第74話 ふざけるなっ!!
んがー ゴゴー んがー ゴゴー
牙の付いたくちばしを大きく開けいびきをかく。
緑色の鱗に覆われた竜の身体をふかふか藁の寝床に全身を預ける。
んがー ゴゴ んがー ゴゴ
スー スー スー
いびきと一緒に何処からともなく寝息も聞こえてくる。
何かの気配を感じたライナはパチンと竜瞳を開く。
ん? ガッ! ギャ!ギャア!?。
竜瞳を見開いて目に入ったのは制服を着た黒髪の女の子だった。
ザス
俺はあまりにもの衝撃的な出来事に驚いて藁の寝床から起き上がる。目の前で藁の寝床でスヤスヤと眠るこの学園の令嬢生徒と思われる黒髪の少女に目をやる。
少女は藁の寝床で気持ち良さそうに眠っていた。
あれ?この娘·····?。
目の前の令嬢生徒に見覚えがあった。確かアイシャお嬢様の母方の家系である七大貴族ギルギディス家のご息女で名は確かセーシャ・ギルギディスだっけ。アイシャお嬢様とは母親が姉妹で実質アイシャお嬢様とは従姉妹にあたる。
でもなんでアイシャお嬢様の従姉妹が俺と一緒に藁の寝床で寝てるの?。意味が解らん。
セーシャ・ギルギディスという令嬢とは特に俺との接点などなかった筈。彼女の騎竜、冥死竜マウラとは何度か逢っているけど。俺との印象は最悪である。
んん~
セーシャは目を擦り起き上がる。
「あっ!ライナっ!?。」
むにゅう♥️
セーシャというギルギディスの令嬢は俺の姿を目に捉えるととびっきりの笑顔で抱き付いてきた。
セーシャお嬢様は屈託のない笑顔で無防備に俺の竜の胸部に抱き付いてくる。
セーシャお嬢様はアイシャお嬢様と同じくらいの胸のサイズが俺の竜の胸部に押し付けられる。
何何何何何!?。何でこの娘俺にこんなに好感触なの?。接点もあまりないのに。
俺は竜の眉間を寄せ困惑する。
あまり逢っていない筈なのに。俺はセーシャという令嬢に抱き付かれるほど好かれていた。
何で?どうして?何処でフラグ立ったんだよ!。意味が解らん?。
俺は目の前に無防備に身体を預ける令嬢の胸の感触よりも戸惑いの気持ちが大きく。満足に胸の感触を楽しむことが出来なかった。
「何処ですか?。お嬢様。」
竜舎の外から声が聞こえる。
竜舎内から後ろ髪を三つ編みに束ねた角を生やすメイド姿のマウラが入ってくる。
竜舎に入ってきた冥死竜マウラは俺に抱きつくセーシャお嬢様を目撃する。
ギャ!····ギャガ·····
「あっ!···これは····。」
俺はばつが悪そうに竜顔をしかめる。
「ちっ。」
マウラは不快な顔で舌をならす。
舌打ちしたよこの騎竜(ドラゴン)·····。
俺は竜顔をしかめる。
あまり印象が悪かったけど。そこまで邪険にしなくても良いだろうに。
マウラが俺、ノーマル種に対して良い印象持っていないことは分かるけど。そこまで悪態つくことないだろ。傷付くなあ~。
「セーシャお嬢様、そんな汚らしい竜舎内でノーマル種なんかに抱きついたら折角のアルナビス騎竜女学園の制服が汚れてしまいます。離れてください。」
「嫌よ。折角のライナに逢えたのよ。マウラは私がアイシャ・マーヴェラスの騎竜のノーマル種のライナに逢いたいとせがんでも逢わせてくれなかったじゃない!。だから私、マウラに隠れて逢いにきたのよ。」
そうだったのか····。何処と無くこの積極性のあるところはアイシャお嬢様に似ているなあ。流石は母方の姉妹ってところか。性格も似ている。
マウラははあ~失望感丸出しのため息を吐く。
「セーシャお嬢様が従姉妹であらせられるネフィス様の最愛の娘であるアイシャ様に逢うのなら何も文句はありません。ですがアイシャ様の騎竜であるノーマル種のライナに逢いたいという理由なら話は別です。七大貴族の一つであるゆうしょただしきギルギディス家がノーマル種の騎竜と戯れるなど名家の名に泥を塗ります。」
「何よ!。ライナはあのエレメント種やエンペラー種も倒す実力を持つほどの騎竜よ。噂ではあのパトリシア・ハーディルの騎竜レア種の黒眼竜ナーティアまで倒したと言うじゃない。」
「っ!?。」
ぴくっとマウラのこめかみが反応する。
え!もうパトリシア・ハーディルの決闘が噂になっているの?。
パトリシア・ハーディルとの決闘はまだ数日しかたっていないのに噂が流れるの早いなあ~。
「それでもギルギディス家の次期当主としてもっと自覚を持って下さい。貴女はノーマル種に抱きつくような身分の低い貴族ではないのですから。」
「何よ!。マウラの意地悪!。アイシャは良くて私が駄目って可笑しすぎるわ!。マウラなんか大ッ嫌い!。」
セーシャお嬢様はマウラに怒鳴りつけ。竜舎を飛び出してしまった。
一人(一匹?)取り残されたマウラははあっと力を抜けた深いため息を吐く。
ゆっくりと顔を上げ冷たい視線を俺に向ける。
《竜言語変換》
「パトリシア・ハーディル嬢の黒眼竜ナーティアと戦ったのですね。」
「ああ、アイシャお嬢様の親友であるパールお嬢様の相棒であるレイノリアがパトリシアお嬢様に奪われたからなあ。だから俺はパールお嬢様にレンドゥラ(貸借竜)されて決闘したんだ。」
俺の決闘の経緯を話すとマウラは不快に顔をしかめる。
「何て無駄なことを。レンドゥラ(貸借竜)して決闘に出してもアイシャ様の功績にはならないでしょうに。アイシャ様ももう少し御友人を選ぶべきです。」
「·········イラッ。」
俺はマウラ発した言葉にかなりムッというかかなりムカついた。俺のことはともかくアイシャお嬢様の交友関係に口出ししたからだ。
ある程度の悪態には我慢できたけれど。ここまで言われると我慢の限界がある。
「マウラ!。あんたにアイシャお嬢様の交友関係に口出す筋合いはないだろ!。パールお嬢様は幼い頃からの御友人で理解者だぞ。あんたら七大貴族と違って最後までアイシャお嬢様のことを心配していたんだ。それを友人を選べって!ふざけるなあっっ!!。」
俺は唸り竜瞳は威嚇するように瞳孔が開く。
マウラは冷たい表情だったが。俺に向ける視線は汚物をみるような眼差しへと変わる。
「ライナ。貴方はマーヴェラス家の騎竜として何も解っていない。マーヴェラス家の血筋とその偉大さとその価値に。」
「何がだよ!。」
グルルル
俺は威嚇の唸り声を上げる。
「マーヴェラス家は七大貴族にとって最も価値のある家系なのですよ。確かにマーヴェラス家の象徴たるドラゴンを喪い。没落してしまいましたけれど。それでもマーヴェラス家の血筋には価値があるのですよ。本来ならマーヴェラス家は何処ぞの一般の貴族が仲良くできるような立場ではないのですよ。」
ズズズズズ
冥死竜マウラの言葉には冷たさと強い重みがあった。俺は激しく強く喰って掛かっているが冥死竜マウラの能力なのかどうかしらないが。マウラの発する言葉に何かとてもつもないどす黒い圧迫感似たものが。俺の心を押し付けて黙らせるようとしていた。
「ぐっ、だが···。アイシャお嬢様の親友はパールお嬢様は相応しい!。そして親友を選ぶのはマウラあんたじゃない!アイシャお嬢様だ!。」
俺はマウラの発する呪い似た何かを振り払い激しく反発する。
「··········。」
「··········。」
フッ
長い沈黙の中俺に押し付けるどす黒い圧迫感はスッと消え失せる。
「まあ、良いでしょう····。ライナ、貴方にはこれからもアイシャ様の功績を作る為の踏み台になって貰いましょう。ただ·····もし。」
マウラは何か言いかけたが直ぐに考え直したように口をつぐむ。
「いいえ····過程を言っても仕方ないことですね····。」
マウラは頭を振る。くるりと振り向き三つ編み束ねた後ろ髪をみせる。
「それではご機嫌よう····。ノーマル種のライナ。」
冥死竜マウラは竜舎の出入口をゆっくり歩きながら去っていく。
俺は唯一嫌悪を感じたメスドラゴンの後ろ姿を竜舎から消えるまで睨み続けた。
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