第27話 竜種の障害


「それでは私達は届いた荷物を取りに行って参ります。お嬢様の生活用品、私物一式全て寮に運んでおきますね。」

「ありがとう。リリシャ、カーラ。」


リリシャとカーラはアイシャお嬢様の引っ越し用の荷物を取りにいくそうだ。

俺はやっと頑丈な檻から解放された。解放されるまでにカーラさんが渋って檻に出してくれなかったことは言うまでもない。

アルナビス騎竜女学園の校門には他にも新入生と思われる生徒達が登校していた。よくみると女子生徒の隣に角を生やしたメイド姿が見受けられる。メイド以外にも執事姿もいたのでアルナビス騎竜女学園の女子生徒の騎竜はメスだけではなくオスもいるのだと解る。男子禁制といっても騎竜はカウントされないらしい。俺とアイシャお嬢様は校門に入ろうとする。校門には守衛というか門番が立っていた。

俺とアイシャお嬢様はアルナビス騎竜女学園の校門を潜ろうとする。


「ちょっと待ちなさい、君。」


突然門番に呼び止められる。


「君、ノーマル種をペットにして連れていくのは禁止だよ。校則を知らないのかい?。」

「?。」


アイシャお嬢様は門番の言っている意味が理解出来なかった。

どうやら門番はノーマル種の竜の俺をペットかなにかと間違えているようだ。他の女子生徒のお嬢様達は騎竜を人化させて登校している。しかしアイシャお嬢様は普通に人化しないできないノーマル種の俺を連れている。よくみると周りの登校するお嬢様達から奇異な目でみられている。それもそうだろう人化していないただのノーマル種のドラゴン一匹を一人のお嬢様が連れ歩いているのだから。場違いと思われても致し方ない。


「いえ、違います。ライナ、えと私のノーマル種のライナなんですけど。私の騎竜なんです。ちゃんと学生証もあります。」


アイシャお嬢様は懐からアルナビス騎竜女学園から送られた学生証を提示する。魔法印が刻まれ。偽物を発行するのがほぼ不可能である。


門番は学生証を確認する。


「確かに本物だね。だけど学生証には騎竜がノーマル種とは書かれてはいない。本当だったとしてもここの騎竜乗りのお嬢様学校でただのノーマル種の騎竜でやっていけるわけないだろう。」

「違うんです!。ライナは上位種並に強いノーマル種で。」


アイシャお嬢様は強く反論する。


「上位種より強い?。そんなホラ話誰も信じるわけないだろ。」


門番は呆れた様子でため息を吐く。


クスクス

話を聞いていた登校する新入生からも陰で小さな笑う声が漏れる。


ギュッ

アイシャお嬢様の口元が強く締まり悔し涙にうち震えている。

俺の緑の竜顔がしかめる。

いきなり壁にぶちあたってしまった。

まさかいきなり初日登校で校門で行き詰まってしまうとは。

助けてあげたいけど、俺はただの竜だし。暴れようものならアイシャお嬢様が退学処分になりかねないし。

う~んどうしたものか。


「どうかしたの?。」


俺はアイシャお嬢様を助けることもできず途方にくれていると。誰かが声をかける。


俺は声の主に視線を移すと見知った顔が竜瞳に写る。そうスカーレット赤髪短髪の少女と深紅の髪と紅いの角を生やし。唇が紅いルージュに染まった魅惑的な赤ドレスの女性を目撃する。


「レイン・ルポンタージュ····。」


アイシャお嬢様は俯いた顔を上げ。スカーレット赤髪短髪の少女に気づく。


「君も説得してくれないか。この学園ではノーマル種はやっていけないということを。この娘は上位種にノーマル種が勝ったとまでホラを吹くのだぞ。」

「事実だぞ····。」


紅い角を生やす赤ドレスを着る魅惑的な美女が不機嫌にふんと鼻を鳴らし口を挟む。


「彼女の言っていることは事実です。実際私の相棒である炎竜ガーネットがその娘のノーマル種のライナに破れましたから···。」


スカーレット赤髪の少女レインは顔色変えずに説明する。

ざわざわ

周囲の令嬢生徒のギャラリー達も騒ぎだす。



「君までそんなことを···。庇うことないだろうに····。」


門番は憐れみを帯びた視線を二人の生徒にむける。


「ふん、さっきから聞いておれば!。」


ガーネットは堪忍袋の尾が切れたかのように美人の顔が歪み。細長い赤い眉がつり上がる。


「事実と言っておろうが!、我はこのノーマル種に敗北した!。これは紛れもなく事実だ!。我が誇り高き炎竜族は自らの敗北を誤魔化したり。偽りもせぬ。何故なら我等炎竜族は戦いにも競争にも誇りを持っているからだ。」

「そんなご冗談を····。」


門番は炎竜ガーネットの言葉に真面目に捉えず信じなかった。


ゴゴゴゴゴ

ガーネットの紅い角がついた燃えるような深紅髪から湯気が漏れだし。髪の毛が逆立つ。美しい美人顔も怒りの形相へと変わっていく。門番の態度が完全に彼女のぶちギレ怒髪天を衝いていた。


「我は炎竜族は冗談を嫌うのだがなあ···。これ以上戯言抜かすなら消し炭にするぞ!!。」

「ひぃっ!。」


ドサッ

門番は炎竜ガーネットのあまりにも迫力ある怒気にあてられ。恐れおののき腰を抜かす。


「ちょ、ガーネット!?。」


激昂するガーネットをレインは宥める。


「こやつが我等の神聖なレースの勝敗を愚弄したのだ。当然だ!。」


ガーネットはふんと鼻をならし。機嫌悪くそっぽをむく。


「どうかしましたか?。」


騒ぎを聞きつけ眼鏡をかけた凛とした姿勢をしたこの学園の教師と思われる女性が現れる。


「ああ、教頭。実は····。」


門番は立ち上がり事情を説明する。

事情を聞いた教頭は眼鏡に隠れた瞳がキラッと眼光を放つ。


「貴方は連絡網を確認しなかったのですか?。新入生にノーマル種の竜を連れた生徒がくると報告していたはずですよ。」

「あっ、え?。冗談じゃないんですか?。」


どうやら連絡網に俺とアイシャお嬢様の情報報告されていたようである。解ってて門番は止めるのだから職務怠慢でる。


「アイシャ・マーヴェラスとノーマル種のライナは紛れもなく我が学園の新入生です。解ったなら早く持ち場に戻ってください。そもそも新入生の入門を妨害する権利は貴方にないはずです!。」

「は、はいっ!失礼しました!。」


タタッ

門番は慌てて持ち場に戻る。

教頭はスッと姿勢を正しアイシャお嬢様に視線を移す。


「お手数をおかしましたね。アイシャ・マーベラス。」

「いえ···助けて頂きありがとうございました。」


アイシャお嬢様は礼儀正しくお辞儀をする。


「いえ、これに関しては我々の落ち度です。それにしても······。」


教頭はキラッと光る眼鏡かけた視線が緑色の鱗に覆われた竜に注がれる。


「これが上位種を負かしたノーマル種ですか····。」


教頭は凛とした姿勢で品定めするかのようにノーマル種のライナを観察する。


「全然強く見えませんねえ···。」


それ転生前からよく言われてます。

俺はペコペコと平社員の如く竜の長首を上げ下げし低姿勢を貫く。


「校門を通って構いませんよ。貴女のノーマル種に関しては寮には収まりきらないので来客専用の竜舎を貴女の騎竜の宿舎に致します。問題ありませんね?。」

「はい、何から何までありがとうございます。」


ペコリ

再びアイシャお嬢様は丁寧に頭を下げる。


「それでは私はこれで····。」


凛とした姿勢を正した教頭はしっかりとした足取りで学園に戻っていく。


「レイン・ルポンタージュ。さっきはありがとう。」

「レインでいいわ。今日からお互い同じ一年生のクラスメイトよ。宜しくね!。」

「こちらこそ宜しく。」


アイシャお嬢様とレインはあ互い握手をかわす。


「ライナ、また逢ったな。」


赤いドレスに身を包んだ紅い角を生やした魅惑的な美女が胸を張る。


ギャアギャ

「そうですね。」


俺の背中が炎上した件以来。俺は炎竜ガーネットにたいして多少なりとも苦手意識がある。


「我を負かしたのだ。もっと胸を張るがよい。舐めた口をきく騎竜がいたら容赦無く叩き潰すがよい。」


炎竜ガーネットはでんと赤ドレスに隠れた盛り上がった膨らみを前に出す。

そんな事したら即刻アイシャお嬢様が退学処分になるだろうに····。

俺は炎竜ガーネットの問題発言に微妙な竜顔を浮かべる。


「アイシャっ!!。」


聞き覚えのある声が校門の校内の並木道からとびかう。

俺は視線を向けると二人組の娘が駆けてくる。一人は真珠色の独特な髪と瞳をして。四年の間で瞬く間に成長した豊満な二つの膨らを揺らし。アルナビス騎竜女学園専用制服を着ている少女。もう一人は透き通るような長い青い髪を靡かせ。頭に二本の角を生やしカチューシャを飾ったメイド姿の娘。


「パールっ!?。」


アイシャお嬢様は親友の姿をパッと目を輝かせ。嬉しそうに笑顔を浮かべる。


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