第156話 海王の力
ぼこぼこ
バぁッシャーーん!
先に躍り出たのは海王竜リヴァインであった。長い尾ひれを駆使し。海底にあるあらゆる障害物を無用に蹴散らしていく。
ごぼっ ごぼっ
『ふん、矢張我が先頭のようだな。当然だ。海の王者として我が泳ぎに勝るものなどいない。当然地上の最下層のノーマル種に敗ける道理もない。』
鶏冠のヒレがひらひら揺れ。海王竜リヴァインは余裕の笑みをこぼす。
「油断しないで!。リヴァイン。あのノーマル種がただのノーマル種でないと貴方は一番理解しているはずよ。お母様の命令で人間に手をかけようとした時あのノーマル種が貴方に何をしたか忘れたの?。」
リヴァインの背に騎乗する人間に変身している人魚族の王女ファソラは激しく叱咤する。
『あ···あれはだな····。ただ隙を突かれただけよ!。面妖な力を扱うノーマル種に少し遅れをとっただけだ。海を統べる王である我があのような矮小なる最下層の竜に敗ける道理はないのだ。』
ふりふりとリヴァインは頭をふる。
「はあ~、それを油断って言うのよ。」
ファソラは呆れたようにため息を吐く。
『しかし、矢張といってよいか。圧倒的すぎたな。レースにもなっていないぞ。』
後方にはまだあの問題のノーマル種は追い付いていない。当然だ。海洋型の竜の泳ぎに地上の竜が追い付けるはずがない。しかも海を統べる竜として地上の竜に泳ぎで敗けるなど海王竜リヴァインにとってプライドが許さない。
「こんな筈ではなかったわ。てっきりあのノーマル種はもっと他に奥の手があるようなそんな気がしたのよ。」
ソファラは買い被っていたわけではない。あの主人に従順であり。海王竜リヴァインを一瞬だけ怯ませたあの力に。あのノーマル種はまだ他に秘めた力が備わっているのではないかと用心していたのだ。確かにこんなに初めて欲しいと感情を芽生えたノーマル種を寸なり手に入れられるなら嬉しいことはない。しかし遠い従姉妹のパール・メルドリンの手前少しがっかりした感情も芽生える。
『矢張海王竜リヴァイン様。スタート開始に既に人間族のノーマル種の騎竜を突き放し。既に二頭の間に距離ができてしまった。これはもう既に勝敗を結したかーー!。』
わーーーーー!わーーーーー!。
放送の席で人魚族の実況者ラームの実況に熱がこもる。
「当然の結果よ。我々人魚族の守護竜である海王竜リヴァイン様がノーマル種なんぞに敗けるはずがないのです。」
珊瑚礁で型どった一番の高台の座席に座る人魚族の女王サラスは高見の見物で勝ち誇った笑みを浮かべる。その真下の段差の席にパールは指を絡ませアイシャ達の無事と勝利を祈る。
どうかアイシャ無事に勝って····。
その更に真下の段差の席に人魚族の兵の監視課に置かれた人間と騎竜が座っている。
「だから言ったじゃありませんか!。ノーマル種が海を統べる竜の王に勝てっこないって。あんなに突き放されてますよ。もう追い付けませんよ!。」
水空竜ソイリは鶏冠ののヒレをピクピクさせ非難する。
「まだよ。ソイリ。ライナの本領発揮するところはここからよ。まだライナはBoin走行も使用してないわ。」
隣席に座るレイノリアは自信に満ちた声で返す。
「何ですか?。そのBoin走行っていうへんなは単語は?。聞いた感じあまり強そうには聞こえませんが。」
水空竜ソイリは首を傾げる。
「ライナが得意とする加速飛行よ。」
レイノリアは笑顔で答えるとソイリは眉を寄せ呆れた顔を浮かべた。
「飛行って·····此処海底ですよ!。飛行なんてできるわけないでしょ。海中は泳ぐことしかできませんよ!。終わった····。全て終わった····。」
水空竜ソイリは頭を抱え絶望する。
「まあ、まだ待てソイリ。レースはゴール到着するまで解らないものだ。此処が海底だろうとアイシャ様もライナも何か考えがある筈よ。」
メルドリン家の門番シェークは静かにソイリを論する。
「考えですか?。考えで戦況が変わると思えませんが。」
水空竜ソイリはライナ達が敗北してしまうことを覚悟した。
「········。」
銀晶竜ソーラはじっとスクリーンに写るライナのレースの光景を凝視する。
ごぼっごぼっ
ライナは竜の翼を畳み。腰から脚をにかけて滑らかに上下させ海中を蹴る。尻尾を左右にくねらせ流れるように泳いでいる。
「ライナ、追い越されちゃったね。」
ライナの背でアイシャは眉を寄せ肩を落とす。
スタート開始からここまで距離を取られてしまうとは思ってもいなかったようだ。
ギャアギャラギャアガアギャアギャアラギャアガアギャアギャア
「そうですね。だけどBoin走行がありますよ。アイシャお嬢様。」
「Boin走行って海中でも使えるの?。」
アイシャはライナのBoin走行が海中でも使えることが初耳であった。泳ぎと飛行は違うと思っていたからである。
ギャアラギャアガアギャアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャア
「はい、でも飛行方法とは変わると思います。やり方は違いますけど。Boin走行は泳ぎに転換できると思います。」
「そう。じゃ、ライナ、Boin走行やるね!。」
ギャアギャアギャ
「宜しくお願いします。」
アイシャお嬢様は海中でゆっくりと背に胸を密着させる。
むにゅう♥️
柔らかい2つの感触が海底ありながらもあた伝わる。
胸を密着させたまま左右に揺すり始める。
すりすりすりすりすりすりすり
膨らみが鱗肌に擦られる。
キタァキタァキタァキタァキタァ!!。
漲って来っタあーーーーーーー!!。
ギャああああああーーーーーーーーーー!!
ぐるぐるぐるぐるぐるん!!
ライナの長い尻尾が歓喜の咆哮とともにスクリューのようにぐるんぐるんと回り出す。ライナの尻尾よって海底から泡が吹き出される。
ギャあああああああああーーーーーーーーーー!!。
(オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️)
びゅううううううるるるるるるるるるるるるるーーーーーー!!。
モータージェットの如くライナの身体は海底を突き進む。
『何だあれはっ!?。』
人魚の実況のラームは魔法具のスクリーンを絶句顔で指をさす。
ざわざわざわざわ
ぎゅるるるるるるるるるるるるんんん!!。
映像スクリーンにはライナはありったけの尻尾を回転させ泡を作り出し。物凄いスピードで海底のコースを突き進んでいく。
その光景をみた観客席の人魚達全員は皆呆気にとられ。口を半開きしたまま暫く固まっている。
『信じられません!。あのノーマル種。物凄いスピードで海底を突き進んでいます。尻尾ですか?。それを回転させ物凄いスピードで加速しております。凄い!というか気持ち悪い!!。』
人魚族の実況ラームは思わず本心を口にしてしまう。
『うふふふふっ。あっはははは!!。。』
隣の席では解説のネビアが腹を抱え爆笑している。
「何なのですか··。あのノーマル種は!?。何であんなふざけた泳ぎで加速できるのですか!?。しかもあの騎竜乗りの人間の娘。何故ノーマル種の背に乗って自分の胸を擦りけているのですか?。訳が解らぬ·····。」
人魚族の女王サラスはノーマル種とその人間の騎竜乗りの令嬢の奇怪で奇妙な遊泳行為にただただ呆気にとられる。
「ほら、ソイリ、見たでしょう!。あれがライナのBoin走行という加速飛行よ!。」
レイノリアは嬉しそうに水空竜のライナの加速飛行を説明する。
「はい····そうですね···。確かに凄い加速飛行ですけど(実際泳いでいるが。)。ただ·····」
確かに凄い加速なのだが。水空竜ソイリはライナの泳ぎは正直なところ素直に気持ち悪いと思ってしまった。
ぐるぐるぐるぐるぐる🌀🌀🌀🌀🌀🌀
尻尾を回転させスクリューの役割を果たすライナの尻尾は泡を撒き散らし。猛スピードで進んで来る。
前方に長い胴体をくねらせた海王竜リヴァインが目に入ってくる。
「!?。リヴァイン追ってきたわ。」
『ほう、ノーマル種にしてはやりおる。このまま戦闘しないまま終わってしまうかと思ったが。そうではなくてはひねり潰すことも叶わぬからなあ。』
ぐるぐるぐるぐるぐる🌀🌀🌀🌀🌀
『さて··と······。』
後方に首をむけると海王竜リヴァインは押し黙る。
「何なのあのヘンテコな泳ぎ。今までかつて···みたことないんだけど····。」
追ってきたライナ達にファソラと海王竜リヴァインは一瞬呆気にとられる。
ぎゅるるるるるるるるん ボコッボコッボコッ
ライナの尻尾から白泡吹き上げる。
『くっ、何処までふざけたノーマル種よ!。だがこれで我が鬱憤を晴らせるもの。喰らうが善い。これこそ海を統べるものの力よ。』
バシャバシャ
海王竜リヴァインは身を翻し。後方から追いかけてくるライナ達に向けて長い胴体を変える。幾つもあるヒレが逆立たたせ。大きな嘴が吠える。
海王竜リヴァインの嘶きとともに海底の海中温度が一気に冷たく熱く変わる。急激なながれが生み出される。。
海王竜リヴァインの海中の流れが一気にライナ達に向かって放たれる。
『海流変動!!。』
どどどどばばばばッザバあああーーーーーーー!!。
海中でありながら津波ほど威力のある流れが押し付けれるようにライナ達を襲う。
「きゃああああーーーーー!!。」
ギャアああああああーーー!!。
アイシャとライナは激しい海流に呑み込まれ押し流される。
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