第278話 責めと受け
びゅるるるるるる~~~~
目の前の北地区の塀塔にデコに伸びた突起物をはやす竜とフルメタルボディに身を包む三竜騎士が立ちはだかる。
はあ~何でいるんだよ~。
ライナはゲンナリとした竜顔でペアの竜騎士と騎竜を見る。
いや、いてもおかしくもないけどさ。最後の最後で待ち構えてるって何なの?。
騎竜乗り科の人達もそうだけど。真面目にレースしろよ!ほっんとっ趣旨変わってるがな。
目の前でデコに立派な突起物をはやす竜にライナは冷めた竜瞳の視線を向ける。
「ライナ·····ごめん。私、今全力で闘えないかも?。」
前の騎竜乗り科の戦闘でアイシャお嬢様はかなり体力と魔力を消耗している。アイシャお嬢様は俺の背中の上で弱音を吐く。
俺とアイシャお嬢様も騎竜乗り科の集団戦闘でかなり疲弊していた。レースで連戦するのは当たり前だが。あくまでレースは先にゴールに到着するのが目的であり。戦闘は二の次である。本来なら戦闘しながらゴールに到着するのがセオリーだが。三竜騎士や騎竜乗り科の集団には決着つくまで戦闘するしかなかった。しかも三竜騎士に関しては建国記念記念杯のレースを利用した決闘故に最後まで戦闘を行わなくてはならない。
レースなのに殺伐しすぎだよ。全く····
ギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャガアガギャアラギャ
(奇遇ですね。アイシャお嬢様。俺も闘う気力がほぼないです。)
正直これ以上闘いたくない····つうか闘えない。
体力気力も底をついているのだ。
長期戦はほぼ無理である。短期決戦で望むしかない。
竜騎士科の学年最強である三竜騎士にそれで挑むのは無謀だろうがやるしかない。
『見ろ!ネラー。ライナが学園の三竜騎士に挑むようだぞ。』
「そうか······。」
北地区でフラッグ回収地点の番人の役割を担っていたのは竜騎士団の副団長ネラー・レヴォーグこと相棒の副竜団長ジョーである。
建国記念杯の警護も兼ねてフラッグの番人として参加しているのである。
『何だ?つれないなあ。もうちょっとやる気を出したらどうだ?。』
相棒が乗り気でないことに副竜団長であるジョーが不満を漏らす。
「やる気を出したらどうだだと?。それはこっちの台詞だ!!。フラッグの番人がどういうものか解っているのか‼️。お前はただフラッグ回収しにくる生徒の騎竜にほぼ殴られにいってるだけだろうが!。全然フラッグ守る役目を果たしていない!。普通にヤられまくっては生徒にフラッグを回収されまくっているだろうが!。解ってんのか!。」
副団長ネラーは溜まりに溜まった鬱憤、ストレスを相棒であるジョーにぶちまける。激しくジョーを叱りつける。
ジョーはフラッグを奪取しにくる生徒の騎竜にほぼ特攻しながら向かってゆき。そして次々に戦闘を仕掛けては殴られまくっているである。お掛けで塔の防衛になっておらず。生徒達からはフラッグが回収されまくっているである。全然塔の番人として役目を果たしていないのである。
『何を言ってる?。生徒と騎竜達の熱い血潮を受け取るのも先人である我等の務めだろうに。』
ジョーはキラッとどや顔で殴られまくって出来た血みどろの竜顔を戦場で負った傷みたいに誇っていた。
ああ·····こりゃあ駄目だ····
全然趣旨を理解しようとしていない······
副団長ネラーはガクッと肩を落とす。完全に相棒であるジョーの説得を諦める。
『それよりライナ達の熱き血潮の闘い始まるぞ。』
熱き血潮って····あのノーマル種と騎竜乗りの乗り手。なんか疲れているようにみえるがな。
副団長ネラーはとノーマル種とその騎竜乗りの乗り手が外から見ても疲弊しているように見えた。
「自己紹介が遅れた。俺は竜騎士科三竜騎士の一人二年のラザットの・バラッカスだ。そしてこいつが俺の相棒、レア種、激突竜ヘンガンだ。」
フルメタルボディの鎧に身を包んだ角刈り頭の屈強な男が自己紹介をする。
「マーヴェラス伯爵家の娘アイシャ・マーヴェラスです。そして私の相棒ノーマル種のライナです。」
アイシャお嬢様が自分と俺の自己紹介をする。
「正直ここまでくるとは思っていなかったぞ。放送は聞いていたが。まさか三竜騎士のジェローム・アドレナリンを倒すとはな。相棒の騎竜である童帝竜チェリーボーイも一筋縄では行かない相手だったろうに。正直感服した。」
その後に騎竜乗り科の集団戦闘があったんですけどね·····。
どうやら目の前の三竜騎士は俺達が騎竜乗り科の多勢に無勢の戦闘を行ったことを知らないようである。確かに放送には流れなかったようだが····。
あんなに激しい戦闘したのに主役である学園最強の二人と二匹にスポットをおいたおかけで。俺とアイシャお嬢様が闘いが蚊帳の外というかなかったことにされているのは少しい寂しい気もする。
『ノーマル種。』
突然北地区の塀塔の建物が後ろに見える前で黙っていデコに長い突起物をはやす竜が俺に声をかける。
ギャアラギャギャア!
(ノーマル種ライナだ!。)
『失礼、ノーマル種ライナ。お前に一つ問う。』
ギャア?
(何だ?)
真剣な真顔な竜顔で目の前の激突竜ヘンガンは俺に尋ねる。
「ノーマル種ライナ。お前は責めか?受けか?。」
ギャ?
(はっ?)
俺は突拍子のない問いに一瞬思考が固まる。
『責めか受けかと聞いている····。』
もう一度聞かれる。
···········
一体何を言っているんだ?この竜(ドラゴン)は。
何の脈絡のない問いに俺は困惑する。
だが相手は至って真面目である。
···········
ここは真面目に答えた方がいいのだろうか?。
ライナは深く考える。
····ええと、つまり···責めが攻撃で。受けが防御っていうことかなあ?。ならば········
俺は考え考え抜き。導き出される答えを静かに激突竜ヘンガンに返す。
ギャアラギャギャ·····
(責めだと思います······)
『そうか·······。』
激突竜ヘンガンは何か深く納得した様子で頷いていた。
この答えで良かったのだろうか?。
良く解らない。
『責めはいい·····。我が激突竜という種族はいつも戦闘では責めて責めて責めまくる。そういう戦闘スタイルをしていた·····。』
ギャア····
(はあ·····)
本当に一体何の話をしているのだろうか?。
全く検討もつかない。
激突竜ヘンガンと言う竜は何処か遠目しながら黄昏ていた。自分の世界に入っているとも言える。
『だが責めて責めて責めまくる我が竜生でも時おりこう想う時がある····。』
?
『たまには受けもしてみたいっと······。』
ギャアラギャギャギャア‼️ギャアラギャガアガアギャアラギャギャアラギャギャ‼️
(だから一体何の話だよおーっ‼️。レースの!戦闘の話をしてんじゃねえ~のかよ‼️。)
俺は一瞬背中に身の毛がよだつ程の悪寒を覚えた。俺の本能が告げているのだ。この竜はアカン奴だと。関わっちゃいけないタイプだと。
『お前が我が受け足りうる存在か見定めさせてやろう!。』
くいくいと激突竜ヘンガンのデコに伸びた突起物が前後にピストンする。とてつもなく気持ち悪い動きをし始める。
ギャアギャギャ!ギャアラギャギャ!ギャアラギャギャア!ギャアラギャギャ!
(いえ、結構です!。お断りします!近寄らないで下さい!。気持ち悪いです!。)
本当の意味で早々にこの竜とは決着つけなくてはならない····。でなければ本気で色々とヤバい。アイシャお嬢様にも悪影響しか及ぼさない。
それほどにこの竜の変態度が秤知れないのである。
「相棒が失礼した。俺の相棒は少々·····いや、大分あれなんだ·····。」
激突竜ヘンガンの主人である竜騎士ラザット・バラッカスは相棒の行為に申し訳なさそうに非礼を詫びる。
相当相棒のことに頭を悩ませられているようだった。
「いえ、ライナも似たようなものですから····。」
アイシャお嬢様はそう言葉に返す。
ええ~~!?俺、あれと同類なの?。
正直あそこまで酷くないと思うんだけど····
正直変態加減さじ加減に関して彼方の方が断然上のような気がする。
同じ分類にされるのはちょっとショックである。
三竜騎士のラザットと激突竜ヘンガンを見るとあることに気付く。
ん?あれ?ペアの相手がいない?。
よく見ると三竜騎士ラザット達にツーマンセルのもう一組のペアが見当たらなかった。
本来なら三竜騎士にも建国記念杯のツーマンセルのペアの相手がいる筈である。
ギャアラギャガアガアギャアラギャガアガアギャア?ギャアラギャガギャ?
(あの、ツーマンセルのペア相手がいないですけど?。どうしたんですか?。)
俺は疑問をラザット達に投げ掛ける。
「ああ····俺のペアは竜騎士科の女子だったんだが。ただの数合わせで頼んだけの相手だったが。何故だが突然胸を抑えて。気分が悪いと早々にリタイアしてしまったのだ。かなり震えていて。恥ずかしそうに頬を染めながら何処か行ってしまった。女子とは良く解らないものだな。」
ポリポリとラザットは不思議そうに角刈り頭をかく。
じぃぃぃぃぃぃぃ
ギクッ!
ギャ ギャアラギャガアギャ····
(そ、それは····さ、災難でしたね····。)
背中に乗るアイシャお嬢様の突き刺さる視線が痛い。
う~ん、俺が悪いわけじゃないと思うんだけど······。
「まあ、一組になってもゴール到着すると失格になるだけで問題はない。普通にレース中の戦闘は行えるしな。俺らの目的はあくまでもレースを利用した決闘だからな。このまま続けさせて貰う。」
出来ればこのまま失格になってリタイアしてくれれば良かったんですけどね·····。
体力面、気力面もそうだけど。正直あの激突竜とかという竜とはぶっちゃけ闘いたくない。
激突竜ヘンガンは興奮したかのようにくいくいとデコに伸びた突起物を前後にピストンさせていた。ていうかいつまであの動作し続けてるんだよ!。キモいわ!。
真面目に主人である三竜騎士のラザットが話しかけているのに相棒の騎竜が変な動きをするから格好がつかない。
異様な光景である。
「アイシャ。私達は後ろで控えていますね。」
『私達も加勢したいけど。正式な決闘だしね。ペアならともかく彼方は一組だし。』
「うん。解った。ありがとう!。オリン、フェニス。」
ツーマンセルのペア相手である一人と一匹が後ろにいってしまう。出来れば彼女達にも手伝って欲しかったけど。決闘の手前そうならざる得ない。
「さて、始めようか····。」
ラザットがスピアーを手に持つ。
確か三竜騎士の一人ラザットと激突竜ヘンガンの戦闘スタイルはほぼ騎士のようなジョストのような闘い方だったな。馬上槍試合と言うか。馬が竜に変わったくらいで突撃特攻スタイルである。激突竜というくらいだから突撃が得意なのが当たり前なのだが。
「ライナ、これからどうする?。」
アイシャお嬢様は今後の戦い方を相談する。
ギャアラギャガアガアギャアラギャギャ?
(アイシャお嬢様。千羽鶴は使えますか?。)
「あまり魔力が無いから。使えたとしても二発程度だよ。千羽鶴は精霊だけじゃなく。魔力も消費するから。」
ギャアギャ·····
(そうですか·····。)
アイシャお嬢様の千羽鶴で激突竜の特攻を抑え込もう思っていたが。連発出来ないなれば多用出来ないな。他にも激突竜の突撃を押さえ込む方法を考え無くては····。
幾つかの激突竜の突撃の対策はあるにはあるけど·····。
「狂姫の再来と言われた力を見させて貰うぞ!。」
ラザットはヘルムを被り。竜騎士のフルメタルボディを着用したごつい身体を身を低くさせ。スピアーを前に突き立てるような構えをする。あれが激突竜と一緒にする特攻の構えなのだろう。アイシャお嬢様も負けじと身を低くし。二丁のブーメランであるブルーメロイ(蒼の美神)を低姿勢に翳す。
『ライナ!俺の極上の逸物を喰らわしてやるぜ!!。』
くいくい
激突竜ヘンガンはデコに伸びた突起物を前後に動かし威嚇する。
正直に本当に気持ち悪い動きである。
ギャアラギャガアガアギャアラギャギャアラギャギャアラギャギャ!
(だったらこっちはお前のその立派なイチモツをへし折ってやるわ!。)
「ライナ、下品だよ····。」
アイシャお嬢様の冷めたお叱りの突っ込みとともに二匹の竜(ドラゴン)は今正に激突する。
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