第177話 ダイヤモンドは反射する
わーーーーー!わーーーーー!
「メリンさん。これまずくないかなあ?。今ライナ傷だらけの状態なんだけど···。」
観客席でレース会場のスクリーンに写るライナの血まみれで傷だらけのボロボロな姿にアイシャは眉を寄せ心配する。ライナには不思議な力と精霊の力を使役できるのに純白の乙女のリーダーとその騎竜の戦いで一切その力を扱っていなかったのだ。ライナにどんな意図があったか知らないけれど。それでも今の状況はまずいとアイシャでも理解できる。
「はい、それに場所も悪いです。」
「場所?。」
アイシャは眉を寄せ困惑する。
「私なら問題なかったのですが。私とお嬢様のライバルでもあるシャルロッテ・マドワーゼルの騎竜、崇高竜は私と似た能力を持っています。特にダイヤモンドで型どられた森林なら彼等にとってとても有利に違いありません。」
「有利って何かあるの?。」
メリンの言葉にアイシャはとてつもない胸騒ぎを感じた。
「ライナ様なら何か対応策を考えるでしょうけれど。それでも分が悪いのは事実です。」
至高竜メリンの深刻な表情にアイシャはきゅっと動揺する唇をしめる。
「うふふふ、オホホホホ!。」
放送席に座るサルマニア婦人高笑いをはじめる。
「もう終わりですわね。パトリシア・ハーディル。あのノーマル種とて二番人気のシャルロッテ・マドワーゼルの崇高竜には勝ち目はありませんことよ。」
放送席で宝石を散りばめられた扇を扇ぎ。サルマニア婦人は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「何を根拠にそんなことを言っているのでしょうか?。サルマニア婦人。」
パープルの小さな細い眉を寄せ。不快に顔をしかめる。
「あのノーマル種は純白の乙女達の騎竜にあんな野蛮な戦いで勝てたかもしれませんけれど。シャルロッテ・マドワーゼルの崇高竜にはそんなペテン聞きませんことよ。」
サルマニア婦人は唇がつりあがる。
純白の乙女のリーダーの騎竜と肉弾戦の繰り広げたノーマル種にサルマニア婦人は嫌悪感を感じていた。ゴージャスエレガントカップのレースコースの設営者としてあのような下品な竜は早く退場して欲しかったのだ。想定外なのはシャルロッテ・マドワーゼルが第二コースのダイヤモンドの森林に止まっていたことだ。このまま第三コースの黄金の黄金竜像に到達してゴールインすれば問題なかったのだが。彼女は何故か第二コースで止まっていた。それでもマーガレット・ベルジェインが連れたノーマル種によってレースが滅茶苦茶されたことの腹いせにシャルロッテ・マドワーゼルが相手してくれるなら満足である。サルマニア婦人はあの野蛮なノーマル種にみっともないほど無様な敗北を与えて欲しいと願うばかりである。
くくと冷笑を浮かべる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「貴女のレース一部始終観てましたよ。」
BAOOOーーーN!
豪快なドレスに隠されたビックバーンな胸をつきだし。シャルロッテ・マドワーゼルは胸をはる。
観てないでさっさとゴールすればいいのに····。俺は偉そうにふんぞり返る彼女を横目にそんなことを内心思う。
「貴女がノーマル種を騎竜にすることに気が触れてしまったのかと思っていましたですけど。流石は私のライバルであるマーガレット・ベルジェイン。まさか純白の乙女達を全て倒してしまうなんて。そのノーマル種はどうやらただのノーマル種ではないようです。ですが!。」
ビシッ!
シャルロッテ・マドワーゼルは人差し指を俺とマーガレットお嬢様に突きたてる。
「そのノーマル種の姿を見て何も思わないのですか!。マーガレット・ベルジェイン!。血だらけのボロボロでほんとみっともないですわ。全然美しくもエレガントでもありませんわ!。確かにそのノーマル種は強いですわ!。ですが戦闘する容姿は全然ゴージャスさとエレガントに欠けはなれていますわ!。全く持って美しく魅力もありませんことよ!。」
········
俺は微妙な竜顔を浮かべる。
ノーマル種にゴージャスさとエレガントを求めても仕方ないと思うが····。
そんなことお構い無くにシャルロッテは俺達に坦々とくどくどと説教垂れる。
「貴女には再び美しさとはなんたるかを教えなくてはなりませんわ!。至高竜メリンに乗ってた頃の貴女はとても気高く美しかったのですわ!。それなのにノーマル種に乗ってから·····貴女は···その。··何だか···とっても···可笑しいですわ!。」
シャルロッテは何か言いどもりながらも断言する。
はい!既に手遅れです!。俺は俺の背中でみ悶えるマーガレットお嬢様にシャルロッテ・マドワーゼルの言い分に深く同調する。
「聞き捨てなりませんわね。」
突然真剣な言葉が俺の背中から投げ掛けられる。
えっ?正気に戻ったの?。
マーガレットお嬢様は俺の背中であへ顔のトリップ状態であった筈なのに。突然正気を戻ったことに俺は大いに驚く。
「な、なんですの?。マーガレット・ベルジェイン。い、いきなり真面目な真剣な顔をして。」
今、マーガレットお嬢様は真面目な顔をしているのか····?。マーガレットお嬢様が俺の背中に乗っているので今、彼女の状態がどういう状態か解らない。
「貴女にはライナ様の素晴らしさが何も解っておりませんわ!。」
マーガレットはぷるんと豊満な胸を張り。堂々と言い放つ。
「な、何を言うのですわ!。」
シャルロッテはそんなライバルの姿に狼狽する。
「貴女には解らないのですわ!。どんなに豪華に着飾ってもライナ様のゴツゴツした粗目の背中の乗り心地には足元に及びませんわ!。」
マーガレットお嬢様は何の迷いもなく意味不な発言を言い放つ。
「何を言っているのですの?。マーガレット・ベルジェイン!?。ゴツゴツした粗目な背中なんてどうみても乗り心地最悪じゃなくって!。」
シャルロッテは矛盾だらけの会話にマーガレットに物申すように突っ込む。
乗り心地が最悪って言うのは正直聞き捨てならないのだけど。でも確かにゴツゴツした粗目の背中が乗り心地は良いとは言えないだろうなあ····。不本意だが····。
「シャルロッテ・マドワーゼル。貴女にはまだライナ様の背中の良さが解らないのですわ!。でもいずれ解る時がきっと来ますわ!。」
マーガレットお嬢様はシャルロッテの反論にも動じずに言葉を返す。
「そのようなこと解りたくもありませんわ!。もういいですわ!。マーガレット・ベルジェイン!。貴女はここで完膚なきまでに倒し。目を覚まさせますわ!。いきますわよ!アミル。」
『はあ~、やっと不毛な言い争いは終わりましたか。正直さっさとゴールインすればすむ話だと思いますけどね。』
崇高竜アミルはルビー色に輝く竜のくちばしから深いため息がもれる。
ごもっともです。うちらとはもう関わらないで下さいよ。本当に。
俺は内心本気でそう思う。
「アミル、さっさと赤レイを放ちなさい!。」
シャルロッテよ指示に仕方なく崇高竜アミルは身構える。
赤レイってさっきのレーザーのやつか?。ルビーレーザーみたいな色々突っ込みどころがある技名だったけど。
レーザーを放つと言うことは至高竜メリンと同じタイプだと察する。俺は翼を広げ警戒しながら身構える。
崇高竜アミルの赤色に輝くくちばしが大きく開かれる。くちばしの口内の奥に透明な淡い光が漏れる。
「喰らうのがいいですわ!。」
『ルビーレーザー(赤外光線)!。』
カッ! ヴビィィイイイーーーーーーーー!。
電子音なような独特な音が響き。透明な赤色の光の線が放たれる。
バアアアアアーーーーーー
サッ
俺は赤色の透明の太い線をすれすれで回避する。
「矢張避けますわね。しかし貴女が至高竜メリンに乗らなかったことをここで後悔するのですわ!。」
シャルロッテは視線を真下に向ける。
「さあ、アミル!。地上に放ちなさい!。」
『ルビーレーザー(赤外光線)。』
ヴビィィイイーーーーーーー!!!
ギャア!?
(何だ!?。)
崇高竜アミルは赤いくちばしを大きく開き。俺ではなくダイヤモンドの森林に向け放射された。アミルの口から出した赤い太い光線はそのままダイヤモンド森林へと突っ込む。
何を考えているだ!?。
俺は検討違いの方向に向けられた崇高竜アミルの赤い光の放射に意味が解らず困惑する。
ヴビィーーーーーーーーーーーーー!
放射された赤色の光線はダイヤモンドの型どられた木に直撃する。
ビィーンビィーンビィーンビィーン!
アミルの赤色の光線は透明に輝くダイヤモンドの木々にぶつかり次々と反射し。屈折して跳ね返る。
ビィーーーーーーー!カッ!
最後に一本のダイヤモンドの樹に直撃すると真上の方向へと赤色の光線が伸びる。
ズァああああああーーーーーーーーーー!!
ギャア!?
(何っ!?。)
俺の目前に巨大な赤い太い光が通りすぎる。
崇高竜アミルに乗るシャルロッテは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
まさか····これって····?。
俺は恐る恐る真下を眺める。
真下にあった透けたダイヤモンドの森林は崇高竜アミルが放った赤い光線により。透明感のあるダイヤモンドの木々がうっすらと赤みを帯びている。
「ここは沢山のダイヤモンドの木が生えてますわ。わたくしの崇高竜の力を存分に引き出すことができますわ。残念ですわね。マーガレット・ベルジェイン。貴女の至高竜メリンに乗っていればわたくしの崇高竜アミルといい勝負できましたのに。」
···········
マジかよ····。この場所はあいつらにとっての絶好のテリトリーじゃないか?。俺はビックバーンな二つの膨らみをつきだし。盛り上がった銀髪ロールを靡かせる令嬢とルビー色の鱗が輝く美しい騎竜に重ぐるしい竜瞳の視線を向ける。
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