第510話SS純真な妹と不純な姉

新章第2話!


と言いたいところですが、今回は閑話的なお話になります。

本編は来週中にはギリ間に合う予定です。

(なら先に本編書けって言うツッコミは無しでお願いします)



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 わしゃわしゃ


『がう♪』


 ブルンブルンッ!


「こ、こら、ハラミっ! そんなに尻尾を振らないでよっ! こっちまで泡だらけになっちゃうじゃないのよっ!」 


『が、がう?』


「ラブナちゃん、ハラミは喜んでいるんだよ? ボク以外の人にも洗ってもらって、とっても嬉しいみたいだよ。スミカおねえちゃんの時もそうだからね」


 文句を言いながらも、楽しそうなラブナを見て、満面の笑みで答えるユーア。



 嵐のようなフーナの家族が去った、その翌日。

 孤児院の大浴場では、朝からユーアとラブナがハラミを洗っていた。


 ラブナが手伝うのは元々昨日の予定だったが、ユーアを含め、ハラミも慣れない戦いでの疲れか、昨夜はそのまま寝てしまい、結果として、子供たちが起きる前の早朝に洗う事となった。



「それは見てわかるけど、ちょっとはしゃぎ過ぎなのよっ! お風呂場で裸だったからいいけど、外で洗ったらパンツまでビショビショよっ!」 


『がう~っ!』 


「あと、なんでわざわざ大きくなってるのよ? 小さい方が洗うの楽じゃない?」


 ハラミの腕に着けているアイテム『フレキシブルSバンド』を恨みがましげに見る。 

 このバンドの効果は、最小1/10から、最大10倍まで大きさを変えられるものだ。

 

 ならハラミを小さくした方が、洗いやすいとのラブナの主張なのだが、今はその逆で、いつもの2倍の大きさになっていた。



「え? だってその方が洗いやすいよ? 大きいと、お手手の間や尻尾の付け根もキレイに洗えるんだ。スミカお姉ちゃんのお家だとちょっと狭いから、孤児院ではいつもこうだよ?」


「う、うん? なら良いのかな? でも大きい分、手間もかかるんじゃない? 小さいよりも体力も使うし」


 これ見よがしに、わしゃわしゃと力を入れて洗うラブナ。


「ああ、そういう時はね――――」

「ん? 何やってるのよ? ユーア」


 ペタペタと自分の胸に洗剤を塗りたくっている姿を、不思議そうに眺める。

 相変わらず、姉妹揃ってぺったんこだなと思ったのは、ここだけの話。


 なんて思っていると、



「ハラミ、ゴロンだよっ!」

『がうっ!』


 ごろん

 たたんっ!


「いっ!?」


 ボフッ!


「ほら、こうすると洗うのも早いよっ!」

『がう~っ!』


 お腹を上に向け、ヘソ天になったハラミの上にダイブしだしたユーア。

 そしてそのまま体を擦り付けるように、わしゃわしゃと動き回る。


 平らな胸がハラミのお腹を擦り、小さいお尻は泡まみれで可愛く揺れている。


 

「ちょ、ちょっとユーアっ!」

「なに?」

「なにじゃないわよっ! そんな洗い方誰に教えてもらったのよっ!」

「え? スミカお姉ちゃんだけど」

「ス、スミ姉が?」

「うん。こうした方が早いって言ってたよ? よっと」


 ラブナに答えながら、今度はハラミの上に足を広げて、跨るユーア。 

 そしてそのまま手を付き、今度は前後に動き始める。



「うんしょ、うんしょ――――」


 わしゃわしゃ


「ちょ、ちょ、ま、待ったぁ~っ!」 


 どこか煽情的に見えるユーアに耐え切れずに、堪らずストップをかける。


「なに?」


「なにじゃないわよっ! って、何度このやり取りさせるのよっ! じゃなくて、本当にスミ姉がそんな事教えたの? どう見てもユーアには早い…… いや、そうじゃなくて、それが早いわけないわよっ!」


 寧ろ遅い。

 ってか、スミ姉は、なんて事を教えてるんだと、内心では焦る。



「そうかな? だってこうすると一緒に出来るんだよ?」

『がう』


「一緒って…… なによ?」


 嫌な予感がしながらも、興味本位で聞いてみる。


「ハラミの毛皮が泡だらけになるから、ボクも一緒に洗えるんだ。ハラミ、次は手を挙げてね?」

『がう』


 主人のお願いを聞いて、ハラミがちょこんと前足を上げる。

 その前足の位置が、ユーアの胸の上だったのだが、 


「?」


 状況が飲み込めず、ラブナはジッとその成り行きを眺める。

 更に嫌な予感が増しながらも、何故か目を離せずにいると、

 

 ゴシゴシ


「いっ!?」


「ほらね? こうやって洗うと、ハラミの肉球もボクの体も一緒に洗えるんだよっ! だから早いんだよっ!」

『がう~っ!』


 どこか誇らしげな表情を浮かべ、ボク凄いアピールをするユーア。

 そして、肉球を胸で洗うと同時に、更に下半身を前後に動かし始める。



「はっ? へっ? あ? ええええええ――――っ!?」


 その光景を見て大絶叫を上げる。

 何をするかと思えば、更におかしな状況になったからだ。



『え? え? え?』


 なにこれ?

 何を見せられてるのアタシはっ!


『こ、これはまるであれじゃないっ! 男を悦ばせるあれじゃないのっ!?』


 数年前まで、ラブナも貴族の一員だった。

 そう言った知識(テクニック)も一応教えられていた。


 だからかこの行為がマズいものだと知っている。

 ユーアみたいな純真無垢な子供には、到底早い行為だって事を。



『あ、で、でも、ハラミはメスだからいいのよねっ? しかも人間じゃないからセーフよね? でもこれを教えたのってスミ姉よね…… って事は、ユーアとスミ姉もこんな事を? ま、まさか、女同士、なのに?…… ゴク』


 余計に想像を掻き立てられてしまう。

 興味のない異性よりも、目の前にいる、一糸まとわぬ姿の可愛いユーアを見て。



「ラブナちゃん、どうしたの? お顔赤いよ?」


「ふぁっ!?」


 いきなり声を掛けられて、思わず変な声が出てしまう。


「もう少しで終わるからちょっと待っててね」


「お、終わる? 何が?」


「? ハラミとボクの洗いっこだよ。本当にどうしたの? 具合悪いの?」


「な、何でもないわっ! それよりも本当にスミ姉が教えてくれたの? そ、その、洗いっこってやつ……」

 

 視線を外しながら、ボソボソと答える。 

 心配してくれたユーアに対し、少しだけ罪悪感を感じながら。



「うん、そうだよ。スミカお姉ちゃんが教えてくれたんだ~っ! 背中と背中を一緒に洗うやつ」


「や、やっぱりスミ姉って、そう言うあれなのね…… ん? 背中と背中ってなによ?」


 一瞬聞き間違いかと思い、オウム返しする。


「うん、背中と背中ってのは、ボクとスミカお姉ちゃんの背中に、ぼでぃしゃんぷーを塗って、お互いに背中合わせて洗うやり方だよ」


「へ? う、うん? じゃ、じゃぁ、さっきのは?」


「さっきの?」


「ほ、ほら、あれよっ! ハラミの上に乗って、胸とか腰を動かすやつっ!」


 答えながら、あの光景が脳裏に浮かび、更に顔が熱くなるのを感じる。

 一体何がどう変化したら、あんな卑猥な行為になるのかと。



「ああ、あれはね、ボクが考えたんだよ?」


「ユ、ユーアが?」


 マジマジと無邪気な笑顔をガン見する。

 背中を洗う行為が、何故あそこまで発展したのか。



「うん、その方がみんなくすぐったいみたいで喜ぶんだもん。ボウちゃんとホウちゃんも喜んでくれたよ? あ、それと、ナゴタさんとゴナタさんもねっ!」


 向日葵のような笑顔で、その過程を無邪気に話す。

 だがその理由を聞くと同時に、ある事実が露呈することとなった。


 それは――――



『じゃ、じゃあ、なにっ!? 孤児院の子たちと、ボウとホウ、そして師匠たちはユーアとあんな事をしてたの? あんなエッチな行為をアタシの知らないところでしてたのっ!?』


 愕然とする。

 そして混乱する。


 その行為をどこか羨ましく思う自分に。

 それと、子供たちはいいとして、師匠たちはどう思ったのだろうと。


 

『こ、これは、師匠が起きたら相談しないとダメだわっ! こんな事間違ってるって、一緒にユーアに教えなくちゃだわっ! そもそもスミ姉はなんでこんな事教えたのよっ! もうっ!』


 この場にいない悪の元凶の、スミカの顔が浮かび上がる。

 そしてそんな姉を恨むと同時に、



「ラブナちゃん大丈夫? まだお顔が赤いよ?」


「え? な、何でもないわっ! 大丈夫よっ!」


 純粋に自分を心配するユーアには、そう答えるしかなかった。



 そして、そんな妹分に直接言えない自分は――――



「そ、それよりもそろそろ上がるわよっ! 子供たちも起きてくるわっ!」

「うんっ!」



 ――――ユーアに比べて不純だなと思った。



 そんな無垢で純粋なユーアだからこそ、みんなから好かれてるんだと思った。

 もちろんその中には、当然アタシも含まれているわ。



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