第175話 胸熱(圧)
過去の修行時代
(竜言語変換)
「レッドモンドさん。相手が状態異常の攻撃してきたらどう対処するんだ?。」
俺は昔レッドモンド師匠に状態異常の対処をきいたことがある。
ぴくぴく
「まあ、相手にもよるが。竜(ドラゴン)にも毒を使ったりするものもいるからなあ。」
やっぱ毒を使う竜もいるのか···。
竜なのだからマヒや毒を与える竜がいてもおかしくはない。
「毒は上位種なら抗体や治癒能力が自然と備わっている。なかったら乗り手である騎竜乗りが対処する。まあ、それでも対処できない相手なら。」
「相手なら?。」
「気合いでどうにかするしかない。」
ぴくぴく
レッドモンドの筋肉の胸板が脈を打つ。
気合いかよ·····
俺はげんなりする。
何か対処が適当すぎる気がする。
「相手が盲目を与える攻撃してきたら。」
「それは解るぞ。心の瞳でみるんだろう。よく見えない相手や盲目になったら心の瞳でみると漫画や小説にかいてあるし。」
「そんなこと現実に出来るわけないだろう。」
レッドモンドは筋肉をびくびくさせ。呆れたように竜口からため息がもれる。
出来ないのかよ~。
俺はガクと肩を落としげんなりする。
「心の瞳ではなく。気配だな。まあ、気で察知するだけでは不完全だ。得意分野で生かす方法が必要だがな。」
ギャアラギャ
「得意分野?。」
「ある自分にとって執着するもの。例えばライナにとっては······。」
・・・・・・・・
ガッ! ザン ドォオオー!
金貨が積もる山の空中で旋回し何度も煌輝竜アルベッサはライナに攻撃を加える。
『どうした?。反撃する気力もないのか。』
煌輝竜アルベッサはライナに何度も飛び掛かり攻撃を繰り返す。視界が真っ黒に染まり。盲目状態になってしまったライナを容赦なくアルベッサは攻撃が続く。
アルベッサの攻撃は引っ掻くような物理的攻撃で魔法やスキルは一切使っていなかった。ライナの言葉に対して肉弾戦にしたのか。或いは盲目にさせて相手をいたぶるのが戦法なのか判断できない。だが確実にダメージは蓄積されていた。
「ライナ様。本当に大丈夫ですの?。」
マーガレットお嬢様は俺がお願いした通り煌輝竜アルベッサの動きを観察したまま背中に胸を押し付けている。
何も反抗せずにただ一方的に攻撃を受けているライナの姿にマーガレットは眉を寄せ心配する。
ギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャガアギャア
(はい、マーガレットお嬢様はよくアルベッサを動きを見て観察しててください。胸を押し付けたままでお願いします。)
俺は全神経を背中に集中させる。レッドモンドさんの教えを忠実に守り。耐え抜く。
『おおっとマーガレット・ベルジェインが乗るノーマル種がなすがままだぞ!。煌輝竜に視力を奪われた身ならば矢張手も足もでないのかーーー!。』
レース会場では実況アルヘビラはスクリーンに写るライナの状況を語る。
わーーーー!わーーーー!
「矢張、レア種とノーマル種では勝負になりませんなあ。」
「戦いかたが野蛮なんですのよ。あれはなんですか?。戦いかたも手と脚と尻尾しか使っていませんでしょうが。」
「本当に美しくもない戦いですこと。もっと派手に豪華にできませんこと。」
観客席に座る成金貴族達から不平不満の野次が飛ぶ。
アルベッサの空中攻撃によりライナの姿は引っ掻き殴られ蹴られ至るところに傷と痣ができている。血塗れな惨めなライナの姿に煌輝竜アルベッサははんと鼻をならす。
『まったく買いかぶりすぎたか。これ程愚かな竜だと思わなかったぞ。全ての力をだしきり。能力を生かすことこそが竜としての強みではないか?。無駄に意地を張り敗北期すなど愚行の極みだぞ。矢張ノーマル種ライナ。お前もこいつと同じ無能だということか。』
煌輝竜アルベッサは吐き捨てるように吠える。背に乗る主人を引き合いにだし。なじるようにライナのそんな愚行な行為を強く責め立てる。レカーリヌはアルベッサの背できゅっと堪えるように真っ白な白粉な厚化粧顔の唇を強く引き締める。
ギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガアギャア
(何とでもいえ!。俺はこの拳と脚と尻尾であんたを倒すと決めたんだ。この戦いはただの勝敗を決めるためのものじゃない。あんたに無能の強さを教えるための戦いだ。)
『ふん、ご託は言い。そんなに無能の強さを教えたければ俺をまかしてみろ!。やられっぱなしではないか!。』
煌輝竜アルベッサが怒りの罵声を上げる。
レッドモンドさんのから教えられた視力を必要としない戦法。それにはとある条件が必要だった。乗り手であるマーガレットお嬢様にアルベッサの動きを観察する必要性があったのだ。この戦法は心眼術とは少し異なる。レッドモンドさんが教えられたのは感覚共有というものらしい。相手の感覚を自分に投写するものである。マーガレットお嬢様の経験した感覚をそのまま自分に投影する。
『もういい!。ここまで下らんことに時間を費やすのもあきたわ!。俺はこんな戦いを望んではない!。貴族どもの綺麗事を並べた戦いにも飽き飽きだ!。美しい?綺麗?ゴージャス?ふざけるな!。そんなもの騎竜の戦闘には何も必要ない!。騎竜同士の戦いは力と力のぶつかり合い。己のスキルと魔法、能力を駆使して全力でぶつかり合い戦いこそが真の騎竜の闘いだろうが!。』
アルベッサはどうやらゴージャスエレガントカップ、或いは成金貴族のレースに不満があるようだ。確かにこのレースに関しては綺麗なイメージがあった。着飾り、豪華な装飾に彩られたレースにレースする本気が感じられなかったからだ。彼等が重要視するのはレースの勝敗よりも体面のような気がする。
マーガレットお嬢様のライバルの位置にある令嬢シャルロッテ・マドワーゼルも身なりにこだわっていたようだし。
『どいつもこいつも綺麗事でうんざりするわ!。』
かなりストレスたまっているな。この竜。
『せっかく骨のある奴を見つけたと思ったが。蓋を開けれてみれば下らんこだわり持つ愚か者とはな。』
はあっと煌輝竜アルベッサの竜口から深いため息がもれる。
『もういい。こんなつまらん戦闘は早々に終わらせる。』
煌輝竜アルベッサは翼を広げる。輝きを帯びた鱗が光る。
『これで終わりだ!ライナ。スキルも魔法も能力さえもひけらかさぬお前にはこれがお似合いだ。俺の全力のスキルを持ってこのレースから退場しろ!。』
煌輝竜アルベッサの光沢のある鱗と翼が輝く。
『これが煌輝竜、閃光殲滅スキル、アブソリュートスパークル(絶対なる光彩)よ。』
カッ!
ぶおおおおおーーーーー!!
アルベッサの身体が閃光に輝き。光の速さの如くライナ目掛けて突撃する。アルベッサの煌輝竜の閃光殲滅スキルは目眩ましと光の速度を合わさったぶちかまし。体当たりをするスキルであった。
光の速さでライナにぶちかましをくらわそうとする。
『これでくたばれ!。ノーマル種、ライナああーーー!。』
アルベッサの回避不可能な光速スピードに盲目となり視界を奪われたライナに迫る
ひゅんーーーーーーーーーーーーーーーーー
バキャああッ!!
『グハッ!。』
「アルベッサっ!?。」
光速スピードでライナ目掛けて突進した筈がライナの身体に触れる瞬間アルベッサの竜の頬がめり込み。バランス崩したように落下する。
ズザザーザー
アルベッサは積み重った金貨の山に体勢をくずしたまま着地する。
『何だ?何が起こった······。』
アルベッサは理解できなかった。アブソリュートスパークルは光速で相手に体当たりする煌輝竜特有の必殺スキルである。それが逆に自分にダメージを喰らっている状態に呆然する。めり込んだ頬の竜口から血が滴り落ちる。
スキルを使ったのか。いや、そんな動作を一切見せていない。精霊を使役している素振りもなかった。なら何故俺がダメージを貰っている?。
煌輝竜アルベッサはノーマル種のライナは何かの魔法やスキルを使ったのかと疑ったが。そんな気配も素振りを一切みせていなかった。レースの熟年者であるアルベッサでもライナが行った行為が解らなかったのだ。
「アルベッサ·····。」
『レカーリヌ、今は黙っていろ!。考え事の邪魔だ!。』
アルベッサは苛ついていた。ノーマル種ライナに理解不能な攻撃。自分は長年幾多の騎竜と対峙してきたレース経験豊富な騎竜である。それなのに相手の攻撃方法が解らないのだ。どんな相手でも油断せずに全力で立ち向かってきた自分が遅れをとるなど。
「アルベッサ聞いて!!。あのライナとかというノーマル種は貴方が光速でぶつかる寸前に避けて殴ったのよ!。」
『殴っただと?。』
アルベッサは絶句した。ノーマル種ライナは今は盲目状態である。まともに目の前が見えないはず。それ以前に自分が光速スキルを発動させて回避することなど不可能である。盲目でなくても普通に目で追うことができないのだ。それを避けてしかも殴ったとレカーリヌは発言したのだ。
『馬鹿なことを言うな!。生身の竜でさえ俺の光速スキルを視界に捉えることは不可能だ。しかも盲目状態で回避して攻撃するなどと。』
煌輝竜アルベッサは頭上を見上げる。ノーマル種のライナは未だ空中に止まっていた。視線を自分の方向に向いてないことからまだ盲目状態であることが察することができる。
『あるわけがない!。目に見えない状態で俺のスキルを回避して更に攻撃を加えるなど。』
アルベッサは竜口をきしませ動揺する。頭上の空中に静かに瞑想しながら佇むライナを睨む。
レッドモンドさんから教えられた盲目状態の対応の仕方。それは己が執着するものに全神経を尖らせ。背に乗る騎竜乗りの背中に押し付つけられるおっぱいを全感覚で感じとることである。騎竜乗りの胸から己の背中を通じて全感覚を共有することである。名付けて心胸圧感覚術(今考えた)である。レッドモンドさんによると自分が執着するものに全神経を置くと感覚が共有ができるというのだ。理論が解らないが。レッドモンドさんの場合は筋肉だが。俺の場合は女性のおっぱいである。故に背中に騎乗する彼女のおっぱいを通じて全神経にいきわたらせ。彼女の体験する感覚を共有しているのである。心の目というよりはおっぱいの目みたいなあ?。自分で言っておかしいこと言ってるのは自覚しているだが。実際そうなのだから仕方がない。感覚共有されると無駄な思考が省かれ。残るのは反射神経、反応速度。俺はそれを応用し。レッドモンドさんから教えられた武術の一つである合気道で対応しているのだ。アルベッサが光速で突っ込むスキルならばそのスピードの威力をそのまま利用し。返しているのである。
『なら、もう一度。アブソリュートスパークル(絶対なる光彩)。』
カッ!ひゅんーーーーーーーーー
アルベッサの翼と身体が輝きを増し光速にライナに突撃する。
ひゅううううううーーーーーーがし
『なっ!?。』
ライナは突っ込んできたアルベッサの片腕をがしっと素早く掴む。
アルベッサは盲目状態であるライナが光速で突っ込む自分の腕を掴むとは思っていなかった。
ぶん
ライナはそのままアルベッサの進む方向に腕を引っ張り上げると頬に素早く裏拳を打ち付ける。
パンッ
『グハッ!。』
アルベッサは苦悶な表情で悲痛の叫びが上がる。
アルベッサはよろっと項垂れるようにライナの後を背に空中を漂う。
少し進むとくるりと方向転換をするとじっとライナを見つめる。
アルベッサの竜顔はライナに殴れ顔が少し崩れてる。
『うふふふふ、あっはっはっはっ!。これだ!これを待っていた!。矢張騎竜同士の戦闘はこうでなくては。綺麗事に飾り並べたレースとは訳が違う。これこそが本当のレースの醍醐味よ。』
「アルベッサ、大丈夫。血が出てるわよ。」
レカーリヌは殴られた顔が崩れた血塗れ顔のアルベッサを心配する。
『黙れ!レカーリヌ。俺は良い気分なんだ。くく、そうか。無能で俺を倒すか。正にその通りだな。だがそう簡単に俺を倒せんぞ。』
狂乱するように気分が昂った美しき竜は色褪せた平凡な竜を獲物を見つけたような好奇な眼差しを向け竜の口元あがる。
盲目となったライナはそんなアルベッサの姿など気にすることもなく。沈黙を保ったまま静かに佇む。
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