第102話 西方の商家
アイシャはロリ杯の会場にある観客席に座る。隣には何故だかメイドのカーラも付き添いでついてきた。
カーラは何やらロリ杯の出場者の名簿が書かれたパンフレットを読み耽り。券のようなものを握りしめている。
「カーラもライナの応援に来たの?。珍しいね。」
カーラがライナのレースに観にきたのはマンゴスチン杯とクリムゾン杯以来である。
「いえ、私はロリ杯に興味があったのですよ。貴族の中でも人気は高く。オッズの掛け金も高いですから。私は当然ライナに単勝で賭けておりますのでご安心を。」
鼻息ならしながらカーラの目は何故だが目が血走っていた
「はあ~。」
アイシャはとりあえずライナを応援しにきたのだと納得する。
「久しぶりですわね。パトリシア・ハーディル。」
「ええ····そうね。正直貴女の顔は観たくなかったのですけど。」
パトリシアお嬢様は嫌そうに着物の小柄の少女をあしらう。扇子を扇ぎ。黒髪は舞妓のように束ねていた。髪にはじゃらじゃらときらびやかな髪飾りが着飾っている。西洋というよりは和風のような印象与える服装している。地方によっては服装の種類が違うのだろうと察していたが。原住民の簑や民族衣装を着たエルフもいるのだから当たり前なのだろうけど。
ギャギャア?。
「誰なんだ?。」
俺は小声でナーティアに問いかける。
「西方大陸を拠点とした商家の貴族のご令嬢でございます。お嬢様は東方大陸をあちらのアキナイお嬢様は西方大陸全ての商いをおさめております。」
ギャガアガギャアラギャギャアガア?
「言わばライバル関係と言うことか?。」
「左様でございます。しかし西方の商家のアキナイお嬢様が何故東方大陸のこのようなレースに出場しているのかと理解に苦しみますけど。」
ナーティアは特に西方大陸ではロリ杯というレースは有名ではなかった筈。西方大陸の牛耳る商家の貴族がわざわざ出向くなど考えられない。
「貴女もロリ杯の賞品がお目当てなのかしら?。」
「賞品?。」
「あれよ。」
着物の袖からぴんと指をさす。
ロリ杯の会場内に目立つように場所に3位まで賞品が飾られていた。マンゴスチン杯のようにレースには独特な賞品が飾られている。1位の賞品の台座に高々に純金製の魚の形をした像が海老ぞりの姿で飾られている。
あれってもしかして·····。
俺は背筋、あるいはイナバウアーのような海老ぞりの形をした魚の像に見覚えがあった。
「貴女もあの美しき金の鯱を狙っているのかしら?。そうはいきませんことよ。あれは私がいち早く狙っていたのですから。」
時は金なりという黒筆で書かれた扇子をアキナイお嬢様は口元に当てホホと小言で笑う。
パトリシアお嬢様はパープル色の小さな眉を不機嫌に寄せて。いかにもいらねえ~~というような顔をしていた。
「それにしても貴女もこのレース出場するのかしら?。」
「ええ、そうよ。でもいつものナーティアではなくこのノーマル種のライナに乗って出場するつもりよ。」
アキナイは時は金なりの文字のついた扇子が口元にピタりと止まり。目を細める。
「貴女のことですからただのノーマル種ではないのでしょうね···。」
「ええ、このノーマル種ライナはエレメント種、ロード種、レア種、上位種全てを打ち負かした実力をもつわ。私のナーティアも還付泣きまでに倒されましたから。」
パトリシアは皮肉を込めたように敗北宣言を吐き。隣でナーティアで寂しげに俯く。
アキナイというお嬢様は黒眉を寄せ。まじまじと俺を見つめる。
「ふむ、私の識眼でも普通のノーマル種にしか見えませんが。貴女が嘘をつくように見えませんし。でも用心するにはこしたことはありませんね。」
アキナイは素直にパトリシアの言い分を信じる。
「そうした方がいいわよ。」
ライバル関係である二人なのにパトリシアは助言するかのようにアドバイスしてくる。
今のところライバル関係でも仲が悪いというわけでもなさそうだ。
「私の騎竜も紹介しましょう。あなたのノーマル種ライナとは初対面でしょうから。私の騎竜、レア種、宝輝竜オワシです。」
山吹色のドラゴンが前にでる。紹介されたアキナイ・マカランティーヌの騎竜、宝輝竜オワシは山吹色の鱗がきんきら金に輝いていた。
『どうもオワシとオワシます。以後よろしゅう。』
ん?日本語可笑しくない?。異世界だけどこのレア種宝輝竜は微妙な関西便を使っていた。
オワシと連続で使っていたからダジャレなのだろうか?。
『あんさん強そうですなあ。うちの山吹色の肌にもびんびん来まっせ。オワシはオワシが好きで。オワシを生むことしか取り柄がないねん。あんさんは相当どえらんもんもっとるさかい。ち~とお手柔らかにお願いしまっせ。ほんまほんまに。』
宝輝竜オワシはゴマすりように何度も長首を頷く。
うん、ぶち殺したくなるようなエセ関西便だ。オワシがオワシって意味わかんねえよ。
俺はエセ関西便の吐くオワシというレア種をぶん殴りたくなる衝動にかられる。
ギャアラギャギャアラギャガアガアギャア?
「ナーティア、宝輝竜オワシというレア種は強いのか?。」
俺は小言で密かにナーティアに問いかける。
「いえ、レア種、宝輝竜オワシは戦闘能力はそれほど高くありません。しかし厄介な能力、スキルを持っているのです。」
ギャギャア?
「厄介なスキル?。」
「それじゃ私はスタートの準備をするから。」
パトリシアは早々に立ち去りたいのかアキナイというお嬢様に早々に別れの挨拶をすます。
「ええ、正々堂々とお互い商人らしくレースを致しましょう。」
アキナイというお嬢様は時は金なりと書かかれた扇子を赤紅の小さな唇にあてホホと嘲笑う。
パトリシアが遠くに見えなくなるまで離れたところを確認するとアキナイの緩やかな笑顔が真顔に変わり。扇子を口元から下げる。
「モウカリマッカ、ボチボチデンナいるかしら?。」
「「はっ!ここに。」」
サッ
黒頭巾を被ったまるで黒子のような姿をした二人組が姿を現す。
「騎竜乗りの買収はどうかしら?。」
「はっ、名のある騎竜乗りは買収は全て出来ております。しかし年若い幼い少女達だけは買収は不可能でした。」
黒子の二人は申し訳なさそうにつげる。
「仕方ないですね。お金の価値は歳の重ねた分だけ解るもの。幼い少女にはまだ到底理解出来ませんもの。しかし····。」
パトリシアお嬢様の進んだ路を視線注ぐ。
「東方の商家の令嬢がノーマル種を引き連れて出場するとなればこちらも全力で当たらなければ無礼というもの。オワシ、あの騎竜に勝てるかしら?。」
『姐さん。それは無理な話や。あんな出鱈目なドラゴン。どうあがいても敵わんがなあ。』
宝輝竜というレア種には特殊な能力を持っていた。商人なら人を見る目というが宝輝竜にはドラゴンの見る目が備わっていた。
「それほど····?」
アキナイの紅色の小さな唇がホホうと意外そうに嗤う。
「ノーマル種ライナですか。もしそれほどもの騎竜なら手に入れないのは西方の商家として名折れですね。」
アキナイという西方の令嬢は女狐のように嗤い策を練る。
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