第123話 スフィアマナン編 ドラゴンウィーク
わいわい がやがや
一年教室内の令嬢生徒達と騎竜は教室内で盛りあがるほどおしゃべり始めていた。皆嬉しそうにはしゃぎ騒いでいる
「静かに!。」
教卓の前に凛々しさと逞しさと豊満な胸を兼ね備えたカーネギー教官が立つ。
席に座る一年令嬢の教室内は一瞬でしーんと静まりかえる。
「さてこれよりお前達がドラゴンウィーク、竜の骨休めと言われる長期連休に入る。この連休は長く共にした騎竜を労う為に体を休ませることを意図としてできた連休である。各々生徒達は実家に帰るものや。自分の騎竜を里帰りさせるものもいるだろう。しかし連休だからといって羽目を外し過ぎないように。連休中にレース出場しても構わないが。なるべく自分の騎竜に無理させず休ませるように。解ったか!!。」
「「イエス!マーム!」」
「では、解散!!。」
ざわざわ
カーネギー教官は教室を出ると令嬢は一斉に身支度を始める。
「アイシャ、私はレイノリアと一緒にメルドリン家に帰るわ。よかったら休日ライナと一緒に遊びにきてね。」
「うん、絶対行く!。」
アイシャは笑顔で返す。
「私もルポンタージュ家に帰るけど。その前にガーネットを里帰りさせないといけないのよ。」
「暫く顔を見せていなかったからなあ。兄上に心配をかけまいと顔を見せにいかねば。」
炎竜ガーネットはタンゴドレスような着飾る美しい美幌の胸をでんと張る。
「そうなんだ。家のライナには里帰りの故郷と呼べる所はないけど。ガーネットの故郷って何処なの?。」
アイシャは騎竜の里帰りというものがよく解らない。騎竜にはその場所で生息している土地があると知っていたが。ノーマル種のライナには帰省する故郷のようなものはない。ライナにとってマーヴェラス領が故郷と言えばそうなのだが。
「炎獄山リプカフラマよ。炎竜族が住んでいる活火山がガーネットの故郷よ。」
「私の家は大所帯だからなあ。姉がレア種で兄はエンペラー種で妹はレア種、母はロード種で父はエンペラー種、祖父はレア種だ。」
「?????、えっ?、えっ?どど、どういうこと?。」
アイシャは炎竜ガーネットの家族が大所帯だと解るが。家族の竜種がまばらなことに混乱する。
「あ、アイシャは知らないのね。炎竜の竜種は一応エレメント種と一区切りにされているけど。実際はエンペラー種やレア種など炎竜族の中でも違うのよ。人間が実際に強さなど階級とかで勝手に決めたのが階級種だけど。炎竜族に関してはタイプも強さも能力も同じ血筋でも異なるのよ。」
「不本意だが。姉と兄がレア種とエンペラー種で妹がレア種で私がエレメント種などと。正直私は不満たらたらよ。」
炎竜ガーネットは不服そうに唇がへの字に曲げる。
「まあまあ、ガーネット。私は貴女のスピードと強さに惚れてスカウトしたのよ。貴女の家族の強さもよく知っているけれど。その中でルポンタージュ家の当主として貴女だけをスカウトしたんだから。」
落ち込むガーネットをレインは優しく褒め称える
「む?そうか、それほど言うなら。もう~、仕方ないなあ~。」
ガーネットは機嫌よくして魅惑的な美人顔がデレデレ顔を浮かべる。
チョロいデスネ······。
横目で静かにしていたメイド姿の青宮玉竜レイノリアは冷めた顔で内心そう想った。
3年特待寮
整った一室でドレスの格好したシャルローゼ
は静かに佇む。普段着は制服以外持ち合わせてはいなかった。それは彼女の家柄に精通している。おしゃれの為に街にショッピングに行けばよいのだが。彼女にとってはレース以外に頭になかった。親を説得してアルナビス騎竜女学園に入学したのもその為である。彼女は騎竜乗りとしての自分を僅かな期間の青春を謳歌するために登校している。卒業してしまえもう騎竜乗りとして生きていくことが一生ないのだ。だからこそ彼女は一生一度を大事にしていた。
わいわい きゃきゃ
窓際から嬉しそうにはしゃぎ下校する令嬢生徒達を眺める。
「もうドラゴンウィーク(竜の骨休め)なのですね。」
窓際にそっと手を触れ。シャルローゼは少し羨ましそうな眼差しをする。
「お城にお帰りになさいますか?。お嬢様。」
角を生やす初老の紳士姿の絶帝竜カイギスは問いかける。
鮮やかな薄目の金髪の髪がふるふると揺れる。
「いいえ、少しでも時間が惜しいわ。そのまま学園でレースの訓練を続けます。ドラゴンウィーク(竜の骨休め)が終わり。次に他校との合同合宿訓練がある。その次が····。」
「三校祭ですか。」
こくりとシャルローゼの重く整った美しい顎が頷く。
「3年ですか····。早いものですね。」
カイギスは懐かしむように学園3年間のレースを振り替える。
「もう3年もたってしまいました。私達にはもう後はありません。だからこそ今年で終わらせないといけない。遺恨を残さないためにも·····。」
シャルローゼはきゅっと何かを決意するかのように力強く整った唇が締まる。
「三校対抗レース、通称三校杯ですか。」
カイギスの初老の穏やかな顔が初めて険しい表情を浮かべる。
「何としてでも私の代で終わらせなければなりません。」
シャルローゼの上品な顔立ちに陰りを見せる。
3年学園生活で三校祭で行われる三校対抗レース、三校杯では何度もシャルローゼ達は敗北している。一度も勝つことはなかった。その前の先輩の代でもその他校に敗北し続けていた。それは他校の騎竜乗りが強いのではなく。その騎竜乗りの騎竜があまりに異常な強さを持っていたからである。もしその騎竜に対抗できるとすれば世界最強の騎竜乗りの騎竜、白銀竜しか思い浮かばない。それほどその他校の令嬢が乗る騎竜があまりにも強く規格外なのだ。ただ強すぎる騎竜なら正々堂々とレース行い敗北したなら問題はない。だけど、その騎竜は色んな意味で最悪であった。
「三校杯の選抜はどう致しますか?。」
「いつも通りよ。私とセラン他の五人、二年生はセシリア・サウザンドとイーリス・カティナールと他の二年令嬢生徒達。竜を誘惑する魅華竜ソリティアは三校杯の切り札になるわ。イーリスの剣帝竜ロゾンもアタッカーとして申し分ないわ。それに一年に優秀な生徒と騎竜が入ったことだし。」
「アイシャ・マーヴェラス様とノーマル種ライナですね。」
こくりとシャルローゼは頷く。
「しかし、シーア様が言った通り。ノーマル種ライナは神足る竜ではないと明言されております。例え精霊の使役と不思議な力と扱えたとしても。あの騎竜の相手には····。」
「難しいですか?。」
「左様でございます。」
絶帝竜カイギスは静かに頷く。
ライバルであったレッドモンドと同じ力を使えたとしてもあの騎竜には歯がたたないとカイギスは判断する。それほどあの他校にいる騎竜は次元が違うのである。ただ強ければさほど問題にしなかっただろう。最強の一角と呼ばれた騎竜は世界に五匹いる。未だ見せぬ強豪の竜(ドラゴン)がいていてもおかしくはない。それでもあの他校の騎竜は色んな意味で強く。そして異質で最悪なのである。
「それでも私は何としてでもこの代で終わらるつもりです。あのような騎竜は絶対にあってはないならないのです。絶対に絶対に今年の三校祭で倒します!。あの忌まわしき竜(ドラゴン)『無情を!』。」
シャルローゼの険しい表情で唇からいまわしき嫌悪を込めたとある騎竜の二つ名をこぼす。
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