第297話 白き少女の願い


『お待ちしておりました。』


ハッ

ライナは我に返ると目の前には見知らぬ寂れた邸のホール内にいた。


自分が何故ここにいるのか?。どうやってここなきたのか検討もつかない。ただただ何故ここにいるのかと自分を困惑している。目の前には透明に透けたドレス着た少女が立っていたというよりは浮いていた。

透けているからドレスの中の肌が丸見えというわけではなく。ドレスと一体化しておりまとめてすけている。しかしドレスの胸あたりが上から見えてもこぼれるほど豊満な胸が見え隠れしている。是非!我が背中にそのドレスの上にこぼれたわわな胸の膨らみを押し付けて貰いたい!と俺は内心渇望する。


『あの?。』

ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャア?

(あ、すみません。ついボーとしていました。ここはどこでしょうか?。)


ライナは気を取り直し白く透けた少女に尋ねる。


『ここは元エルベニース侯爵家の邸です。この通り無人の廃墟となっております。跡継ぎもなく。この邸の主人となるものは病でくなり。この家もまた同じく没落し。朽果ててしまったのです。』


真っ白に透けたドレスを着た少女は何処かもの哀しげな顔を浮かべる。


ギャア、ラギャギャ······

(はあ、それはお気の毒に······。)


俺は素直に透けたドレスの少女に同情する。

マーヴェラス家も没落している家なので他人事ではない。


『気になさらないでください。もう過ぎてしまったことですから····。』


ギャギャア····

(そうですか····)


何か空気がしんみりしてきたな。

本題を聞こう。


ギャアラギャアガアギャアギャア?

(それであなた様はどちら様ですか?。)


身体全身がが透けて透明なので普通の人間でないことは解る。ただこの異世界の常識が俺の常識とは相当かけ離れているので。透けている人間がいてもおかしくない。ちょっとそっとじゃ驚かない。


『申し遅れました。私はサーリ・ヱバン・エルベ二ーズと申します。もじ通りこの邸エルベニース侯爵家の娘でした。今はこの通り未練を残したままこの邸の地縛霊となって留まっております。』

ギャアラギャア

(地縛霊ですか····。)


透明で透けて宙に浮いているとは思っていたけど。もじ通り幽霊のようである。まあ、精霊もいるなら幽霊もいるだろうとは思っていた。ただ転生してお目に掛かれたことはなかった。


『昨日にお願い聞き入れて貰ったので。この邸までお呼びしました。』


どうやら彼女に呼ばれてこのエルベニース侯爵家の邸に来てしまったようである。

何か幽霊に呼ばれたという感じがホラー感があってちょっと怖いなあ。

彼女に取り憑かれていたというわけでもないようだけど。取り憑かれたら取り憑かれたで。その透けたドレスの向こう側にある柔らかな肌の膨らみも感じてみたい!とまたまた内心渇望してみる。


ギャアラギャアギャア?

(お願いとは何ですか?。。)


正直酔っぱらって昨日の記憶はまるっきしない。しかしただおぼろ気に何か約束したようなきもしなくはない。


『お願いとはとある竜の霊とレースをして貰いたいのです。』

ギャギャギャア?

(竜の霊とレースを?。)


以外なお願いに俺は困惑する。

てっきり幽霊のお願いは成仏関係だと思っていた。未練を残しているならその未練をたちきることで成仏できるというのが定番である。サーリさんの未練はレースで勝利することなのだろうか?。或いはその竜の霊とレースに勝つことなのだろうか?。

病で亡くなったといっていたし。或いはレースで勝利出来なかったことが彼女の未練なのだろうか?。

ただレースする相手の竜が普通の竜(ドラゴン)ではなく。竜の霊というキーワードが妙に引っ掛かる。



『ただその竜の霊にレースでもし勝てても。その竜は成仏出来ないかもしれませんが···。』


サーリさんは再びもの哀しげな顔を浮かべる。言葉の中でその竜の霊とは面識があるようである。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアギャアガアギャアギャアギャアガアギャアラギャアギャガアギャアラギャアギャアラギャア?

(解りました。取り敢えず約束したようなので。その竜の霊とレースをしましょう。ただ俺はこうみえてもノーマル種ですよ。話の流れとして貴方は貴族で。相手もまた貴族の竜である上位種だとおもうのですけど。何故俺に声をかけたのですか?。)


エルベニース侯爵家の娘ならノーマル種が上位種にレースで勝てないことは解りきっている筈。なのに何故ノーマル種である俺に声をかけたのか理解できない。


『魂の色で判断しました。』

ギャ···ギャアラギャ·······

(はあ····魂の色ですか·····。)


魂に色というものがあるのだろうか?。魂の色と言えば人魂が思い浮かべる。青白い不気味な色をしている。あれもまた魂の色とも言える。


『貴方の中に7色の輝きをみたのです。』

ギャアギャ?

(7色ですか?。)


一つじゃねえのかよ!と内心突っ込みいれそうになったがサーリさんは大真面目に話しいるので俺は大人しく黙って聞いている。何故俺の魂の色が7色に見えたのだろうか?。精霊のせいか?。俺の使役している精霊は銀氷の精霊含めて7元素いる。ただ光の精霊と闇の精霊は使いこなしていないけれど。銀氷の精霊もまた使いこなしているというよりは技を放つ時に偶然交じるように現れているだけで。100%意識的に使役出来ているわけではない。


『この方なら彼を正気を戻すことができるかもしれないと思ったのです。』


サーリさんは真面目にそう俺に訴えてくる。真剣な眼差しで俺を見つめてくる。彼とはあの霊の竜を指すのだろう。言葉の付しぶしに何か大切なかけがえないのない親しみさを感じる。まるで俺とアイシャお嬢様と同じような関係のような·····。


ギャアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャア?

(そうですか。では霊の竜に何処にいるのですか?。)

『今の時期なら多分王都上空を飛んでいると思います。』


王都上空って···。

霊の竜が何故王都上空を翔んでいるのか理解できない。目立ちたがりやか?。


『あのお名前をお聞かせ願いませんか?。私、貴方がどういうノーマル種なのか全然知らなくて。魂の色が7色に輝いているのでただのノーマル種でないと解るのですが。』


7色は関係ないとおもいますけど·····

魂の色が7色かどうかは兎も角俺は自己紹介することにした。


ギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャ

(申し遅れました。お、ではなく私はマーヴェラス伯爵家の娘、アイシャ・マーヴェラスの騎竜のノーマル種のライナと申します。気軽にライナとお呼び下さい。)


俺は丁寧にサーリさんに俺の身分を告げる。

今は王族のペットもやってますとは付け加えないことにした。混乱するので。


『まあ、貴方がかの有名なパインオブザデット(死を呼ぶ胸)のライナなのですね。』

ぐギャ?

(はい?。)


何でそこでパインオブデットの二つ名が出るんですか?と俺は内心突っ込みいれそうになる。あれは学園内、騎竜乗り科の枠組みだけの話だろうに。王都でも俺がパインオブザデットという二つ名が知れ渡っているのだろうか?。だったらまともに王都内を出歩けないですけど。



『よくこの邸の外でシャンゼルグ竜騎士校に通う令嬢生徒達の話し声がきこえるんです。またあのライナとかいうパインオブザデットのノーマル種が学園にいるのかしら?とか。早く合同合宿終わってくれないかしら?とか。また胸揺らされるじゃないかとか。』


···········

どんどんと俺の黒い噂が流れだされている。

この北地区は確か貴族街だったな。ここから通う令嬢生徒もいる筈。俺の黒い噂がどんどん王都中に広まることに俺は大いに危惧する。


『どんなノーマル種か気になっていたんです。あそこまでシャンゼルグ竜騎士校の令嬢生徒達に嫌われるノーマル種なんて珍しいですから·····。』


そこは嫌れているんじゃなくて怖れられているとかじゃないんですか?と俺は突っ込みいれたくなる。確かに嫌われるのと怖れられるのは大差いけどさ。何か納得できない。

俺は内心不平不満が沸いてくる。


ギャラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアギャアギャアギャア

(と、取り敢えずその王都上空を翔んでいる霊の竜に逢いにいきますね。)


気を取り直し俺は王都上空に翔んでいるという霊の竜の探すことにした。


『私も付き添います。私も乗り手として役にはたちませんが。彼のことなら私が一番詳しいですから。』

ギャ!?ギャアラギャアガアギャア?ギャアラギャギャ··ギャ···ギャ··ギャアラギャア······

(えっ!?サーリさんも来るんですか?。サーリさんは···あの···その···地縛霊なんじゃ····。)


地縛霊ならこの邸から離れないのではないかと俺は思う。


『大丈夫です。私はライナの背中に憑依しますので。』


憑依って·····

俺は少し背中に寒気を覚える。

憑依ってことは取り憑くということだよなあ?。竜が霊に取り憑かれるの大丈夫なのだろうか?。いや、しかし背中にサーリさんのような美人が俺の背中に取り憑くということはサーリさんのあの白い透けたドレス見え隠れする豊かな豊満な膨らみを背中で味わえるということで·········ぶつぶつぶつぶつ。

ライナはなにやら考え事をし始める。一人、ではなく一匹で。ぶつぶつ一人ではなく一匹言を呟きだす。


『あの····ライナ····』


ぶつぶつ勝手に一人···ではなく,一匹言を呟きだすライナにサーリは心配そうに声をかける。

ギャ!ギャアラギャアガアギャア

(是非!我が背中に憑依して下さい!。)

『あ、はい。』


ライナは迷いなく即。即欠した。



     シャンゼルグ竜騎士校

        遺跡跡地


「駄目、ここに竜の亡霊はいない。」


ラムは一緒に捜索する三人一匹に告げる


「てことはあの竜の亡霊は既に王都上空を翔び回っているということね。」


三本のオレンジ色をアホ毛をぴんぴんとアンテナのようにとび跳ね。人化している鳳凰竜フェニスは考え込む。


「それならフェニスに乗って探しましょう?。それなら一番早いと思いますけれど。」


主人であるオリンはそう相棒である鳳凰竜フェニスに提案する。


「それは無謀ね。あの霊の竜は乗り手を乗せた騎竜を半場強制的にレースに誘い込むもの。相手は幻想、幻影、幻覚、精神支配を得意としたレア種の幻想竜よ。不死である私でも幻想竜の精神支配には逃れる術はないわ。ここは我慢して私が人化したまま黄泉に還すしかないのよ。」


不死である鳳凰竜のフェニスでも幻想、幻影、幻覚、精神支配を得意とする幻想竜には歯が立たない。精神支配を耐性を持つ竜なら別だが。精神支配に耐性を持つ竜はそう多くはない。確かパトリシアという令嬢が所有する魔眼竜ナーティアは精神支配を耐性を持っていた気がする。竜に魅了を得意とする魅華竜も耐性はあった筈。ただ耐性があってもあの幻想竜にレースで勝つことは難しいだろう。勝ててもあの霊の竜が成仏するとは限らない。あの幻想竜は成仏せずにレースをするのは別の理由があるからだ。それはとてつもなく哀しく切ない理由である。


三人は一匹は夜更けのシャンゼルグ竜騎士校の敷地を抜ける。


「さて、それじゃ、王都上空を注視しながら幻想竜を探しましょう。」


オリンはそうみんなに提案する


「ねえ?私。その幻想竜という霊の竜が何故この時期にレースをしたがるのか理由を知りたいのだけど。」


アイシャの言葉に二人も一匹は顔を見合わせる。

何処か深刻そうに眉が寄る。


「そうね。アイシャには知っておいた方がいいわね。」

「それはとてもとても哀しくて切ない話なのです。」

「この王都の都市伝説にもなっている有名な悲話。」


鳳凰竜フェニスとオリンとラムは何処かもの哀しげに眉を寄せている。


「哀しい?切ない?。」


アイシャは不思議そうに首を傾げる。


「では話しましょう。ここの王都で有名な都市伝説。帰らぬサーリの話を。」


オリンは静かにとある一人の令嬢と一匹の竜の話を坦々と語りだす。




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