第12話 クリムゾン杯

ぼおー!ぼおー! ぼおー!ぼおー!


わあーーっ!ふっ。

わあーーっ!ふっ。


クリムゾン杯に開催されるレース場の村は何処か原始的な雰囲気を醸し出す場所であった。異世界は貴族や邸など西洋な感じかと思えばそうでもなく。この村は例えるならジャングルに住む原住民族のような集落だった。住人達も身体をペイントしており。簑ズボンをはき素足も裸足である。太鼓を叩き。鈴を鳴らし舞い踊る。


アイんヤ~ ボインボイン

イんヤ~ ポロリポロリ いんにゃ~


その村の集落の唄なのだろうか。甲高い声を上げ雄叫びのような歌声をあがる。


歌の歌詞にボインとかポロリとか竜耳に届くのでこの歌がおっぱいに関係してるんじゃないかと俺は勘繰ってしまった。病気なのだろうか?。

クリムゾン杯は一年に火の精霊に感謝する祭りである焔舞祭と同時に行われる。焔舞祭は火の精霊の恵みに感謝し敬う祭りである。この村の集落の部族は火の精霊を崇める部族なのである。火の精霊に関係しているので火に関係したものは敬愛される。たとえば炎竜とか。


「ライナ、凄いねえ····。」


アイシャお嬢様は祭りを祝う村の住人の熱気に気圧される。


ガア

隣で俺は鳴き声を上げ返事をする。

今日はメイドのリリシャさんとカーラさんは一緒にいない。留守番である。


パン タタン

わ~ わ~

村の集落の真ん中の段差のある建物に歓声が沸き上がる。

外壁はなく。筒抜けで柱が屋根を支えるシンプルな建物であった。その場所に太鼓や鈴、笛などを鳴らす演奏者が集まっている。どうやらあの外気と筒抜けの建物は舞踊場ようなものらしい。


その舞踊場に波状に赤い髪を垂れ流し。胸をきつく締めた赤いドレスを着た美しい女性が踊っていた。魅惑的に着ている赤いドレスはまるで社交ダンスのタンゴドレスようだった。胸元はきっちりしめられ。そこにはこぼれ落ちることなくきっちりとしめられた二つの豊満な膨らみの谷間が垣間見える。

燃え上がるような長く揺れ動く赤い髪と。ルビーのように赤く熱を帯びた瞳、情炎とも呼べる程真っ赤に染まった唇はまさに妖艶、炎媚という名が相応しい絶世の美女である。

俺は暫くその妖艶で真っ赤なドレスを着た深紅の髪の美女にみとれていた。

よく見ると波のように長く垂れ下がる赤い髪の頭に2本の紅いの角がはえていた。

2本の紅いの角を生やした深紅の髪の美女は笛と太鼓と鈴に合わせて踊る。身軽な足捌きでハイヒールをはく足で足踏みをしてタップを鳴らす。手を空に切り。軽やかに激しく手振りをする。情熱的で情炎まるでスペインの踊り子のようだった。


「綺麗だね···ライナ。」


アイシャお嬢様もその激しく情熱的な踊る角を生やした赤いドレスの美女に見とれていた。

ガア

あんな激しく情熱的な踊りをする美女。ドレスからみえる溢れんばかりの胸の谷間。是非我が竜の背中にあの情熱的ではち切れんばかりの胸の膨らみを押し付けて貰いたい!。

ライナは心底からそう思った。


角を生やした真っ赤なドレスの美女が踊り終わるとスカーレット色の赤髪短髪の少女が手を叩き拍手する。


「さすがね。ガーネット、今日も切れのある良いダンスだったわ。」


赤髪の少女は褒め称える。


「ふん、当然だ。我等は誇り高き炎竜族、戦いと踊りが我等のもっとう。火の精霊の感謝祭なら尚更手を抜くことなど有り得ぬ。」


ガーネットというなの角を生やした赤ドレスの美女は燃え上がる炎のような赤い髪をかき分ける。

角を生やした美女は多分騎竜で、スカーレットの赤髪の少女はその騎竜の騎竜乗りだと予想する。


スカーレットの赤髪の少女とガーネットという騎竜の美女は舞踊場から出てくる。

アイシャお嬢様と俺は二人をじっと見つめていた。

ふと視線に気付いた二人はこちらに近づいてくる。

短髪の赤髪の少女と角を生やした赤いドレスの美女を俺の図体とアイシャお嬢様の前にたち一瞥する。



「貴女···貴族なの?。」


ガーネットの赤髪の少女はアイシャお嬢様の前で問いかける。


「あ、はい私アイシャ・マーヴェラスと申します。」

「マーヴェラス···。マーヴェラス家の者?。レア種が亡くなり。没落したと聞いていたけど。」


赤髪の少女は眉を上げ驚く。

マーヴェラス家にも俺の前にレア種の騎竜がいたらしい。


「私がお家を復興するためにレースに出場して戦績をあげているんです。」


アイシャお嬢様は笑顔でお家の実情を話す。


「そう、私はレイン・ルポンタージュ。一応ルポンタージュ家の次期当主よ。今はレース出場の戦績を積むことに勤しんでいるんだけど。で、こっちは私の相棒の騎竜、炎竜のガーネットよ。」

「ふん、貴族とこのレースで出逢えるとはなあ。腰抜けでもない度胸が据わったものがいたか。」


人型の姿になっている炎竜のガーネットは鼻息を鳴らし傲慢な態度をとる。

折角の魅惑的な美女なのに色々台無しだよ。



「そうなんですか?。私もここのクリムゾン杯に出場するんです。」


レインは俺の緑の竜の顔をチラリと一瞥する。


「まさか貴女ノーマル種で出場する気なの?。」

「はい、家は貧乏ですから。ノーマル種しか飼えないので。でもライナは凄く強いんですよ。」


アイシャお嬢様の自信に満ちた表情に対してレインは憐れみの目を向ける。


「残念だけど。ノーマル種じゃ無理よ··。」


「何がですか?。」


アイシャお嬢様は突然のレインの否定的な発言に困惑する。


「貴女がこれからも戦績積むためにレースを出場してるようだからはっきり言うけど。ノーマル種では結して上位種には勝てないわ。」


レインはキッパリと断言する。


「そんなの·····。やってみなきゃ解らないでしょう!」


アイシャお嬢様は激しく激昂する。


「やってみたことがあるから解るのよ。今の今まで貴族がレース出場にノーマル種は使わないのはあまりにも能力と戦闘力がかけ離れているからなの。確かにノーマル種はレース出場してレース位はできるわ。だけど貴族同士の上位種同士のレースならノーマル種は完全な敗北をくらう。」

「でもライナは速いんです。」

「なら貴女は今の今までレースで上位種と対決したことはあるの?。」


アイシャお嬢様は頭をふる。


「でもレースでは順調に連勝してるんですよ。」

「そう、それは貴女が腕がいいか、レースに上位種の竜が出場していないかのどちらかよ。」

「そんな·····。」


アイシャお嬢様は悲痛に眉を寄せ肩を落とす。


「ふん、憐れな娘よ。自らの力を過信し。身の丈にあった現状にいとわからぬとは。」


ガーネットの鋭いルビー色の縦線の瞳孔が開く。


「ガーネット!。」

「止めるなレイン!。身の丈の解らぬ小娘に説教しておるのだ。ノーマル種など我等竜族にとって下等種にしか過ぎない。上位種である。ロード種、エンペラー種、レア種、そして我エレメント種とは能力も力も開きが有りすぎるのだ。レース出場すれば勝負すらならない。早々に諦めて家に帰るがよい。」


ルビー色の鋭い爬虫類の赤目がアイシャを睨む。


「私は戦績積んで騎竜女学園入学するの···グスン··約束したの···うう。」


アイシャお嬢様は涙目になり咽びなく。


「貴女の目的って騎竜学園入学の為の戦績積み?。」


アイシャお嬢様は涙を堪えコックリと頷く。


「そう、なら尚更諦めるべきよ。例え貴女が戦績を積み。無事騎竜学園に入学したとしても。騎竜がノーマル種だったらやっていけないわ。必ず挫折する。」


レインは冷淡に否定の言葉を発する。


「そんなことは··そんなことはないもん。」


アイシャお嬢様は涙を浮かべ完全に泣きじゃくってしまった。努力してお家復興のために健気に頑張ってきたのに。それを諦めろっと一言で飾られたくはない。

俺は竜の眉間を寄せる。


ギャアガアギャアガアラギャアガアギャアラガアギャア!

「さっきから無理だ諦めろだ言いたいこと言いやがって!。」


俺はこのまま黙ってるつもりだったが。ここまで主人を泣かせたのだから黙っちゃいられない。


「ほう、主人も主人だが。その騎竜も騎竜だなあ。身の程解らんとみえる。」


深紅の長い髪の垂れ流す美しい美顔が鋭い赤瞳の眼光を放つ。


ギャアラガアギャアガアギャアラギャアギャア!ギャアラギャアガアガアギャアラギャアギャア!

「レースはやってみなきゃわかんだろうが!。はなっから敗けると決めつけるのは早計だぞ!。」

「レイン、どうやらこのノーマル種の騎竜も力の差を理解できぬとみえる。ならばこやつらをかんぷなきまでに叩き潰すぞ。我は手は抜かぬ!。炎竜族の誇りに掛けて全力で潰す!。」

「負けない····。」


アイシャお嬢様は涙を拭い睨み返す。

レインは短髪のスカーレットの赤髪をかき。深いため息を吐く。


「はあ~仕方ないわねえ。いいわ。このクリムゾン杯でノーマル種と上位種の力の差をみせてあげる。早めに諦めを知ることも大切よ。」


お互い曲げられぬ意地と信念を掲げ。今宵クリムゾン杯での対決を誓う。

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