第110話 本当の価値
三人の強豪乗りが乗る騎竜と対峙する。一人一頭除いてはハッスル状態である。
「金金金金金金金金金金。」
「お金ルル、お金ルル、お金ルル、お金ルル、お金ルル、お金ルル。」
強豪の騎竜乗りの二人は呂律が回らないほどお金という言葉を連呼していた。危ない薬でも決まってしまったのだろうか?。小人族の騎竜乗りと虫系の騎竜、草虫竜はそんな二人の様子を気味悪そうに見ている。
その元凶と思われる宝輝竜に俺は竜瞳の視線を向ける。
『姐さん。何かあのノーマル種此方を観ていまへんか?。』
戦闘の枠から外れ安心しきっていた宝輝竜のオワシが何故かノーマル種が此方に闘争心むき出し凝視してくることに山吹色の鱗の身体がびくびくするほど震える。
「ホホ、どうやら私達がちょっかい出していることに気付いたようね。パトリシア・ハーディルが騎乗しているのだから当たり前なのだけど。」
アキナイは余裕な態度で時は金なりの文字のついた扇子を口元にあてホホと嘲笑う。
『ど、どうすんすか!?。わい、あんな化けもんなノーマル種と相手できまへんぜえ!。』
「大丈夫よ。強豪の騎竜乗り三人が私達を守ってくれるわ。買収した内容にもちゃんと私達を護衛するように付け加えているし。」
『そ、そう言うとりますけど。あのノーマル種が三人の強豪の騎竜乗りと騎竜を退いて此方に向かってきたらどうするんや?。』
三人の強豪の騎竜乗りが乗る騎竜を抜けたら宝輝竜オワシには対処しようがない。
「その為に貴方のスキルと魔法があるのよ。貴方のスキルも魔法も金に執着するものに力を与え。そして隷属させるのだから。」
『何か姐さん。うちらこっすいほど悪巧みしておまへんか?。何かうちら完全に悪者になった気分ですがな。』
宝輝竜オワシは微妙な山吹色の竜顔を浮かべる。
「あら?失礼ね。これは正しい商いの戦略よ。騎竜乗りの二人にもちゃんと働いた分は上乗せして払うわよ。」
『でも強豪の騎竜乗りの二人。わいの力でかなりラリっているような気がするんすけど。大丈夫かいな?。』
宝輝竜オワシは望んでいないがきまってしまった二人の騎竜乗りに申し訳なさで一杯である。
「気にしすぎるものでもないわ。これから二人には貴方の能力で更に働いて貰うのだから。」
『はあ~やっぱうちら完璧に悪役、悪代官やんけ~。』
宝輝竜オワシは山吹色のくちばしから深い落胆のため息を吐く。
「アキナイが乗る宝輝竜まで道筋をアドバイスするわ。三人の内注意すべきは小人族が乗る草虫竜だけよ。他の二人が乗る騎竜は攻撃に注意するだけでいいわ。」
やる気を出したパトリシア・ハーディルは俺に的確に指示をする。
「何で注意するのが小人族が乗る草虫竜だけなんだ?。他の二人が宝輝竜の恩恵を受けているんだろう?。」
金に執着する騎竜乗り二人の騎竜が強化しているのなら注意するのはロリエルフとシャービト族が乗る騎竜の筈。
「確かに宝輝竜の恩恵は強力よ。宝輝竜の力の影響で騎竜乗りや騎竜は強化したり治癒したりできるけど。ただ、宝輝竜の恩恵は能力向上同時に金に対しての欲望も増大させるものなの。言い換えれば理性さえも吹っ飛ぶということ。だから宝輝竜は昔は邪竜として忌み嫌われ。神竜聖導教会からも目をつけられえいたのだけど。それを西方の商会が縁起物の騎竜にまで祭り上げ昇格させたのよ。本来宝輝竜を騎竜の戦闘に関与させるなんて西方の商人でもやらないわ。色々面倒事になるから。それでもアキナイがしたということは本気だと言うことね。貴方を手にいれるために。」
俺は嫌々顔で竜顔をしかめる。
「パトリシアお嬢様といい。西方のアキナイお嬢様のといい物好きですね。自分はノーマル種ですよ。確かに精霊の力を借りたりできますけど。他のエンペラーやレア種のように見栄えも良くないし。能力も比べると劣ると思うのですが?。」
気を扱え精霊の恩恵も少し受けてはいるが。やはりレア種やエンペラー種のようなチートの能力と比べると自分の力は見劣りすほど低い。絶帝竜のような絶対的防御や物理的法則を変えてしまうようなチートスキル、魔法を自分は持ち合わせていない。そんなチートとと比べるとレットモンドさんに申し訳ないけれどやっぱり俺の力は地味である。
「貴方は過小評価し過ぎよ。エンペラー種はレア種は確かに騎竜として価値はあるけれど。商人にとって本当に価値ある物かそうでない物かの区別はできるわ。たった一つだけ他にはないそれ以外手に入らないそれが商人にとって価値があるものよ。レア種は希少という意味を持つけれど。本当の意味で希少ではないわ。たった一頭というわけでもないのだから。それに比べて貴方のようなノーマル種はたった一頭しかいない。貴方は真の意味で希少でありレア種なのよ。他がどう言おうと私達商人の貴族にとってはね。」
パトリシアお嬢様の何気ない誉め言葉に俺の竜の背筋がこそばゆく感じる。
「さあ、私は指示するから。ライナは言われた通りに動いて最後にアキナイの宝輝竜に一撃を入れたら私達の勝ちよ。宝輝竜は戦闘面に関してはからっきしだから。」
ギャア
「解りました。」
バサッ
俺は翼を広げアキナイ・マカランティーヌが乗る宝輝竜オワシ目掛け突き進む。
『き、きまっしたで~。姐さん!?。』
「ホホ、面白くなりそうね。」
アキナイは嬉しそうに時は金なりの扇子を畳む。
バサッ
ライナは強豪の騎竜乗り三人が乗る三頭の騎竜にの前に止まる。
「金金金金金金金金金。」
「お金ルルお金ルルお金ルルお金ルル」
お金連呼する二人の騎竜乗りは確かに錯乱したように騎竜の操作ができていないようだ。
『しっかりして下さい!お嬢様。』
『ロコ!宝輝竜に力を貰ったからっと言って。心まで金に惑わされるなど何事ですか!?。』
主人を乗せている騎竜は互い金に洗脳された主人を正気に戻そうと奮闘している。
これなら戦う必要もないな。
このままこの二人と二頭を素通りできるような気がした。
「ルルクルリ、他は関係ないお前と戦う。」
ジジジジ
草虫竜マームに乗る小人族のルルクルリは俺の前に出る。
「草虫竜は水に弱いわ。水系のスキルや魔法なら一時的にだけど退けられるわ。」
パトリシアお嬢様のアドバイスに俺は右腕気を練りこみ。水の呼吸を行う。
すぅ~~はぁ~~~~~
竜の右鉤爪に水色の光の粒子が集まる。
右の爪を水を掬い撫でる動作をする。
ギャああーー!!
「竜水掌!!」
どばっしゃああああーー!!。
「マーム!?。」
ジジジジ
空を走る水が草虫竜の虫羽根にかかり。飛行が阻害されバランスを崩したように落ちる。
ライナはそのまま後方のアキナイが乗る宝輝竜にまで進む。
『き、来ましてたでえ~!姐さん!。』
ライナとの距離が徐々に狭まり。オワシはあわてふためく。
「オワシ、あのスキルを。」
アキナイは扇子をつきだし宝輝竜のスキル実行を命令する。
『ええ、あのスキルですか!?。ほんま姐さんえげつないわ~。』
宝輝竜オワシは主人であるアキナイの提示したスキル実行の命に山吹色の竜顔が渋るほどドン引きしていた。
『ゴールドラッシュ(金与隷属)!!』
パッあああああああーーーーー!!
な、何だっ!?
再び山吹色の光が放たれる。しかし前よりは色合いが濃かった。
ひゅん
突然アキナイが乗る宝輝竜オワシの前に二頭の騎竜が現れる。
それは主人の正気を戻そうと奮闘していた妖精竜と清水竜であった。
エルフとシャービト族の主人はまだ金金金と連呼している。
そしてそれを乗せる騎竜の二頭から同じように連呼した思念の声が漏れていた。
『モウカリマッモウカリマッモウカリマッモウカリマッモウカリマッモウカリマッモウカリマッ。』
『ボチボチデンボチボチデンボチボチデンボチボチデンボチボチデンボチボチデンボチボチデン。』
ギャアギャ····
「何だこれは····。」
気持ち悪いほどの商い言葉が流れる。
「アキナイ、ここまでやるのね。まさか主人を通じて騎竜まで洗脳するのだから。これじゃあ余計にやりずらくなったわ。」
パトリシアは苦渋にパープルの眉を寄せる。
ギャア?
「洗脳?。」
『宝輝竜は金と主人の繋がりを通じて騎竜にまで影響を及ぼすのよ。今のこの二頭はバーサーク(狂暴化)と言っても過言ではないわ。騎竜は理性がなくても本能で戦えるから余計にやりずらいのよ。』
パトリシアの不快に小さな顔をしかめる
「ホホ、パトリシア・ハーディル。私の手札を覆せるかしら?。」
西方の商家の令嬢アキナイ・マカランティーヌは不適に時は金なりの扇子を紅の口元に当てる。
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