第26話 学園入学編 それ檻ですよね?
マーヴェラス邸の門戸で俺はアイシャお嬢様を待っていた。アイシャお嬢様と一緒にアルナビス女学園に向かい入学する為である。
タタタタ
「ライナ、似合う~っ?。」
アイシャお嬢様はフリフリのスカートに上着がネクタイをしめ。装飾の刺繍が刻まれた襟がでるアルナビス騎竜女学園専用の制服着て俺のもとに駆けて寄ってくる。
締められたネクタイの上に成長した二つの豊かな膨らみが左右に動くことにぷるんぷるんと揺れる。
ギャアがアギャア!ギャアアギャアアガアギャアラギャアギャアラギャアがアギャア
「おお、似合います!。是非記念にその制服のまま。我が背中に抱きついてください!。」
俺は制服姿のアイシャお嬢様の胸の膨らみを確かめたくてピロっと翼を広げ背中をアピールする。
「駄目ですよ。お嬢様、皺になりますから。」
続いて邸から出てきたメイドのカーラさんに止められる。
う~ん、残念。
制服姿ままのアイシャお嬢様に背中に抱きついてもらいたかったのだけれど。致し方無いか。次の機会あるだろうし。
「おおー!アイシャ。もう二度と逢えないだねえ!。」
リリシャとカーラは馬車を取りに身支度する。
門戸で見送りにきたマーヴェラス伯爵は大の大人でありながら泣きべそかいてアイシャお嬢様に抱きつく。
「お父様、夏休みにはちゃんと実家にかえりますから。」
「本当だぞ!本当に本当の本当だからねえ!。」
マーヴェラス伯爵はまるで駄々こねる子供のようにせがんでいた。
ガラガラ
門戸の前に二台の馬車がやってくる。アルナビス騎竜女学園がある騎竜都市ドラスヴェニアまで馬車でむかうのだ。騎竜で飛行すればよいのだが都市の頭上の飛行には許可証が必要なので入学前のアイシャお嬢様には許可証は所持しておらず。発行するのにも一ヶ月くらいかかるそうだ。
「お嬢様、お乗り下さいませ。」
ボインボイン
二台の馬車の前の馬車の手綱を豊満な膨らみを揺らしてリリシャが引いていた。
後方の馬車からはカーラさんが降りる。
「さあ、ライナ。私達は後ろの馬車で行きますよ。荷台にお入りなさい!。」
「·······。」
カーラさんが後ろの馬車の荷台に手をかざす。
「·········。」
カーラさんが堂々と手をかざす馬車に俺は微妙な竜瞳の視線を送る。
あの·····カーラさん····。後ろの馬が引いているの荷台じゃなくて。「檻」なんですけど·····。
後ろの馬車が引いていたのは荷台ではなく。どうみても頑丈な鉄梯子が何本もついた正方形の形をした大きな檻であった。
「さあ、ライナ!。私達もアルナビス騎竜女学園までこの馬車で行きますよ!。早くこの豪華な荷台にお入りなさい!。」
メイドのカーラさん満面な笑みを浮かべ荷台(檻)に入ることを薦める。
いやいやいや、どうみてもこれ檻だろ?。荷台じゃないだろう!。カーラさん、俺、普通に荷台にしてくださいよ。逃げないのに何故わざわざ檻に入れるの?。
俺は突っ込み所満載のカーラさんが薦める荷台(檻)に竜の口が引きつく。
「ライナ、まあ~だ?。」
アイシャお嬢様は既に前の馬車の客車乗って出発準備万端で窓から顔を覗かせて俺の名を呼ぶ。
「ほら、お嬢様の出発の準備ができていますよ。後はライナだけです。」
カーラさんがアイシャお嬢様をダシにして俺を急かす。
何~んか、納得いかないのだけど····。
俺は複雑な気持ちだったが。アイシャお嬢様を待たせるのも悪いし。仕方なくカーラさんが用意した荷台(檻)に渋々入ることにした。
ガチャン
俺が荷台(檻)入った直後カーラさんは鉄梯子の扉に錠を付ける。
ちょ、何で錠までかけるの?。
荷台(檻)に入った直後。何の躊躇いもなくカーラさんが鉄梯子の扉に錠を付けて出れないように隔離した。しかもチェーン付きで。
「さあ、お嬢様参りましょう。」
カーラさんのキリッとした顔が満面な笑顔で馬車を引く座席へと座る。
「それじゃお父様、行って参ります!。」
「嗚呼、アイシャ頑張るんだぞ。他の貴族に何か言われるかもしれないが。それでも挫けずレースで見返してやれ。」
「はい!お父様!。」
アイシャお嬢様元気よく返事をする。
ヒヒ~ン
ガラガラ
馬車が動きだしアイシャお嬢様は手を振る。
父親のマーヴェラス伯爵から見送られ。
馬車はマーヴェラス領内の牧場の路を進んでいく。
マーヴェラス領内を抜けて平原にでる。
いつも上空から見渡す形だったから地上から景色を眺めるのは新鮮である。
ガラガラ ガチャガチャ
車輪が周り。俺の荷台(檻)が金属で擦れる音が響く。
手綱を引くカーラさんの小声が俺の竜耳に届く。
「うふふ、やっぱりライナは檻がお似合いね···。」
カーラさんの口元が嬉しそうにつり上がる。
やっぱ檻じゃねえか!。この野郎!!。
どうやら俺はカーラさんの趣味に付き合わされたようである。
ガラガラ
平原を抜け暫く進み草原に入る。草原を抜けると大きな都市が見えてきた。
「お嬢様、騎竜都市ドラスヴェニアが見えてきました。」
巨大な塀に囲まれた都市が見える。
騎竜都市ドラスヴェニア。騎竜レースが盛んな都市の一つである。騎竜レースは村や町、都市、王族がいるという王都さえも年に何度もやるほどレースの大会が開催されている。ドラスヴェニアはレースだけではなく騎竜乗りの育成にも力を注いでいる。アルナビス騎竜女学園は騎竜都市ドラスヴェニアの中にあり。領地も騎竜乗りや騎竜専用に広大で広い。アルナビス騎竜女学園からレースに出場する騎竜乗りが生まれるのである。騎竜乗りの女性専用職業とされているが。男性、貴族の男性は何をしているかというと主に決闘、竜騎士として訓練を受ける。平民は商人や鍛治師になるが。貴族は竜騎士。主に戦いを生業とする。男性が戦闘。なら女性は競争ということだ。男性の騎竜乗り、競争に出ないのかというとこれに関しては世界を救ったとされる伝説の女性の騎竜乗りが関連しているらしい。故に男性は騎竜乗りになれないが。女性が竜騎士として戦いに身を投じることもあるそうだ。
ガラガラ
ドラスヴェニアの門に付きリリシャが通行証を渡す。
「アルナビス騎竜女学園の新入生の方ですね。どうぞおお通りください。」
無事なんの障害もなくすんなり通行できた。
ガラガラ
ドラスヴェニアの塀門を二台の馬車がとおる。最後に荷台の檻に入れられた竜を門番が目撃するとギョッと顔が驚く。
通り過ぎていく最後の檻付きの馬車をじっと困惑げな眼差しで遠くに離れるまで見つめていた。
「何でノーマル種の竜が檻に入っているのだろう?。」
門番は特に狂暴でも強いわけでもないノーマル種が檻に入れられていることに不思議に思った。
ガラガラ
馬車はドラスヴェニアの広い舗装された道を進む。
「ママ、あの竜、檻に入っているよ。」
「まあ、本当ね。でも何故ノーマル種を檻に入れているのかしら?。」
「あれ?ノーマル種だよね。何故檻に。」
「何で檻に入ってるんだ?。ノーマル種なのに。」
「ノーマル種をあんな頑丈な檻に入れる必要性あるか?。」
「ノーマル種をあんな頑丈な檻に入れるなんて勿体無さ過ぎじゃないか?。」
馬車が住宅街を通りすぎていく。行く先々で貴族や商人、職人が口々にノーマル種が檻に入れられていることに首を傾げ困惑している。
うん、自分もそう想います。
て言うかノーマル種という言葉に棘がありますよね?。あなた方。
騎竜が檻に入っているよりも。寧ろノーマル種が檻に入れられていることに対して住民は疑問、不満を感じている。寧ろノーマル種という言葉自体に悪意をかんじる。
ガラガラ
舗装された道をを進み住宅街を抜ける。長くそびえたつ時計塔をすぎると露店の路を進む。肉が焼ける白い煙が檻のなかまで漂う。
む?これはリリシャさんがお土産に買ってきた山賊焼きもどき。はあ~また食べないなあ。胡麻と塩コショウがきいた焼き肉串。油がほんのりと口に広がり塩加減が絶妙。じゅるり俺の竜の口からヨダレがでるよ。後でアイシャお嬢様に頼んで買って貰おう。
「アイシャお嬢様着きましたよ。」
リリシャが客車に入っているアイシャお嬢様に声をかける。
いつの間にか目的地に着いたようだ。
俺は竜の首を上げ前方を見上げる。
そこには黒い鉄柵に囲まれた広大な敷地と学舎と思われる立派な建物が建ち並んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます