間章・変異性魔物の発生に関する論文

 領地ペトロワは、サハク王国内で唯一機械文明を保有している地域である。

 それに関しては、科学大国である大仙たいせんからの技術提供によるものが大きい。

 現在は落ち着いたが、当領地は数十年前までは未熟な技術による急速な工業化が原因で環境汚染がおきていた。

 それが要因となり、変異性魔物の発生と繁殖がおきたものと思われる。

 変異性魔物と言う概念は、ここ数十年の間に生まれたもので、この生物の発生には当領地に責任がある。





《変異性魔物について》


 変異性魔物は、既在の魔物が汚染物質(主に流出した化学物質)などの影響により、突然変異を起こして発生したものである。

 変異性魔物は、サイズ、身体能力、保有武器の点で通常の魔物を凌駕している。

 そのどれもが熟練冒険者数十人がかりでも討伐するのは困難で、より凶暴化した個体は裏依頼ブラック・クエストクラスの難易度となる。





《変異について》


 変異源によるDNAの損傷や、機能していなかった遺伝子の発現によって突然変異がおきると推測される。

 生物の遺伝情報総体ゲノムには、発現していない遺伝子があり、それが特定の条件にいたると発現することがあると思われる。

 魔物の変異も、それと同じものと思われ、化学物質などの変異源が発現していなかった遺伝子を発現させたと考えられる。





《機密情報》


 石カブト創設者兼隊長であるムトウ・オボロの超人的身体能力も、発現していなかった遺伝子の発現によるものと考えられる。

 単純に体が大きくなっただけの量的変化で、あれほどの筋力、瞬発力、持久力、耐久力は得られるものではない。

 彼は幼少期に脳下垂体に重度の損傷を負っており、それによる体内分泌系の異常と生死の境が起因となり、発現していなかった遺伝子が発現してしまったものと思われる。

 彼の体組織は通常の生物とは質的に全くの別物で、筋肉、骨格、皮膚、内臓にいたるまで未知の強靭な物質で構成されている。(この物質の強度は、肉体強化魔術など比較にならない)

 また、体内の構造も人類から逸脱している。

 たとえば、心臓と肺の構造が単純化しており、極めて大きくなっている。これにより、全身に大量の酸素を供給できる。

 消化器や肝臓、腎臓などの器官がなく、変わりに少数の単純な形をした内臓らしきものが収まっている。(おそらく、少数で数多くの機能を成し遂げる高効率の内臓器官)

 神経繊維も太くなっており、神経伝達速度も驚異的なものになっている。(その気になれば、音速の物体をも避けらると思われる)

 率直に言えば、肉体的能力で魔術以上のことをやってのけていると言っても過言ではない。

 彼は現代の人体に関する学問を遥かに凌駕しており、また説明も不可能である。

 ゆえに彼は天才や逸材どころではなく、正真正銘の超人と言えるだろう。 



   執筆者:ニオン・アルガノス

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