第14話 初めての敗北
ドゴオオオオオーーー!!!
獄炎の炎が噴き出す。
炎竜の紅い翼が炎を纏い次々と前方にいた騎竜達を追い上げる。炎纏った翼が他の騎竜の身体に掠りもすれば瞬く間に炎が燃え移り。騎竜と貴族乗りは阿鼻叫喚をあげ落下していく。落下した騎竜や騎竜乗りは村の住人総出で消化作業に勤しむ。ファイヤーマウンデー山はまだ活火山であり。火に対応した被害を最小限に食い止める為に消化班が用意されている。しかもエレメント種である炎竜が扱う火の精霊を加護された獄炎噴の翼は他の騎竜や騎竜乗りに多大なる火傷の被害を与える。レースには救護班は用意されているがクリムゾン杯は消化班も用意されているのだ。
ゴォオオオオオオオーーーっっ!!!。
ギャアガア?。
「何の音だ?。」
先頭を飛行していたライナは竜の首を曲げ後ろを向く。
なっ!。
ライナの縦線の竜瞳の瞳孔が縮む。
ゴォオオオオオオオ
炎竜ガーネットの翼と尻尾が包まれ後方に炎が噴射されるように放たれていた。それはまるで飛行機、ジェット機の噴射口ように見える。
ふざけるなあっ!。アレ何だよ!。ここはファンタジーの世界だろ!。ガメラかよっ!。異世界ものとは思えないほど炎竜の翼と尻尾から噴射口のように放たれる噴炎ははっきり言ってこの世界では場違いであった。異世界もので魔物や怪物が噴射口のように噴射する生物などみたことがない。あるとすれば俺の世界でいう怪獣かトレマーズ3のようなホラー映画ものの怪物だけだろうか?。
ゴォオオオオオオオーーー!!。
炎竜ガーネットの尻尾と翼が炎が噴射された一気に俺達の隣に追い付く。
『待たせのう。ノーマル種よ』
ガーネットの紅い竜瞳が俺を睨む。
ギャガああああ!ギャアガッ!ギャギャガギャア!!
「ふざけるなあっ!卑怯だぞ!そんな技反則だ!!。」
俺の言う世界で機械でもない普通のレースに主に競馬や競輪とかにジェットエンジンなど積んだりしない。確かにレーサーや競艇などは機械にエンジンは積んでいるレースはあるが。生物のレースにエンジンを積んだレースなど聞いたことがない。
『ふん、卑怯だと?。これが上位種の力よ。火の精霊の加護を与えられた力を卑怯よばりするではない。貴様が卑怯といった力は上位種は全て使うぞ。エレメント種、ロード種、エンペラー種、レア種全てなあ。これが上位種とノーマル種の違いよ。』
俺の竜の背中にたらりとひんやりとした冷たい冷や汗が流れる。
上位種全てこんな常識外れな飛行方法をするのかと。普通に騎竜のレースを普通に勝っていた。普通な飛行に普通な戦闘、普通なレース。上位種は魔法扱うというのだから炎を操り凍結させたりするものだと軽くそう信じていた。しかし本当の上位種の竜の競争はそんな生易しいものではないと理解する。
「残念だけど···。これがノーマル種と上位種の力の差よ。理解した?。」
ガーネットに騎乗するレインはアイシャお嬢様に易しげに問いかける。
アイシャお嬢様は俺の背中で唇を咬み悔しげに幼い顔を歪ませる。
「まだよ。まだ私とライナは敗けてない!。」
アイシャお嬢様はドラグネスグローブで触れる俺の背中をぎゅっと強める。
そうだ!?。何を考えている?。俺達はまだ敗けてない。レースでまだ終わっていないんだ。上位種がどんな魔法や能力、どんな技を持っていようが知ったことか!。俺とアイシャお嬢様はこのクリムゾン杯で絶対に優勝するんだ!。
俺は緑の翼を大きく広げ飛行スピードを上げる。隣後方でレイン深いため息を吐く。
『レイン、どうやらあの貴族の小娘とノーマル種はまだ理解出来ぬようだ。なれど全力で潰そうとおもうが善いか?。』
レインが背に乗る紅の竜が威圧的な竜の顔を浮かべる。
レインはまた深いため息を吐く。
「はあ~、私は弱いもの苛めしたくないんだけど···。」
『ふん、我は相手が弱かろうが強かろうが関係ない。全力で潰すまでよ。それこそが我が炎竜族の誇りよ。』
ガーネットは紅い竜の顔を堂々高々に上げる。
それを弱いもの苛めというんだけどね。
レインは顔をしかめ苦笑する。
炎竜ガーネットの性格を知ってるレインは反論はしなかった。
「早くすませて。長引けば長引くほど尾を引くから。」
『解っておる。早々に全力で潰す。我は手加減一切せぬ。』
紅いの翼を大きく開くと赤い粒子の光が集まりだす。
『これを喰らわれることを誇りに思うがよい。これこそ炎竜族究極奥義、炎光石化(フレイトニングラッシュ)!!。』
ボオオオオオオ
炎竜ガーネットの身体全身が炎に包まれる。火だるまのようにみえるが騎乗するレインは熱さも感じず無傷であった。
炎纏った竜が前方に飛行するアイシャとライナに突っこむ。
ドドドドドドドドドド!ドッパーーーンッ!!
っ!?。
「キャアアアっっ!!。」
炎纏った炎竜ガーネットの猛烈な突進にアイシャとライナは吹き飛ばされる。炎が燃え移りライナの身体が炎にまみれる。
ぐぎゃああああああああッッ!!。
焼けつく痛みがライナを蝕み。咆哮似た阿鼻叫喚が上がる。
ぐっ!アイシャお嬢様····。
意識朦朧するなかライナはアイシャお嬢様の確認をする。アイシャお嬢様に関してはまだ炎が燃え移っていなかった。ただ強烈な炎を纏ったタックルを喰らった為気を失っている。
このままではアイシャお嬢様に燃え移るのも時間の問題だった。ノーマル種でもある程度火には耐性がある。硬い竜の鱗が剣や鎧の素材にされるのがいい例だ。
俺は力は抜ける。翼を扇ぐのを止めた。ゆっくりと炎にまみれた自分の竜の身体が落ちていく。
上空で下を見下ろすレインと炎竜ガーネットに瞳が止まる。
このままでは終わらせるものか···。
そう強く誓い。ゆっくりライナは落下していく。
「少しやりすぎじゃないの?。アイシャ・マーヴェラスは大丈夫かしら?。」
『案ずるな。この程度では焼け死なん。それにしても·····。」
ガーネットは上空から紅い竜瞳を細める。
一瞬あのノーマル種の竜に火の精霊が集まったような気がしたが····。気のせいか?。
「ガーネット。さっさとゴールに到着しよう。こんなレース早く終わらせたいから。」
レインの良心が少し痛んだ。
レインにとってあまり気分の良いレースではなく早く終わらせたかった。
『無論だ。今宵のクリムゾン杯も我等が優勝だ。』
ゴォオオオオーーーっ!!!
翼と尻尾の炎を噴き上げレインと炎竜はゴールを目指す。
プシューーー
白い煙が上がる
瞼が開いた。
消化班によって俺の身体の炎を消されていた。
グロロロ
起き上がりいち早くアイシャお嬢様の姿を捜す。
横たわった竜の背中にいなかったので溶岩壁の路の辺りを見回す。
アイシャお嬢様は少し離れたところで呆けるように立っていた。先に救護班に助けだされたらしい。金髪を靡かせ。魂が抜けたように幼い顔の瞳が虚ろに空を眺めている。
俺はゆっくりと竜の身体を起こしアイシャお嬢様が近づく。
『今宵のクリムゾン杯優勝は予想通りの炎帝レインと炎速のガーネットだーーー!!。』
わーーー! わーーー!
レースの結果内容が魔法具によりスピーカーのように流れ出す。
アイシャお嬢様は空ろな表情で此方をみる。
「ライナ····私達敗けちゃった···。」
ガア····
俺は易しげに唸り声の返事をする。
それしかできなかったからだ。
アイシャお嬢様の肩が震えだす。何度もひゃっくりを上げ米粒の涙をポロポロと溢す。
「ひっく·ひっく··ライナ···私···悔しいよ····。」
アイシャお嬢様は嗚咽をもらし泣きじゃくる。
俺はその様子をじっと見つめる。
「うあああああーーーっ!!」
アイシャは大声で泣き叫んだ。
「ああああああああああーーーーーっ!!。」
アイシャお嬢様は小粒の涙を何度も溢し泣き喚く。
「············。」
泣きわめく主人を見続ける。
このままじゃ駄目だ····。
アイシャお嬢様が駄目なのではなく。俺が駄目なのだ。このままではあの貴族のレインの言った通り。例え騎竜学園に無事入学できてもノーマル種ではやっていけない。騎竜学園の上位種とやりあってもレースにもならないのだ。力を付ける必要がある。スキルでもいい何か上位種と対等に渡り合える強さが欲しい。
俺の竜の瞳孔は開き。牙のくちばしを噛みしめる。目の前で泣きじゃくるアイシャお嬢様を横目に強くなる術を俺は強く模索する。
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