第117話  最強二VS平凡

きゃーーー!!きゃーーー!!


校庭を囲む令嬢生徒のギャラリーの歓声が沸く。


はあ~何でこんなことに·······。


家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい家に帰りたい


俺は呪文めいた呪いの言葉を心の中で何度も連呼する。

よりによって学園最強の騎竜乗りと世界最強の騎竜乗りの相手にすることになるとは。アイシャお嬢様は俺とは違いやる気満々だけど。どうみても勝ち目なんて無い。寧ろ勝負にすらならない気がする。なんせ物理的法則を覆してしまう程の魔法を持つエンペラー種の絶帝竜が相手だぞ。どうみても勝ち目なんてないだろう。それに世界最強の騎竜乗りのシーア・メルギネットの騎竜、白銀竜も幻の竜で最強の竜種らしいし。どうせ何らかの物理的法則を越えるチートスキルかチート魔法を持ち合わせているに違いない。俺が気を扱い精霊を使役できても物理的法則変えてしまうほどのスキルや魔法持ちに対抗できるわけがない。普通の魔法と普通のスキルにチート魔法とチートスキルをぶつけるようなものである。


「ライナ、シーア・メルギネットなんか。やっつけちゃえ。」


キリネがラナシスさんと一緒に臨時に設置されたグランドの観客席から俺に少年のような屈託のない笑顔で声援を送る。


いや、やっつけちゃ駄目だろ。て言うか無理です!。どうみたってぺーぺーの騎竜にベテランの騎竜の相手が務まるわけがない。めった打ちにされるに決まっている。

全学年令嬢生徒達はノーマル種が最強の一角の二竜を相手にすると聞き。盛大に盛り上がっている。


学園長や教頭、教師までもが職務を放棄して最強の騎竜とノーマル種の競争を観戦しに来ている。


「まさか、アイシャ・マーヴェラスとシャルローゼ・シャンゼリゼと銀姫のシーア・メルギネット三人が競争するとは。騎竜も最強の種である絶帝竜カイギスと白銀竜プラリスナーチ。ノーマル種のライナがこの二竜と対決するのは正直無謀だと思います。」


教頭は校庭グランドで準備する騎竜乗りと騎竜を眼鏡を上げ注視する。


「そうですね。普通ならシャルローゼ・シャンゼリゼの絶帝竜カイギスとシーア・メルギネットの白銀竜プラリスナーチにアイシャ・マーヴェラスのノーマル種のライナは敗北すると予想はできますけど。しかしレースは最後までゴールに辿り着くまで解らないものです。もしもということありますし。」


学園長は確かに力の差は歴然としているけれど。それを覆す力をノーマル種ライナが秘めていると確信している。


「そうですね···。」


学園長と教頭は無謀ともとれる一年令嬢生徒とその騎竜を遠くの校庭から見守る。


「ふむ、面白いことになったなあ。まさかライナがカイギスと最強の竜種、白銀竜プラリスナーチと戦うことになるとは。」

「········。」


剣帝竜ロゾンは無精髭のついた顎を愉快そうにさする。

イーリスは無言のままライナ達の様子をじっと観察する。


「本当にライナは暇に事欠かないわね····。」


セシリアはエリシャとの決闘で得た益をさっそく活用し。学園に具材を送る商会を使い。校庭グランドが見える場所に臨時の観客席を設置してもらった。友人であるイーリスと剣帝竜ロゾンを誘い一緒に観戦している。

セシリアは面白げに艶のある唇がふっと含み笑いを浮かべる。


「私帰っていいかしら?。セシリア?。」


となりで座り込んでいるローズ色の角を生やした魅惑的な美貌の姿をしている魅華竜ソリティアはしおらしく大人しくている。


「ソリティア。貴女がまたライナのこと苦手にしているの?。いい加減にしなさい!。今はライナと最強の竜種二頭が対決しようしているのよ。」


セシリアは呆れた視線を自分の騎竜である魅華竜ソリティアに向ける。


「その要因をつくったのは何処の何方だったかしら?。」


ソリティアの鬱顔でじと~と恨めしそうな視線を主人であるセシリアに向けてくる。よくも私にそんなこと言えたわねえというような不快感丸出しな感情をあらわにする。


「ほ、本当に悪かったと思っているわ。本当に本当よ。だから機嫌直して。」


セシリアは冷や汗を流しながら恨めしや状態のソリティアに何度も詫びる。

ソリティアはぷいっと不機嫌にそっぽを向いてしまう。

オスに誘惑することに長けた魅華竜ソリティアは未だライナのトラウマを克服できずにいた。


「ルゥ。ライナまた競争するの?。」

「そのようですね。今度の相手は世界最強の騎竜乗りのシーア・メルギネット様と最強の竜種である白銀竜そしてシャルローゼ・シャンゼリゼ様と絶帝竜カイギス様ですか。私は騎竜乗りの知識には疎いですが。この二竜は我々竜にとって確実に最強の竜種の分類に入ります。」

「ロロ、ライナ勝てるかなあ?。」


ルゥは心配そうに白い獣耳が垂れる。


「大丈夫ですよ。ルゥ様どんな苦難もライナさんは退いてきたのですから。これからもそうですよ。」


ルゥを安心させるようにロロは優しく宥める。


「ほら、アーニャ早く来なさい。前代未聞のレースが今始まろうとしているのよ!。見逃すつもり!。」

「ふぇ~、待ってよ。カリス。」


フリフリ

ふわ ふわ 

ポニーテール揺らし。ペッタンな胸を揺らしはしない令嬢カリスと雲やわたあめのような軽さを秘めた爆乳を弾ませるピンク髪の令嬢アーニャは令嬢生徒達が集まる校舎の屋上に辿り着く。


「ふむ、ライナが今度は最強の竜種と対決するのですか。実に興味深いです。」


角を生やす青い髪の小柄の少女。弩王竜ハウドは熱心にライナの姿を凝視している。


「ふああ、ここは良い寝心地。ぽかぽか日向ぼっこできて気持ちいいわ。ぐぅ~ぐぅ~。」


角をはやす大人のグラマーな姿の地土竜モルスは屋上に着いた途端立ったまま爆睡し始める。


「早く。マウラ!。ライナのレース終わっちゃうわ!。」

「そんな焦らずともまだレースは始まっておりませんよ。」


一人の黒髪の令嬢と後ろ髪を三つ編みに束ねた角を生やしたメイド姿の女性が校舎玄関から出ていく。


嬉しそうに子供のようにはしゃぐ主人のセーシャを冷めた感じで主人であるマウラは付き添う。


それにしてもまさかライナが最強の竜種と対決ですか。アイシャお嬢様に醜態を晒さなければ何でも良いですが。まあ、あの二竜が相手ならノーマル種ライナでも確実に敗北にきすでしょう。これであのノーマル種も心入れかえ身の程を弁えるでしょう。矢張アイシャお嬢様に相応しい騎竜はあの騎竜しかおりませぬ。

冥死竜マウラはレースの結果など興味などなく。ただアイシャお嬢様だけのことを案じている。


「あのよこしま竜は毎日毎日、決闘やら競争やらレースしないと気がすまないのですか!。よりにもよって絶帝竜カイギスと白銀竜プラリスナーチと競争するなんて。」


妖精竜ナティは精霊の扱い方を教えたとはいえこの二竜に関してははっきりと言って分が悪すぎる。

最強の一角とされるエンペラー種の絶帝竜と幻の最強の竜種、レア種白銀竜。特に白銀竜は例え精霊の力を扱えたとしてもそれを上回る力を持っているのだ。それは白銀竜が妖精竜が扱う精霊とは違い。全く異質で異なる精霊を使役できるところからきている。その精霊は北方大陸が主な発生地であり。精霊を使役できると言われている妖精竜、精霊竜でもその精霊だけは使役、扱うことは出来ないのだ。その精霊を扱えるのは唯一無二の神足る竜と白銀竜そして銀晶竜と呼ばれたレア種である。レア種である白銀竜と銀晶竜は明確には絶滅危惧種である。白銀竜は実際は絶滅が確定されていたが。7大貴族であるメルギネット家が偶然北方大陸の未開の地の探索で白銀竜の卵を入手したのである。絶滅された竜種の卵を無事孵化させることに成功し。自分の娘に騎竜としてあてがい。7大貴族の中でメルギネット家が最強の騎竜乗りとして操竜の称号を持つほど上り詰めたのである。王から操竜の称号を手にしたのもその頃からである。


「リス、今度のレースは分が悪過ぎるです。最強の竜種が二頭も相手どるなど。無茶を通り越して無謀です。」

「そうね····。」


リスは空を仰ぐように祈る。


「蒼き竜よ。貴女の精霊が執心するノーマル種ライナにどうか加護とお与えください。」


未だ降臨なさらぬ神足る竜にリスは深く祈りを捧げる。


「ああ、ライナ様···。結局一度も私に貴方様の背中に乗せてくれませんでしたね。」

「お嬢様·····」


マーガレットは憂いをおびた頬を染め。熱を帯びた視線を緑の鱗に覆われたノーマル種に注ぐ。そんな主人を心配そうに至高竜メリンが見つめる。


「それではシャルローゼ・シャンゼリゼ、シーア・メルギネット、アイシャ・マーヴェラスの競争を始めます。」


スターター役は水色髪に髪止めする風紀委員長でもあるセランであった。セランの騎竜、疾風竜ウィンミーは遠くのほうで片翼の耳をパタパタさせ大人しく観戦している。


「シャルローゼ様、正直これは弱いもの苛めではありませんか?。プロである私達二人と二竜と一緒にアイシャ・マーヴェラスが競争するなど。アイシャ・マーヴェラスは入学してまだ一年もまもないと聞きます。まだ未熟な経験不足な騎竜乗りに対しては私達は荷が重すぎるのでは·····。」


シーアは白銀竜に股がりシャルローゼに問いかける。


そうですその通りです。ですから中止にして

俺は内心そう頷き訴える。


「いいえ、私が見たところ騎竜乗りとしての経験には問題はありません。多少騎竜乗り同士の戦闘経験は不慣れのようですけれど。それを補うほどノーマル種のライナの能力が優れていますよ。」


シャルローゼはニコッと微笑みながら言葉を返す。

何言ってんだこのお嬢様は?。

俺は竜顔をおもいっきりしかめる。

騎竜乗り同士の戦闘の経験不足がマイナスでも。あんたらの騎竜の方が数百倍も強いんだから。その計算は可笑しいだろ!。


俺はシャルローゼお嬢様という令嬢は天然なのではないかと疑ってしまう。嫌天然というよりは先入観という早とちりというか。思い込みが激しいような気もする。


『ライナ様、正々堂々とお互い良い勝負を致しましょう。』


絶帝竜カイギスは傷だらけの巨体で老いを帯びた竜口が優しげに微笑えむ。


ギャギャアギャ

「そうですね·····。」


勝負にもならないと思いますけれど。

俺は微妙な竜顔が浮かべる。


『ねえ·····。』


隣で佇むシーア・メルギネットを乗せる白銀竜プラリスナーチが特に身分関係なく気さくに俺に話かける。


『昔、どっかで逢わなかった?。』

ギャアギャアラギャギャア 

「いや、初対面だと思うよ。」


俺は長首を左右に振り否定する

俺は一度も白銀色の竜に出逢ったことはない。だから初対面だと断言できる。


『そうかなあ?。』


白銀竜プラリスナーチは納得できない様子でう~んと唸りながら銀色の長首を傾げる。


「レースコースは学園の塀外を出て一周し。再びこの校庭グランドに辿り着いたらゴールです。騎竜乗りと騎竜の戦闘は学園敷地の塀を抜けてからとなります。」


風紀委員長セランからレースコースの説明をする。


「では位置について下さい。」


シャルローゼが乗る傷だらけの巨体の竜とシーアが乗る普通サイズの白銀の竜が前に出る。


「ライナ、頑張ろうね。」


アイシャお嬢様は笑顔で俺をはげます。

はあ~、もうやるしかないか。

俺も前にでてグランドのスタートラインの前に立つ。


「それでは。」


セランは高々に手を頭上にあげる。

スタートはドラなんとかだろうが。今はどうでもいい。今はなるようにしかならん。

俺は身を低く飛翔の準備をする。


「よーい。」


白銀の鱗に覆われたり竜と多数の幾千の戦いを傷が刻んだ老竜が身を屈み翼を広げる。

ライナもそれにならい。身を屈み鉤爪の爪をグランドの土に食い込ませる。

セランは大きく高々に頭上に上げさっと素早く手を下ろした。


「ドラExcellent!!。」


ギャアあああーーーーー!!

「何処のコマーシャルだよ!!」


バサッ!バサッバサッバサッ‼️


二匹の最強の竜種と一匹の平凡な竜が校庭上空へと舞い上がる。


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