第400話長女からのプレゼント
「「「ごちそうさまでした~~!!」」」
ノトリの街で買ってきた、キューちゃんのフルコースに、満腹&大満足のみんな。
「どうもお粗末さまでした」
それに答えながら、使い終わった食器をアイテムボックスに収納していく。
洗い物は街に帰ったら、ユーアや子供たちに手伝ってもらう予定だ。
そして晩ご飯を食べ終わる頃には陽が落ち、辺りはすっかり暗くなっていた。
なので、周りの木々に羽根の鱗粉の『発光』を付与し、照明代わりにする。
それとキャラライトもテーブルの上や足元にも置いたので、更に明るくなった。
「あ、みんな、そのまま座っていて。渡したいものがあるから」
片付けも終わり、キュージュースをみんなに配る。
「渡したいものって何ですか? スミカお姉ちゃん。あ、美味しいっ!」
「ねぇね、まだ何かあるのか? わしはこれ以上は満腹で食べられないのじゃが」
キュージュースにご満悦のユーアと、ポンポンと膨らんだお腹を叩くナジメ。
「ふふっ」
二人ともお腹の膨らみが大変な事になっていた。ちょっと可愛い。
「そうですね、私たちも、もうお腹いっぱいですね。さすがにこれ以上は……」
「ワタシも美味しかったけど、これ以上食べたらお腹が破裂しちゃうよぉ」
「アタシもだわっ! いくら育ち盛りでもこれ以上は太っちゃうわよ」
次に、師弟組の三人がナジメと同じように、お腹に手を当てて苦し気に話す。
「………………」
そんな三人はユーアたちとは違って可愛くない。
食べた栄養が、ユーアたちとは違う部位に吸収するからだ。
「いや、みんな食べ物じゃないって。シスターズ結成の祝いと言うか、初キャンプの記念と言うか、今までありがとうって言うか、何て言うか…… う~ん」
「はぁ? 一体何が言いたいのよ、スミ姉」
そんなハッキリしない私に見かねて、突っ込むラブナ。
「う~ん、取り敢えずみんなにはこれ上げるね。理由は色々あってまとめきれないみたい…… だから後で話すよ」
ストレージボックスより、用意していたアイテムをみんなの前に置いて行く。
「お姉さま、これは靴ですか?」
「うん、長靴かな? お姉ぇ」
ナゴタとゴナタが不思議そうな顔で、それを手に取り聞いてくる。
まぁ、それはそうだね。
グレー、一色だけの、何の飾り気のない、長い靴にしか見えないからね。
「あ、それはブーツだね。名前は『デトネイトHブーツ』って言って、地形の影響を受ける事なく、地面の上を滑走できるブーツなんだ」
なので、簡単に説明をする。
「え? 地形関係なくですかっ!?」
「か、かっそうって?」
「うん、地形って言うか、浮いて移動できるから、それで地形は関係ないって事。それと水面の上も大丈夫だけど、空は飛べないからね?」
「………………はい?」
「………………はっ!?」
「それと、そのブーツは移動だけじゃなくて、攻撃にも使えるから。蹴りの強弱によって相手に爆発の衝撃を与えられるんだ。あ、もちろん自分にはダメージはないよ? ただ移動も攻撃も体力は消費するから、乱発はしないようにね。色は装備してから自分の好みに――――」
「お、お、お、お姉さまっ!!」
「ちょっと待ってくれよっ! お姉ぇっ!!」
「わっ! え? な、なに? 説明が早すぎたっ?」
話の途中で大声を上げる二人に驚き、思わず聞き返す。
「違いますっ! 早いとか、そう言った事ではなく――――」
「こ、これは一体なんなんだっ!」
ガタタッ
今までにない剣幕で詰め寄るナゴタとゴナタ。
席を立ち、私の両脇を包囲する。
「そ、それは今説明した通り――――」
「いいえっ! そうではなくてっ!」
ギュム
「違うぞ、お姉ぇっ!」
モギュ
「ちょ、なんでわざわざ腕を掴むのっ!?」
両腕に抱きつかれ、埋没する私の腕を見ながら、それに反論するが、
「そんな事はどうでもいいですっ! それよりも詳しく話してくださいっ!」
「そうだぞ、お姉ぇっ! こんなのどこから手に入れたんだいっ!?」
そんな私の反抗は、興奮する二人は聞いてくれなかった。
「ちょっと待って、二人ともっ! まだみんなの分を説明してないから、出所は最後に話するから、だから落ち着いてっ! ねっ?」
それでもグイグイくる姉妹に必死にお願いする。
そうじゃないと、全然先に進められないから。それに腕がヤバい。
「わ、わかりました。す、すいませんでした。取り乱してしまって……」
「ワ、ワタシもごめん…… みんなも聞きたいもんな」
懇願する私に、一転してシュンとなって顔を赤らめる二人。
そして掴んでいた腕も離してくれた。
「う、うん、わかってくれたならいいんだけど。それじゃ、次はナジメとラブナのね」
「わ、わかったのじゃっ!」
「か、覚悟は出来たわよっ!」
柔らか物体から解放された腕を組み、今度は魔法使い組に向き合う。
その様子を見て、緊張気味に反応するナジメとラブナ。
「まず、それの名前は『リフレクトMソーサー』で、その効果は――――」
「う、うむ」
「う、うん」
私に向かって、身を乗り出し、真摯な表情の二人に説明する。
・―・―・―・
『リフレクトMソーサー』
直径は20cm程の◇型の形状のミラー。
4機セットで、自身の周りに浮遊展開できる。操作可能。
レーザー系(魔法)を反射させることが出来るが、
それ以外は防ぐだけで、反射は出来ない。
それとソーサーの直径を超えるものは反射出来ない。
ただし、4機組み合わせても使用可能。
・―・―・―・
「「………………」」
「と、まぁ、こんな効果があるんだ。これなら遠距離魔法を防御できるし、応用として自分の魔法を反射させる事も出来るんだ。実際は後者の方が適した使い方なんだけど」
簡単にだけど、無言のままで大人しかった二人に説明を終える。
ただこのアイテムはナゴタとゴナタに渡した物とは違って、色々と仕様が難しいし、使える状況が限定される。
元々は、実弾系を除く攻撃を打ち返したり、レーザー系の武器の軌道を変えて攻撃が出来る、補助的なアイテムだ。
『それで問題なのは、この世界の魔力が反射に対して、どう認識するかなんだけど、恐らくは大丈夫だと思う。魔力はレーザー系と判断されるんだと思う。だって、アイテム名が―――』
本来の『リフレクトソーサー』から、
『リフレクト
『きっと増えたMの文字は《魔力》。説明にも魔力が付け加えてあるからきっとそうだ。通常のアイテムボックスと違い、ストレージボックスから出した物は、元のアイテムと違うんだよね』
他にもストレージボックスにあるアイテムを確かめると、そんな感じだった。
都合のいいようにって言うか、恐らくこの世界に合わせているんだと思う。
『何せ、私でさえ、全容の把握しきれない装備だからね、この蝶の衣装は』
数日前から現れた装備のメニューのカウントダウンと、そのカウントが進むたびに現れた、アイテムを見て、しみじみとそう思った。
それと、これから先にも頼りになる、素晴らしい装備だとも思った。
―
「どう、説明聞いて使えそう? 他にも出したいけど、今のところはそれが限界なんだ。だから気に入ってくれると嬉しいんだけど……」
「「………………」」
ナゴタたちは打って変わって静かなナジメとラブナ。
一応手に取って興味深く見ているけど、なぜか反応が薄い。
その様子を見ると、あまりお気に召さなかったらしい。
姉妹たちのと比べて、使い勝手が悪いからね。
「ラ、ラブナちゃんと、ナジメちゃん? スミカお姉ちゃん困ってるよっ!」
ユーアが見かねて、固まる二人に話しかけてくれた。
すると、
「んあっ! わしは誰じゃっ! そしてここは――――」
「はっ! 色々と想像しちゃってて、一瞬どこにいるか忘れたわっ!」
すぐさま気が付き、目をぱちくりさせてキョロキョロと辺りを見渡す。
ここが何処か忘れるぐらいに、集中してたみたいだけど。
「そ、そこまでの事っ? で、最初に戻すけど、何とか使えそうなの?」
ナゴタとゴナタと違う反応の二人にちょっとだけ戸惑う。
姉妹の二人はわかりやすいけど、魔法使い組の二人は能面過ぎて良く分からない。
「使えるも何も、これはわしら魔法使いにとっては素晴らしい物じゃぞっ!」
「そうよっ! だって上手く使えば近距離でも戦えるし、牽制にも最適だわっ!」
「そ、そうなんだ」
「そうじゃぞっ! それと手数を増やすことも可能じゃっ! 後は――――」
「あっ! それはアタシも思ってたわっ! 後ね、ユーアとも協力してね――――」
「わ、わかったから、ナジメもラブナも落ち着いてっ! まだ全員分終わってないんだから、使えるのは嬉しいからさっ! ね?」
ナゴタとゴナタと同じように、わたわたと取り乱した二人。
結局さっきと同じように宥める私。
「す、すまんのじゃ、ねぇねっ! 年甲斐もなくはしゃいでしまったのじゃ」
「ア、アタシもクールをウリにしてたのに、慌てちゃったわ…… 反省」
「ふふ、でも使えそうなのがわかって安心したよ」
ちょっとだけ、二人の言い訳にクスッとなる。
見た目幼女で、年甲斐もないだろうに、とか。
いつも叫んでいるのに正反対のクールがどうとか。
「それじゃ、最後はユーアね」
「は、はいっ! え? これって――――」
他のメンバーと違い、直接ストレージボックスより出して、両手に包んで渡す。
それをそっと受け取り、手の平を開けて驚くユーア。
そこには、
『千里の指輪』
『チェーンWリング【緑】』
の二つのアクセサリーが乗っていた。
現代での、実の妹の『清美』が使っていた、その形見ともいえるアイテムが。
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