狂気のオーク

 オーク。それは誰しも、一度は聞いたことがある種族名。

 豚に酷似した頭を持つ邪悪な種族で、肥えた体型をしているが筋肉は強靭で身の丈は二メートル半に及ぶ。

 魔物ではないが、非常に獰猛で貪欲な悪意に満ちた生物である。

 その種族名を耳にした集落の毛玉人達は、一斉に家を飛び出した。

 住民達が周囲を見渡すと、その醜悪な巨体達が並んでいた。

 すでに集落は百以上の武装したオークに囲まれていたのだ。誰一人逃がさないようにと、集落を囲むような陣形をとっているのだろうか。

 寝静まった夜に襲撃してくるあたり、知能が高いオーク達なのだろう。   

 しかし、なぜかオーク達は攻撃してくる気配をみせなかった。

 ただ下劣な笑みを、住民達に見せるだけだった。


「ここの長は誰だい? 話でもしようじゃないか。俺は、ここいらのオークを取りまとめてるベクトスって言うんだ」


 一人のオークが荒ぶった様子もなく近寄ってきた、その口調はどこか知的である。他のオークよりも大柄で手に棍棒を手にしていた。

 オークは野蛮で凶暴な種族と聞いているので、いきなり会話を望んでくるなど意外だった。


「……私がここの長だ」


 面食らったようにロッパは名乗りをあげ、前に進みでた。

 ベクトスはロッパを一目すると、他の毛玉人達のことも見渡し、ニヤリと口角をあげた。


「へへっ、綺麗だな、あんた。俺の目に狂いはなかった。ここの毛玉人達は、ふふっ……すこぶる良い」


 やや楽しげにベクトスは語る。少しばかり興奮している様子だった。

 そして、恐る恐るロッパは尋ねた。


「目的はなんだ? 食料か金か、それとも我々の命か?」


 しかし、ベクトスはヘラヘラしながら口を開いた。


「ふふっ、安心しろ。そんな命をとるなんて、ひでぇこたぁしねぇよ。いやぁ、ここでの目的は、奪うことでも、殺すことでもない。他のオーク達は、どうだか知らねぇが、俺達は毛玉人てぇのが好きなんだぜ」


 集落の者達は一斉にどう言うことだ? と訝しく思った。


「いやさぁ俺達さぁ、普通のオークから見たらすげぇ変質へんなところがあってよ。その、へへっ……俺達は、どうも毛玉人が好きでさ。あのよ、特殊性癖って言うのかな? その情欲的な意味で好きでよ。以前から、ここの集落の毛玉人を調べてて分かったんだ。……美形ぞろいなんだな、これがぁ」


 ベクトスは顔を真っ赤にしながら、時おり薄ら笑いを漏らしながら語る。明らかに内容は異常であった。

 ここに来た目的は、毛玉人とおぞましい行為をするためだと語っているのだ。

 集落のみなが凍りつくなか、ベクトスは説明を続ける。


「だからさぁ、別に、あんたらを殺したりしない。欲しいのは、ここにいる、あんたらなんだ。俺達を、あんたらの体に迎え入れてほしいんだ。えっへへ、大丈夫だぁ。誰も殺したりはしねぇって、本気まじで。さっきから子分達が、お前らを見て……ぐふふ……すげぇ気色悪きしょいとは思うけどよ、勃起ビンビンしてんだよ」


 余りにも、おぞましいことを言うベクトス。

 一部の人間は毛玉人を愛好する者もいるが、オークがそのような考えを持っているとは思いもしなかった。

 その異常性に絶句し、ロッパは後ずさった。


「うっふふ。逃げないでよ、綺麗なお兄さん」

「……な、何をする! はなせ!」


 するとロッパは、いきなりオネェ口調のオークに羽交い締めにされた。

 ロッパはオネェオークを振りほどこうとするが、オーク族は毛玉人以上の腕力を持つため、ほどくことができない。

 ロッパが捕まったとたん、周囲を覆っていたオーク達が狂ったように住民達に向かって駆け出した。

 オーク全員が本能を剥き出しにして、荒い息をたてる。


「うひゃあー!! 毛玉の女だぁ!」

「いやっ! はなして! やめて!」


 とあるオークが猫の毛玉人女性に無理矢理抱きつく。


成人としより必要いらねぇな。やっぱ子供わかいのが欲しい!」

「やだぁ!」

「はなしてよぉ!」


 家の中に駆け込んだオークは子供達を捕まえて、だきかかえて無理矢理に頬擦りをした。


「どうしてやろうかなぁ」

「異種交配できるか、試してみてぇな。意外と孕むかもな」

「俺は口移しで、吐瀉物ヘドを飲ましてやりてぇ」


 異常な性癖を持ったオーク達は、ただの淫獣のように振る舞う。

 つぎつぎと住民達は、オーク達になすすべなく捕まり縛り上げられる。


「安心してくれ。全員が勃起状態ビッキビキだが、ここでったりしねぇからよ。住処すみかに帰って楽しむとしよう。今日のために色々我慢してたから、いっぱい絞り出してもらおうぜ」


 異常なことを言いながらベクトスは、羽交い締めにされたロッパに近寄ってきた。

 そしてロッパの顎先をつかみ、顔を起こさせ品定めするように観察をする。


「お前さん、やっぱり美形だな。俺は両性愛そうけんつかいでな。帰ったら、あんたを最初に抱こうかなぁ、楽しみだぁ」


 ベクトスに細い目で見られ、ロッパはゾッとした。このオーク達は狂っていると。

 と、その時だった。叫び声が聞こえてきたのだ。


「やめろおぉぉ! 父さんに触るなぁ!」


 叫びながらベクトスとロッパの間に割り込んだのはニコだった。

 ベクトスは邪魔立てしてきたニコにも、観察の目を向ける。


「なんだ、嬢ちゃん? 挿入いれてほしいのか?」


 小柄で少女のような見た目のため、ベクトスはニコを女と勘違いしていた。

 それに怒ったのか、ニコはベクトスを睨み付けて叫んだ。


「ぼ、僕は女じゃない! 僕は長の息子だぞ! みんなに手を出す奴は、僕が許さない!」


 そんなニコを見て、ベクトスの目尻がいやらしく下がった。そして、自分の顔をニコに近づける。


「可愛いじゃねぇか。こんな見た目で男とは。しかも健気だねぇ、親父に似たのか?」


 ベクトスは、ロッパとニコの顔を交互に見た。父親は美形、息子は少女のように愛くるしい。

 今後のことが楽しくなり、ベクトスは更に表情をだらしなくさせた。


「そうだわ! ボス、良いこと思いついちゃった。その子を、この場でっちゃったら? それ見せたら、みんなテンションが上がって、帰ってからの乱交パーティーが、より一層楽しめるわ!」


 ロッパを押さえていたオネェのオークがとんでもない提案を言い出した。ニコとこの場でまぐわって、自分達の気分を高めてくれと言うのだ。

 その提案に賛同したのか、部下のオーク達が歓声を上げ始めた。


「そりゃ良いですぜ、ボス!」

「一発、見してくださいよう!」

「可愛そうに、ボスに抱かれたら、すぐに壊れちまうだろうな」


 オーク達が異様な熱気に包まれてきた。

 それに答えるかのように、ベクトスはニコの肩を掴み地面に押し倒して、今までに無いほど息を荒げる。


「か、可愛い部下の頼みと、あっちゃあな。覚悟しろよ坊主。前に捕まえた良毛面イケメン男子は容易く壊れちまって、ただの人形モノになっちまったんだ。そんで三日間童貞だったもんで、肉竿にくざおが鋼鉄みてぇにカチカチだぁ。お前は体が小さいから、どうなっちまうのか……」

「もう、なに言ってるのよボス。前の男の子が壊れちゃったのはボスのせいでしょう。なかなか入らないからって、お尻を十字に切り開いちゃうから、まったくもう」

「でへへへ! そういやそうだったな。あんときゃ腸が漏れでて、後始末が大変だったな」


 オネェオークとの会話を楽しみながらベクトスはニコの服を掴むと力任せに破り捨てた。


「……や、やめ……はなして……」


 ニコは恐怖で頭が真っ白になり、大声も出せない。足掻きたくともオークの腕力で微動だにもできないのだ。


「や、やめろおぉぉ! やめてくれえぇ! うぐっ」

「パパさんは、少し静かにしててねぇ」


 ロッパは必死の懇願を響かせるが、オネェオークに口を塞がれてしまった。息子が目の前で犯されるなど悪夢以外なんでもない。


「んー良い毛並みだ。俺は男を抱くとき、そいつのケツを裂くのが大好きなんだ。お前のような可愛い子ちゃんが、股から血と精液を垂らしながらもだえ苦しむ有り様は、さぞ愛しいだろうな」

「……ひ……やぁ……だぁ」


 ニコは、あまりの気味の悪さに、まともに言葉もだせずに涙を流すことしかできなかった。

 しかし、それもベクトスを興奮させる材料にしかならない。


「でっへっへっへっ、可愛い泣き顔だぁ。そろそろ始めるかぁ。グッチリと挿入ねじこんで、ドップリと男汁おとこじるを注入してやるぜ、俺のどでかいのでな」


 そう言いながらベクトスがニコの脚に手をかけたとき、ニコは何かを呟きだした。


「……ボロ」

「ん? 何か言いたいことがあるのか?」


 ベクトスが手を止めて、耳を傾ける。


「オボロ! 助けてえぇぇ!!」


 ニコの絶叫が響くと、地獄の釜を開いてやって来た鬼のごとき咆哮が集落を揺らした。


「う゛お゛お゛お゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

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