第273話 多勢に無勢
「オホホホホ‼️。またお逢いしましたわね。アイシャ・マーヴェラス。」
銀髪くるくるカール髪を両耳から垂れ流す令嬢が勝手に挨拶をする。
彼女を飛び越えた先には西地区のフラッグ回収地点である塀墱がそびえ立っている。すぐめとはなの先である。
ギャギャ?ギャアラギャギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャ
(誰です?あのお嬢様。なんかとてつもない既視感を感じるんですけど。)
どう見ても昔のマーガレットお嬢様のような高飛車な性格を醸し出している。
正直ああいうタイプのお嬢様とは関わりたくない。何かの拍子で開花(性癖)しまいかちかねないからである。内包の根底に見え隠れする性癖を目覚めさせるほどたち悪いものはない(経験談)。
「エレンセ・エレフォニアバビィリオンという人よ。女子寮でライナの代わりになる騎竜を用意すると言ってしつこくて。私がいらない!と言っているのに!。私の騎竜はライナだけなんだから!。」
ぷんぷん
アイシャお嬢様はエレンセ・エレフォニアバビィリオンという令嬢にたいしてかなりのご立腹のようだ。
話からの流れからして彼女の善意(お節介)にアイシャお嬢様の相応しい騎竜を用意すると迫ってきて。アイシャお嬢様はそれを断固として断り。拒否したという流れらしい。
大きなお世話見たいな感じである。
「このレースで貴女を倒しますわ!。私のお誘いを断ったこと後悔させてあげますわ!。オホホホホ‼️。」
エレンセ・エレフォニアバビィリオンという令嬢は誘いを反故にしたことを根に持っていたようで。お礼参りしに来たということだろうか?。
にしても規模がでかくないか?。どうみても取り囲んでいる騎竜に乗った令嬢生徒達は騎竜乗り科の全学年が集まっているような気がする。取り囲んで数もどうみても1学年クラス規模ではない。シャンゼルグ竜騎士校の騎竜乗り科の全学年クラスが集まっているようだ。
「何をしているのですかっ!?。貴女達はっ!。」
西地区の塀墱を守る番人をしていたのは臨時で薔薇竜騎士団候補の特待生の顧問をしている獣っ娘のミリス・ニーデルだった。騎竜乗り科令嬢生徒達が皆他校ペアを包囲する異様な姿に激しく憤怒する。
「止めないで下さい!先生!。これら私達騎竜乗り科の問題なのです!。」
一人の騎竜乗り科の令嬢が激しく反論する。
「私達はこのノーマル種の乗り手の他校生のせいでどれだけ竜騎士科から苦渋、辛酸を舐めさせられたことか!。」
「私達騎竜乗り科は今ここでこのノーマル種の騎竜乗りを叩き潰さなきゃきがすまないのです!。」
「だからといって誇り高きシャンゼルグ竜騎士校の騎竜乗り科が寄ってたかって。他校の騎竜乗りを全生徒で攻撃するとは何事ですか!。恥を知りなさい!。」
ミリスはノーマル種の乗り手を倒すために集まっただろう騎竜乗り科面々を激しく叱り付ける。
たった他校の騎竜乗りの為に騎竜乗り科の全学年クラスの戦力を注ぎこむなど過剰戦力と言われてもおかしくはない。礼節と規律を重んじる薔薇竜騎士団の一員だからこそ見過ごすわけにはいかなかった。
「くっ···········。」
「··········。」
「·········。」
集まった騎竜乗り科の令嬢生徒達はぐうも出ないようで言い返せない。
何故ならミリスの言っていることは正論だからである。これ程の数を一人一匹のペアにぶつけるなど普通のレースではあり得ない。矢張卑怯と言われても致し方がない。
『お待ちくださいませ。ミリス様。』
ミリスの反論に口を出したのヒヤシンス色の鱗に覆われた竜であった
陣形を組むような形で後方で静かに静観していた一匹の竜である。
「軍師竜ゼノビア····。これは貴女の仕業ですか?。ということはルベル・フォーゲン。貴女もこの件に関して荷担していますね。」
ミリスは厳しげな視線を軍師竜ゼノビアに乗るルベル・フォーゲンに向ける。
ルベルはばつが悪そうに視線を横に逸らす。
本来一般の騎竜乗り科の生徒と薔薇竜騎士団はそれほど面識はない。しかしルベル・フォーゲンだけは別である。軍師竜ゼノビアの騎竜にするこのフォーゲン家だけは特別な家系なのである。フォーゲン家は密偵の役目を担った特殊な竜騎士の家系なのだ。
表向きは騎竜乗り系統の家系とされているが。実際は竜騎士系統の貴族である。フォーゲン家という貴族は表舞台にでず。陰から竜騎士を支える役目を担っているのだ。
フォーゲン家が軍師竜という特殊な騎竜を所有しているのもそれが要因となっている。
『主人があのノーマル種の乗り手を倒したいお望みなので私はそれに助力したまででございますよ。』
軍師竜ゼノビアは何の悪びれもなくそうミリスに進言する。
「これだけの徒党組んでですか?。」
『ええ、でなければあのノーマル種は倒すことは不可能だと私は判断しました。現にあのノーマル種の乗り手であるアイシャ・マーヴェラスとそのノーマル種ライナはかの有名な竜騎士科1学年最強である三竜騎士の一人ジェローム・アドレナリンを倒しました。過剰戦力と思われますが。私としてはまだまだ足りないくらいですよ。』
「貴女も同じ意見ですか?。ルベル。」
薔薇竜騎士団であるミリスの厳しげな視線を乗り手であるルベルに送る。栗色の密編みのルベルはびくっと反応する。
『み、ミリス先生。貴女と言えども私達の闘いに口出ししないでもらいたい!。ここにいるもの達は皆全てあのノーマル種の乗り手にたいして何かしらの意義があるもの達です!。私達はとある覚悟のもとでここにいるのです!。薔薇竜騎士団員である貴女でも私達を止められない!。』
ルベルは意をを決して強くミリスに反発する。
優等生であるルベル・フォーゲンが初めて講師に抗議したのである。
そんな主人の態度と成長にひそかに軍師竜ゼノビアは悦ぶ。
『ミリス、もうよせ!。』
「ゾレ?。」
ミリスの騎竜である獣王竜ゾレは希少種の獣型の竜である。獅子の容姿をし。日本の営利な角を持ち。蝙蝠のような大きな翼をはやしている。
『あいつらのそれなりの覚悟を決めて前に立ったと言うことだ。なら部外者である俺達が口を出すのは野暮ってものだ。』
「し、しかしこの状況はあまりにも多勢に無勢です!。卑怯以外何ものでもありません!。」
『俺からしては軍師竜は知略や戦略は長けた竜だと聞く。卑怯な手段を取らないわけではないが。意味のない姑息で卑怯な策はとらない筈だ。とういうことはあのノーマル種とその乗り手はそれだけの相手だと言うことだ。』
「でっすが·····。」
相棒の獣王竜ゾレの言い分に薔薇竜騎士団員で臨床講師のミリスはまだ納得できない。
卑怯とか姑息とか一言多いですねえ····。
軍師竜ゼノビアはヒヤシンス色の冷めた竜顔を浮かべる。
ま、しかし、数で押さなければ勝てる可能性もなかったのもまた事実。王都の実況放送の情報で確信しました。
どうやら彼女の情報は正しかったようですね。
精霊を使役しますか·······。
正直、軍師竜ゼノビアは弩王竜ハウドのライナが精霊が使役できるという情報を半々くらいにしか信じていなかった。
しかし本当に精霊を使役できるとなると。作戦、戦略も大幅に変えなくてはならない。その為に臨機応変に対応できるよう手駒の数を増やしたのです。今だけ準備万全であったことに感謝しなくてならない。手数が少なければ少ないほどそれだけ対処対策の手段も減る。
「オリン。騎竜乗り科のよしみとしてここは退きなさい!。私達そのノーマル種の乗り手だけに用があるのですから。」
騎竜乗り科の一年のクラスメイトである令嬢生徒が同じクラスであるオリン・ナターシスに忠告する。
「そんな理由で私達が退くと思っているんですか!、見くびらないでください‼️。」
『そうよ!。私達はツーマンセルのペアを組んでいるんだから仲間を売るような真似をするわけないじゃない!。』
ぴんぴんぴんぴん
鶏冠にある三本のオバ○のようなアホ毛が逆立ち。メラメラと鳳凰竜フェニスの身体がオレンジの炎の身が包まれる。
鳳凰竜は翼を広げ臨戦態勢をとる。
「仕方ありませんね。作戦通りにいきます。」
「はい!。」
包囲していた騎竜乗り科の一部がオリンが乗る鳳凰竜フェニスを取り囲む。
「これは······。」
オリンは取り囲む騎竜の竜種に険しげに眉が寄る。
「そう、ルベルの軍師竜ゼノビアの支持よ。オリン、貴女達が私達の行為を邪魔することを予測していたからこそ。それに対応するために対鳳凰竜対策を立てていたの。ここにいるのは鳳凰竜が苦手とされる氷竜族や特殊個体の希少種よ。悪いけど貴女達の相手は私達がするわ!。私達の騎竜乗り科の真正な闘いを邪魔させない!。」
鳳凰竜フェニスを取り囲んだ騎竜達は何れも鳳凰竜の能力にたいして苦手とされる竜である。
「真正な闘い?····笑わせないで。よってたかる戦闘が真正なわけがないでしょうが!。」
オリンは激昂する。
『やってやるわ!。返り討ちにしたる!。』
ばぁさ
鳳凰竜フェニスはメラメラとオレンジの炎を滾らせ。炎の翼を広げる。炎の毛が逆立つ。
一年の優等生であるオリンは相棒、鳳凰竜とともに同じ騎竜乗り科のクラスに反逆する。
さて、どうやらオリンお嬢様は身動きとれないようだ··。
ライナは目の前で陣形を組むかのように列をなす騎竜乗り科の軍勢を見据える。
これだけの数を戦力の分断に使わないわけないだろう。
建国記念杯はツーマンセルのレースであるが。
これではペアの助力は望めない。
竜騎士団並みの数をアイシャお嬢様と俺一匹でさばかねばならない。
はあ····まさか三竜騎士の戦闘終えて。次に騎竜乗り科の軍勢と戦闘しなくてはならないなんて。どんだけの運が悪いんだよ。
今日はきっと厄日なのだろうなとライナは思った。
ギャアラギャアギャアラギャア?
(アイシャお嬢様。大丈夫ですか?。)
俺に背に乗るアイシャお嬢様に声をかける。
アイシャお嬢様のことだからこの数を前にして臆することはないだろうけど。
できれば臆して欲しいのだが。学園長(狂姫)みたいになって欲しくないから。
「うん、大丈夫だよ。ライナ。どういうふうにあの陣形を崩すか考えていたの。千羽鶴ならなんとかいけると思うんだけど。」
ギャギャアラギャ
(そ、そうですか····。)
どうやらアイシャお嬢様は俺の背の上で冷静に相手のことを分析していたようである。
それはそれで逆に怖いんだけど····。
「ナイース!ナイースよ!。騎竜乗り科やるじゃないの!。まさかこんなところで騎竜乗り科達が待ち伏せしてると思わなかったわ。フォーゲン家の軍師竜が出たとなればあのノーマル種はもう終わりよ!。軍師竜は知略や戦略に長けた希少種。例えあのノーマル種が変な力を使おうとも軍師竜の知略、戦略の戦法にはかならないわ。あのノーマル種は完全に終わりね!。これでマリアンも目を覚ますわ!。」
遠くから観察していた薔薇竜騎士団候補の特待生シャロム・フェネゼエラはライナ達が騎竜乗り科の軍勢に遭遇したことに歓喜する。
ノーマル種の相手があの騎竜乗りよりも騎竜の扱い方が上手いとされる軍師竜である。勝ち目なんてない。
『ライナ様········。』
白薔薇竜のマリアンは潤んだ白い竜瞳で多勢にに立ちか向かおうとするライナの勇姿を強く見守る。
「さあ!アイシャ・マーヴェラス。観念なさい!。ここが貴女の墓場になるのですわ!。オホホホホ!オホホホホホホ!。」
エレンセは口元に手をそえて高笑いしながら勝ち誇る。
うん、どうみても昔のマーガレットお嬢様とキャラ被るな。
ライナは目の前の銀髪くるくるカール髪を両耳を垂れ流すエレンセ・エレフォニアバビィリオンという令嬢に冷めた竜瞳を送る。
『どうも自己紹介が遅れました。わたくしエンペラー種、大帝竜アルデンと申します。以後お見知りおきを。』
ギャラギャ
(あ、どうも)
ペコッ
エレンセ・エレフォニアバビィリオンを背に乗せる高貴そうな白磁色の鱗に覆われた騎竜が自分達に自己紹介の挨拶をしてくれる。
俺もなぞって頭を下げてしまう。
やけに物腰丁寧な竜だな。
貴族特有の差別意識はないようだ。
普通にノーマル種の俺にたいして丁寧に挨拶してくる。
『ですが····,エレンセ様の寛大な親切を無下にするなど言語道断です。己の分を弁えぬ愚かものに我が力を持って鉄槌を与えましょう。虫は生ゴミに。汚物は廃棄所に。そしてノーマル種は家畜小屋に入れる方が相応しい。』
ブチッ💢
前言撤回、完全に俺らを見下している。
俺はエレンセ・エレフォニアバビィリオンの騎竜、大帝竜アルデンをぶちのめすことに決めた。
スッ
「武装解放‼️。」
パアアッ
2つよドラグネスグローブの手の甲にある宝玉から蒼白い光を放ち。二丁のブーメランがあらわれる。
パシッ
アイシャお嬢様は女神の装飾が施された蒼白いブーメラン、ブルーメロイ(蒼の美神)を両手で掴み。身を低くし身構える。
むにゅう♥️
それと同時にアイシャお嬢様の2つ柔らかな感触が俺の背中にあたる。
「行くよ!ライナ!。」
ギャ!ギャアラギャア!
(はい!アイシャお嬢様!。)
俺ありったけの気を練り込む。この段階で竜牙烈波掌を撃っても無意味だと判断する。数百人くらいほどの団と呼べるほどの数が目の前にいるのだ。まとめて闘うなら矢張精霊を利用するしかない。地面にスフィアマナンが沸いていたら早々に方がつくだろうが。生憎スフィアマナンが沸いているコロシアムには距離がある。あの龍を出す技を出すにはスフィアマナンが沸いている地面に自分の脚をつける必要性があるのだ。今の段階でこの技を放つことはできない。
『さて、詰めと行きましょうか····。』
ニヤリッ
軍師竜ゼノビアのヒヤシンス色の竜口が不気味な笑みを浮かべる。
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