第17話 集気法

ギャドラギャアガアギャアガアギャアガアギャアガアギャアラギャア

「そういえば名を告げていなかったねえ。私はレッドモンドだ。前世の名は政木健二と言う。君と同じ転生者だよ。」

ギャアガアギャアギャ!?

「転生者なのですかっ!?。」


俺は竜瞳を丸くする。

信じられなかった目の前の変な筋肉質の黒丸サングラスの竜が俺と同じ転生者だったとは。というか竜に転生しようとする物好きな人間が俺以外にもいたなんて驚きである。

ギャドラギャアガアギャアガアギャアラギャアギャドラギャアガアギャアラギャアギャドラガアギャアラギャアギャドラギャアガアギャア

「私が人間だった頃はトレーナーという役職に就いていたんだよ。一流のプロのアスリート達の肉体を鍛え上げる仕事していたんだ。」

ギャ~ギャアガアギャ~

「へぇ~凄いですねえ~。」


一流のアスリート選手のトレーナーをやっていたのなら頼もしい。この世界の騎竜レースも一応スポーツに入るからスポーツ界の役職に携わっていたレッドモンドさんがいればとても心強い。大岩を裏拳のようなもので壊せるのも。そのスポーツ界の役職の何らかの経験を生かした成果なのかもしれない。スポーツと全然関係ないけれど····。


ギャドラギャアガアギャアラギャアギャドラガアギャアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアギャドラギャアガアギャアガアギャアラギャアガアギャドラギャアガアギャアラギャアガアギャドラ

「私が人間だった頃は竜によく憧れたものだよ。竜の凛々しい肉体をみて。あの竜に筋肉を付けたらさぞや素晴らしい筋肉になるだろうなあとよく想像したものだよ。」


レッドモンドさんはうっとりとした竜の顔で何度も頷き。昔を懐かしむように竜のくちばしが緩む。

ギア~ギャアラギャ····

「へぇ~そうなんですか···。」

(全然解らん!。)


竜に転生したい理由がいい筋肉が付きそうだからってどういう動機だよ。


ギャドラギャアガアギャアラギャアガアギャアギャドラギャアガアギャアラギャアギャド?

「上位種の竜に関してだが彼等が扱う力は魔力や精霊を通した力であると理解できるか?」

ガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアガアギャアギャアギャアガアギャア

「はい、俺はそのせいでレースに破れました。あの特殊な飛行方法は多分精霊を利用しています。技名を口ずさんだ必殺技のようなものも多分魔力だと思います。」


炎竜が精霊、魔力扱うのだから魔法も扱う可能性もある。この世界の魔法は人間、竜も扱える。アイシャお嬢様が魔法を使ったところはまだ見たことがない。騎竜レースで父親であるマーヴェラス伯爵の計らいで騎竜乗り同士の戦闘が認可されたレースには出場していないのだ。怪我しないようにとの愛娘であるアイシャの為の配慮なのかもしれない。

ギャドラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャドギャドラギャアガギャア

「上位種である竜は精霊や扱うものや特殊な能力を持った竜が多い。普通にレースをやってもまず勝ち目はない。」

ギャアガアギャ····

(やはりそうですか····。)


ライナの長首は低く項垂れる。

解りきってたことだ。炎竜にノーマル種では上位種に勝負にもならないと言われたのだ。だからといって諦めるつもりも毛頭ない。理由は確かに背中におっぱいを押し付けて貰いたいという不純な動機だったけどそれ以上アイシャお嬢様を泣かせたことを絶対後悔させたる。ノーマル種が決して上位種に勝てないというなら勝った実例を俺がつくるだけだ。

俺はゴゴゴと闘志を燃やす。


ギャドラギャアラギャアガアギャアギャドラギャアガアギャアラギャアガアギャアギャドラガアギャアラギャアガアギャアギャドラガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャ

「確かにノーマル種は上位種とは違う。だからといって勝てない訳じゃない。ただ扱う力のベクトルを間違っているだけだよ。というよりは魔力や精霊に固執してるというべきか。」

?ギャアガアギャアラギャアガアギャアギャアガアギャアラギャアガアギャア

「?そういえば裏拳で大岩を破壊した時。とあるエネルギーといってましたけど。」

ギャギャドラギャアガアギャアギャア

「嗚呼、そのエネルギーとは『気』だよ。」

ガ?ギャアガア!?

「気っ?ですか!?。」


俺は竜目が点になる。

まさかとあるエネルギーのことが気のこととは思いもよらなかった。生前いた世界で気を使って硬い石とか身体を治癒したりとかテレビで昔よくやってた。気功師とかが使ってたなあ。漫画やアニメとかでも手から魔法のように放つようなものとかあるからフィクションだと思っていた。


ギャドラギャアギャドラガアギャアラギャアギャドラガアギャアギャドララギャアガアギャドラガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャドガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャドラギャアガアギャアラギャアギャドラガアギャアギャド

「気は自然界ならどこにでも存在するよ。草や木、生物にもねえ。ここの世界の住人は気の存在を認知していないようだがねえ。まあ精霊や魔法、魔力があるのだから気という力があっても必要性ないのだろうけど。俺が昔選手のトレーナーとして万全を期すために気功師から気の扱いを習ったのさあ。気を覚えたおかげで俺の筋肉はいつも血行が良くてびんびんさっ。」


びくんびくん

そういってレッドモンドさんの竜の筋肉の胸板が脈打っている。


ギャギャアギャ····

「そ、そうですか····。」


俺は竜の口元が引きついた。

はっきり言って気持ち悪い····。


レッドモンドさんは肉つきの腕をさらすようにみせる。腕に筋肉を浮きあがせると何か光の粒子のようなものが集まる。

ギャドラギャア?

「これが見えるか?。」

ギャアガアギャアラギャアガアギャアギャアガアギャアギャ

「何か黄色い粒子のようなものが集まっているように見えます。」

ギャドギャアガアギャドラガアギャアラギャアガアギャドラギャアガアギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャドラガアギャアガアラギャアガアギャアラギャア

「これが気だ。今大気中の気を集めたんだ。集気法といって大気中の自然界あらゆる気を集める方法だ。気を集めて身体に吸収できれば強靭な肉体ができる。気をためた腕で離れたところからでも裏拳を放てば大抵の物は壊れる位にはなる。」

ギャアギャア

「凄いですねえ。」


俺は感嘆する。


ギャドラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャギャドラギャアギャアガアギャドラギャアギャアガアラギャアギャドラギャアガアギャドララギャアガアギャアギャドラギャアガアギャア

「ノーマル種は魔法が扱えない。魔力を持たないというが気の適合性はあるのだよ。気を身体に大量に溜め込むことも可能だ。大量に溜め込んだ気を吐き出せば大岩を破壊するほどの威力にもなる。」

ギャアギャアガア!

「本当に凄いです!。」


これなら炎竜と同じ土台で戦える。相手が魔法や精霊の力を得ようとも気で対抗できるはずだ。


ギャドラギャアガアギャアギャアギャドラガアギャアギャドラギャア

「やっぱり筋肉は素晴らしい。鍛練すればするほどその成果が返ってくる。君もそう思わないかい?。」


レッドモンドさんは筋肉が脈を打ちながらニッコリと竜のくちばしが微笑む。


ギャアガア····

「そうですね····。」


俺は微妙な竜顔で返事を返す。

ただ俺は気付いてしまった。敢えて突っ込まないようにしていたが。どうしてもある疑問が頭に浮かんでしまったのだ。確かにレッドモンドさんの気を扱う集気法は凄いと思う。トレーナーとしても一流であろう。大気中の気を吸収し己の力にするのだ。裏拳だけで遠くの固い大岩まで壊せる威力がある。それは本当に凄いと心からそう思える。ただどうしても突っ込まざるえない疑問が俺の竜の脳裏から離れられないのだ。

集気法は本当に凄い。本当に凄いのだが。俺は心の奥底にある疑問が突っ込まないように努力しでも突っ込まざるえなくなる。


俺は心の底でこう呟く。


それ、筋肉関係無くねえ?。

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