5-5 神がかり
「イズミさん!」
柊吾は、二人の会話に割り込んだ。
柊吾の
その名前が、なぜ、今ここで出てくるのだ。
「イズミさん。……知ってることを全部、洗いざらい吐いてください」
「おっかないですね、柊吾君」
和泉が悪びれずに答えた瞬間に、
「あ! おい……!」
「お前、えっと……
叫んだ内容は憶測だが、決して的外れではないという確信があった。
呉野和泉は、先ほど佐々木
きっと、
立ち去ろうとしていた
佐々木和音の顔色は、
――怒っているのだ。心の制御ができないほどに、胸を
「……和泉さん。どうして、そういうことが分かるんですか……って。やっぱり訊きたいですけど、今は訊きません。教えてくれて、ありがとうございました」
異様な様子に、ひやりとするものを感じた。無視され続けていることはひとまず置いておいて、柊吾は和音に近づいた。
「佐々木、落ち着け。お前の友達、綱田毬って言ったよな。……頼む。そいつのことを、俺に教えてほしい。でないと、篠田が……」
心配するから――と、最後まで言葉にできなかった。
「あなたには関係ない!」
叩きつけれた返事が、柊吾の言葉を
和音が、ハッと口を
やがて和音の姿が完全に消えて、足音さえも聞こえなくなり、風の音と
「……何だったんだ、今の?」
「柊吾君。僕は、君に知識を授けると言いましたね。佐々木和音さんは、去年の暮れに、氷花さんの
「は……? あいつ、知らないんですか? 本当に、何も?」
「ええ。氷花さんの標的から上手く逸らせそうでしたので、必要以上の説明をしませんでした。今となっては、説明が必要かもしれませんね」
和泉が、目を細める。青色の目に
「柊吾君が僕に持ち込んだ、
「それは……呉野の単独犯じゃない、ってことですか? イズミさんは、犯人が他にもいるって疑ってるんですか?」
「分かりません。調査中ですからね」
和泉は、
「……柊吾君。僕は、君のことが好きですよ?」
「やめてください、気持ち
「お元気そうで何より。ところで、柊吾君は〝
「
ぽかんとしたが、出し抜けに驚かせるような会話運びは、いかにも呉野和泉らしい。柊吾は少し考えてから「神社にいる、
「
和泉は、
「ただ、柊吾君の言うように、
「神がかり?」
「神が、かかる。神がかり。君くらいの年ごろの少年少女なら、本や漫画で一度くらいは目にしているのでは? 神のような圧倒的高次元の存在を、
「人ならざるものを、その身に受け入れる役目を
「イズミさん……?」
「一つ、予言をしましょう」
焼いた
「君は明日、
「は? ……篠田っ?」
「ええ。『見え』ました。僕は『見た』ものを
「なんで篠田が、俺を待ち伏せなんか……」
言いながら、思い出した。和泉からこの予言を受ける前に、すでに柊吾はもう一つ、不吉な予言を受けている。
明日は高校受験があり、柊吾たちの進路が決まる日だ。――たかだかその程度のことで、あの篠田七瀬が、おとなしくしているわけがない。この予言を仲間たちに共有すれば、七瀬は間違いなく、何らかの行動を起こすだろう。友人のピンチを知って単独で突っ走る姿が目に浮かび、頭が痛くなってきた。
「
「ええ。思い返せばあの『鏡』の事件、二人三脚で脱出に取り組むというよりは、独走する七瀬さんに彼が
「……あー」
頭を
「
意味深な響きの和泉の声が、
呉野氷花。正確には、和泉の妹ではなく、
柊吾たちが住む
〝アソビ〟? ――分からない。悪意で柊吾たちを
短髪を右手で
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