第155話 take your marks
『さあ、今宵オーシャンパールにて人魚族対人間族のレースが開始されようとしています。私、女王に見届け役と実況を任されました。ラームと申します。解説には人間族を招き入れた張本人。トラブルメーカーのネウさんにお越しに来て頂きました。ネウさん宜しく。』
『はい、宜しく···てっ、誰がトラブルメーカーよ!。』
隣で珊瑚礁固められた席にネウが強く反論する。
『事実でしょうに。貴女が面白いことが好きでわざと街中でトラブルを起こすことはオーシャンパールの都市内でも有名ですよ。』
『ぐぬぬ、告げ口した奴。後で覚えてらっしゃい!。』
ネウは握り拳をつくり何か復讐の策謀を始める。
『さて、観客席に座るオーシャンパールに住む市民達も盛り上がって参りました。様子を見てみましょうか。』
魔法具のスクリーンタイプモニターに観客席に座る人魚達が写し出される。
パッ
「海王竜様頑張って!!。」
「ファソラ王女様応援しております!。」
「絶対人間族なんかに敗けないんで!。」
「キャーーー!。ファソラ様かっこいい♥️。」
「リヴァイン様しびれます!!。」
キャーー! キャーー!
わーー! わーー!
『凄い声援ですね。では次は人間族に対しての人魚族の声援はどうでしょう。人間族にとっては敵地ですから。応援する人魚もいないとおもいますけれど。一応確認してみましょう···。』
パッ
「そこの汚い汚物を早くぶっ飛ばしてまえっーー!!。」
「そこの汚らしい掃き溜めのゴミためノーマル種をゴミ捨て場に捨ててしまえーーーー!!。」
「そこの糞を撒き散らすドラゴンを懲らしめて下さい!海王竜様!!。」
「「「糞ドラ!糞ドラ!糞ドラ!糞ドラ!。」」」
「Fuc◯ you‼️ Fuc◯ you‼️。」
キィーー!キィーーー!
人魚族に誹謗中傷、非難、罵倒嘲罵の嵐が飛び交う。殆んどの人魚族の娘達は乗り手の人間族ではなく。その騎乗する騎竜のノーマル種に非難、罵倒、罵詈雑言を浴びせてくる。中には怒りのあまり中指を立てているものもいる。
一匹のノーマル種に対して観客席に座る人魚達は一斉に徒党を組み。完全なるノーマル種ライナのアウェーができていた。
「これは····、みんな人間族にではなくその乗っているノーマル種の騎竜に誹謗中傷、非難罵倒の嵐を浴びせております。普段温厚で温和な人魚族ですが。どうなったらあそこまでとちくるったようにキレさせることができるのでしょうか?。私は疑問に思います。」
「そうね。私もあそこまで嫌われたことはないわ。」
トラブルを引き起こすトラブルメーカーである人魚族のネウでもここまで同類を怒らしたことはなかった。
ギャーーーー💢ギャーーーー💢
「ライナ····なんか···。観客席にいる人魚の人達、物凄くライナのこと嫌っているんだけど。何したの?。」
「·········。」
観客席すわる人魚達全員が自分の騎竜を対し怒号罵倒を吐き。怒りの矛先をむけられているのでアイシャは困惑する。
遠くを見るような竜瞳の眼差しでライナは悟りを開いたような竜顔で言葉を返す。
ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアギャアギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャア·····
「アイシャお嬢様、すみません。聞かないで下さい。世の中には知らない方が幸せなこともあるのですよ····。」
「そ、そうなの····。」
アイシャはライナがこれ以上足を踏み入れてはならないそんな領域を出していたのでこれ以上聞くのが怖くなり聞くのを止めた。
ん~~?。おかしいなあ~?。あそこまで嫌われるとはおもわなかったよ~。糞ドラまで有り難くないあだ名まで付けられる始末だし。やっぱう○この神がいけないんだろうか?。
一応神なのに·····。
なんてことをライナは内心思っていた。
「では双方に位置に着くが善い。」
人魚族の女王サラスの指示で海底に敷かれたスタートラインに脚を踏み入れる。海底ではあるがペイントのようにくっきりとラインが敷かれていた。
海王竜リヴァインの海底に脚をつかず(脚がない)巨大な長い胴体が隣に遊泳するように揃って並ぶ。
『ふん、我はレースなどせずとも我が力があればノーマル種など簡単にひねり潰せるものを。』
ヒレのついた竜顔は不快にしかめる。
ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャア
「そう簡単に倒せると思うなあ。俺はあんたのような強そうな竜と何度も渡り合っているんだからな。」
『ふん、所詮は10年20年程度の経験であろう。我は千年以上も生きているのだ。貴様とは年期も経験も貫禄も違うわ。』
ギャアラギャガアギャアラギャ?
「だがレースの経験はないんだろ?。」
『我の歩んだ時代は日々戦いと戦乱の日々よ。平和ボケしたおままごとのようなレースと訳が違う。』
ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアギャアギャアラギャギャア!
「なら、試してみるといい。言っとくがレースはそんなに単純ではない。ただ勝てば言いという訳じゃないぞ!。」
互いの竜瞳が睨みをきかす。
さて、問題は海中をどうやって進むかだな。
求愛の貝殻繋ぎの効果で息継ぎも問題ないし。海中でもスムーズに歩くこともできるが。だからといって飛行出来るわけではない。実際は海中のレースでは飛行ではなく泳いで進まなくてはならないのだ。ノーマル種は泳ぎ得意と言うわけでもなく。不得意でもない。ただ海洋型の竜(ドラゴン)と比べれば遊泳能力は矢張彼方が上であろう。何とかして海中を早く進む方法を探さなくては。翼をヒレ変りに無理だろうから。尻尾を使うという手もある。この俺の長い尻尾を船尾にあるスクリューみたいにぐるぐると回せば或いは海中の中でも速く進めるかもしれない。相手は海を統べる海王竜という奴だ。海を統べるというのだから泳ぎが不得意なわけではなかろう。
俺は海中で行われるレースに策を巡らす。
「ヨーイ!。」
人魚の女王サラスは手を振り上げる。
ライナはスタートラインの前で脚を曲げ屈む。
海王竜リヴァインは長い胴体をくねらせ正姿勢を保つ。
そう言えば人魚形式のスタート合図は聞くのをわすれていた。まあ、人魚族にレースの概念がないから普通だと思うが。
「take your marks(テイクユアマーク)!!。」
バシャ!!。
ギャアああああああーーーーーーー!!
「本格的すぎるわあああーーーーー!!。」
ライナの突っ込み所満載の咆哮とともに人魚族と人間族の決闘レースの火蓋が今切って落とされる。
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