第401話最愛の妹&ペットへの贈り物とは




「スミカお姉ちゃん、これって?」


 手の平に載った二つのアイテムと、私を交互に見るユーア。


「ああ、それはね――――」


 カチャカチャ


 ユーアに答えながら手に取り、直接付けてあげる。

 そして同時に説明を始める。


―・―・―・―・―・


 『千里の指輪』


 索敵に映る対象を視覚情報として自身に投影できる指輪。



 『チェーンWリング』


 2つセットの腕輪(サイズ・カラー調整可)


 視覚に映る範囲の標的に対して、鎖を伸ばし拘束・攻撃が可能。(最大10本)

 装備者の距離に比例して鎖の色が薄く(透明度が上がる)なり、

 強度、威力が減少する。


―・―・―・―・―・



「うわ~、ちょっとボク、大人になっちゃったかも…… それと暖かい気持ちになるのは何でだろう?……」


 ホワっとした顔で、装備したアイテムを見つめるユーア。

 両手首のエメラルドグリーンの腕輪と、左手の薬指の小さな指輪を。

 大人の部分は、アクセサリーに対してのユーアなりのイメージだろう。



「どう、説明聞いて使えそう?」

「はい、ちょっとやってみます」

「え? やるって――――」


 ホワっとした表情から一転、森に見える大木に向かい片腕を挙げる。


 すると、


 ジャラ


「え?」


 大木に5本の鎖が現れ、即座に幹を雁字搦めにし、


「は? まさか――――」

「こうかなっ!」


 次に、挙げた片腕の5本の指をグッと閉じるユーア。


 それを合図に、鎖の先端が現れ、鎌首をもたげた直後に、


 ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ! 


 と、5本の鎖の切っ先が幹に突き刺さり、大木を破壊する。



「ちょっ、ユーアっ! なんでいきなり使えるの? だってそれって――――」


 初見のアイテム。しかもこの世界には無いであろうアイテム。

 それをいきなり使いこなしたユーア。


『だって、初めてで、そんなに上手に使えたのって――――』


 驚きを通り越して、思い出す。

 同じく初見で使いこなし、私を驚かせたある人物を。



 それはまるで――――



 タタタ――

 ガバッ


「どうしたの? スミカお姉ちゃん」


 呆ける私を心配してか、抱きついてくるユーア。



 ――――それはまるで、亡き妹を思い出させる。



「ううん、何でもない。でもユーアは凄いね。最初から使えちゃうなんて」


 見上げる妹の頭を、いつものように優しく撫でる。


「はい、なんか頭の中に浮かんできちゃったんです。だからです。えへへ」


 ニコとはにかむ笑顔で答えて微笑むユーア。


 こんな何気ない仕草まで似通っている。



「そうなんだ。きっと前の持ち主が教えてくれたんだね。こう使うんだよってね」

「前の持ち主ですか? それって?」

「うん、その人もユーアみたいに可愛いくて、芯の強い女の子だったんだ」

「そうなんだね、でも、ボク可愛くないよ?」


 そう言って、真ん丸な目でコテンと小首を傾げる。


『ううう~っ』


 そんな最愛の妹の、無邪気さと可愛さに我慢出来る訳もなく、


「うが~~~~っ!!」

「え?」


 ギュ~~ッ!


「い、痛いです、スミカお姉ちゃんっ!?」

「むふ~っ! むふ~っ! むふ~っ!」


 思いっきり抱きしめて、その温もりを堪能する。


「カプッ! クンカ クンカ クンカ」


 そしてついでに、首元に噛みついて充電も開始する。


「ちょ、スミカお姉ちゃんっ! あ、ひゃひゃひゃひゃひゃ――――」


 堪らずに私の腕の中で、陽気な声で大笑いをするユーア。



「うぬっ! ねぇねがご乱心なのじゃっ!」

「うわっ! ユーアを助けなきゃっ! ちょっとスミ姉っ!」


 その騒ぎに、すぐさま駆け寄るナジメとラブナ。


「ユ、ユーアちゃん、何て羨ま、じゃなくて、お姉さまが理性をっ!」

「でも楽しそうだなっ! お姉ぇもユーアちゃんも」


 ナゴタとゴナタも集まり、5人のメンバーに囲まれる私。



『クス、何だか仲間を通り越して、本当の妹たちみたいだね。でもきっとこれが――――』


 私が望んだこと。


 ユーアを含め、みんなを受け入れ、家族として暮らせる、を作る。


 それが私を姉と慕う、みんなの長女としての役目。そして目標。

 

『ふふっ』


 そんなみんなの笑顔に囲まれて、更に私は決意を新たに――――



「ねえ? スミカお姉ちゃん。ハラミにもあるの?」

「へ?」


 ――――しようとしたが、ユーアの一言で現実に戻される。



「だってハラミもずっと一緒にいるから」

「あ」

「え? もしかしてハラミにはないの?」

「あ、え? も、もちろんあるよ?」

「そうなんだっ! 良かったね、ハラミ」


 ユーアは振り向き、寝ていたハラミに声を掛ける。


『わうっ!』


 首だけを挙げて、短く鳴いて返事をする。

 ブンブンと尻尾も振っている。



「………………うう」


 ヤバいっ!


 動物に使えるアイテム何てあったかなっ!?

 そもそもまだ種類も数もあまり出てきてないんだよね。


「あっれ~、どこ行っちゃったかなぁ~っ! 忘れるわけないしな~っ!」


 元々用意していないアイテムを必死に探す私。



「どんなのか楽しみだね、ハラミっ!」

『わうっ!』


 その脇ではすっかりと目が覚めた、ハラミを撫でる飼い主のユーア。



「…………あ、あったっ! これをハラミにはあげようと思ったんだっ!」 

 

 何とかそれらしいものを探し出し、ユーアにポンと渡す。


「これは、腕に巻くものですか?」


 渡された黒のバンドを不思議そうに眺める。


「ううん、サイズは自動調整だから、指でも首でも尻尾でもいいよ」

「そうなんですか? それじゃボクと一緒に手首にしようね?」

『がうっ!』 


 リストバンドとしてつける事に決まって、ユーアが左前脚に付けてあげる。



 今回ハラミに渡したアイテム。 


 その効果は?



「わ、わわわっ! ハラミが小さくなっちゃったっ!」

『きゃう?』


「ほ、本当だわっ! もう手の平の大きさだわっ!」

「なんじゃっ! このアイテムはっ!」

「ち、小さくなるマジックアイテムなんですか? これはっ!」

「お姉ぇって、一体どんだけ変なの持ってるんだいっ!?」


 その効果を目の当たりにして、てんやわんやと騒ぎ出すみんな。


――


『フレキシブルSバンド』


 巻き付けた対象の大きさを変えられる。 

 最小1/10 最大10倍に。

 質量もそれに伴い変化するが、本来の物を超えることは出来ない。


 ※主にアイテムボックス禁止エリアで使用。

  大きいものを運搬するのに最適。


――


 詳細はこんな感じだった。


 これなら使い道あるよね?



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