第23話 おっπ
ギャあああああああーー!!
「オパパッイーヨーーッ!!」
『何っ!?。』
炎竜ガーネットの紅い竜の身体をライナはすり抜けるように通りすぎる。
ガーネットはあり得ない状況に一瞬思考が停止する。
「えっ!?どういうこと?。ノーマル種が何で此処に?。私達を追い越した?。」
ガーネットに乗るレインも通りすぎたノーマル種の竜にたいして驚愕の眼差しを向け。訳が解らずに錯乱していた。
ギャあああああああーーーーー!!
「オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!。」
思考が停止し。一瞬硬直していたガーネットだったが自分が追い越されたことに気付き我に返る。
前方にノーマル種の緑の竜の姿を自分からどんどん離れていくことにガーネットはふつふつとマグマの煮えたぎるように激しい怒りが湧いてくる。
ギィヤあああああーーーーー!!
『ライナあああああああっっ!!』
ガーネットの紅い翼が炎で溢れだす。怒髪天並に怒りが放たれた。
ドゴオオオオオッーーーー!!。
ガーネットは紅い翼と尻尾から強烈な炎を纏った爆発すると、ぐんぐんと前方に飛行するライナに追い付こうとする。
「信じられない。ノーマル種が上位種を追い抜いた?。上位種であるエレメント種の中でパワータイプである炎竜を?。」
レインはまだ信じられなかった。アイシャ・マーヴェラスの騎竜ノーマル種のライナが自分達を追い越したことに深く狼狽えていた。獄炎噴の翼を使う炎竜族は最もエレメント種の中でパワーに秀でた竜種である。唯一火力でスピードをあげる竜である故、燃費は激しく消費するがそれ相応の威力が高い飛行スピードが手にはいる。飛行スピードに長けている竜と言えばレア種の銀竜か、同じエレメント種の疾風竜である。他の竜は魔法や特殊能力、環境に応じて力を発揮する竜が多いが純粋に火力とスピードでの能力なら炎竜族に右に出るものはいない。
ギィヤあああああああーーーー!!
『ライナあああああああーーー!!』
紅いくちばしに激しい怒号の咆哮が放たれる。ガーネットは火力を尻尾や翼の炎を爆発させ飛行スピードをあげるがそれでもライナには追い付けない。
『誇り高き炎竜族が威厳もプライドもないただのノーマル種に破れるなど···。汚辱だ、恥辱だ、屈辱だ。こんなことがあってはならぬ!!。』
ガーネットの赤い竜瞳が更に真っ赤に血走る。
『これで焼き尽くされよ!。』
ガーネットの紅いくちばし先から魔方陣がうかびあがる。
ギィヤあああああああーーーーー!!
『フレイドヘルウェーブ(炎獄の波動)!!。』
ガーネットの魔方陣から膜を張ったように炎がウェーブ状にライナに目掛けて放たれる。
炎のウェーブは前方に飛行するライナの緑の竜身にふりかかる。
ゴオオオオオーーーっっ!!
パンッ!
『何っ!?。』
ガーネットの赤い竜の瞳孔が大きく開く
「嘘···でしょ····。」
レインもガーネットの背に驚愕な眼差しを前方のライナに向ける。
炎竜ガーネットが放ったウェーブ状の火属性魔法を目の前で飛行するノーマル種のライナがたった一振り。三本指の鉤爪をハエを追い払うような動作で裏拳を放ち。中が密度の濃い魔力の塊である高熱でできたガーネットの火属性魔法をたったの一振りで弾き飛ばしたのだ。ガーネットが放った魔法はみるも無惨に原型はなく。炎の塊がそこにあったかも解らないほどかききえていた。
ギャアっ!!。
「お返しだ。」
バサァッ
ライナは緑翼を大きく広げ。力強く扇ぐとそこから突風が巻き上がる。突風は縦横無尽に法則性なく吹き上げ。後方のレインと炎竜ガーネットに直撃する。
「きゃあっ!。」
ギィヤッー!!
縦横無尽に巻き上がるカマイタチのような風の塊が直撃され。炎竜ガーネットとそれに乗るレインは空中で態勢がくずれる。
ギャあーーーーーーーーっ!!。
「オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!」
ライナは更にスピードを上げ先頭を突き進む。
バササッ
態勢が崩されガーネットは低空まで押し下げられる。
『ふざけるなっ!。あのようなふざけた竜に我が敗けるなど。あってたまるかあーー!!。』
ギィヤあああああああーーーーー!!。
ガーネットは紅いくちばしが開き激情に満ちた咆哮を上げた。
『レイン!いつまで呆けている。炎竜族奥義を使うぞ!。』
「あっ?えっ!?。解ったわ。」
状況に思考が追い付いていなかったレインがガーネットの激しい叱咤に正気を戻す。
『認めよう、ライナ。お前はノーマル種として特別だ。これ程我が誇り高き炎竜族に侮辱と屈辱を与えたのだからなあ。だが我が炎竜族の誇りにかけて貴様には絶対に敗けん!。結して。』
炎竜ガーネットの紅い竜身から赤い粒子が集まる。レインは身を低くし密着する。
ぼおおおおお
ガーネットの紅い竜の身体が真っ赤な炎に包まれる。
『炎竜族奥義、炎光石化(フレイトニングラッシュ)!!。』
ゴォオオオオオオーーーー!!。
全身に炎纏ったガーネットが緑色の竜に目掛けて突撃する。
ドドドッ!!ドドドドドドッ!ドドドオーーッ!!。
「駄目っ!。追い付けない!!。」
ガーネットの炎竜族奥義でさえライナのスピードには追い付けなかった。
火力とスピードに長けた炎竜がノーマル種によって押されている。ガーネットは誇り高き炎竜族のメスである。プライドが高く。炎竜のオスでさえそう簡単には靡かない。故に上下関係に厳しい炎竜族だからこそノーマル種のライナの背中に抱きつく行為が我慢ならなかった。自ら上位であるはずなのに敢えて抱きつかせることで下位とみなす。ガーネットにとってはそれは理解然らぬ我慢ならんことであった。
『ライナあああああああーーーーーっ!!。』
ギィヤあああああああーーーーー!!
ガーネットは怒号の嘶きが響く。
包んでいたガーネットの熱炎が下の地面へと流れ落ちる。
「ちょ、ガーネットそれは不味いわ!。」
騎乗していたレインがガーネットが何をしようとしているのか瞬時に察する。ガーネットの扱う炎の奥義よりも火の精霊に干渉した技。天変地異並の大技であり。あまりにも強力故に封印した。フレイトニングラッシュよりも広範囲の火災の被害をもたらす。
死傷者さえだしかねないのだ。
「待って!。ガーネットその技だけ駄目!!。」
レインの静止にもガーネットは耳を貸さない。クリムゾン杯のレースは後半にさしかかり。アイシャとライナはスタートでありゴール地点でもあるファイアーマウンデー山麓数十メートル前までにきていた。
「ライナ、もうすぐよ。」
ガア
長い道のりがやっと実を結ぶ時が来た。長かった。
『ライナあああああああーーーーー!!。』
ガーネットの咆哮が後方から聞こえてくる。
「駄目よ!!ガーネット!!。アイシャ・マーヴェラス止まって!。」
『ボルケイノピィラー(噴炎の火柱)』
ドーン!ドーン!ドーン!
ギャア!?
「何だっ!?」
前方ゴール手前にまできて地面から炎が噴き上がり火柱のように天高く噴き上がる。火柱の炎は空気中に岩石まで溶かす程のマグマ熱の炎の壁に覆われた。
俺はゴール直前にして飛行を停める。
『おおっと、アイシャ・マーヴェラスとノーマル種の騎竜ライナの前に忽然と炎の壁が出来上がったぞ!。このままではゴール迄辿り着けない!。』
わあーーー わあーー
『ライナあああああああーーーーーっ!!。』
後方からガーネットの怒りにまみせれた思念の怒声が響く。
追い付けないからっといってゴール地点手前での炎の壁の嫌がらせかよ。
ライナは緑の竜の顔が微妙にしかめる。
「ライナ、アレ大丈夫なんでしょ。」
ガア
俺はアイシャお嬢様の問いに竜の顎を動かし頷く。
マグマの炎の壁だろうが氷の壁だろうが今の俺には問題ない。
バサァッ
俺は翼を高々に広げる。
そのまま光速で突っ込む。
『おおっと、アイシャ・マーヴェラス。目の前のマグマのような炎の壁に突っ込んだ!!。自殺行為だ!!。』
『ンパポー!いけないアレは炎竜族が誇る火属性精霊障壁魔法、あらゆる物質を溶かす故に魔法でなければ対処不可能!。無謀無謀。』
解説の族長ンパポは焦りだす。
「駄目ーーーー!。」
レインの悲鳴似た絶叫が響く。
ぐきゃあああああああーーーーー!!!
「オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!」
マグマ熱の炎の壁に覆われた壁に三本の鉤爪の手に気を練り込んだ。
ゴォオオオオオオ
気を練り込んだ竜の手をマグマ熱の炎の壁に差し出す。
ギャアア!!
「竜気掌!!。」
ドッパーーン!!
ライナの竜の手がマグマ熱の炎の壁にぶつかると岩をも溶ける炎熱の壁にぽっかりと大穴ができる。
「えっ!?。」
『はっ?。』
レインはライナの起こした現象に言葉が失って頭が真っ白になる。
炎竜ガーネットも同じであり。あれほどの激情にかられ。怒りに我を忘れていたはずが。今は意気消沈したように唖然としている。ライナはそのままマグマの壁にあけた大穴をすりぬける。
ギャアアアあああああああーーーーー!!
「オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨ!!オパパッイーヨー!!」
ひゅう!
そのままゴールまで突っきった。
ギャうガっ!!
「おっπっ!!。」
『ゴーーーーール!。クリムゾン杯一着優勝はアイシャ・マーヴェラスとノーマル種騎竜ライナだああ!!。』
わあーーーーーー! わあーーーーーー!
ファイアーマウンデー山麓から絶え間無い歓声が響いた。
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