第287話 女装の令嬢


銀髪ブロンドの髪を流す令嬢が城の吊り橋前に立っていた。銀色のブロンド髪を肩にかかるかかからない程度に伸ばし。青と白色のバランスとれた豪華そうなドレスを着飾っている。歩きなれてないのか。たどたどしくハイヒールの足を動かす。胸元からつきでるふっくらとした膨らみがドレスの外からこぼれる。7大貴族としてシャンゼベルグ城に顔パスで入ることが許されるサウザンド家のご令嬢キリネ・サウザンドである。姉セシリアから半場強制的に素っぴんにさせられ。これでもかというくらいおめかしをさせられたのである。染めていた頭のブラウン髪もすっかり色を抜け。元ある本来あるべき銀髪ブロンドに戻っている。

見た目からしても高貴なご令嬢と解るほど美しく見違えていた。


「はあ、姉様のせいで時間がかかりすぎたよ。何で城に入るのにこんなにおめかししなきゃいけないんだよ。しかもこのドレス、コルセットがやたらきついし胸も強く締め付けてくる。早く元の男装に戻りたいよ。」


銀色プロンド髪のドレスの少女はそんな愚痴を溢す。


にしても·······

銀髪プロンドのドレスの少女は隣に流し目を送る。視線の先には真っ赤に染まるドレス姿を着飾った令嬢が立っていた。艶のある濡れ鴉のような黒髪を持ち。紐で後ろ髪を結ってポニーテールのように濡れ鴉の黒髪を垂れ流れしている。発育のよい慎ましさと豊かさを併せ持つ二つ膨らみが真っ赤に染まるドレスの胸元にくっきりとした見事な谷間を作っている。特にそんな格好など意に介さず彼女は無言で立っている。


「········。」

「何でイーリス先輩まで一緒にいるんだよ。」


キリネは冷めた目で三年先輩にあたる(実際落第しているが)イーリスに向ける。

ライナの滞在するお城に遊びに行くと約束して。寮でしっかり準備(長い化粧と正装)を整い。お城に向かったのだが。何故だがイーリス先輩までおめかして一緒についてきたのである。しかも城に行くことに全く関係ない西方の真剣のカタナを手に携えているのだ。まるでこれから決闘にでも行くような意気込みである。お城は決闘する場所なんてないはずだが。


「··········。」

「と、兎に角。取りあえずオルドス国王に挨拶しないと。姉様に社交辞令の作法をみっちりしごかれたから大丈夫な筈。女性言葉も姉様の真似をすればいいだけだし。」


女装した令嬢は胸を張り。しっかりとした足どりで城の城門をへと進む。続いてドレス姿でありながら刀を持ち歩く令嬢も一緒に進む。


コツコツコツ



ガササッ

吊り橋かかる水路近くの草むらでじっと二人を観察するものがいた。気配を消し姿を消し。二人の様子をじっと草むらの陰から窺う。城のものは誰もその存在に気付いていない。城を厳重に警備する竜騎士団さえもその存在に気付いていなかった。城に入る二人の内カタナを手に持つ1人の令嬢をまるで厳重に警固するかのようにぎらついた目で見守る。


ガサガサッ シュウッ‼


水路の草むらに隠れ潜むものは城門の塀を軽々と飛び越え。誰にも気付くことなく城へと忍び込む。



        玉座の間


「よくぞ参られた。サウザンド家の娘よ。シャンゼベルグの王として歓迎する。」

「いえ、もったいなきお言葉でございます。」 


ニコッ

コク

キリネは上品に微笑する。 

姉のような猫被りなことはできないが。外面だけ良くするのは本性を隠すキリネにとっては造作もないことである。

隣に畏まるイーリス先輩だけは無言のまま頷く。



「カティナール家の娘もよくぞ参られた。跡継ぎがいないと心配しておったが。どうやら杞憂に終わったようである。こんな美人で可憐な娘をもうけられて。さぞ、カティナール家は安心したであろう。」


騎竜乗り系統であるカティナール家では跡継ぎ空白が続き。このまま家が没落すると思われた。カティナール家は7大貴族ではないが。それなりの家柄と歴史をを持う貴族である。騎竜乗り系統の貴族故実力を持った騎竜乗りがカティナール家から輩出されていた。レースの戦績さえも東方大陸一位の戦績を持つとされている。


「コッホン!」


隣の王妃は咳払いをする。

びくとオルドス国王は少し反応し。額からたらりと冷や汗が流れる。


「し、して、二人は何用に参られたのかなあ?。7大貴族であるサウザンド家と騎竜乗りの名門であるカティナール家の令嬢は我がお城に来たことは大いに歓迎するが···。」


オルドス国王は王家7大貴族の一つであるサウザンド家と騎竜乗り系統の名門貴族であるカティナール家の来訪を大いに歓迎はしたが。どういった経緯、事情で来訪したのか知らなかった。


「ら、じゃなくて私は王様のペットにご興味があります!。是非拝見したいのでございます!。」


コクッ

キリネは目を輝かせオルドス国王に強く進言する。隣のイーリスも同じく深く頷く。


「私のペット·······ああ、あれか······。」



オルドス国王はおもいっきし渋い顔を浮かべる。

王として顔に出さぬようにつとめているが。今だけは物凄く嫌そうに眉を寄せては顔にでている。


王様ペット🟰王族のペットの意味をなす。つまりこの二人の令嬢はあのノーマル種に逢いに来たということである。オルドス国王はおもいっきし嫌そうに顔をしかめる。あのノーマル種に逢わせたらこの二人に何をするか解ったもんじゃないからである。特に娘であるシャルローゼから聞いた話だが。あの建国記念杯の王都中の女性の胸が勝手に揺れる事件はあのノーマル種が引き起こしたというではないか。

そんなノーマル種に年端のよい高貴な二人の令嬢を遭遇させるなど。その先録なことにならないことは明白である。

なんとしてでもこの二人の面会を阻止せねば。

オルドス国王はどうにしかして二人の令嬢を気分を害さずお帰りねがえるかを考える。

実際のところこの二人の令嬢が例のノーマル種と遭遇しなければよいのである。

問題のノーマル種は我が娘であるマリスと今一緒に遊んではいない。

マリスは我がもう二人の娘。姉であるシャルローゼとメディアと一緒に王都の外でお出かけしているのである。

三姉妹だけのピクニックに行ったのである。

マリスはどうやらあのノーマル種を一緒に連れて行きたかったようだが。

姉妹水入らずは良いことだが。この状況になってあのノーマル種を娘達と一緒に連れていかなかったことを激しく後悔している。我が娘シャルローゼがいつも妹マリスの面倒をあのノーマル種に押し付けてしまったことを申し訳ないとおもい。今日1日だけあのノーマル種を休ませる形で姉妹水入らずピクニックを考案したのである。我が娘なりの優しさ故の計らいである。だがこれが仇となってしまった。

目の前の二人の令嬢達にあの問題のあるノーマル種を逢わせる機会を与えてしまったのである。

正直あのノーマル種は王族のペットととしてマリスの面倒をずっとみさせて大人しくさせるべきなのである。女性、特に胸のある女性に関わらせては絶対いけないだ。成人女性にとってあのノーマル種は外敵でしかない。



「我が城でゆっくりとくつろぐとよい。おい、そこの兵士。」

「はっ、何でしょう?。」


玉座の間で警備する1人の兵士をオルドス国王が呼ぶ。兵士の方は何故自分が呼ばれたのか理解できないでいた。

兵士が近づくとオルドスは口元に手を添え。兵士の耳に近づける。前の二人の令嬢に聞き取れないように小声で話す。


「よいか。あの二人にはあのノーマル種とは絶対に逢わせてはならん。お前はお城の案内とひょうしてノーマル種と遭遇しないように計らい。彼女達には早々にお城からお引き取りしてもらうのだ。」

「はっ?。あの二方は王様のペットに逢いに来たのではないのですか?。」


兵士は困惑する。来訪した二人のご令嬢は王様達のペットに逢いにきたのだと話の流れで聞いていた。それなのに王様がその王族のペットととなるノーマル種とは逢わせないという。


「あのノーマル種は王都中の女性達の胸を揺らした前科があるのだぞ!。そんなノーマル種に年端のよい娘二人を逢わせるなど。どうなるか解ったものではない!。いいか、結してあの二人にはあのノーマル種に逢わせることは許さぬ!よいな!。」

「はあ、了解しました····。」


兵士はオルドス国王の小言の指示に静かに頷く。

噂では建国記念杯の女性達の胸が勝手に揺れ出した事件があのノーマル種の仕業ではないかと囁かれている。ノーマル種にそんな能力は無いだろうに。うちの王様は頭がおかしくなってしまったのではないかと兵士は心配になる。

オルドス国王を指示を受け兵士はキリネとイーリスの前に出る。


「では、お城に案内致しましょう。どうぞ此方に。」

「ありがとうございます。」

ニコッ

コク

キリネはとびっきりの作り笑みを浮かべ。

イーリスは無言で頷く


兵士はお嬢様二人をお城に案内する。

確かノーマル種は城の裏庭にいたな。メイド隊と一緒だったはず。あっちまでいかなければ鉢合わせすることもないだろう。

兵士は適当に城の中を案内し。二人ご令嬢を帰らせることにした。


         城裏庭


ブーツを履き軍隊のように整列するメイド隊が裏を囲む裏庭の塀前に並んでいた。メイド隊のメイド達は顔色一つ動かさず。目の前の指揮官、或いは教育係と呼べる1人のメイドの指示を待つ。しかしいつもの年配のメイドではなく。カチューシャの着飾る頭に後ろ髪を束ねられ。目もとがキリッとした鋭い眼鏡をかけた自信満々に胸を張るカーラさんがメイド隊の前に立っていた。


ギャ?ギャアラギャアギャアラギャアガアギャアラギャ?

(あれ?何でカーラさんがメイド隊と一緒にいるんだ?。)


マリス王女の子守りに解放された俺はメイド隊の活動を観察していた。俺は今日は熱心にメイド隊の働きを見学することにしたのだ。別にメイド隊のメイド服からこぼれる胸の膨らみを熱心に見学しに来たわけではない。ここは勘違いしないで貰いたい。

俺は健全に誠実に熱心に真面目にメイド隊の働く姿を凝視しに来ただけである。そこは本当に勘違いしないで貰いたい。


「メイド長に頼まれたんですよ。ベテランで熟年者であるカーラ様にメイド隊の教育を施して欲しいと。」


マリス王女のお抱えメイドのメニーさんも今日は三姉妹王女の水入らずのピクニックで非番である。非番ならそのまま休めばいいのにと思うが。メニーさんはマリス王女ではなく王族のペットととなった俺の面倒もみるということで健気にも断ったそうである。なんとも良いメイドである

ギャアラギャアガアギャアラギャア?

(カーラさんがメイド隊の教育ですか?。)


俺はおもいっきし竜顔をしかめる。

何故ならあのドSで守銭奴なカーラさんがメイド隊の教育なんて。まともにできるとは俺には到底思えなかったからである。

不安材料でしかない。 


「では、始めて下さい!。」


パン パン

カーラさんは何か始めるかのように手をうちならしメイド隊に合図をする。


バァサッ!

メイド隊はカーラさんの手の合図ど同時に一斉に自分のメイド服のスカートを捲し上げる。そのままブーツの履いた艶のある肉付きのよい網目のパンストの生足を外にさらけ出す。そしてブーツの履いた右足を前へと出す。

ザッ!


『お舐めなさい!!。』(メイド隊一同)


メイド隊は毅然とした態度でその言葉を口にする。


ギャアああああああああああーーーーーーー!

「何やってんだあああーっ!あんたーー!!」


俺はおもいっきし竜の咆哮を放ち。今指示したカーラさん怒りの突っ込みを入れる。


「何ですか?駄竜。邪魔しないで下さい!。今私はメイド達にメイドとは何たるかを教育しているのですから。」


カーラさんは悪びれもなくサラッとそんな戯れ言を言い放つ。

ギャアギャ!ギャギラギャガアギャアラギャアギャアガア!ギャアラギャ!

(教育って!。どうみてもこれは単なるあんたの趣味で!性癖だろうが!。)


カーラさんはドSなのは理解しているが。他人その性癖を押し付けないで欲しい。


「何を言ってるのですか?駄竜。あれを観なさい。」

ギャあん?

(ああん?)


俺はカーラさんが指差した方向に竜瞳の視線を向ける。


「ぶへへへ。生足、ぶへへへ。」

···········


そこには竜騎士団を束ねるサルベルゴ竜騎士団長と年配のメイド長が二人が寄り添い。

メイド長はパンスト生足さらけ出してサルベルゴ団長はそのメイド長のパンスト生右足を愛おしそうに頬で頬擦りしていた。メイド長はそんなサルベルゴ竜騎士団長の行いを嫌そうな顔を一切せず。慈愛満ちた顔で見つめている。

···········


「ああやって心身ともに疲れきった竜騎士団長の心をメイド長は毎日ケアをしているのです。」

········

カーラさんはそんな二人の変態行為を何もブレることなく説明する。


ここの竜騎士団大丈夫かよ。

どんだけ心身ともに疲れきってるんだよ。


俺は竜騎士団長がメイド長のパンスト生足を頬擦りする光景を見て。この国の将来本当に大丈夫か?と本気で思ってしまう。


「ですから邪魔しないで下さい。駄竜。これからみっちりメイド隊に竜騎士団員の心のケアする仕方を教えるのですから。」


カーラさんははんと鼻を鳴らし俺を小馬鹿にした態度をとる。

ギャ·····ラギャギャ···

(はあ·····そうですか···。)


俺は反論する気も失せ戻っていく。


何か色々諦めてしまった。

何か違う意味で王国の闇を垣間見た気がする····。


何か疲れてしまったな······

メイド隊の働く姿を熱心に見学しようとしたが。カーラさんの会話せいでどっと疲れてしまった。


ドシドシドシ


「あれ?ライナさん。どちらに?。」


メニーさんが俺が裏庭から離れようとしたので声をかける。


ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャア

(ああ、メニーさん。少し城内をブラブラしようと思います。色々疲れましたので。)


何故疲れてしまったかをその理由を述べなかったが。メニーさんは色々察してくれた。


「そうですか。お気をつけて。」

ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャア

(さて、何処をブラブラするかな。中庭でいいか。)


俺は城内でブラブラできる場所なんて思い付かないので。俺がいつもマリス王女を子守りしている中庭にすることにした。





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