第2話 幼少編 底辺の騎竜

ふと意識が解放される。

瞼が開き爬虫類のような縦線の瞳孔が辺りを見回す。

藁の敷き詰まれた木製の小屋の中にいた。

馬小屋豚小屋というべき畜舎である。


『上手く転生が完了致しました。』


脳裏に女神アルピスの声が流れ込んでくる。

豊は自分の容姿を確認する。

鉤爪と緑の鱗に覆われた典型的な竜である。角も生えているし翼もあるし尻尾もある。


『豊様、本当にこれで宜しかったのですか?。騎竜に転生してもまともな食事を与えてもらえないかもしれませんよ。寝床だってこのような馬小屋のような場所ですし。』


女神アルピス様の心配に満ちた声が脳内に響く。

豊の緑色の竜口がにこやかに笑む。

構わないですよ。俺はどんな環境でも背中に女性の胸の膨らみを押し付けて貰えるならどんな苦行にも耐えられる所存であります!。

豊は心の中で何の迷いもなく言い放つ。


『そうですか····。何かありましたらお呼び下さい。ある程度のことはバックアップいたしますので。』


グゥオロロロロ

(感謝致します。)

女神アルピスの脳内からくる声が途切れ。豊は竜の長首を使い辺りを見回す。

小屋内には俺以外に家畜はいなかった。というか騎竜と呼べる竜も畜舎内にはいなかった。他の騎竜は外にでも放牧されているのかなあ?。

畜舎の扉の隙間から外の景色が見える。草原が広がり。囲むように柵がある。自分がいる場所が牧場のような所だと理解する。


ザッザッ

人の足音が聞こえてくる。

足音が段々と小屋に近付いてくるので一先ず寝たフリすることにした。


グルルル 

藁の寝床で瞼を閉じ熟睡をしたようにみせる。

ゴゴゴゴ

畜舎の大扉が開かれ。そこから二人の人間が入ってくる。一人は紳士的な黒いスーツを着た男性ともう一人はその男の娘だろうか?。フリフリのドレスを着た金髪の幼い少女が舎内に入ってきた。


二人は寝たフリしている俺の藁の寝床の前で足を止める。


「すまないアイシャ。騎竜は普通のノーマル種しか手に入らなかった。上位種であるエレメントやロード、エンペラー種ならどんなによかったか。こんな貧乏貴族の我等に何処の貴族も担保もないのに騎竜を貸し与えてくれるところなどない。本当にすまない·····。」


紳士の格好した娘の男の顔が悲痛に歪む。


「大丈夫ですよ。お父様。私が立派な騎竜乗りになってお家を復興させます。心配しないで下さい。」


ドレスを着たアイシャという名の金髪の幼い少女は愛らしい笑顔で返す。


「嗚呼~アイシャ、お前は私のマーヴェラス家の誇りだよ。」


紳士黒スーツの男は娘である幼い金髪の少女を涙目に抱き締める。


来た早々重い空気なんだが····。


寝たフリしている豊はこの目の前の二人の親娘にどう接すればいいか迷う。

話の内容から察するに俺はどうやら貧乏貴族家の騎竜に転生したらしい。しかも会話の流れで俺の竜種は 普通(ノーマル)種というらしい。話からしてあまり能力が高くなさそうである。転生早々に貧乏くじを引いたようである。女神アルピス様も転生の特典であるチート能力とかは人間ではないので対象外だと言われた。チート能力ないから最初から楽できないと腹くくっていたが。ここまで底辺だったとは·····。

家柄駄目、財力駄目、種族駄目、能力駄目、チート駄目、駄目駄目な境遇である。だからと言って我が野望をあきらめるつもりはない。無いなら無いで無いままのしあがるしかない。まだ見ぬ多種多様の女性の胸の膨らみを我が背中に乗せるまではあきらめるつもりなど毛頭ないのである。


  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「メイルさん。荷物はこれで全部です。」


アイシャお嬢様は道具屋前で俺の背中に取り付けた荷物を降ろす。

アイシャお嬢様と俺は道具屋での荷物の運送をしていた。アイシャお嬢様の貴族であるマーヴェラス家は貧乏なので。こうやって騎竜(俺)を使い運送屋みたいなことをしている。



「ありがとう。アイシャちゃん。」


道具屋の主人で未亡人の人妻セレアさん。右目下に泣きぼくろをついた魅惑的な熟女である。その熟れた肉体と成熟しきったはち切れんばかりにこぼれた白エプロンから覗く胸の谷間が、う~ん堪らん!。


「これが今日の報酬よ。」

「ありがとうございます。アイシャさん。」


チャリ

アイシャお嬢様はセレアさんから銀貨二枚を貰う


「それと貴方は·····。」


俺は即くるりと振り向き翼と背中をみせる。

ぶんぶん

長い尻尾を嬉しそうに左右に振る。


「えい!。」


セレアさんは勢いよく飛びはね俺の背中に引っ付く。

むにゅう♥️

セレアさんの白エプロンから覗く膨らみが俺の竜の背中に押し付けられる。

嗚呼~今日も素晴らしい乳で御座います!。

セレアさんの熟れたはち切ればかりの胸の膨らみと感触を俺は余すことなく楽しむ。


ブンブンブンブン

俺の緑色の尻尾はハイテンションMAXで左右に振りまくる。


「今日も嬉しそうね♥️。ライナ。」


俺の竜名はライナである。名付け親はアイシャお嬢様である。

抱きつき終えたセレアさん俺の竜の背中から離れる。


「本当に変わった竜ねえ。抱きつくと悦ぶなんて。特に背中を。」


セレアさんは頬に手をおき首を傾げる。


「昔からこうなんです。ライナは前より後ろから抱きつかれのが好きみたいで。」


俺は竜であることをいかしきっている。背中に抱きつかれることが好きとアピールすることで女性達に背中を抱きつきやすくしているのである。ただ、望んでもない男性に抱きつかれることもあるがそれは致し方がない。女性の柔らな胸の膨らみを味わう為にも必要最低限の犠牲であろう。


「これからどうするの?。」

「一度邸に帰ります。そのあとライナと一緒に次のレースの為の訓練をします。」

「まだ幼いのに偉いわねえ。」

「いえ、名門の騎竜乗りの学園に入る為ですから。」


アイシャお嬢様の目的は騎竜乗り名門校、アルナビス騎竜女学園に入ることである。一流の将来を勝望された優秀な騎竜乗りの貴族の令嬢が集まる学園である。家柄や騎竜の種族、戦績で入れる学園であり。入学できればあらゆる学費が免除されるのである。ただアイシャお嬢様の場合家柄も貧乏で没落貴族であり。騎竜も何の変哲もない普通(ノーマル)種の俺である。後は戦績を残すことしか入る術はないのである。アルナビス騎竜女学園を戦績の条件はそれほど高くはない。

貴族達は家柄や騎竜(種族)を重要視し。あまり戦績には力を入れていないのである。殆どの場合貴族の騎竜乗りの令嬢は学園に入ってから戦績をおさめるのである。希に学園前から戦績おさめる貴族の令嬢もいるが。それは強豪といった代々騎竜乗りの家系といった由緒正しき一部の貴族である。学園に入る条件として十勝、つまり10回レースで優勝する必要性があるのだ。今の段階で2回レースで優勝している。まだ80回優勝しなければならないので先はまだまだ長い。


「セレアさん。それじゃあ!。」


アイシャお嬢様はグローブをはめ。俺の背中に飛び乗る。騎竜乗りは手綱や鞍のようなものを必要としない。特殊な魔法具であり。魔力で吸着可能なドラグネスグローブを使うのである。アイシャお嬢様は俺の背中に乗りドラグネスグローブ嵌めた掌を背中の上部辺りにあてる。


「またね。応援してるわ!。」


バサッ

セレアさんにアイシャが手を振り俺は飛び立つ。


バサッバサッ

緑色の翼をばたつかせ草原上空を飛行する。


「ライナ、今度のレースも優勝しよう。私が15歳までにはレースを10勝したいから。」


ガア

アルナビス騎竜女学園は15歳までが入学条件である。それが過ぎるともうチャンスはない。アイシャお嬢様の年齢は11歳である。後四年しか猶予はないである。


アイシャお嬢様と俺の目的は一致している。アイシャお嬢様はアルナビス騎竜女学園の入学してお家の復興。俺は多種多様の女性の豊かな胸の膨らみを背中に味わうことである。騎竜女学園なら男子禁制正に女の園、尚且つ沢山の騎竜乗りの貴族の令嬢生徒が入ってきているのである。故に多数の女生徒を背中に騎乗される機会があるということだ。えっ?目的と理由が全然違うって?。細けえーことはいいんだよ。利害が一致しているんだから。

レースを10勝してまだ見ぬ豊かな女性の二つ膨らみを味わうために頑張るぞ!。


バァサッ!バァサッ!


ライナ(豊)は竜の緑色の翼を力強く羽ばたかせる。



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