第385話再会、そして前準備




「うふふっ!」


『ケロ?』


「むふふっ!」


『ケロロっ!』


「くふふっ!」


『ケロロっ!?』『ケロロっ!?』『ケロロっ!?』


 帰ってきた。


「うはははははっ! ――――」



 私の可愛い、キューちゃんたちがっ!



『『『ケロロ―――――っ!!!!』』』


 歓喜の雄叫びを上げる私に答える様に、囲んで合唱してくれるキューちゃんたち。

 きっとみんなも私の事を歓迎してくれているんだろう。



「どう? こっちは向こうに比べて狭いけど居心地いい?」

『ケロ?』

「そう、それは良かったよ」

『ケロロ?』

「あっちは20数キロの広さだけど、こっちはその1/5だから心配してたんだよ」

『ケロ?』

「え? それでも深さがあるから楽しいって? まぁ、そこも気になってたけど、楽しく泳げて嬉しいなら連れて来たかいがあったよ」

『ケロロ?』


 満足げなみんなの反応に、私も嬉しくなる。

 本当に無事で良かったよ。


「うふふふっ」 



「…………ねぇねは魔物相手に何をやっておるのじゃ? 何やら話しかけておる様じゃが……」


「スミ姉のあれはもう病気みたいなものよっ! シクロ湿原でもおかしくなったし」

「でもなんか嬉しそうだね、スミカお姉ちゃん! キューちゃんも可愛いし」

「あああ、お姉さまが、あんなに楽しそうにっ!」

「あはは、なんか良く分からないけど、お姉ぇが喜んでるならいいやっ!」


 ナジメ、ラブナ、ユーア、ナゴタとゴナタがキューちゃんとの再会を果たし、幸福で胸いっぱいの私を笑顔で見守ってくれた。


 やっぱり持つべきものは仲間だよね。



―――



「さ、それじゃ、心配事も無くなったし、お昼にはまだ早いけど準備を始めようか。ちょうどそれぐらいでみんなもお腹が空くだろうし」


 キューちゃんを愛でるのに、少し満足した私はそう宣言する。


「「「………………」」」


 そんなみんなの視線が、少しだけ厳しく見えたのは、きっとキューちゃんを独り占めした私に嫉妬してるんだろう。ちょっと反省。



「はぁっ? もうとっくにお昼過ぎてると思うんだけど、スミ姉っ!」

「うむ、ねぇねはなぜあんなに、あの魔物に執着するのじゃ。かれこれ2時間経っておるのじゃ」


「え? あ、本当だ。あのメヤって子と話し過ぎたせいだね、ゴメンね」


 メニュー画面の時刻を見て、驚きながらみんなに謝る。

 随分と、あの子とも長話しちゃってたんだと。

 きっとみんなもキューちゃんと遊びたかったはずなのに。



「いいえ、お姉さま。お姉さまがキュートードと仲良くしてた時間が、2時間だったんです。メヤって子とは半刻ほどしか話していませんでした」


「うわ、マジで? それならちょっと急ごうか。私は会場を用意するから、みんなは持って来た食材の下処理し始めてね」


「「「………………」」」


 ナゴタの説明を聞いて、すぐさま辺りを見渡し、最適な場所を探す。

 会場となりそうな、広くて平らな地面を。


 そしてキューちゃんと湖を見渡せる絶好の場所を。



「あ、あそこが広いけど、なにかをするにはちょっとデコボコだなぁ。ん~」


 メヤが森に入って行った、森と湖との境界を見る。

 場所的にも日差し的にもいいんだけど、細かい雑草やら小石が散乱していた。



「なら、わしが整地するから大丈夫じゃっ!」 


 なんて悩んでいると、ナジメが出てきて魔法で地面を平らにならしてくれた。


「うわっ! さすがはナジメだねっ! 一瞬できれいになっちゃったよ」


 ナジメの魔法と、その出来栄えに感心する。

 手を挙げ何かを呟いたら、地面が波打ち、瞬く間に平らな地面が出来上がった。



「うむ、こんなものじゃろ。ちょっとだけ細かい小石が残ってしまったが。危ないという大きさでもないし、これで大丈夫じゃろ。ううむ」


 そんな本人は、笑顔ながらもちょっとだけ不満気だ。

 腕を組み、何やら唸っている。


 いや、いや、十分凄いからね。

 小石って言っても、それ砂利だからね。



 その後は、私が持って来たかなり大き目なシートを敷いて、その上に数脚の調理用のテーブルや、ソファーやら、大型鉄板やらを出していく。ついでに食器や調理器具、調味料も並べていく。



「よし、こんなもんかな? なにか足りないのがあったら言ってね?」


 こっちの準備が終わったので、待ってるみんなに声を掛ける。


「うわぁ~、相変わらずお姉ぇは色んなの持ってるなっ!」


 アイテムボックスより出した、数々の物に関心しているゴナタ。


「まあね、でもこれでも買い足したんだけどね? 調理用の頑丈で大きなテーブルは持ってなかったから。包丁とかも自分たちの物しか持ってなかったし」


「そうですよね、私たちも用意してくれば良かったです。お姉さまばかりに負担をかけさせてしまって、申し訳ございません」


「え? それは別にいいよ、ナゴタ。そもそも私が発案したんだし、急に決めちゃったのも私なんだから、だからそこら辺は気にしないでいいから」


 興味津々なゴナタとは違って、気遣ってくれるナゴタにそう話す。

 今説明したとおりに、急な開催になったのも私のせいだし。



「ですが、それは私たちを思いやっての事ですよね? なのでやはり、本来は――――」


「ま、本当に気にしないでいいよ。好きでやってる事だし。それに持ってたら持ってたで、今日以降もみんなでピクニック出来るじゃん。それとも今日これっきりにするの?」


 どうしても引かないナゴタに「ニコ」と微笑み返す。



「ふふふ、それは嫌ですね、これっきりって言うのは。なので今回はお姉さまに甘える事にします。 ですが次回からは私もお手伝いいたしますね、お姉さまっ」


 私の言いたい事を分かってくれたようで、ナゴタも微笑みながら答えてくれた。


 まだピクニック自体は序盤だけど、次の話をしても別にいいよね?

 次いつやるのって悩むより、次回、なにをやるかって考えてた方が楽しいし。

 


――



 シスターズのみんなは、各々の持参してきた材料を出して調理を始める。


 私はそれを楽しみにしてるので、なるべく見ないようにして会場を離れる。



「う~むぅ…………」

「で、ナジメは何やってるの? 湖なんか見つめて」


 湖畔に佇み、湖面を見つめる幼女。


 その出で立ちは、黄色のメトロ帽子と、紺色のプリーツスカート。

 この風景にはあまりにもミスマッチだなと思いながら声を掛けた。


 そんなナジメは腕を組み、何やら唸っていた。


「お、ねぇねか」

「うん、で、どうしたの? 何か心配事?」

「うむ、食材をどうしようか、少し悩んでおるのじゃ」

「え、悩むって? ナジメは現地調達って言ってなかった? 食材の件は」


 みんながどこ行くかで、盛り上がって中。

 ナジメはそんな事を言っていた。



「うむ、そうだったのじゃが、みんなが良い物を持ってきてそうなので、わしも負けてはいられぬと考え直したのじゃ。元々はここの魚を捕まえようと思っておったのでな」


「あ~、そうなんだ。でもナジメはお仕事してたから仕方ないんじゃない? それに魚だって立派な食材だよ? キューちゃんたちも喜ぶし」


 ナジメを撫でながら、そんな話をする。


「うむ、確かにねぇねの言う通りじゃな。じゃが、わしはもっとみんなが驚くものを用意したいのじゃ。魚も立派な食材だとしても、やはり………… む? 魚?」


 私の話を聞いて、ピタと湖面を見つめたまま固まるナジメ。


「ナジメ?」

「そうじゃ、魚じゃっ! ねぇね、魚じゃぁ~っ!」

「い、いや、魚はわかったけど、それがどうしたの?」


 突然、私を見上げて魚を連呼する幼女。

 何だろう? 急にお魚さんになりたくなったのかな?



ぬしじゃっ!」

「主?」

「この湖にいる、主の魚じゃっ! 大物のっ!」

「あ、ああ、ゴナタが説明してくれた奴?」


 そして、その話を聞いてキューちゃんが心配で急いで駆け付けたんだっけ。



「もしかして、ナジメ、それを?」

「そうじゃ、それをわしが捕まえるのじゃっ! これでわしが一番じゃっ!」


 勝ち誇ったかのように、両手を上げて咆哮する幼女。

 そもそも別に競争してるわけでもないんだけど。


 どうやら、今日ものんびりとは出来なさそうだ。



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