第486話最強魔法少女の攻略法って?





「………………」


 ピラ 


「うほっ!? じゅる」


 ドゴンッ!


「ぎゃふんっ!」


「………………」


 チラ


「おほぉ~っ! じゅる」


 ボゴッ!


「もげっ!」


「………………うん」


 フワ


「むふ~っ! じゅるる」


 ガギンッ!


「わぎゃっ!」


 ヒュ――――ン


「うん、やっぱり間違いない」


 鼻を膨らませた後で、涎を垂らし、墜落していった姿を見て、衣装の乱れを整えながら、深く頷く。


 これがフーナの攻略法で間違いないのだと。


 フーナは透明壁スキルでの攻撃を立て続けに喰らい続けた。

 それでもダメージはないが、これで弱点らしきものがはっきりとした。


 魔力も体力も無尽蔵に近く、腕力も耐久力も段違いなフーナ。


 そんな規格外の絶対無敵の魔法少女(自称)の弱点とは――――



 それはお色気攻撃に弱い事だった。



 この瞬間だけは攻撃も見切られず、ついでに魔法の効果も弱まっている。 

 鼻を膨らませ、涎を垂らしている時がその状態だ。



 なので私は、スキルに閉じ込められたままで、スカートを捲ったまま攻撃してみた。

 程よく肉付きの良い、健康的で優美な曲線を描く、この自慢の美脚をエサにしてみた。


 そしてその効果は抜群で、私が本来持っていたお色気の効果も相重あいかさなって、フーナは涎を垂らしながら、全ての攻撃を避ける事なく受けていた。


 ここら辺が、変身したってだけのなんちゃって大人と、パーティーでも随一の、お色気け担当の私との実力の差だ。

 

 

『…………にしても、かなり複雑な気分だよ。なんでユーアにじゃなくて、こんな変態に私のとっておきの技を披露しなくちゃいけないの? ある意味、異性よりも危険じゃないの?』


 しつこく私の中身パンツを見ようと、何度も戻ってくるフーナ。

 その執念に感服すると同時に、背筋が薄ら寒くなるのを感じた。

 因みにスカートを捲ってるだけで、肝心の中身は見せてはいない。


 年頃の男性なら―――― ってそっちも嫌だけど、でもまだ理解できる範疇だ。

 が、姿が大人の女性から狙われるのは、かなり理解が追い付かない。

 これが現代ならば確実に訴えられる事案だ。



「はぁ、はぁ、はぁ―――― じゅる」


 そうこう考えている内に、息を切らせながら舞い戻ってくる。

 一体どっちの意味で息が乱れているのだろうか。

 

 最大重量の攻撃を何度も喰らった影響か?

 それかただの発情期か?



『まぁ、絶対に後者なんだけどね。前者だったらどんなに楽になるかって感じだよ…… それにしても攻撃は当たるけど、魔法の効果がこれ以上弱くならないのはなんで?』

 

 術者であるフーナの意識が逸れれば、攻撃が当たるのはわかる。

 何かしらの方法で見切っていたが、それには高い集中力が必要だったのだろう。


 だが回数を重ねるごとに、フリージングの魔法の威力がまた復活してきた。

 あの状態発情期になった当初は、徐々に弱まってきていたのに。



『なんでだろう。あまり考えたくないけど、もしかして――――』


 慣れちゃった、とか?

 何回も美脚を見せたから。



「………………」


 ピラ

 

 もう何度目になるか、少しだけスカートを捲って確かめてみる。

 餌を待つ犬のように、涎を垂らして、私の周りをグルグルと回っている変態の表情に注目しながら。



「うおおお――――っ!」

「うっ」


 大仰に身を乗り出し、プクと鼻を膨らませ、食い入るように美脚に注目する。

 それと同時に得も言われぬ気味悪さが私を襲う。


『くっ』


 ここまではいつも通り。この瞬間だけは攻撃が当たる。

 鼻の膨らみと同時に涎を垂らしているフーナには。


 の、筈なんだけど――――



「………………あれ?」


 でもちょっと違う。

 鼻の穴は膨らんだけど、僅かな違和感がある。



「はぁ、はぁ、はぁ―――― ゴク」


「あっ! わかった」


 ポンと手を叩き、ある事実に気付く。

 発情状態を表すバロメーターに何かが足りない事に。


 それは―――――――― 『涎』だ。

 

 さっきまでは奇声と同時に出ていた、あの唾液が見えない。 

 口の端から溢れていた涎を、今は飲み込んでいる。


 推測ではあるが、刺激と唾液の量は比例しているのだろう。


 その量が飲み込める程に減っているって事はそういう事だ。

 刺激に対して飽きが来ている。簡単に言えば慣れてきている。

 

 

『マジかっ!?』 


 もう一度よくフーナを観察する。

 期待の眼差しで見てはいるが、涎は垂れていない。

 

 きっと脳が反応しているんだろう。これ以上は期待してても無駄だと。 

 だから唾液を出す必要はないと、無意識に脳から体に中断をさせているのだろう。



『こ、こうなったら、もっと刺激を与えるしかないっ! で、でもこれ以上どうすればいいっていうの? 結構今でもギリギリだよっ!』


 フーナは私の真下に陣取っている。

 だから体を捻ったり、足を閉じたりして誤魔化してきた。

 中身がフーナから見えないようにと、かなり気を使いながら。



『で、でもやるしかないっ! じゃないとここから出れないからねっ! でもこれ以上って事は…… 丸見え? あっ! そうだっ! これなら私のじゃないから、そこまで落ち込まないかもっ!』


 とある作戦を思いつき、グッと強く拳を握る。

 私が傷つかない事と、フーナを発情させる一石二鳥の方法がある事に。



「えっ!? あっ! お、お姉さんが二人っ!?」


「うふんっ!」

「………………」


 突如分裂した私の姿を見て、目を見開き驚くフーナ。



「あれれ~、どうして固まっちゃったのかな? くふふ」

「どうした? なぜそんなに驚いている」


「だ、だって、蝶のお姉さんが白と黒に分かれちゃったんだもんっ!」


 正面に浮いてきたフーナは、かなり困惑しながら見比べている。



 そう。


 今の説明通り、私が使ったのは【実態分身2.0(7大罪ver)】

 これならある程度意思もあるし、私の本心とは違う行動も取れる。


 なので今はこの能力に賭けて見る事にした。

 未だに慣れない厄介な能力だけど、今はこれが最善だと信じて。


 因みに二人の本能は『色欲』寄りにしてある。  



「なになに~、フーナたんは私のパンツを見たいんだって? きゃはは」


「うえっ!?」


 白の私は後ろを振り向きながら、スカートに指をかける。


「どうやらそうらしい。なら期待に応えるとしよう」


「えっ!?」


 一方黒の私は、真正面を向いたままで、同じくスカートを掴み、そして二人揃って焦らす様に、ゆっくりと捲り上げ――――



 ガバ――――ッ!! ×2



『え? えええええええ――――――っ!!』


 る、ものだと思ったら、一気に全部捲り上げた。

 その影響で、パンツどころか、お尻とおへそまで曝け出してしまった。


 それを目撃したフーナは、と言うと、


「うひゃぁっ!」


 ブシュッ!


 ひゅ――――ん


 ドサッ


 盛大に鼻血を噴出しながら、地上に向かって落ちていった。

 しかもショックで気を失ったらしく、そのまま地面に叩きつけられても動かなかった。



「よし今だっ! 魔法が無くなったっ!」


 タンッ!


 急いで実体分身を解除し、透明壁スキルを足場に一気にここを離れる。

 私を囲んでいた魔法の効力が薄まって、思った通り難なく脱出することができた。


 トン


「よ、ようやく抜け出せることが出来た。 けど、余りにも犠牲が大き過ぎた気がするよ…… まさか私があんな破廉恥な事をするだなんて…… ううう」


 犠牲が大きいところではない。

 ある意味では捨て身の行動だったとも言える。

  

 下着だけならまだしも、よりにもよって、少女好きなフーナの前で、ほぼ下半身を露出してしまったのだから。

 生肉を咥えてライオンの檻に飛び込むのと一緒だ。

 


「ま、まぁ、それはもう忘れよう。幸い見られたのはフーナ一人だし、Tバックの事も知ってる人は限られてるし。いつまでも落ち込んでる暇はないからね。でも――――」


 にやけたままで横たわっているフーナを見る。 

 気を失ったまま落ちた影響か、乱れたローブから生足が見えている。


「――――でも、私だけ見られたってのは不可抗力であっても、正直悔しいよね? ならおあいことして、フーナの中身を見てやる」


 膝まで捲れ上がった、ピンクのローブに手を掛ける。

 一瞬、この変態と同じなんじゃないかと思ったけど、このままでは私の気が済まない。


 ピラ


「どれどれ………… ん? あれ? もしかしてフーナも私と同じの履いてるの? あんなに私の事からかってたのに?」


 太もも付近まであらわになるが、中々布地が見えない。


 なので、


「よっ!」


 ガバッ!


 一気に腰まで捲り上げて、中身を確認するが、


「あっ! こ、この女は――――」


 バッ!


 すぐさま下半身から視線を逸らし、フーナの顔をマジマジと見る。

 予想外の物を見てしまい、ちょっとだけ罪悪感を感じる。


 その理由は――――



「よ、よりにもよって、今日も下着忘れてるじゃんっ!」

 

 あろうことか、フーナの下半身を覆うものはなかった。

 パンツを見るどころか、身に着けるはずのそのものが存在しなかった。


 ノーパン疑惑を掛けた本人が、実はノーパンだったなんて笑えない。

 ましてや一応女なのだから、誰にも知られたくないだろうし。



「う、うん…… あれ? 私なんで寝てたの?」


 そうこうしている内に、フーナが目を覚ました。

 頭を振って、キョロキョロと辺りを見渡す。


 ただし、目が覚めたと同時に、

 

 シュン


「あっ!」

「え? なにっ!」


 ちんまい姿の元のフーナに戻っていたけど。



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