第131話 感謝すべきこと
バァサッバァサッ‼️
わーーーー! わーーーー!
翼の羽音がレース会場上空に響き。観客席の観客の歓声が盛り上がる。
マチェーテという街はそれほど広くない。アイシャお嬢様が通う学園のある騎竜都市ドラスヴェニアの中間くらいである。通り過ぎる騎竜乗りを乗せる騎竜達を街並みからマチェーテの市民達が手を振って応援する。
バァサッバァサッ
先頭では上位種と思われる騎竜が何頭か飛行している。まだ騎竜達は戦闘を行っていない。運河上空で戦闘を行う気なのだろう。ブリジット杯は騎竜乗り同士の戦闘可のレースなのでブーメランの修行を本格的に始めたアイシャお嬢様にとっては初めての実戦レースとも言える。
「ライナ、そろそろ運河入るからBoin走行始めるね。」
ガアッ
街を抜け前方に巨大な運河が見える。隣の街と隔てる大きな川であり。交易が盛んな船が往き来している。
「待ちなさい!。そこのノーマル種とその背に乗る騎竜乗り!。」
突然俺とアイシャお嬢様は呼び止められる。
回り込むように三人令嬢が乗った上位種の騎竜達が立ち塞がる。
攻撃を仕掛けてくると想い。俺は直ぐに気を竜の腕に練り込み臨戦態勢をとる。
アイシャお嬢様も背中のホルダーに収めたブーメランに手をかける。
「貴女どういうつもりなのかしら?。ここの神聖なブリジット杯でノーマル種を騎竜にして出場するなんて。」
一人のリーダー格も思われる令嬢が此方を睨む。
「何のことです?。」
アイシャお嬢様は俺の背で首を傾げる。
「とぼけないで!。ブリジット杯は庶民が貴族に成り上がった特別なレース。それをノーマル種を騎竜に出場するなど。どういうつもりよ!。」
「そうよそうよ!。私達はこのレースには特別な思い入れがあるの。」
「騎竜で最弱と言われたノーマル種でレースに出場し。私達は幾多のレースに戦績を積んでやっとのことで貴族になったのよ!。」
「それなのに貴女はノーマル種でこのレース出場している。勝つ気あるの!。」
「私達が元庶民だから馬鹿にしているんでしょ!。」
三人組の令嬢達は言われようのない文句と罵倒をアイシャお嬢様に浴びせる。
俺は嫌々げに竜顔をしかめた。
言いがかりだ。アイシャお嬢様が俺(ノーマル種)に乗っているのはただ単に家が貧乏で没落貴族という理由なだけである。
「私はリーダーを務めているアリア・クレッセント。爵位は子爵よ。貴方は?。」
「私はアイシャ・マーヴェラス。マーヴェラス伯爵家の娘です。」
「伯爵家の娘?。伯爵家の娘がノーマル種に乗っているというの?。」
アリアという名の令嬢はわなわなと怒りで唇を震わせる。
「貴女は何を考えているの!?。伯爵家の娘でありながらノーマル種の騎竜に乗って出場するなど恥を知りなさい!。」
「私達より爵位が上の貴族だからって馬鹿にしているんでしょう!。」
「そんなことはありません!。私の家は貧乏で没落貴族なんです。」
「伯爵家で貧乏で没落貴族でノーマル種に乗るなんてそれは無いわ~。貴女にプライドと言うものが無いのかしら?。」
殆ど三人組の令嬢はよってたかってアイシャお嬢様を苛めている状態である。アイシャお嬢様も背中に置いたドラグネスグローブから伝わる震える手が泣くのを堪えているのだと覚る。
俺は三人組の令嬢を瞳孔を開いた竜瞳で睨む。
ギャラギャアガ!ギャラギャアガアギャラギャアガアギャラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャ!
「いい加減しろ!。あんたらアイシャお嬢様がノーマル種に乗ろうが乗るまいがあんたらには関係ないだろうが!。」
「ノーマル種はすっこんでなさい!。私達はその令嬢に貴族なんたるかを教えてあげているのです。」
「そうよ。そうよ。ノーマル種は黙ってなさい!。」
「私達は庶民から貴族になった誇りがあるのですよ。ノーマル種風情が口出ししないでもらいたい!。」
リーダー格であるアリア・クレッセントは強気な顔で胸を張る。
段々と俺の竜の鶏冠はカチーンと頭に来ていた。
正直彼女達が苦労してノーマル種を背に戦績を積んできたことははっきり言えば俺は称賛に値すると思っている。ノーマル種の能力が低いということをこの身で味わってる。だからこそその苦労は絶え間ないものだったに違いない。寧ろこのブリジット杯のブリジット・カスタネットの偶然レア種を手に入れて圧勝連勝してきた貴族になった庶民よりは共感を覚える。
だけど彼女達の言い分にはどうしても容認できないものがある。
ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャ
「あんたらは庶民出から貴族になったことに誇りを持っていると言ったな。」
俺は三人組の庶民出の令嬢に静かに語りかける。
「それがどうかしましたか。ノーマル種?」
リーダー格の子爵の令嬢アリアは不思議げに眉を寄せる。
ギャアラギャアガアギャアラギャ?
「そこにノーマル種はいるのか?。」
「はあ?」
ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャア!
「そこにノーマル種がいるのかと聞いているんだ!。」
俺は吠えるように三人の令嬢に怒鳴る。
ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャラギャアギャア!
「あんたらが庶民で汗水垂らしながら戦績を積み。貴族なったことは立派だと思う。だがそこに相棒のノーマル種の感謝の言葉が何一つない!。あんたらここまで頑張れてこれたのは相棒だったノーマル種のおかげじゃないのか!。貴族にまでのしあがれたのはそのノーマル種の頑張りがあったからじゃないのか!違うか!!。」
「っ!?·····”」
「!?っ·····。」
「っ!······。
三人組の令嬢は急に押し黙る。
ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャア!ギャラギャアギャア!ギャラギャアガアギャアラギャアガアギャラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアギャアラギャアガアギャアラギャーーー!!
「あんたらは庶民から貴族になった誇りしか言っていない。一緒に頑張ってきた相棒だったノーマル種に対して感謝の言葉を何一つ発していない。そんな感謝も相棒であったノーマル種の想い出さえも忘れてしまったあんたらに俺とアイシャお嬢様の関係をとやかく言う筋合いはねえーーっ!!。」
「·········。」
「········。」
「·······。」
俺の竜の罵声を電気を発したかのように三人組の庶民出の令嬢は急に押し黙り硬直している。
『そこまでです!ノーマル種。』
突然リーダー格の令嬢アリアに乗っていた上位種の騎竜が口を開く。
『お嬢様方この無礼なノーマル種は私達は黙らせましょう。』
『上位種である私達がこの無礼なノーマル種を分をわきまえさせすので。』
彼女の騎竜達は俺に対して既に臨戦態勢をとっていた。
「ええ···。頼むわね····。」
三人組のリーダー格であるアリアは力なく口を開く。
『さあ、ノーマル種よ。私達が貴方を成敗いたしましょう。』
『お嬢様、侮辱した罪、万死に値します。』
『我々との力の差をお見せしましょう。』
ギャラギャアガアギャラギャアガアギャ
「きな。俺は今かなり頭にきている。」
俺は両の竜の腕に気を練り込む。
俺の背にはアイシャお嬢様もブーメランを握りしめている。かなりやる気満々のようである。
目の前の三頭の上位種の騎竜に平凡な竜は臆することなく攻撃を仕掛ける。
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