れを説明致します。

   お客様には備え付けのベッドで寝てもらい、その間に転生を実行いたします。

   眠りが浅いと転生しづらいので、ぐっすり眠っていただけると助かります。

   転生完了時刻は、現地の午前5時を予定しております。


   最後に、転生後について少々。

   案内板にもあったように、リュックサックを支給いたします。

   中のタブレット端末に、お客様が暮らす家の場所などを記しておりますので、

   転生後は家に向かわれることをお勧めします。


   以上で説明は終わりです。

   それでは、異世界ライフをお楽しみください。


 5つのスライドすべてに目を通し終わると、頭に痛みを覚えた。

 あんなことがあったアオイさんに振り回された後だ。情報過多で疲れてるのかもしれない。

「よし、さっさと寝る転生するか」




───荒木智也様の熟睡を確認。


───体構造の読み込みを開始、完了。


───人格の読み込みを開始、完了。


───転生先との空間接続を開始、完了。


───転生完了時刻を午前5時に設定。


───以上をもって、転生準備が完了。実行責任者のミス・アオイ、指示を。


「現刻を持って、荒木智也様の転生を開始する」

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