第134話 変形の竜

『これは凄い!!。あのノーマル種、エレメント種、ロード種、エンペラー種全て倒した!!。』


実況のガルボ・ナラは激しく魔法具のモニターに映るレースでのライナ達の光景を伝える。


わーーーーー!!わーーーーー!!


観客席から熱気がこもる。


『本当に信じられません。まさか本当に上位種をノーマル種で倒してしまうなんて。』


解説の庶民の騎竜乗りクレネールも驚きのあまり開いた口を閉めるの忘れてしまう。


「リストラ!見た!?。あのノーマル種三頭も全ての上位種を倒しちゃったわよ。信じられない······。」


甲冑に身を包んだ令嬢サブリナは呆然と目の前の光景を起こしたノーマル種に驚きの眼差しを向ける。


『矢張このレースでの強敵はあのノーマル種だったな。』


甲殻に覆われた騎竜は警戒満ちた竜瞳の眼差しをライナに向ける。


「リストラ、どうする気?。やっぱりあのノーマル種とかち合うつもり?。正直私としてはあんな運河の水をも操るノーマル種とは戦いたくないんだけど····。」


サブリナは眉をひそめる。

あんな膨大な運河の水を操るノーマル種と真っ向で戦えば苦戦するとは言わないが。分が悪い気がする。


『逃げに徹してゴールを目指そう。もし追い着いてしまったなら戦いながらゴールを目指すしかない。』


甲殻に覆われた竜リストラは冷静に主人に今後を伝える。


「追い着くって貴方のスピードに誰もついていけないと思うけど。もし貴女のスピードについていけるものがいるとしたらエレメント種の疾風竜しか考えられないわ。」


相棒のリストラに追い抜けるのはスピードに長けたエレメント種の疾風竜しか考えられない。稀にエレメント種の炎竜にもスピードに長けた竜は生まれることもあるが。他のレア種のスピードに関する特殊スキルを持ち以外ならリストラはほぼ無敵である。


『サブリナ、用心に越したことはない。あのノーマル種は他にも隠し球を持ち合わせているかもしれないではないか。』

「あんまり恐い事言わないでよ。ノーマル種が精霊を使役できるだけでも恐いのに。」


サブリナは精霊を視認できる魔眼持ちであっる。自分の家系は代々魔眼が持ちが生まれる貴族である。


『サブリナが次期当主として騎竜乗りの修行したいというから私は着いてきたのだ。強いノーマル種と巡り逢えたのだからいい経験ではないか。』

「正直上位種を倒せる程のノーマル種がいるなんて私も思っていなかったんだけどね····。」


サブリナは呆れたようにはあっと肩を落とし苦笑する。


『それもよい経験だ。ではサブリナ変殻を行う準備せよ。』

「解ったわ!。」


サブリナは甲冑に身を包んだ体を縮ませる。

リストラは瞑想すると咆哮を放つ。


ギャアあああーー!!

『変殻!!。』


パンッ!パンッ!パンッ!


何かが弾けたように甲殻に覆われたリストラの体から鎧のような殻が弾け飛ぶ。殻が意志を持つかのようにリストラの竜の体の周囲をぶんぶんと飛び回る。飛び回った殻は再びリストラの体に接着する。


ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

覆われた甲殻が腕、脚、胴体、関節に接着する。

鋭利な切先が鋭い刃のような姿へとリストラが変貌する。


『変殻完了。スカイフライフォーム(大空飛行形態)』

 

ガシャ

リストラは決めポーズをする。


「相変わらずいつも思うけど。決めポーズする必要性ある?。」


サブリナは眉を寄せいぶかしがる。

変殻を行った後。いつも自分の相棒である騎竜リストラは決めポーズをするのだ。


『仕方ないだろう。我が一族の習わしなのだから。代々我が結殻竜の一族は変殻行った後には決めポーズするのが決まりになっているのだ。』

「はあ、変な習わしねえ。」


サブリナは気を取り直し。籠手用のドラグネスグローブに力を入れる。


『では、サブリナ、振り落とされるなよ。』

「了解。」


ガシャ

サブリナはヘルムに付いた風抵抗防ぐ顔ガードをおでこから下ろす。

風の抵抗を分断できるほど切先が鋭くなったリストラは鋭くなった翼を扇ぐと物凄いスピードで騎竜と騎竜乗り同士が戦闘を行っている運河を突っ切っる。


スバあああああひぃーーーーーん!!


『おおっと!後尾にいたレア種が形を変え運河にいた騎竜達を物凄い勢いで突っ切ったぞおおーーー!』


わーーーーー!!わーーーーー!!


『あれは····まさか結殻竜?。』


解説の庶民の騎竜乗りクレネールは変形する竜を呆然と見つめる。


「結殻竜ですか·····。となれば乗り手はシャイターン家のものですね。まだシャイターン家の結殻竜は健在ということですか。ライナ、三頭の上位種を退く力とくと拝見致しました。ならばレア種のなかで特にトリッキーな竜と知られる結殻竜との戦いも観させていただきますよ。」


観客席に座る瑠璃色の髪と灰銀色の角を生やす銀晶竜のソーラは静かにライナ達のレースの光景を静観する。


エンペラー種の威圧竜ハルバンヌと庶民出の令嬢アリアを退き。ライナとアイシャは最後尾の運河上空を飛行する。


「ライナ、もう他の騎竜乗り達から離されちゃったね。」

ギャアギャ

「そうですね。」


思ったよりも三頭の上位種の戦いに時間をくってしまったようだ。


「ライナ、Boin走行行くよ!。」

ギャアラギャー!

「アイアイサー!。」


アイシャお嬢様は俺の背中で身を低くする。アイシャお嬢様の発育のよい二つの膨らみが背中の鱗に押し付けられる。


むにゅう♥️

胸の肉厚が均等押し当てられ。アイシャお嬢様の体は左右に揺すられる。


すりすりすりすりすり

柔かな二つの膨らみが鱗の肌に左右に擦れる。


キタァ!キタァ!キタァーーー!!漲ってキッタァーーーーーーーーっ!!!。


《ギャアあああああああああーーーーーー!!。》


ライナの竜のくちばしから愉悦虚悦恍惚な高らかな歓喜の咆哮が響き渡る。



ずひゅうううううーーーーーー!!

結殻竜リストラは風の抵抗を切り裂き強烈なスピードで先頭を飛行する。

背中に乗る甲冑に身を包んだ令嬢サブリナは少しでも風の抵抗を無くす為に身を低くする。


「順調のようね。もう誰も追って来てはいないわ。」


運河の騎竜達の集団から離れ。サブリナは安心しきったかのように相棒のリストラに話しかける。


『油断するな!サブリナ!。レースはゴールに着くまでレースだ。ゴールに到着するまで警戒を怠るな。』

「もう、解ってるわよ!。」


サブリナはリストラの用心深さに深いため息を吐く。


『おおっと!。凄い!あっという間に運河に飛行戦闘する騎竜、騎竜乗り達を追い抜いたーー!!。』


わーーーーー!!わーーーーー!!

ガルボ・ナラは魔法具のマイクの実況に熱を込める。


『まさか結殻竜を扱う騎竜乗りが出場しているとは思いもよりませんでしたよ。』


解説席で庶民の騎竜乗りクレネールは眉を上げ驚く。


「結殻竜ですか?。」


結殻竜という竜種を長年実況を務めているガルボ・ナラでも知らなかった。


『はい、結殻竜という竜種は唯一レア種のなかで、変形する竜と言われています。戦闘において臨機応変に変わると。私も初めて観ました。』

『そうですか。これは相当見物ですね。』


レース会場の観客がごくりと息を飲む。

運河上空を先頭で結殻竜リストラが猛スピードで飛行する。


オパパイー····オパパイーヨ···オパパイーヨ····



『はて?サブリナ、幻聴が聴こえぬか?。』

「幻聴?。」

『そうだ竜語でオパパイーヨ‼️という言葉が聞こえるのだ。』

「知らないわ。貴女が耳がいいほうだから。遠くから聞こえるんじゃない?。」

『そうか·····』


オパパイーヨ····オパパイーヨ··オパパイーヨ····オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️


いや、段々と声が大きくなっているような····


ギャアあああーー!!

(オパパイーヨ‼️)


ひゅん!


『何(な)っに!?。』


先頭を高速に進むリストラの目の前に突然緑の鱗に覆われた騎竜が躍り出た。

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