第267話 発情炎

『おおっと、これはなんか凄いぞ!。例の他校のノーマル種の乗り手と三竜騎士ジェロームがぶつかると思いきや。そこに竜騎士科の氷結竜が割り込み。更にそこに炎竜、あれは多分、炎帝、炎速でしょうか?。炎帝、炎速のレースの強さと戦績はここ王都でも広く聞き及んでおります。それらがぶつかり。最早何やら訳の解らない状況になっております。』

『正に乱戦ね♥️。』


王都の竜騎士科の実況者サイクと騎竜乗り科の解説ネレミンはレースの状況を熱弁する。




わーーーーーーーー!わーーーーーーー!

王都の町並みから歓声が沸き上がり。レースが盛り上がる。


「さて、いっちょ小手調べするか!。」


ひゅん キィンッ!

サテライト・ベーシックはすかさずラム・カナリエに斬りつける。

ラムは斬りつけた刃を二丁の短剣で上手に受け流す。

二人が騎乗する清王竜ナギスと魔剣竜ホロホスはお互いの身体を押し付けあって牽制する。


『ふっ、はっはっ。久しぶりに魔剣竜と闘えるとはな。学園の合同レース以来だ。』


清王竜ナギスの竜口が愉快に笑う。


「ナギス!食っちゃべってないで早くスキルを放て‼️」


主人のサテライト・ベーシックはラムと剣と二本の短剣のつばぜり合い中に叫び声を上げる。相棒である清王竜ナギスに指示をする。


『わってるよ。全く。サテライトはせっかちだな。』


清王竜ナギスのはあと不満そうにため息を吐き。スキルを発動させる。


『ギルティー・フェレクション(罪の浄化)。』

ぱあああ


清王竜ナギスの身体から淡い光が放たれる。


「うっ····。」


ラムは清王竜ナギスの放つ淡い光があてられるとラムのマイペースな表情が崩れ。何かにもがき苦しみだす。


『ラムっ!?。』


バサッ

魔剣竜ホロホスは清王竜ナギスの元から一旦離れ間合いをとる。


ギャ?ギャアギャラギャ?

(何だ?一体何をしたんだ?。)


清王竜ナギスが淡い光がを放っただけでラムお嬢様に何されたかのか理解出来なかった。


「清王竜(せいおうりゅう)の固有スキルよ。清王竜のスキルは己の内面にある罪を無理矢理ひき出させるスキルなの。肉体面ではなく精神面に与える攻撃スキルです。そういった精神面を攻撃するタイプの竜(ドラゴン)は何度かみたことがあります。代表的なものはオスにたいして多大な魅了スキルを持つ魅華竜や。幻覚をみせて惑わす魔眼竜などがあり。後は幻覚や幻影をみせてその者の内に秘めたトラウマを呼び起こす幻想竜という竜(ドラゴン)が強力な精神攻撃のスキルを持っているんです。清王竜のスキルは他の人からしたら罪出なくても自分にとってそれが罪だと感じたなら多大な苦痛を味わうんです。』


騎竜乗り科のオリンお嬢様が清王竜ナギスのスキルの説明をする。


『相変わらず人の弱みに突っつくような嫌な技を使うわねえ。絶対真似したくないわ。』


ぴんぴん

三本のオバ○のようなアホ毛を揺らし。メラメラとオレンジの炎を宿した鳥型の竜(ドラゴン)、鳳凰竜フェニスは嫌そうにくちばしをしかめる。


「何かラム、とても苦しそう····。」


アイシャお嬢様は表面上無傷だが。ラムの苦しそうな姿に見て心配する。


「ラムにとって清王竜のスキルはかなりの苦痛になるはずです。あの子はあの子で色々家柄や出生とかに問題を抱えてますから····。」


オリンお嬢様の深刻そうに顔色を曇らせる。戦闘に耐え忍ぶラムをじっと見守る。

ラムお嬢様にもきっとラムお嬢様ならではお家の事情があるのだろう。


「ホロホス、魔剣を使う。準備して···。」

『大丈夫ですか?。ラム。』

「問題ない···。」


ラムは二本の短剣をドラグネスグローブの収納宝玉に収める。

その代わりラムはスカートを捲し上げるとむっちむちの太股をさらけ出す。そこに鞘に収まった何本のナイフからその一本をラムは即座に引き抜き取る。


「いよいよ、ラムが魔剣を使うのね。」


オリンは親友が清王竜の精神攻撃に意に介してないことにホッと安堵する。


ん?何だあのナイフ。微かに赤い光の粒子が見えたような···。


ラムお嬢様が抜いた刃が赤く染まった魔剣と呼ばれるナイフだが。微かに火の聖霊特有の赤い光の粒子を放っていた。


「魔剣士とは珍しいな···」

『ああ、俺も魔剣士の戦いはこの目でみるのは初めてだ。』


ゼクスと無双竜ザインはラムが魔剣を使うことに意外そうに顔を浮かべる。

魔剣士が珍しいのは多数の魔剣を使いこなすからである。戦闘力として戦士や騎士として強いというわけではない。欠点難点とも呼べるのが、一つ一つの使う魔剣の魔力の消費量が著しく激しい。燃費が悪いとも言える。特に持久戦とも呼べるレースに関しては魔力の枯渇は命とりである。剣帝竜のような聖剣、魔剣、神剣を千の数を生み出す竜(ドラゴン)に関しては魔力の消費の心配はない。剣帝竜の生み出す聖剣、魔剣、神剣の魔力の消費は全部剣帝竜が受け持つからである。しかし持参する魔剣に関しては別である。魔剣といったものは大きく魔力を消費する。使えば使うほど魔力の消費は激しいのだ。普通に詠唱を行う魔法を魔剣で詠唱行わずバンバン使うのだから当たり前である。故にゴール到着するまで戦闘続きのレースに関しては魔剣士の騎竜乗りの乗り手はデメリットでしかないのだ。


「はあ、騎竜乗り科の一年生と竜騎士科の二年生が戦闘始めてしまったわ。建国記念杯はこんなレースじゃないのに····。」


騎竜乗り科最強のタクトの称号を持つエネメリス・フェレツェは何とも言えない深いため息を吐く。

本来なら東西南北の地区にある塔の番人からフラッグ(旗)を奪取して。中央のお城の頂上の屋根にぶちさすだけのレースである。ここまで戦闘するような殺伐としたレースではないのだ。


『心中お察しするわ。エネメリス。』


相棒の精霊帝竜ネフィンはそんな主人を優しく労う。


「いくよ。」


ラムはナイフの魔剣を前にだして横平行に翳す。


「いよいよ、魔剣士の戦闘が見れるな···。」

『お手並み拝見といこうか。』


ゼクスと無双竜ザインは魔剣士ラム・カナリエと魔剣竜ホロホスの戦闘を今か今かと待ち望む。


「くるぞ!ナギス‼️。。」

『くく、魔剣竜の本領発揮っていうやつか。実に楽しみだ。』


相手するサテライト・ベーシックと清王竜ナギスは魔剣士と魔剣竜の戦闘との経験があるようで臨戦態勢をとり身構える。


ラムは前に出された横平行に翳したナイフのような魔剣に赤い刃部分に自分の掌を染める。

魔剣竜ホロホスはラムの行動にタイミングを合わせるかのように大きく翼を広げた。


「水魔精剣(すいませいけん)、アビューネ!」

『媒介(ばいかい)‼️。』


カァーーーーーーーーーーーーーッ‼️


ぱあああああああああーーーーー


魔剣竜ホロホスの身体がラムお嬢様の魔剣と呼応するかのようにみるみる姿形が変化する。

ラムが手にした刃が青く染まったナイフが形が消え。その代わり魔剣竜ホロホスのアイボリーブラックの鱗の身体がみるみるまるで水竜族特有のヒレを帯びた真っ青な鱗の姿へと変貌する。



「ラムの使う魔剣は精霊を宿した特殊な魔精剣と呼ばれる魔剣なんです。そして魔剣竜でもあるホロホスは唯一その魔剣と同化することが出来る竜(ドラゴン)なんです。魔剣と同化した魔剣竜ホロホスはその魔剣の特製を受け継ぎ。ラムの使う魔精剣に備わった精霊の力も扱えるんです。故にレア種である魔剣竜は媒介する魔剣によっては精霊竜の上位互換である精霊帝竜や精霊王竜、妖精王竜を越えることも出来るんです。」


ラムの親友であるオリンは坦々と魔剣士と魔剣竜の能力を説明する。


「凄い!。ラムもホロホスさんも凄いねえ!。ね?ライナ。」


アイシャはラムと魔剣竜ホロホスの戦闘スタイルを見て歓喜する。


ギャギャ~ギャアラギャ~ギャアギャアラギャガアガアギャアラギャギャア~ギャアラギャガアギャアラギャガアガアギャアラギャギャアラギャギャアギャアギャアラギャガアガアギャアラギャガアガアギャアラギャギャアラギャギャア

(いいなあ~変身いいなあ~。やっぱ、竜(ドラゴン)といったら変身だよなあ~。俺、普通でノーマル種だしなあ。別に普通が悪いと言うんじゃないよ。でも変身しもねえ進化もしねえそんなドラゴンって。ドラゴンとしてどうなのよ?。はあ~変身良いなあ~。)


ライナは遠目で羨めしげな竜瞳の視線を魔剣竜ホロホスに送る。


「ら、ライナがやさぐれている····。」


アイシャはそんなライナの様子に微妙な顔を浮かべる。



『さて、こっちもさっさと終わらせる!。その次はあのノーマル種だ!。』


凍てついたグラシャーブルー色の鱗を秘めた翼を大きく広げる。


『ふん。お前ごときがライナに勝てるわけなかろうに。その前に我等が貴様を叩き潰す!。』

『ああん?いい加減にしろ!。炎竜。お前は一度俺に敗けているだろうが!。勝てる要素なんて微塵もないことを理解しろ!。』


氷結竜コルゴは激しく凍てついた竜顔で威嚇する。


『ふん。確かに貴様のスキル、アプソリュート"ZERO"DF(絶対零度防御) は防御として最強だ。しかし我等はそれを更に越える力を手にいれた。』

「前のようにはいかないわよ!。」


炎竜ガーネットを乗るレインはドラグネスグローブの収納宝玉から取り出した剣を持ち身構える。


『ち、さっさと片付けるぞ!。オセット、』

「ああ·····。」


オセットは力を抜けたような生返事する。

何にせよ三竜騎士の一人と竜騎士科最強のクラウンの称号を持つものと闘わなくてすんだことにオセットは深く安堵していた。あの例のノーマル種が自分達より強いか強くないかなど今はどうでもよい。兎に角あの二人と一辺に闘うことにならなくて深く安心しきっていた。


「やるわよ!。ガーネット。」

『ああ、我が情炎の炎を深く見よ。』


ガーネットはスッと深紅の竜瞳を閉じる。

そして何かを想像、妄想する。


『ああああ~~~~~♥️。ライナライナライナライナライナライナライナライナラライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナイナライナ♥️。ライナライナライナライナライナライナラライナライナライナライナライナライナライナライナライナイナライナライナライナなあああああああ~~~~~♥️。』


ギャ?ギャ?ギャギャア?

(え?何?何なの?。)


いきなり自分の名前を甘えるように連呼されてライナは激しく困惑する。



『ライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナライナ♥️。あっ♥️あああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん♥️。』


ちょ、本当に何なの?物凄く怖いんですけど。炎竜ガーネットの意味不明に自分の名前を連呼される様子にライナの背中は気味が悪くなるほど悪寒が走る。


ぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


ガーネットの深紅の鱗が激しく燃え滾るほどの熱量の炎が舞い上がる。


『馬鹿なっ···。何だ?この火力は·····。』


生まれ時から火力の炎が決められている筈の炎竜族が炎竜族の上位種とも呼べるほどの炎を吹き出したことに氷結竜コルゴは激しく狼狽える。


「こんな炎、あり得ない···。」


遠くからでもガーネットが放つ炎をオセットは肌で感じ取る。

確かにこれほどの熱量を帯びた炎を吐きだすことは炎竜族にとって造作もないことである。しかし生まれつきの炎の火力と熱量が定まってしまう種族である炎竜族が。これほどの火力ある炎を吹き出すことは本来ならあり得ないことである。炎帝の炎速の炎の火力、熱量は充分に理解している。あれは火力よりもスピードを重視している炎竜族だ。放つ火力も熱量も上位の炎竜族と比べて大したことはない。しかしそれなのに上位と炎竜族と同等それ以上の炎を放っていることにオセットは信じられないと目を疑う。


「驚いているようね····。」


驚いている竜騎士科の竜騎士生と騎竜にレインはニヤリと不適な笑みを浮かべる。


「確かに炎竜族の火力は生まれたときから決まっている。しかし例外もあるのよ。それが種族同士の発情の炎よ。これに関してだけ生まれつきの火力は関係なく。ガーネットが発情すればするほど火力が増す。」



『そう、これこそが私とライナの愛の力だ!。』


炎竜ガーネットは自慢するように情炎の炎を発しながら大きく竜の胸を張る。


発情の力を愛の力と片付けるのはどうかとおもいますけど·····。


ライナは覚めた遠目な竜瞳の視線をガーネットに向ける。


ていうか本当に勘弁して欲しい····。

種族の壁を本当に考えて欲しい·····。


ライナは発情炎と呼べるガーネットの習性、特性を駆使した新しいスキルに激しくゲンナリする。


『ふざけるな‼️。発情炎だど。そんなメスの発情期紛いの炎で俺が倒せるとおもうなよ!。』


氷結竜コルゴは激しくいきり立つ。


『なら、試してみるといい。メスの生殖本能をなめるなああああーーーーーーーー。』


ごああああああああああああああああああああ

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


炎竜ガーネットの深紅の鱗から発せられる熱量と火力が赤くメラメラと激しさを増す。

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