5-4 出逢い
足音のリズムは、徐々に軽快に速まっていき、こちらへ小走りで駆けてくる。
この
振り返ると、林立する木々の陰で、黒いブレザーと緑色のスカートが
「やはり、戻ってこられましたか。さすが、スポーツを得意とする娘さんは、走る姿が美しいですね」
「イズミさん。その発言、変態っぽい。……知り合いですか?」
「ええ」
楽しそうに答えた
「ようやく、
「え?」
謎の
柊吾と
少女の制服に、見覚えがあったのだ。黒のブレザーに緑のチェック柄のスカート。同じ制服を着た女子生徒と、柊吾は一度だけ会っている。昨年の三月に起きた『鏡』の事件の
「ってことは……
口を
「……」
――ここに、何の用がある? きっと互いが、同じ疑問を
「
御山の清浄な空気を叩くように告げられた言葉は、微かな警戒を含んでいた。おそらくは、柊吾を警戒しているのだ。
そんな両者を交互に見た
「すぐに戻ってこられると思っていましたよ、
なんて
「友達の友達って……それって、もう他人なんじゃないですか?」
「そうとも言いますね。では、補足の説明をしましょうか。
「七瀬ちゃんの?」
少女が、目を
「篠田のダチが、なんでイズミさんに会いにくるんだ?」
「柊吾君、それは僕に失礼ですよ。僕にだって、君の他にも
本当に挨拶なのかどうか疑わしい、不器用な
「……」
重い沈黙を、
和音のほうも、見知らぬ男子生徒と慣れ合う気はないらしく、和装の
「
理由は、不明だ。だが、なんとなく分かる。
呉野和泉の雰囲気が、
――〝イズミ・イヴァーノヴィチ〟と、似ているのだ。
「……。
和泉の声音が、
「はい?」
佐々木和音は、和泉を見上げた。ぞっとした柊吾に対して、こちらは何も感じていないらしい。神主の男を見上げる瞳に、
神職の男・呉野和泉は、否、十八歳の感性を呼び覚まして、〝アソンデ〟いるかもしれない青年は――見せかけの平穏に
「佐々木和音さん。僕は以前に、
「……え?」
「和音さん。……
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