第296話 ドラペリ入りま~す!



「ねえ、レースの話聞かせて。私、ノーマル種である貴方がどうやって一般のレースを勝ち上がったのか知りたいわ!。」


角を生やしたグラマー姿の美華竜カトレイヌは興味津々に俺に聞いてくる。彼女は開放的というかサバサバした性格で。普通に身体を密着しては。おかげでドレスから盛り上がる膨らみが俺の竜腕にあたる。ええ〰最高にええ〰そうですか?。


「それは私も聞きたいですね。ライナ様の活躍聞きたいですわ。」


嬢王竜のイリオナさんは何かいつの間にか俺を様付けしている。俺、そんなに偉くないんだが。もしかして王族のペットであることが原因か?。王族のペットってそんな高い地位にあったっけ?。

ツルン、ベロン、ゴロンは新しく来た他のドラ嬢で盛り上がっている。さっきドラ嬢のナンバー1とナンバー2を一人占め(一匹占め?)されて憤慨していたけど。新しく入ってきたドラ嬢にお酌されて上機嫌になっている。

俺はアイシャお嬢様と一緒に活躍したレースの数々の話を彼女達に話した。

ドラ嬢の彼女達はそんな俺のレースの話を嫌な顔せず聞いてくれる。



「そんじゃ、酒でたいぶ身体も暖まったことだし。ここで一丁景気づけに言っちゃおうかなあ?。」


ジョーは何かを始める気なのか。気取りしながらおちゃらける。


ギャアラギャギャ?

(何を始めるんだ?。)


ジョーが何始めるのか解らず俺はは長首傾げる。 


「まあ、見とけ。ジョー副団長の見得の真骨頂よ。」


ゴロンがそう俺に伝える。

見得の真骨頂ってなんだよ。

俺は内心そう突っ込みを入れる。



「ドラペリ行っとくう?。」


ハイテンションでジョーはドラ嬢に向かって酒の種類だろうか。大声を張り上げて問いかける。


「「「行っちゃおーーーー!。」」」


それに乗っけてドラ嬢達が一斉に元気よく腕を上げる。


「ドラペリ1本!。」

「ドラペリ1本入りま〰す!なの。」


「あいよ、ドラペリ1本!」


奥にいるマスターが景気よく返事を返す。


ギャアギャ?

(ドラペリ?。)

「ドラペリを知らねえのかよ!。ドラペリは竜族に伝わる最上級で最高級の酒なんだぜ!。ドラペリ一本で人間の邸一件買える位の値段がする酒なんだぜ!。」


ツルンがドラペリというお酒の説明する。

ギャラギャアガアギャアギャ!?ギャアラギャアガアラギャアギャアラギャア!?ギャアラギャアギャアギャ

(おいおいおい、大丈夫なのかよ!?。邸一件買える酒なんて。)


どうみても竜騎士団の騎竜のボーナスで買えるような代物ではない。竜騎士団の騎竜の月給がいくらか知らんが。


「安心しな。俺達はこの店の常連で。コツコツそのドラペリ買うためにお金を貯めてたんだよ。」

「俺達とジョー副竜団長がカンパししあってやっとドラペリ買える位の値段まで到達したんだぜ。今日はその記念日だ!。」


ツルンとベロンは自慢するようにドラペリという高級酒の買う為に貯めていた話をする。

ギャアギャ?ラギャアギャアギャアラギャアギャアギャラギャアギャアガアギャア

(いいのかよ?そんな大層な酒を俺なんかに奢って貰って。3匹だけで貯めて。やっと買えた酒なんだろう?。)


高級酒を買うためだけにカンパしあって貯めたお金を。俺なんかに奢って大丈夫なのかと正直思ってしまう。知り合って間もないのに。


「いいってことよ。ジョー副竜団長があんたのことを大層気に入っているし。俺達も最初あんたのことを我が物顔で城内をうろついてることに正直気に入らないと思っていたけど。あんたとジョー副竜団長の闘いや。あの人間の女性の一騎討ちをみて。見直したんだよ。だから俺達のせめての償い。」

「気にすんな。」

「俺達のけじめだと思って受け取ってくれ。」


ギャア····ギャアギャアラギャアギャア

(そうか····奢ってくれてありがとな。)


ジョーやツルン、ベロン、ゴロンの本当にイイヤツ(竜)だと解る。王都ではノーマル種なんな格下としかおもわれていないのに。この四匹はこんな俺(ノーマル種)でもわけ隔てなく接してくれる。俺は本当に良い友に巡り合えたのだと実感する。神様に感謝しなくちゃな。

神様と言えば女神アルピス様とは全然連絡とってないな

合同合宿が密度有りすぎて。連絡とることさえ忘れてしまった。後でちゃんと連絡せねば。


ヘクチ!

女神アルピスは小さなくしゃみをする。


「あれ?風邪ですかね?。神は風邪引かないとおもうのですけど。それにもしても豊様はまた全然連絡寄越さないですね。全く、何してることやら。どうせ人間の女性或いは亜人の女性に背中に胸を押し付けられて。うつつぬかしてるに違いありません。」


女神アルピスはまたライナ(豊)が全然連絡寄越さないことに不満をもっていた。



「ジョー、また来てなの。」

「おお、また来るぜ。」


オールナイト人気ナンバー2のドラ嬢綺羅竜コッコネとジョーは店の入口で別れの挨拶をする。



「ライナ様またのお越しを御待ちしております。」

「ライナ、また私に逢いに来てねえー!。」


オールナイト人気ナンバー1とナンバー3の嬢王竜イリオナさんと美華竜カレイヌさんが笑顔で見送る。

ギャラギャアガアギャアラギャア〰〰ふ

(しゅ、主人にそうふだふしてみまあ~す。)


ライナが酔いにまわりながらも二匹に丁寧に別れの挨拶する

主人であるアイシャお嬢様に全面的にお財布を握られているので。次にいつこれるか解らない。というか夜のお店に行ったと知ったら確実に怒られると思う。でもたまに寄りたいなあ~本当に癒されたから。


「おお、俺達もう一件南地区の繁華街で回ろうとおもうが。お前はどうする?。」


ドラキャバ、オールナイトであんなに騒いで飲んだのにジョー達は南地区にある繁華街の店を回るつもりのようである。

ライナはふらふらした竜脚を動かしなら上気したように頬を染め。虚ろな据わった竜瞳の視線をジョーとゴロン、ツルン、ベロンに向ける。

ライナはべろんにべろんに酔っていた。


ギャ~ギッふ。ギャア~ギャアラギャアガアガアギャギャ~ひっくギャアガアガアギャアラギャアギャアガアガアギャアラギャアガアガアギャアラギャアギャ~ひっぷ

(うぃ~ひっく。いんや~、おれはこのままかへふよ。うぃ~ひっく。あふはアひシャお嬢様との騎竜との授業はなひへど。まふぃす様のお世話もあるし。うぃ~ひっく。)


完全に呂律が回らず竜の脚もおぼつかない。完全にライナは出来上がっていた。


「そうか·····城に一匹で帰れるか?。」

ギャアラギャアギャアヘギギャアギャア

(だひじょうぶだひじょうぶ。城近いし。うぃ~ひっく。)


ゆらゆらと竜脚が左右に揺れる。


ギャアギャア~ギャ

(1匹でもだいじょ~V。) 


ライナは三本の鉤爪を器用に使いブイサインを三匹に見せびらかす。

ジョー達はそんなライナの態度に正直内心ウザッと思ってしまう。


「そ、そうか。じゃ、気を付けてな。」

ギャ~!ギャ~ッふ

(うあ~い!。うぃ~ひっく。)


ライナは竜の腕をあげ。おぼつかない竜の脚どりで左右に巨体を揺らしながら帰路につく。

視界がぼやけてぐにゃぐにゃ見えているが華麗に住宅の隙間を通り抜けていく。このままお城まで直行すると思いきや。ライナは明後日の方向へと進んでいく。

どう通ったか解らぬままライナは見知らぬ邸の敷地に脚を踏み入れる。門扉にある金具の柵扉には売家につき立ち入り禁止と看板に書かれていた。そんなことお構い無く。酔いに回り回って出来上がってしまっているライナはそのまま竜の図体をゆらゆら揺らしながら邸の敷地へと入っていく。

ガチャ

そのまま玄関扉を開けてしまい無造作に勝手に入ってしまう。


ギャ~ひっふラギャアガアガアギャアラギャア~

(うぃ~ひっく。帰りました。あひゃしゃお嬢様~。)


ドシドシ ドサッ!


広い邸のホールを堂々と竜脚を踏み入れ。ホール前方の階段前でそのままライナは横になり倒れこむ。邸の玄関扉やホールはノーマル種のライナの入るくらいの広さがあった。ライナはゴロンと寝っ転がり仰向けとなる。

どうやらライナはマーヴェラス邸と勘違いをしているようである。

ギャ~ひぁ

(うぃ~ひっく。)


ぽお

酔って空き家の邸に勝手に不法侵入してしまったライナはそのまま玄関ホール内で寝てしまう。

邸のホール内は人が住んでないのか。邸の棚や花瓶などが散乱し。壁や床にある絵画や絨毯などはボロボロであった。

ぽおっ

邸内のホールに淡い白い光が浮かびあがる。淡い白い光はふあふあと浮かびながらホールのど真ん中で横たわっているライナにていく。

淡い白い光は少しずつ形をなし。白いドレスを着た少女へと変貌する。色というものを全て抜け落ちたように少女の身体は真っ白に透けていた。

白いドレスからこぼれるふっくらとした胸の膨らみを揺れ。静かなホールの階段前で寝っ転がるライナに静かに近付く。


真っ白に身体が透けドレスを着た少女は邸のホールの階段前でふてぶてしく寝っ転がるライナの姿に怒るのでもなく。

ただ静かに語りかける。


『おの····もしもし。』

ギャ ガア?


誰が竜の耳元で呼ぶ声がしてライナは眠たそうに竜の瞼を擦り瞬きをする。

だが、酔って視界がボヤけて白い靄しかみえない。

ギャ〰、ラギャギャ?

(ふぁ~い何でしょう?。)

『お願いがあるのですが。』


白い靄の人物は何か頼み事があるようである。

ギャラギャアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャア~

(うぃ~ひっく。今日は気分が良いから何でもお願い聞いちゃる♥。うえへっへっへっ。)


どっかの酒癖の悪い酔っ払いのような態度をライナはとる。


『ありがとうございます。では今宵明晩に参りますね。』

ギャアラジャ~!ギャギャップ

(あいあいサ~!。うい、ひっく。)


語りかけた白い靄はライナに感謝するとスッと霧のように何処かに消えてしまう。


ぐ~~ぐ~~


そんな様子など関係なく。ライナはそのままそ寂れた邸のホール内で酔いつぶれ眠りこけてしまった。


      ◆◆◆◆◆◆◆◆


「全く何ですか!あなた達は!。いつもいつも録なことしかしませんね!。」

『面目申し開きもありません·····。』(四匹)


薔薇竜騎士団の面々に竜騎士団の四匹はおもいっきり責められ叱られていた。竜騎士団のジョー副竜団長とゴロン、ツルン、ベロンの面々は正座しながら竜の頭を下げ反省している。

ライナを飲みに誘い。王族のペットでもあるライナを勝手に王都につれ回したことを責められているのだ。更に別れたときライナがお城に帰っていないことが発覚し。大事となってしまったのである。

マリス王女が私室にライナがいないことで泣きわめき宥めるの大変だった。メイド隊がお城中探し回ったが全然見つからず。竜騎士団の騎竜の証言でライナがジョー副竜団長達と一緒にドラキャバがいったことが発覚。薔薇竜騎士団から尋問され証言をとったところで。

王都の北地区にある古びた邸に酔いつぶれているところを発見された。

王族のペットとして迎えられたライナを勝手に飲みに誘い。連れ回した挙げ句。別れの際に放置したことを激しく責められてるのである。


「まあまあ、ライナも乗り気だったんですからここは穏便に。」

「お黙りなさい!。」

「あっ、はい······。」


サルベルゴ竜騎士団長は薔薇竜騎士団長アーミットに怒鳴られ大人しく黙る。

竜騎士団と薔薇竜騎士団の上下関係はあるが。それ以前に薔薇竜騎士団長のアーミットの怒り具合が尋常ではなかった。


「これにこりたら王族のペットでもあるライナを勝手に連れまわさないこと。いいですね!。」

『了解しました!。』

『了解です!。』

『了解であります!。』

『りょ、了解!。』


ジョーとツルン、ベロン、ゴロンは元気よく返事をする。


「それで、ライナ様の状態はどうですか?。」

「はっ、まだ酔ったまま眠っております。マリス王女が傍におりますが。暫く起きないかと。」

「そうですか。では暫くライナを安静にさせましょう。」


    シャンゼルグ竜騎士校

       女子寮深夜


「じゃ、準備はいい?。」


オレンジ色の三本のアホ毛がぴんぴんと跳ねる。


「ええ、いいわ。フェニス。アイシャとラムも準備はいいですか?。」

「うん!オッケイだよ!。」

「大丈夫。ホロホスから魔除けのお札も貰ったし。ゴースト対策も万全だよ。」


四人は深夜、女子寮を抜け出そうしていた。教師から外出認可が降りなかったからである。鳳凰竜フェニスが遺跡の亡霊の竜を成仏させられると言っても危険だからだと認可されなかっのである。


「全く!私ならあの遺跡の竜の亡霊を黄泉に返せると言っているのに!。全然話を聞いて貰えないんだから!。」


鳳凰竜フェニスはピンピンと三本のアホ毛が逆立ち鶏冠にきていた。


「仕方ありませんよ。生徒に被害が出ている以上教師の言い分も解ります。」


主人であるオリンが鶏冠にきてる相棒のフェニスを宥める。


「この時間帯なら寮の見回りもいないはずだよ。」

「何かわくわくするね!。」


アイシャは夜、女子寮を抜け出すことが始めてで新鮮であった。

遊びじゃないんだけど内心二人は思う。


「それじゃ行きましょうか。あの竜の亡霊は遺跡にいるはずよ。」


鳳凰竜フェニスの先導のもと三人は竜の亡霊が出没する遺跡へとむかう。



スーー スーー


寝静まった夜、マリス王女の私室のキングスベッドに橫になるライナ。泥酔して今日丸1日目覚めることなく眠りつづけていた。マリス王女はライナの竜の巨体に離れないようにしがみついている。


スッ

突然ライナの竜の巨体がベッドから勝手に起き上がる。しがみついていたマリス王女をするりとすり抜け。キングスベッドから降りる。

ライナの竜の瞳にはまるで生気が感じられず。まるで何かに操られるようにゆっくりと歩みを進める。夢遊病のように城内の歩いていき。何故か城のものはそんなライナの姿に一切気付かない。


ゆ〰ら〰 ゆ〰ら〰


酔っているわけではないが。ライナはそのまま城の北門を潜り。北地区へと竜の脚をのばす。

竜の脚が向ける先は昨日酔いぶれた寂れた邸の方向であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る