第176話 繋がる絆
ざわざわ
『これはどういうことでしょう?。純白の乙女のリーダーの煌輝竜が優勢だったのにも関わらず。逆に反撃を喰らっています。視界を奪われたノーマル種が手も脚もでない筈なのに。』
ざわざわ
観客席の成金貴族は騒ぎだす。
『我々では煌輝竜のスピードに目を追うことができませんので魔法具の記録映像をスローモーションでみてみましょう。』
魔法具の巨大スクリーンからゆっくりとノーマル種と煌輝竜の一コマ一コマの戦闘の映像が流れる。
『何だこれは!。煌竜竜がぶつかりノーマル種の身体に触れる瞬間にノーマル種が攻撃を加えているぞ!、一体全体どうしたらこんな芸当ができるのか!。』
ざわざわざわ
観客席でつまらなそうにしていた成金貴族達も二匹の血塗れの竜が行う激しい肉弾の激闘に皆目を奪われていた。
ガッ!バキッ!ドッ!
殴る蹴る引っ掻くの猛攻に二匹は血塗れであろうと続ける。
『ふははははは。最高だ!。ライナ!。』
煌輝竜アルベッサは楽しそうに竜口元がつり上がる。
ドゴッ!バキッ!ドッ!
互いに拳を喰らわせ血しぶきがあがる。
「···········。」
ライナは静かに煌輝竜アルベッサの次から次にくる猛攻を対応返していた。
ドゴッ!バキッ!
「す、凄い······。」
二匹の作法も気品も上品さもかけ離れたただの殴り合いと蹴り合いに純白の乙女のリーダー、レカーリヌは息を飲み言葉を喪う。
『な、何ですか!。こんなふざけた戦いがありますか!。こんな戦いはゴージャスエレガントカップに相応しくありませんことよ!。』
サルマニア婦人は二匹のただただ野蛮な殴り合い蹴り合いの戦闘に唇をわなわなと引きつかせ憤慨する。
「あら?。でも観客席にいる貴族の皆様方はみんな二匹の騎竜の戦いにをみいいってますよ。」
放送席の隣席でパトリシアは小さな唇に手をあてクスクスと笑う。
「あんな野蛮な戦い認められませんわ!。騎竜同士の戦いはもっと美しくエレガントにやるものですわ!。」
「それでも観客席の貴族の方々が皆二匹の騎竜の戦いを注目しているということはそれだけの価値があるのではなくて?。サルマニア婦人。」
「ぐぬぬ·····。」
サルマニア婦人は悔しげに唇を歪ませる。
『はあはあ、ここまで追い詰められるとはな。何年ぶりか······。いや、認めよう····。無能でここまでできるとは。どうやら俺も奢りがあったようだ。』
煌輝竜アルベッサは嬉しそうに素直に詫びる。
ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャ
(アルベッサ。それだけじゃないよ。あんたは隣に寄り添ってくれる信頼の強さを知るべきだ。)
『寄り添ってくれる信頼の強さだと?。』
アルベッサの竜顔は眉間寄せ困惑する。
ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャ
(俺がここまで強くなれたのは俺自身だけの力じゃない。今は解らなくてもいつかは解って欲しい。あんたはそんなに悪い竜じゃないのだから。)
『ふん、まあよく解らないが。気に止めておこう。さて決着をつけようか!。』
ギャ····ラギャアガアギャア
(ああ·····いつでもいいぜ。)
俺とアルベッサは双方翼を広げ身構える。
金貨が積み重ねられた山の上空の空中に静寂が流れる。
バサッ!
先手をとったのは矢張煌輝竜アルベッサであった。金貨の山の上空で止まるライナに飛び掛かる。
アルベッサはそのまま鉤爪の拳を振り上げる。
二匹の空間の間にスローモーションに時が流れる。
ぶうううう
アルベッサの右拳をライナの脇腹に触れる瞬間ドゴォォン!と鈍い音が広がる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
暗闇の底から意識を吹き返す。
視界が黒く塗り潰された重たい瞼をゆっくり開ける。身体のあっちこっちに痛みが走り。思うように動けない。思い身体を無理矢理でもゆっくりとおこす。長首をあげ状況を確認する。
目の前にはあのノーマル種ライナが作ったとされる金貨が積み重った山がそびえたつ。
そうか····俺は敗けたのか····。
煌輝竜アルベッサは今の状況に納得する。
悔しさよりは爽快感と清々しさに満ち溢れている。いつぶりであろうかこの感覚をあじわったのは···。
アルベッサはふと自分の傷だらけの巨体に何かか触れるような気配を感じた。視線をゆっくり移し。確認するとレカーリヌが自分の傷付いた箇所に治癒魔法かけているところだった。
『何をしている?。レカーリヌ。』
「黙っててよ!。今治癒しているんだから。」
レカーリヌは懸命にアルベッサの光沢のある鱗の傷付いた箇所を治癒魔法かけ治療している。
「アルベッサ。お願いだから私を見限らないでよ。私が未熟だと自分でも自覚しているんだから。私、彼方に相応しい騎竜乗りに絶対になるから。」
レカーリヌは真剣な面持ちでアルベッサに治癒魔法をかけ続ける。レカーリヌの白粉のような厚化粧顔も治癒魔法かけ続けたせいなのか。汗だくとなり。せっかくの整った厚化粧顔もべっとりと崩れている。それでも懸命にレカーリヌはアルベッサの傷付いた箇所に何度も治癒魔法かけ続ける。
アルベッサはじっとレカーリヌのそんな姿を眺める。
『俺もまた人を見る目がなかったと言うことか····。』
「何か言った?」
ポツリとアルベッサがぼやいた言葉にレカーリヌは治癒魔法かけながら声をかける。
『何でもない····。ついてこれなければいつでも置いてくからなっ。』
「勿論よ!。」
未熟な令嬢と経験豊富な騎竜は初めて信頼というなの絆が結ばれる。
バァサッ バァサッ
純白の乙女達を退き。ゴージャスエレガントカップのレースコースを進む。かなり時間をくってしまった。煌輝竜アルベッサに盲目にされた瞳も時間につれ視界がはっきりしてくる。
先頭をとったマーガレットお嬢様のライバルであるシャルロッテ・マドワーゼルと崇高竜は既に第三コースの黄金の黄金竜の像の所まで到達しているのではないかと思われる。もう優勝することは不可能だろう。目的はあくまでマーガレットお嬢様を俺の背に乗せることであり。優勝は二の次である。マーガレットお嬢様の戦績に響くかもしれないが。当の本人は俺の背中で再び自分の胸を擦り付けて楽しんでいる。純白の乙女達の戦闘で正気に戻ったかと思えば全然そんなことはなかった。
「ああん♥️。ライナ様♥️ライナ様♥️ラ・イ・ナ・さ・まああ~ん♥️。」
すりすりすりすり
マーガレットお嬢様のぶるんのした張りのある2つの膨らみが左右に形が崩れるように何度も擦られる。
はあ~早くゴール到達してえ~。背中に胸を押し付けられることが好きなはずなのに。ここまで積極的に我を忘れて胸を擦り付けられると逆に怖いというか退きます。
確かに女性の胸を背中に押し付けられるのは好きだけど。これは何か違うような気がする。
バァサッバァサッ
第一コースの金貨の川を抜け第二コースであるダイヤモンドの森林に入る。上空から何カラットか解らぬキラキラと輝くダイヤモンド製の森林が広がっている。ガラスの森ならぬダイヤモンドの森である。因みにガラスの森は箱根にあります。
バァサッ バァサッ
ダイヤモンド製の森林はまばやい輝きを放っていた。ダイヤモンドに興味ない俺でも見惚れるほどである。
ん?あれは·······
「ぐふふふ、儲け儲け。」
まばゆい輝きを放つダイヤモンド森林の木々の隙間をよく見るとメイド姿が視界に写る。メイド姿の格好で察した。カーラさんである。あれ?金貨の川にいた筈なのにいつの間にダイヤモンドの森林に入っている?。そんな疑問をよそにカーラさんはダイヤモンド製の木を何処からか取り出したのかナイフで器用に削りとっている。
何あれ!?。ダイヤモンドの木がまるでスライスするかように削り取られているんですけど。あのナイフ、オリハルコン製かよ!。俺はめんたま飛び出るほどそんなカーラさんの様子に驚く
バァサッ!バァサッ‼️
ダイヤモンドの森林を翼を扇ぎながらすすむ。特に急ぐわけではないので観光気分で進んでいく。
『ルビーレーザー(赤外光線)!!。』
カアーーーーーーーーっ!。
突然真下に広がるダイヤモンド森林の方角から真っ赤に染まった光の線が飛び出る。
ギャ!?
(なっ!?)
バァサッ!
俺は突然ダイヤモンド森林からとびでた赤色を帯びた光線をすれすれで回避する。
「お待ちしておりましたですわ。マーガレット・ベルジェイン。」
ルビー色の輝きを秘めた鱗をした竜を背に乗り。目の前には先頭を走っていた筈のマーガレットお嬢様のライバルでもあるシャルロッテ・マドワーゼルが立ちはだかっていた。シャルロッテはどーんとビックバーンの2つの膨らみを前につきだし。ロール状に幾つも束ねた銀髪の髪を靡かせる。宝石を散りばめた豪華なドレスを着ているシャルロッテ・マドワーゼルはじっと俺の背で胸を擦り付けながら悶えているマーガレットお嬢様を睨み付ける。
・・・・・・
何でここにいるの?。
俺の竜顔は絶句顔になる
。
あれほど時間的余裕があったのに。既に第三コースの黄金の黄金竜像まで到着していると思っていたのだが。シャルロッテ・マドワーゼルは何故だか未だこの第二コースのダイヤモンドの森林に止まっていた。
「マーガレット・ベルジェイン!。今度こそわたくしとの決着をつけるときですわ!。」
シャルロッテは堂々とビックバーンの胸を張り言い放つ。
俺はとてつもないやな予感がした。
アルベッサの戦いで色々満身創痍とは言わないが傷だらけの状態である。
まさか連戦にするとはおもわなかったのだ。そんな都合などお構いなしにマーガレットお嬢様のライバルであるシャルロッテ・マドワーゼルはメラメラと闘志の炎を燃やしている。
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