第143話 熱戦焼戦超炎戦

ゴゴゴゴ

バァサッ!!バァサッ!!


俺はグツグツとマグマが煮えたぎり。溶岩が流れる山面上空を進む。獄炎山は火口から火柱が上がり。溶岩が血管のように枝分かれし麓前まで流れだしている。


「ライナ、Boin走行しようか?。アイシャから教わっているから私もできるわ。」


アイシャお嬢様からレインお嬢様はBoin走行の仕方を教わっていた。レインお嬢様はアイシャお嬢様から何の疑いもせずに真面目に聞いてくる。流石は騎士系の貴族である。俺の言うのも何だが。Boin走行なんて言う変な加速飛行を何の疑いも疑問も抱かずに生真面目教わるレインお嬢様を本当に凄いと思う。


ギャアガアギャアアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャア

「いいえ、大丈夫です。そもそもレースと言っても一着二着と順位を決めるレースではありませんし。少しでも体力を温存したいので。」

「そう、解ったわ。」


レインお嬢様は素直に頷く。

これから獄炎山に待ち構えるガーネットの炎竜族の家族と闘わなくてはならない。相手にするのは合計五匹。爺ちゃんお母さんお父さん、お姉さんお兄さんである。しかも炎竜族の村一番に強いらしく。炎竜族のなかでも強豪らしい。


獄炎山のそそりたつ山面を進む。真下は溶岩が流れ。滑り台のようにまっさらである。


ドロドロドロ

うへえ~あんなに落ちたら一貫の終わりだな。ノーマル種には炎の耐性があるわけではない。炎竜族の鱗はマグマや溶岩の熱も炎も通さないらしい。火の精霊を強く加護を持つのがエレメント種の特性だ。エレメント種は最も火、水、風、土、の精霊の加護を色濃く持つ騎竜である。自分の属性のテリトリーで戦えばば例え相手がエンペラー種やレア種ででも相当手こずるらしい。


バァサッ!!バァサッ!!

俺は滑らか赤みの岩肌の上を進む。高々に伸びる獄炎山の三分一の地点に着く。


ドオオオーーン!!

くっ!?。

突然火球が放たれ俺はそれをすれすれに避ける。


『ほう、上手く避けたのう。孫のガーネットが敗北したというのもあながち嘘では無さそうじゃ。』



老いたくちばしが嬉しげに開く。目の前に真っ赤に染まる鱗に覆われ。背骨がおり曲がった老いた炎竜と優しげな竜顔をのぞかせるメスの炎竜族二匹が姿を現す。

俺はそんな二匹の炎竜族を警戒するように身構える。


『おおっと!ノーマル種が村長ボルゲンさんとその娘のメルトンさんがぶつかったーーー!!。』


キャーキャーー!!。 わーーーーー!!。


実況のメラは放送席に勢いよくマイクをとる。

観客席から炎竜族の歓声が沸き立つ。


「レイン、ライナ······。」

「········。」


観客席に座るアイシャは心配そうに眉を寄せる。隣でな銀晶竜のソーラが深い沈黙を保っている。


『自己紹介は遅れたのう。儂はガーネットの祖父、業炎竜のボルゲンじゃ。一応レア種じゃ。』

『私はガーネットの母で灼炎竜のメルトン。ロード種です。』


よりによって初っぱなからロード種とレア種の炎竜族二匹が相手かよ。

俺は嫌そうに竜顔をしかめる。


「気をつけて!。ライナ。村長でもある業炎竜のボルゲンさんは村一番の実力竜よ。最強の一角である騎竜とも善戦するほどだったと聞くわ。」


ギャギャア?

「最強の一角?。」


最強の一角と善戦って、それはまずいだろう。俺なんか最強の一角の内二頭も相手して善戦どころか完全敗北したんだぞ。

よりによって最強の一角と渡り会えるほどの強豪の竜に出会すなんて本当についてない。


『ふぉふぉふぉ、さてお主の実力見せて貰おうかのう。私の孫がなす術なく敗北したというのだから。相当強いのじゃろ?。』


業炎竜ボルゲンはギラついた赤い好戦的な竜瞳が俺に向けられる。


『お父さまあまり無理をなさらずに····。』


宥めるようにガーネットの母である灼炎竜メルトンがボルゲンを心配する。



なら、手始めに·····

俺は決意を固め二匹の一頭に狙いを定める。


ギャアア!!

「竜破掌!!。」


俺は気を練り込んだ竜の掌を業炎竜ボルゲンに放った。


ドゴオオオオ!!


『ぐふっ。』

『お父様!!。』


ボルゲンは赤鱗の体が気の衝撃を喰らい。身動ぎしたがゆっくりと状態を起こし耐えぬく。


『ふむ、なるほど。レッドモンドの若僧の関係者か。くく、これは面白い·····。』


くっ!効いてない····。

実際は効いてはいるが。決定打にはなっていない。

ていうかレッドモンドさんの知りあいなのかよ。レッドモンドさんも最強の一角のようだから当たり前なのだが。


『レッドモンドと繋がり持つものなら手加減は無用じゃな。そりゃあ!。』


ボルゲンは長首を後ろへ下げ再び前へと出す。


『業炎珠!!。』


ドオオッーーー!

巨大な熱を帯びた炎球が竜口から放たれる。


ギャアーー!!

「竜気掌!!。」


パンッ!!

俺は竜の素手を火球に触れ打ち消す。

じゅううう

触れた掌が赤く焼き染まる。

ギャ!

「ぐっ!」


俺は熱を帯びた竜の素手を引っ込める。


「大丈夫!?ライナ。」


レインお嬢様は即火傷した素手を治癒魔法で癒す。レインお嬢様は火属性魔法が得意だが一応治癒魔法も使えるようだ。

ただ触れただけでもこの熱量。まともに戦えばただではすまない。

こんなときに竜水掌が使えれば·····。

炎竜には水属性効く筈なのだ。調教訓練でガーネットが背中に氷を置かれてひゃあ~と言うくらいである。

この獄炎山で事前に全ての精霊があつかえるかを確認した。結果、この獄炎山の地域では火の精霊しか扱えないのだと発覚した。他の精霊達が何故かこの地域に来たがらないのだ。精霊歌を試しても無駄であった。どうやらこの獄炎山の地域は火の精霊の領域らしく他の精霊を寄せ付けないようである。

故にこの獄炎山の中では火の精霊しか扱えないのだ。炎竜の弱点である氷や水属性の精霊の攻撃はこの領域では扱えないのだ。元々氷は扱えないのはいいとして。水の精霊も扱えないのは痛い。炎竜に火属性が効く分けもないので気だけで闘うしかない。ていうかこのまま続けて炎竜族一家に勝てるのかよ!?。無茶振りも良いとこである。

俺は二匹の炎竜に険しい視線をむける。


『む?どうした?。来んのか?。』


老竜である業炎竜のボルゲンは好戦的な竜瞳を向ける。

もうこうなったら逃げまくって闘うしかない。相手は老竜だ。スピード勝負ならどうにかなるかもしれない。といってもレースといっても勝ち抜きレースだからスピードはあまり関係ないのだが。


ギャアラギャアガアギャアラギャアガア

「レインお嬢様。Boin走行をお願いします。」

「解ったわ。任せて。」


レインお嬢様は快く承諾する。

さてこのBoin走行で何処までできるか····。


俺は集気法を行い大気から気を吸収する。


スゥーーーーーー

ん?何だ!?。

俺はふと気付く。集気法を行い。いつものように大気から気を吸収していたのだが。獄炎山の溶岩から流れる山肌からも黄色の光の粒子が浮かび上がり流れ込んでくる。その気は密度が高く膨大な量である。

·········

まっ、いいか。多量に気が吸収できるのだからそれだけBoin走行が持つ筈だし。

獄炎山から流れ込む膨大な気に関して気にせず。俺はそのまま気を竜の体内に吸収することに集中する。

レインお嬢様はゆっくりと身を低くし密着する。


むにゅううう♥️

レインお嬢様の柔らかく尚且つ弾力がある2つ膨らみが俺の鱗の竜の背中に押し付けられる。柔らかさも申し分ないが。弾力感も半端なかった。カーネギー教官もそうだったが。騎士系の令嬢は身体をみっちり鍛えるから一緒に胸も鍛えささるのかと本気で思ってしまう。


すりすりすりすり

レインお嬢様が左右に揺すり始める。

レインお嬢様弾力感溢れる2つの膨らみがリズミカルに左右に擦れる。


すりすりすりすり

ギャオおおおおおおおーーーー!!

「うおおおおおおおおーーーーー!!。」


俺は虚悦至極の竜の遠吠えを放つ。


『な、何じゃ?何をしておるんじゃ?。』

『あら?まあ、若いわねえ~。私も若い頃は良く夫にしてあげてたっけ。懐かしいわ~。』


何かサラッとガーネットのお母さんがとんでもないことを口走ったような気がするが。気にしないでおこう······。


すりすりすりすり

満遍なく竜の背中に擦れ体内に吸収した気が解放される。


キタァ!キタァ!キタァ!キッタァー!!

漲ってキッタァーーーーー!!


ギャアああああああああーーーーーー!!


竜のくちばしから歓喜の咆哮を放たれる。

ひゅん!

俺は二匹の炎の周りを飛び回る。


『むっ!?業炎球!!。』


ボルゲンは飛び回る俺に熱炎帯びる炎球を放つ。


ぼおおおおっっ!!

サッ


俺の加速飛行に火球をすんなり避けることができた。


『ぬっ?速い!。ならば』

『あっ!?お父様。』


バァサッ

メルトンの制止も聞かずボルゲンはハッスルした爺のように俺を追いかけ回す。

ひゅ~~

これは大丈夫だな。ボルゲンはスピードタイプの炎竜じゃない。どう見てもパワータイプの炎竜だ。ならば加速飛行で攻撃は避けられる。


『うっひゃひゃひゃ。久久に血沸き肉踊るわい。』


ボルゲンは嬉しそうに俺の後を追う。


『おおっと!。ボルゲンさんノーマル種を追いかけ回したぞ。もう万事休すか!?。』


わーーーーー!!わーーーーー!!

観客席から炎竜族の歓声が騒ぎたつ。

旋回を繰り返しながらボルゲンの炎珠を避けまくる。ボルゲンはそのまま俺を追い回す。


『うっひゃひゃ!! ひゃひゃひゃ!!。ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!。


獄炎山リプカフラマに老いた老竜の高笑いが響く。


ひゃひゃひゃひゃひゃ グキッ!!


『はうっ!。』


突然嗤い声を発しながら俺を追いかけ回していた業炎竜ボルゲンの飛行がパタリと止む。その代わりボルゲンは前屈みになりながら腰をおさえ空中で苦しそうに呻いていた。


『じ、持病の····ぎ···ぎっくり腰が······。』


腰をひくつきながらボルゲンは苦しそうにしている。


『ほら、言わんことではないです。』

バァサッバァサッ


呆れたように付き添っていたガーネットの母、灼炎竜メルトンさんは近づきボルゲンの肩を竜の長首で支える。


『私達はこれで棄権をしますので。どうぞお先にお通り下さい。』

ギャアラギャア····

「ああ、どうも····。」


俺は毒気が抜けたように返事を返してしまう。


『おおっと!残念ですねえ。業炎竜ボルゲンの勇姿を観られると思ったのですが。矢張歳には勝てなかったようです。』

『消えます。消えます。』


ブーーーー! ブーーーー!


観客席から炎竜族の不満のブーイングが響く。


「取り敢えず難関であったボルゲンとの戦闘は避けられたようですね。あの方はまだ健在とはほんとしぶといことです。しかしこの先はそうラッキーは続きませんよ。どう対処しますか?ライナ。」


アイシャと一緒に観戦する銀晶竜ソーラは静かに魔法具のモニター写るライナの姿を見据えていた。


バァサッバァサッ

取り敢えず何とかガーネットの祖父と母親を退けたな。(殆どラッキーだったけど)

俺は獄炎山火口目指して進む。


「何とかなったわね。ライナ。」

ギャギャア

「そうですね。」


殆ど運が良かっただけだけど····。

獄炎山の中間地点までたどり着く。滑るような傾斜の山岳の面が広がっている。


『来たか·······。』


目の前に瞑想していたのか。スッと赤い竜瞳の瞼が開く。

目の前に寡黙な様子の口数少ない炎竜が空中に止まっていた。


『私はガーネットの父、エンペラー種、暴炎竜のフォトン。ガーネットを負かしたその実力。確かめさせてもらう········。』


寡黙な様子だったフォトンの竜瞳が鋭さを増す。


今度はお父様がお相手ですか·····。

俺はゲンナリしながらも炎竜族一家の大黒柱を相手にする。

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