第140話 おませな炎竜

ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャギャアガアギャアラギャ

「ああ、すみません。ここ、立ち入り禁止だったのね。すぐに立ち去るよ。」


俺は竜の脚を動かし去ろうとする。


「別にただ言ってみただけよ。村の竜達は普通に入っているよ。ただ他の竜種が脚を踏み入れることを大人達が好まないだけ。村のみんなが勝手に決めたことだから気にしないで。」


おませな感じの炎竜はそう呟く。


ギャアギャ·····

「そうなのか·····。」


この娘やけに達観してないか?。年頃として遊びざかりの歳だろうに。

炎竜族の少女は見た目からして10歳くらいであろうか?。正直言って竜族の歳と容姿が比例するとは限らない。銀晶竜のソーラさんの件もあるし。


ギャアラギャガアギャアラギャガアギャ?ギャアラギャガアギャ?

「1人でこんな所出歩いているのか?。親達は心配しない?。」


炎竜族は何処まで過保護か知らないが。炎竜の少女が活火山に近づくのは矢張問題なかろうか?。


「私の家族。お姉ちゃんのことで喧嘩ばかり。もううんざりよ。私はここで気張らしているの。」


おませな炎竜の少女はぷいっとそっぽを向き。しかめっ面を浮かべる。

何かこの炎竜の娘の家庭事情に問題を抱えているようだ。これ以上口出しをしないようにしよう。家族のことに部外者が口出するもんじゃあない。


「貴女ノーマル種でしょ。初めて観たわ。ここの炎竜族は他の竜種は滅多に来ないから。特に底辺と言われてるノーマル種は特に。炎竜族の皆はノーマル種は竜族の中で低能な騎竜だと言ってるよ。」


相変わらずノーマル種は下位に位置付けられているようだ。そんなの今に始まったことではないが。


「何しに炎竜族の村に来たの?。ここは年中熱い土地だから他の竜種は来たがらないのに。」


おませな炎竜は不思議そうに首を傾げる。


ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアギャアラギャギャア

「俺の主人の親友の依頼だよ。騎竜契約が解消されそうなんだ。それを止めにね。」

「ふ~ん、そっちも大変なのね。」


俺よりも年下の竜に同情される状況になんともいえない苦笑いを浮かべる。


ギャアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャギャ





「そう言えば自己紹介まだだった。俺はノーマル種のライナだ。」

「ライナ······。」


ライナという名前におませな炎竜の少女は眉を寄せる。


「そう····貴方がお姉ちゃんの。」

「?。」


おませな炎竜は何か納得したような素振りを見せる。


「私は炎竜族のルビー、レア種で獄炎竜よ。お山さんから階級種の名を貰ったのよ。村一番で強力な炎を扱えるからって。」


獄炎竜とは何かやたら禍々しい名だな。炎竜族は個体差が有るゆえにエレメント種であっても階級種で区分けされるとは聞いてはいたが。こんな少女にまで獄炎竜という凶悪なネーミングを名付けられるんだな。本心では嬉しくないだろうに。


ギャアギャ

「大変だな。」

「何が?。」


おませな炎竜の少女ルビーは首を傾げる。


ギャ ラギャギャアガアギャアラギャギャアガアギャアラギャギャ?

「いや、獄炎竜という階級種名を名付けらて正直嬉しくないだろう?。」


おませな炎竜の少女ルビーはパアッと表情に変わり。大人びた雰囲気からガラリと変わる。


「解る?。炎竜族のみんなは凄い名前と誉め称えてくれるけど。私としては獄炎竜なんて嫌なのよ。お山さんのことは嫌いじゃないけれど。やっぱりメス竜のネーミングとして獄炎は無いと思うわ。」


根掘り葉掘り自分の心情ぶちまけてきたこの娘。相当この階級種のネーミングにコンプレックスを抱いているようである。


「貴方見る目あるわ。私のお付きにしてもいいわ。」


ギャアラギャガアギャアラギャギャアガアギャアラギャガアギャアラギャ

「それは勿体無きお言葉。ですが私目には遣えている主人がおります故」


俺は丁寧にお断りの返事を入れる。


「駄目か~。ん~~、あっ!?。でもお姉ちゃんとくっ付ければ···ごにょごにょ····。」


おませな炎竜の少女ルビーは何かは閃いたように独り言をぶつぶつ呟き出す。


「じゃ、お願いあるんだけど。ライナ。」


おませな炎竜の少女ルビーは甘えるような仕草をする。さっきの達観や大人びた態度とは偉い違いである。


ギャアギャア?

「何でしょうか?。」

「私を貴方の背中に乗せて村中を駆け回って欲しいの。」

ギャ~~

「ええ~~。」


俺は嫌そうに竜顔をしかめる。

本来女の子を背中に乗せることは俺としては嬉しいことではあるが。胸の感触も味わえるのだから断りを入れる必要もないのだけれど。しかし相手は炎竜族である。背中に今でも炎竜ガーネットの抱き着きいた時の熱炎の感覚が鮮明に残っている。しかも乗せるのは獄炎竜と言われているレア種である。俺の背中に炎が昇らないという確証もない。寧ろ獄炎並みの炎が上がるんじゃないかと恐怖さえ覚える。


ギャアギャアギャアギャアラギャガアギャアギャアラギャガアギャアラギャギャアガアギャアラギャギャアガアギャアギャアラギャガアギャア

「すみません。お断り致します。メスはプライド高いから背中に乗らないと聞きますし。炎竜族では背中に抱き着くのは上下関係の現れと聞いております。」


俺は丁寧に断りを入れようとする。


「別に私は気にしないよ。上下関係ってノーマル種が背中に抱き着いても問題ないと思うわ。ノーマル種は私達より下でしょ?。」


おませな炎竜ルビーの返しに俺は狼狽えながら言葉に詰まった。

ぐっ!、確かに正論だ。ガーネットの時は上下関係を重んじるゆえにオスとしてプライドないのか!と責められたが。この娘にとっては俺は下に位置付けられているのだから背中に抱きついても問題ない筈。

しかし······

俺はたらりと竜の額から冷や汗が流れ落ちる。


ギャアラギャガアギャアラギャギャア?

「あの、君を背中に乗せても激しく燃え上がったりしない?。」

「?。燃え上がるってツガイの身体を重ねる交尾じゃあるまいし。」


おませな炎竜の少女はケラケラと何の冗談?ってな感じで愉快に笑う。

この娘この歳で凄いことを言っているよ。

炎竜の子の性知識の倫理観が解らなくなってきた。


「大丈夫よ。私は燃えたりしないわ。これでも私は常に平常心を保っていられるのよ。」


おませな炎竜の少女ルビーは腰に手をあて堂々と胸を張る。

まあ、こうも自信満々に言い張るのだから信じるしかないか。

俺は断ることを諦め。仕方なくこの娘を乗せて炎竜族の村を駆け回ることにした。


ギャアラギャガアギャアラギャギャアガアギャ

「解りました。それでは姫様。どうぞ我が背中に。」

「うむ、苦しゅう無い。」


武家の従者と姫君の真似事を行い。ノリノリでおませな炎竜の少女ルビーは俺の背中に乗り上げる。

炎竜の少女が勢いよく俺の背中に乗ったことにより少女の胸が俺の背中にあたる。

むにゅう♥️


なっ····んっ!····だとっ!?。


俺は凍りついたように竜瞳の瞳孔が開き絶句する。

有り得ない感触が俺の背中に伝わったからである。


馬鹿なっ!胸がっ!?···ある!····だとっ!?。


どう見ても10歳の年頃の少女にむに♥️ではなくむにゅう♥️という胸の大きさの感触を背中にかんじた。普通なら有り得ないことである。

確かに炎竜族のメスはスタイルが良いし。胸もbone‼️とつき出してはいるが。この少女の歳から既に押し付けられる胸があるなどと···。炎竜族の胸の成長比率が可笑しいじゃないのかと思えてくる。


「どうしたの?、早くいこう。」


おませな炎竜の少女はそんな俺の考えなどお構い無しに急かす。

仕方ない。取り敢えず適当に村中駆け回ろう。


願わくば背中に炎が燃え上がらんことを···。

俺は意を決し竜の脚を動かす。


ドドドドドドド!!


俺はおもいっきり赤みの土を蹴りあげ。土煙を起こし。炎竜族の村中を駆け回る。

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