第75話 猫被りな令嬢と寡黙な令嬢

ふんふんふん 


今日は何をしようかなあ。

自主トレーニングを終え。俺は森の中を歩いていた。

特にやることはないがアイシャお嬢様はまだ授業中なので俺はそれまで森を散歩している。いつもアイシャお嬢様の寮付近の森林を散歩していたが。今だけは寮とは正反対の反対側の右側側面校舎側の塀を抜けた森林を散歩している。決闘の時は上空からしか確かめられなかったけど。右側塀の向こうにもエルフのリスさんが住むような大きな森のようなものが見えていた。故に右側の塀にも通路のトンネルがあるんじゃないかと確かめたら案の定発見することができた。先にエルフのリスさんに確認して通行可能かどうか確めてから通っている。特に右側の森はエルフの管理下にある訳じゃないので自由に往き来可能のようだ。


ドシドシドシ

ここの森は初めてだけどかなり花とか咲いているなあ。

こう言うときは新しい出逢いがありそうな気がするんだよなあ。直感というよりは物語の流れ的に。俺は浮き足立ちながら木々が並ぶ森を竜の脚を動かして進む。


ドシドシドシ

暫く進み森を抜けると広らけた場所にたどり着く。

野花が咲く。手入れが加えられてない天然の花畑があった。

ドシドシドシ

俺は雑草と一緒に生えている野花を避けて通る。

ひゅ~~~~!

何処からか突風が吹き上げ地面に咲いていた野花の花びらが突風により空へと舞い上がる。

俺は突風で竜瞳を瞬きしながら進むと。いつの間にか前に人影がみえてきた。俺は竜目を凝らすと野花の咲きみだれる場所でアルナビス騎竜女学園の制服着た令嬢の佇む姿が目にはいった。

令嬢は鮮やかな濡れ鴉を思わせるほどの真っ黒な黒髪をしており。髪型が後ろ髪を結って侍のように長く髪を垂れ流している。西洋の服装をしているが。令嬢の髪の色と日本人というか和風美人、大和撫子のような美しい古風な印象を持たせる令嬢であった。制服の下からは発育よく慎ましさと豊かさを併せ持った二つの胸の膨らみがのぞかせる。

古風な印象を与える令嬢は俺の姿に気付くとじっと此方を見つめている。


「············。」


俺はアイシャお嬢様のクラスに彼女のような和風的な感じの令嬢が見かけたことがなかったので。他のクラス、他の学年の令嬢だと気付く。後ろ髪を結って侍のように垂れ流す令嬢は驚きもせず。声も上げず。無表情で無言のままずっと此方をみている。


「·········。」

··········


どうしようこの状況。リアクションもあまりにも無さすぎるから声をかけずらいんだが····。

俺は困った竜顔を浮かべる。

大抵は竜、特に俺のようなノーマル種の竜には出逢ったら何かしらのリアクションをするものなのだ。嫌悪、好奇、困惑、疑念、興味、驚嘆、出逢った令嬢や人化した騎竜は大抵これらの感情を俺にあたえてくる。

ただ目の前の後ろ髪を結った古風な令嬢は無表情に無感情にじっと此方を凝視してくる。故に目の前の令嬢が俺に対してどういう感情を抱いているのか。表情では全く読み取れなかった。


「イーリス、イーリス、何処にいるのですか?。」


お互い無言のままじっと膠着状態で立っていたが。他の令嬢の呼び声により微妙で行き場のない静寂の空気が消える。

その変わり今度は白銀のブロンド髪をした美しい令嬢が姿を現す。

美しい顔立ちににこやかな笑みをした気品のある白銀ブロンド髪の令嬢であった。

白銀ブロンド髪の令嬢は親しそうに目の前の友人と思われる長い後ろ髪を結った古風な令嬢に声をかける。


「イーリス、戻って来ないから心配しましたよ。あら?。」


白銀ブロンド髪の令嬢は俺の存在に気付く。


「ノーマル種のドラゴン?。もしかしてあの噂の一学年のルーキー、アイシャ・マーヴェラス嬢の騎竜かしら?。」


白銀ブロンド髪の令嬢はにこやかな笑顔で問いかける。

どうやらアイシャお嬢様は学園で噂になっているようだ。

俺はこっくりと竜の長首を頷く。


「やっぱりそうなのね。一度お逢いしてみたかったのよ。私は二学年のセシリア・サウザンドよ。以後お見知りおきを。」


セシリアという令嬢はニッコリと笑顔を浮かべ丁寧に会釈する。

サウザンド?もしかしてキリネの姉?。

キリネに姉がいるとは聞いていなかった。

あまり自分ことを話したがらない傾向があったからだ。

それにしても······

俺はじっ笑顔を絶やすとことなく微笑を浮かべるキリネの姉と思われるセシリアという令嬢に竜瞳で観察する。

流石は姉妹というべきか。微笑を浮かべる笑顔が少し似ている。ただキリネのように素顔隠すような笑顔ではなく。こちらの笑顔は社交辞令と言うか。俺のいた世界で例えるならアイドルがよく使う営業スマイルのようなものに似ている。嘘臭くもなく。相手に好感を持たせるような計算された完璧な笑顔である。

ただあまりにも完璧な笑顔故にこの令嬢の内面が垣間見ようものなら恐ろしいものが見えるのではないのかと正直少し畏怖を抱いてしまう。


「イーリス、ほらあの学園敷地内で決闘していたノーマル種の騎竜よ。」

ギャアガアガギャアラギャアアギャアガアギャアギャギャラギャガアギャラギャア

「どうも、アイシャ・マーヴェラスの騎竜をしております。ノーマル種のライナです。」


俺は取りあえず貴族風というか騎竜風に自己紹介し会釈する。

イーリスという令嬢はじっと此方を無言で見つめる。

俺もじっと見つめ返す。


「···········。」

 ··············。

「···········。」

 ·············。

「···········。」

 ··············。

「···········。」

 ··············。

「···········。」

 ··············。

「···········。」

 ··············。

「···········。」

 ··············。

「············。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



············································································

····················································································································································································································································································································································································································································································································································

············································································



ギャアアああああーーーーっ!!。

「しゃべれやああああーーっっ!!!。」


俺は竜の雄叫びをあげる。


どんだけ間を持たすねん!。

俺はあまりにも長い沈黙の間に思わず吼えて突っ込みを入れてしまう。


「ごめんなさいね。この娘無口なの。この娘はイーリス・カティナール。私と同じ二学年よ。」


セシリアお嬢様は笑顔で場を繕い無口な親友を紹介する。

無口って程があるでしょ。コミュニケーション大丈夫ですか?。

無口キャラでも一言二言あるはずなのにイーリスお嬢様はまるっきし声を発していなかった。


「········。」

スッ

ぴと  むにっ♥️

おおおーー!!

イーリスお嬢様は無言のまま俺の竜の図体の正面から抱きつく。

イーリスお嬢様の慎ましさと豊かさを併せ持った二つの膨らみが押し付けられ。見下ろす視点から滑らかな二つのつぶれた山脈の谷間ができる。

俺はいきなりの抱擁に歓喜と感動と戸惑いの感情が入り交じる。


「イーリスはドラゴンに抱きつくのが大好きなのよ♥️。」

「·············。」


セシリアお嬢様は笑顔で説明する。

ほほう、それは素晴らしいご趣味をお持ちだ。イーリスお嬢様となら馬ならぬドラゴンが合いそうである。


ギャギャア!ギャア!

「それでは是非!背中も!。」


俺はイーリスから少し離れ。ぴろっと翼を広げ背中を抱きつかせるアピールをする。


「···········。」

スッ

無言のままイーリスお嬢様は俺を素通りする。

あれ?。

俺は無視されたように肩透かしをくらう。


「イーリスは背中を抱きつくことが好きじゃないのよ。」


眉を寄せ申し訳なさそうにセシリアお嬢様が答える。

ええ~。何その趣味が同じだけど趣向の違いによる生まれい出るすれ違い疎外感は。

折角同じ趣味同士を見つけたのにがっかりである。


「お嬢、何処です?。」

「セシリア、どちらにおられますの?。」


何処からか渋いおっさんの声と魅惑的な大人びた女性の声が聞こえてくる。

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