第101話 ロリ杯
眼鏡をかけた水色の髪に髪止めした令嬢と
鮮やかな薄目の金髪を靡かせる令嬢が一年校舎の廊下を歩いていた。廊下の途中途中でおしゃべりしていた一年令嬢生徒達は通り過ぎる二人の令嬢を目にしてギョッと瞬きして驚く。後方には控えるように角を生やした初老の紳士と何故か顔がボコボコに腫れ上がっている耳が片翼の形をした少年が歩いている。
「セランは相変わらずそそっかしいですねえ。」
鮮やかな薄目の金髪を靡かせる令嬢は凛々しい胸の膨らみを前につきだし。隣の髪止めの親友であるクラスメイトの令嬢に呟く。
「面目ない。てっきり家のウィンミーを庇っていたから仲間だと思って。まさかただ通りすがりにウィンミーと遊んでいた部外者だとは。」
「ふぅひぃまへん。」
顔が崩れて腫れ上がったウィンミーが歪んだ唇で謝罪する。セランは相棒の風竜ウィンミーの悪戯で居眠り中におでこに人参つけられてしまったのだ。しかもご丁寧に接着剤までつける始末。後を残らないように取るのに苦労した。
「でも丁度良いです。謝罪ついでに私も一年のノーマル種の主人であるアイシャ・マーヴェラスにお逢いしたいと思っておりましたから。それにしてもまさかマーヴェラス家の者があのノーマル種の主人とは知りませんでした。」
「マーヴェラス家の騎竜のノーマル種があのような自然現象を起こしたとなれば。もしや神足る竜と言うことでしょうか?。」
7大貴族でしかマーヴェラス家の秘密をしるものはいない。しかしセラン・マカダインとシャルローゼ・シャンゼリゼは7大貴族ではないが。マーヴェラス家や神足る竜の存在より詳しく知りえていた。
「それを確かめる為にもアイシャ・マーヴェラス。今世代の救世の騎竜乗りに逢う必要性があるのですよ。」
シャルローゼは一年教室の扉前に立つ。
「失礼致します。」
ガラガラ
扉が開かれると教室内にいた一年令嬢生徒達は開かれた扉から現れた鮮やかな薄目の金髪の令嬢に一斉に釘つけとなる。
「プリンセスマドンナ·····。」
「シャルローゼ・シャンゼリゼ様。」
教室内の窓際にいたレインとパールも驚きのあまり。開いた口が塞がらなかった。
「こちらにアイシャ・マーヴェラスと言う令嬢がいるとおもわれるのですが?。どちらにおられるでしょうか?。」
シャルローゼは視線を配り。アイシャ・マーヴェラスという一年令嬢の姿を探そうとする
「アイシャならおりません。」
パールは前に出て勇気を振り絞りそう答える。
「いない?。」
シャルローゼの鮮やかな金髪の眉が寄る。
「はい、アイシャの騎竜のライナがレェンドラ(貸借竜)され。パトリシア・ハーディルの騎竜としてロリ杯に出場しております。」
「ロリ杯?。」
シャルローゼはロリ杯と言う聞いたことのないレース名にキョトンした顔で暫く思考が止まる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
きゃっきゃっ うふふふふふ
「何なのこれは······。」
小柄の黒揚羽を模したドレスに着飾る少女のパープル色の瞳がレース会場に広がる光景を前にして目を点にしながら困惑する。パープル色の小柄の少女の隣には付き添うように緑の鱗に覆われた竜と盲目のように閉じた瞳と羊角のように曲がりくねった角を両耳上に生やすメイドが立っていた。
「パパ、見てて!。私はレース頑張るから!。」
「ああ、気をつけてなあ」
会場内で騎竜の前にレースに出場するとおもわれる幼い少女が貴族の父親が笑顔で見送られている。
「ナーティアはこれはどういうこと?。」
「さあ、私にもさっぱり解りません····。」
ナーティアもレース会場に集まっている出場者に首を傾げることしかできなかった。
何故ならロリ杯のレース会場には少女少女少女少。幼い少女や小柄な体型の女の子まで。身長差や歳の違いあれどパトリシアのようなロリの少女が集まっていたからである。
「お子様専用のレースっていうわけじゃないようね。何故ならエルフまでいるわ。小柄だけどあれは私の識眼では300歳は越えているわよ。どういう基準よ。」
「さあ、私にもレースの出場条件には幼い少女、小柄な体型の少女、身なりが少女のような姿だったらオールオッケイと書いておりました。」
黒眼竜ナーティアは閉じた瞳が困った顔を浮かべる。
多分ロリ杯だからだと思いますよ·····。
俺は微妙な竜顔を浮かべる。
前日
「とういうわけだからライナはパトリシア・ハーディルと一緒にロリ杯と言うレースに出場してね。」
俺は微妙で嫌そうな竜顔を竜舎の寝床で浮かべる。
別に他の令嬢を乗せてレースを出場することには構わないが。寧ろ悦ばしいことでもあるが。ただアイシャお嬢様があれほど他の令嬢を乗せてレース出場するのを拒んでいたのに。手のひら返したようにレース出場を了承したことに何か裏があるのではないかと勘繰ってしまったのだ。
「ライナ様、どうかお嬢様と一緒にロリ杯というレースに出場して頂けないでしょうか?。」
ナーティアは羊角のついた頭を下げ懇願する。
ギャアラギャガギャア······
「それは構いませんけど·····。」
ロリ杯というネーミングに何か嫌な予感を俺は感じていた。
「ただね。ライナ、また私のBoin走行より速かったら·····。」
ゴゴゴゴゴ
地鳴りとともにアイシャお嬢様の圧を込めた瞳がギラっと鋭い光を放つ。
ギャギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガアガギャアラギャギャア
「だ、大丈夫ですよ。アイシャお嬢様より速くなったりしませんから。」
俺は竜のくちばしが引きつく。
理由は言えないけど·······。
「本当に感謝します。ライナ、もし優勝できたなら私のこの身を貴方に捧げても····。」
ギャガアギャアラギャ
「いえ、それは結構です。」
俺は鉤爪の素手をサッと前にだし断りをいれる。
ピキッ
ギャ?
「ん?。」
「いえ、何でもありません····。」
?
◇◇◇◇◇◇◇
レース会場に騎竜乗りであるロリ少女が騒ぐ。
わいわい きゃきゃ
パトリシアはジト瞳をしながらレース会場内を眺める。
「それにしてもまさかナーティアがアイシャ・マーヴェラスの騎竜、ノーマル種のライナをかりてくるとは思わなかったわ。確かにこの騎竜ならロリ杯には勝てるでしょうけど。」
俺もアイシャお嬢様がパトリシアお嬢様に素直に俺をかすとは思わなかった。色々わだかまりとかあったろうに。
「まあ、ナーティアとの約束だから仕方なく出るけど。出るからには優勝をするつもりよ。」
「その息です!。お嬢様。」
まあ、とりあえずアイシャお嬢様のためにもパトリシアお嬢様の優勝に導かなくては。
「あら?貴女パトリシア・ハーディルではありませんか?。」
突然パトリシアお嬢様に声をかけるものがいた。
声の主に長首を向けるとそこには扇子を扇ぐ少女が立っていた。ドレスと言うよりは和風のような着物を着ていた。扇子には黒筆文字で時は金なりと書かれていた。小柄の和服の少女の隣には至高竜メリンとも引けのとらない山吹色に輝く竜が寄り添っている。
パトリシアは嫌そうにその着物を小柄の少女に流し目を送り。その少女の名を口に出す。
「アキナイ・マカランティーヌ····。」
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