第285話 西方の龍


ドッ! ドドドドドーーーーー☁☁☁☁☁!!!。


「待ちやがれえええーーー!。」

ギャ!ラギャアガアギャアギャアーーガ!ギャー!

(待て!と言われて待つ馬鹿はいねぇーよ!馬ー鹿!。)


俺は半場おちょくりながらも人攫いから逃走する。


「くっ、あのノーマル種。俺ら馬鹿にしやがって!。」

「絶対にミンチにしてやる!。」

「ノーマル種をアブノーマル種にしてくれるわ!。」


人攫い達は諦めせもずに俺達の後を追ってくる。

しつこいなあ~。本当に諦めろよ。

マリス王女を誘拐しようとする輩である。王族に知れれば即刻首が飛ぶから相手も必死なのであろう。

マリス王女様の俺の背中でしがみついて怯えている。こういった人攫いとかには遭遇したことはないのだろう。薔薇竜騎士団が厳重に王族を護衛していたのだから当たり前である。

にしてもよりによって俺が護衛を任せられた時に狙われるとはついていない。

今日は女性関係の女難の日かと思えば完全に厄日である。


日頃の行いは悪くはないと思うのだけどなあ~。

俺は竜の長首を傾げる。


「待ちやがれえええーーーーーーーー!。」


ドドドドドドーーーーーーーっっ☁☁☁!!!。


ひゅん

俺は更に数メートル誘拐犯達の距離を離す。

毎日日課の校庭グランドの走り込みを舐めるなよ!。こちらとら体力スタミナには自信があるんだ。

騎竜は飛行が主流だが。師であるレッドモンドさん曰く身体を鍛え。体力作りも大切なことだと教えられている。。毎日筋トレ、ジョギング、走り込みをかかすことはなかった。。飛行にはあまり関係ないようにみえるが。翼を使うのにも筋肉の大胸筋の必要であるとレッドモンドさんの名言である。


「あのノーマル種なんでこんなに脚が速いんだよ!。」

「糞!あのノーマル種。ノーマル種のくせしておかしいだろう!。」

「く、アブノーマルなノーマル種だ!。」


さっきからアブノーマルにこだわっている人攫いないか?。ま、取りあえずこのままいけば撒けそうではある。人攫いを凝らしめるという選択肢はあるだろうが。いかせん俺はノーマル種である。もし王都で底辺であるノーマル種が人間に危害を加えたならば問題になるかもしれない。アイシャお嬢様に迷惑かけるかもしれない。だから下手なことはできなかった。例えそれが人攫いを生業とする悪人だとしてもだ。


ドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ☁☁☁☁!!!。


俺は西地区を突っ切り南地区へと駆け出す。商業区域でもある南地区は西地区よりは治安はいいはずだ。あの人攫いでも人通りの多い商業区域で人攫いのような馬鹿な真似はしないだろう。もししたならただの馬鹿である。


ドドドドドドドッ! キッキィーーーー!


ふぅ~完全に撒いたかな·····。

人攫いの三人組は後方から見えない。自分達を完全に見失ったようである。


ギャアラギャアギャアギャア?

(マリス王女様。大丈夫ですか?。)


かなりスピードで逃げてきたので俺はマリス王女様の状態が心配であった。


「大丈夫·····。ライナご免なさい。」


マリス王女は俯きながら落ち込む。

ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアギャアギャア

(いいえ、気にしてませんよ。俺はメディア王女様から妹であらせられるマリス王女様を護衛することを任せられていますから。こんなの苦ではありませんよ。気にしないでください。)


マリス王女様も自分の我が儘でこんな事態になってしまったことを深く反省しているようである。


「それよりも王都の観光の続きしましょう。折角お店が並ぶ南地区に来たのですから。お金も多少持たされていますし。」


一応メディア王女から王都観光の際に金銭を持たされている。マリス王女様は落とす可能性があるから俺が代わりに所持しているのだ。もし、マリス王女や俺が王都で欲しいものがあったら買っていいいとメディア王女様の。

幾ら入っているんだろう······。

ジャラ


メディア王女から持たされた金銭の入った袋の紐を解き。中身を確認する。


ジャラジャラジャラ

そこにはピカピカと煌めく黄金の光を放つ無数金の硬貨が入っていた。それと一緒に金貨よりも一際は大きめの館一件軽々買えると言われている神足る竜が型どった大型の白い銀貨が無数の金貨のわきに埋もれていた。

金銭袋の中身は金と白銀で豪華さが際立っていた。


バサッ ぎゅううう


俺は素早く金銭袋の紐を強く締め懐にしまう。


見なかったことにしよう··········


俺は館丸々一件買えるくらいの額を持つ金銭袋の中身を完全に頭から忘れることにした。


「それでは行きましょうか。マリス王女。」


俺はマリス王女を背中に乗せたまま商業区域である南地区の路を進む。

露店は賑わっている。

南地区に商売する王都国民は俺がマリス王女を背中に抱え出歩いていることに度肝抜かれるほど驚いていた。


ドシドシドシドシドシドシ

(さて、何処に向かうか····。)


マリス王女様連れていくと行くなると。場所は限定されるな。如何わしい場所にいけないし。王都にもあるといわれる魔物と戯れる会などもってのほかである。

武具店や露店、喫茶店などが妥当かなあ。ただノーマル種が入れる店も限定されるから考えないと。俺はマリス王女様を連れ歩くプランを考える。


「マリス王女様。行きたい場所ありますか?。」


俺は背中に乗せているマリス王女に問いかける。

「船が見たい!。」


船?ああ····飛空艇のことか。なら船着き場かなあ。

ドシドシドシドシ

俺はマリス王女を背中に乗せたまま飛空艇発着ふる船着き場へと向かう。

船着き場には数々の豪華な飛空艇がとまっていた。貴族専用の船や貿易専用の商船、竜を乗せる騎竜専用の騎竜船をなどがならんでいた。


「うわああ~~~!。でっか~~い!。」


マリス王女は俺の背中で数々の飛空艇を目のあたりにして感動していた。

良かった。マリス王女人攫いと遭遇して震えるほど怯えていたけど立ち直ったようだ。

いつものマリス王女に戻り俺はホッと安堵する。

マリス王女様を乗せて俺は人通り南地区の商業区域を堪能する。喫茶店やレストランなどの店にはノーマル種はお断りとみたいな貼り紙を貼られ。入店することはできなかったけど。露店では大好物の山賊焼きもどきが食べれたので文句はない。

マリス王女様と南地区の観光を楽しめて。そろそろお城に帰ろかと俺は南地区商業区域を抜け。貴族ではない国民が住む市民住宅街に脚を踏み入れる。このまま上に昇って西地区を通らず東地区側からお城に帰ろうとしたのだ。西地区にはまだマリス王女を狙う人攫いがたむろしているかもしれない。安全策として東地区側からお城に帰ることにした。


ドシドシドシドシ

ん?あれ?


住宅街の路地をすするんでいると一人の中年三十代くらいだろうか?。女性が前屈みになってしゃがんでいる。この王都とは違う一風変わった服装をしていた。羽衣のようなものを首にかけ。天女のような和風の服装をしている。この異世界に天女っているのかなあ?。西方の方には竜種の中で龍族という竜(ドラゴン)がいるのだから天女がいてもおかしくないような気もする。ただ天女のような服装を着た女性には天女にはない竜(ドラゴン)特有の立派な2本角を生やしていた。ただその角もまた他の竜種と違い枝木のように枝分れしている。枝分れした角を生やす頭からは艶のある滑らかな黒髪が腰の辺りまで垂れ下がっている。

もしかして西方の竜族なのかなあ?。

西方出身の竜族は何となく人化したら黒髪の人間の姿をしているような気がする。

侍の格好の剣帝竜ロゾンさんも黒髪だし。その妹の百花繚乱竜の蛍さんもおかっぱ頭の黒髪である。その主人である騎竜乗り科の西方の名家のご令嬢も咲夜・蓮華もまた黒髪である。後、すこし昔だが、パトリシアお嬢様のライバル的な西方の商家の娘であるアキナイ・マカランティーヌも黒髪だったような気がする。


取りあえず何かあの竜?苦しそうだから声をかけてみよう。取りあえずマリス王女様の許し得てからだな。

ギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアギャアガアはギャアラギャアギャアガアギャアラギャア?

(マリス王女。すみませんがそこで気分悪く塞ぎ込んでいる女性がいますので助けにいって宜しいでしょうか?。)

「うん、いいよ。」


マリス王女から許しを得たので声をかけることにした。

ドシドシドシドシ

俺は角をはやした天女姿の女性に近付き話しかける。


ギャ····ラギャアギャガアギャアラギャアギャア?

(あの····すみません。何処か具合悪いのですか?。)


ぴくっ

俺の竜言語の声に反応するかのゆっくりと顔を上げる。

うずくまって伏せていた素顔が上がると同時に艶のある長い黒髪に流れる隙間から素顔が露となる。

スッと俺と竜瞳と彼女の視線が合う。


ポロッ ポロポロポロポロポロッ

えっ!?


突然その女性は俺を視覚した途端泣き出した。


えっ!?え、え、え?え?

突然俺を見て泣き出したことに戸惑う。


「ああ~~~!!ライナ、泣かせたあ~~!。」


マリス王女様も俺が目の前の女性を泣かしたと勘違いする。

ギャラギャアギャアギャ·······

(いや、自分も何が何やら·······)


泣かしたつもりなど全然ないのだ。

ただ彼女が俺を見て勝手に泣いてしまったのである。


「ご免なさいね····。つい感極まってしまい····。昔のことを少し思い出してしまったのです。」


疼くまっていた女性は俺に事情を話す。


昔ノーマル種に何か嫌な想いでもされたのだろうか?。それならばノーマル種代表として申し分けないと思う。

枝木のように枝分れした角を生やす天女姿の彼女をまじまじと見る。

やっぱり他の竜種と違うな。別の大陸の竜種かなあ?。色んな竜種をみたがまだ枝木のような角を生やす竜をみたことなかった。


ギャアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャア

(俺ではなく私はノーマル種のライナです。マーヴェラス家の騎竜をしております。今は王族のペットで護衛をしております。)

「ペット?護衛?。」


疼くまっていた天女服の女性は俺がペット、護衛、騎竜をやっていると言われて困惑している。

大丈夫です!自分もよく解っておりませんから。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアギャア

(そしてこちらがこの国の第三王女のマリス王女様です。今はこの方の護衛をしております。)

「宜しく!。」


マリス王女は元気よく挨拶する。


「まあ、王女様でしたのですね。申し遅れました。私は西方大陸からきました。地母子龍の鴛月乃琴夜那姫(おしつきのことやなひめ)と申します。琴(こと)とお呼び下さい。」

ギャ!?

(龍!?)


俺は天女姿の女性の言葉に竜瞳を見開き驚く。

まさか西方大陸に住むと言われている龍族にこんな早くもお目にかかれるとは思わなかった。確かに龍族特有の角はしているが。


「連れとはぐれてしまい。途方にくれていたのです。暫く歩きなれてなかったせいで足を痛めてしまって。」


地母子龍の琴さんは辛そうに足を擦る。


·········

このまま彼女を放置できない。

俺は彼女の姿が銀晶竜のソーラさんの姿にタブって見えた。


出来れば自分の背中に乗せたいけれど。今の俺の竜の背中にはマリス王女の先約が入ってる。王女様の護衛を任せられている立場ここでほっポリだすわけにもいかない。しかしこのまま足を痛めている地母子龍の琴さんを見過ごすわけにもいかないし。


う~~ん悩ましい~~。

俺は競めぎあう二つの問題になまやしげに悩む。


「ライナ。この人、ライナの背中に乗せてあげて!。」

ギャ!?

(えっ!?)


突然俺がなまやしげに悩みの迷走中に背中に乗っていたマリス王女が発言する。


ギャアギャア

(いいのですか?。)

「困った人は助けてあげなさいと姉様にも母様にもいわれているし。いいよ!ライナ。」

「そんな·····王女様の手を煩わらせるわけには····。」


流石に地母子龍の琴さんも王族の騎竜に乗せて貰うなど申し訳ないと思い遠慮しようとする。


「いいの!私、ライナに沢山迷惑かけたから。だからこの龍の人を乗せてあげて。」

ギャアギャア·····

(マリス王女様·····)


あんなに我が儘だったマリス王女様がここまでいいこに育つなんて。俺は内心竜眼にうろこである。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアギャアラギャアギャアギャア

(解りました。そういうことでしたら琴さん。私の背中にお乗り下さい。)


俺は竜長首を下げ。身をを低くくする。

マリス王女は俺の背中から降りる。


「本当に宜しいのですか?。」

ギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアギャア

(はい、ここはマリス王女様のご厚意と思ってどうぞ。)


遠慮する地母子龍の琴さんに俺はマリス王女様の親切でからといって騎乗を促す。


「そうですか·······。ではお言葉に甘えさせてい頂きます。」


する

琴さんはおずおすとぎこちなしげに俺の背中にゆっくりと身を下ろす。

むにゅう♥


ウホッ!

乗る拍子に琴さんの天女服の服の下からこぼれるたわわな膨らみが俺の背中に押し付けられる。


う~ん、素晴らしい‼。

女難の日或いは厄日かと思われたいたけれど。こんな役得に出逢えるなんて。今日は苦楽の日なのかもなあ~。

西方の龍の人化した姿の胸の膨らみを味わえたのだから今後きっと良い御利益があるかもしれない。この異世界ではどうだかしらないが。自分の世界では龍の夢を見るだけで縁起もののされているのだ。

ただ、何か琴さんの胸の感触がとても懐かしく感じるのは何故だろう?。

琴さんの胸を背中に当たった時、何かずっと前昔からこんなことがされていたようなそんな錯覚を覚えるのだ。

地母子龍の琴さんとは面識も無く。初対面のはずである。なのに琴さんの胸の温もりが俺に懐かしさも既視感を与えてくる。


地母子龍の琴はライナの背中に乗ると優しげな眼差しを浮かべ。跨ぐライナの背中を優しく掌で擦る。


「背中、大きくなりましたね·······。」


地母子龍、琴の発した言葉は何処か遠く離れてしまった肉親を思わせるような深みのある親しげな言葉であった。



ギャ!?ギャギャア?ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャギャア

(え!?そうですか?。ノーマル種ですからサイズ的にも小さい方だと思うのですけど。)


俺はボソッと発した琴さんの言葉に返事を返す。


「いいえ、そんなことはありませんよ。立派でとてもとても逞しい背中です。見た感じとても気苦労したと思われます。それでも絶え間無い努力でその道を切り開いたそんな背中しております。」


背中だけでそんなことまで解るのだろうか?。

男は背中で語るみたいなやつかなあ?。

龍だからそんな特殊能力を秘めているのかもしれない。



気苦労か········

確かにアイシャお嬢様の騎竜となって。かなり苦労はしまくっていたような気がする。レース出場したりお金を稼いだり。色んな癖のある竜、騎竜乗りと闘ったりレースしたり。今思えば本当に色々あった········。


俺は琴さんの言葉で少し昔を思い出してしまう。


「見つけたぞ!」


物思いに耽っていたが突然の怒鳴り声に俺は我に戻される。

怒鳴った方向に竜瞳の視線を向けるとあのマリス王女様を誘拐しようとしていた人攫いの三人組が立っていた。


ええーーーこんなとこまで追ってくるのかよ~!。

俺はゲンナリした竜顔で人攫い三人組を見つめる。まさかここまで追ってくるとは思わなかった。西地区で待ち伏せしているとおもいきや東地区にいるんだもん。

ここ学生が学びにくる学舎の敷地だろ?。ここの治安どうなっているんだよ。

騎竜乗りや竜騎士や騎竜が通うシャンゼルグ竜騎士校だ。セキュリティは万全のはず。なのにこうも人攫いが現れるなんて。もしかしたらここの学園の生徒や騎竜が強いからセキュリティ強化する必要性がないのかも。それはそれでセキュリティ甘くないか?。


「堪忍しろ!ノーマル種!。」

「俺らを馬鹿にしたことを後悔させてやる!、」

「ノーマル種。アブノーマルの時間だ!。」


何か人攫いの三人組の趣旨が変わっているような気がするんだが。それにしても不味いなあこの状況。今逃げ出そうにもマリス王女様を下ろしている状態だし。足を痛めている琴さんを背中に抱えたままだ。逃げることはできてもアイツらに逃げる隙を与えさせられるとは思えない。矢張ここは実力行使でいくしかないか。王都でノーマル種が人間に危害を加えることに問題なるのではないかと心配していたけど。そんな悠長なこと言ってられなくなった。

マリス王女様と龍族の琴さんに危険に晒させるわけにもいかない。覚悟を決めよう。


俺は人攫い三人組を前にして。両の三本の竜の鉤爪を開き。爪を研ぎ澄まさせる。

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