第331話SSユーアちゃんのお風呂講座2(双子幼女編)




※今話は、スラムのボウ視点のお話です。

 (ボウ=双子姉妹の姉の方です)


 ちょっとだけ性的な表現もありますのでご了承ください。





 わしゃわしゃわしゃ


「お客さんどうですか? 痒いところはないですかぁ?」


 ユーアちゃんがわたしとホウの頭を泡で洗ってくれる。


 これは『しゃんぷー』というものだそうだ。

 もの凄く泡も出て、いい匂いもする不思議な液体だ。


「か、痒くないけど、なんか――――」

「痒くはないですけど、なにか――――」


 ((気持ちいい~~っ!!))



 痒いかどうか訊かれたんだけど、最後の言葉だけは言いたくなかった。

 きっと隣の妹のホウも同じ気持ちだったと思う。


 だって初めて会った人だし、いくらスミカ姉ちゃんの妹と言っても……


 わたしたちとそんなに変わらない子供なんだもん。




「次に『りんす』をします。これはせんさいな女の人の髪をしがいせんから守ったり、きゅーてぃくるを補修してくれたり、潤いも与えてくれます。それと輝きもツヤも出してくれるものです。サラサラです」


「う、うん」

「は、はい……」


 お風呂に入ってから、たまに説明口調になるユーアちゃん。

 わたしもホウも何一つ理解していない。だって知らない単語ばかりだし。

 きっとスラムの外では当たり前なんだろうなと思った。



「目に入っても痛くないけど、あまり良くないから目を瞑ってね」


 見た事もない容器から何かを手に付けて、髪に塗ってくれるユーアちゃん。

 やっぱりしゃんぷーと一緒で花のいい匂いがする。


「………………」

「………………」


 目を瞑っているとユーアちゃんの小さな手が、わたしの頭に触れる。

 ゆっくりと優しく頭を揉んでいるみたいだ。


「あ、ああ――――」

「ん、んん――――」


 本当は我慢したいんだけど、自然と声がでちゃった。

 何でユーアちゃんに洗われると、こんなに気持ちがいいんだろう。


 いい匂いとなのと、暖かいのとが混ざって、まるで夢の中みたいだ。

 それと優しい手つきで揉まれてるのもそうかもしれない。


『チラ』


 わたしは薄目を開けてみる。

 こんなにしてくれるユーアちゃんを見てたかったから。


『………………』


 サワサワと両手を使って頭を優しく揉んでくれてる姿が目に入る。

 その姿はわたしたちと一緒でもちろん裸だ。


 わたしたちより真っ白な肌に、細くて小さい足が見える。

 その上はきれいなおへそに一直線の腰。そして何もない平らな胸。


『………………』


 どう見ても、わたしとホウと一緒か、もう少し小さいと思う。


『でも、これでも年上だし、冒険者だし、スミカ姉ちゃんが凄いって言ってたんだよなぁ? あと、あのモフモフの魔物を飼ってるし……』



 でも見た目からは全然感じない。


 わたしとホウの方が胸も大きいし、絶対に大人だと思う。

 だからわたしとホウは『ちゃん付け』で呼んじゃってるんだもん。


 だからか、声なんか出しちゃうと負けみたいなルールができた。

 スミカ姉ちゃんの妹っていうのと、なんか思ってたより普通だったから。

 もしかしたらホウも一緒なのかもしれない。

 


『でも、見た目の事言ったら、スミカ姉ちゃんだって、ナジメさまだって、見た目じゃ凄いのなんかわからないもんなぁ』


 一瞬、ナゴタさんたちも浮かんだけど、あれは違う気がする。

 見た目は双子の少女だけど、ある部分が大人過ぎだから。

 大人のニカ姉さんの10倍ぐらいあるし。


 そんな流れで、ユーアちゃんには負けたくないと思った。

 声を出すときっとそれが敗北宣言に繋がるから。


 でもその考えは、凄いお姉ちゃんがいるのが羨ましかったせいだと思う。





「それじゃりんすを流すから、まだ目をつむっててね」


「うんっ」

「はい」


 そう言って今度は、髪の液体を優しくユーアちゃんが流してくれた。

 

「あれ?」


 洗い流してくれた後で、ちょっとだけ髪に触ったけど、


「な、何これっ!? 髪が柔らかくなってるぞっ!」

「わ、わたしもだよっ! ボウお姉ちゃんっ!」


 その変化に気付き、すぐさまホウの顔を見る。

 そんなホウも驚いてわたしを見ていた。

 きっとわたしもホウみたいな顔なんだろうと思った。



「それがりんすの効果なんだよっ! ボクもそれを使ってたらきれいになってきたんだっ! でもスミカお姉ちゃんはもっときれいだもんねっ!」


 ニコニコしてそう話すユーアちゃん。

 気のせいかちょっとだけ自慢げにも見える。


『う~ん…… これを使っていると、スミカ姉ちゃんみたく――』


 きれいになるのかな?


 わたしはユーアちゃんの話を聞いて少しだけ悩んだ。

 あの憧れのお姉ちゃんにちょっとでも近付けるなら。



「次は体を洗うよっ! この『ぼでぃーそーぷ』でねっ!」


 今度はタオルに違う洗剤を垂らすユーアちゃん。

 そしてゴシゴシすると、大量の泡といい匂いがまたしてきた。



「それじゃ背中向いてね、ボウちゃんとホウちゃん」


「う、うんっ!」

「は、はいっ!」


「う~んとね、体を洗う時はねぇ――――」


 そうして、ユーアちゃんのまた説明が始まった。


 ゴシゴシ強くしないでとか、ひし成分がどうとか、指の間はとか。

 でもさっきみたくわからない言葉が多くて覚えられなかった。



「それじゃ、今日はスミカお姉ちゃんがボクにやってくれる洗い方をするねっ! あんまり他の人にやらないでって言ってたんだけど特別だよ? ボクも仲良くして欲しいもんねっ!」


 するとユーアちゃんは、自分の体にぼでぃーそーぷを塗っていく。

 それも胸やお腹や両手にたくさん使って、べったりと。


「スミカ姉ちゃんがしてくれる洗い方だってさ、ホウ。ヒソヒソ」 

「うん、一体何だろうね? ボウお姉ちゃん。ヒソヒソ」


 わたしはユーアちゃんが準備している間に内緒話をする。


「なんでもいいんだけど、わたし我慢するんだ、だって――」

「あ、ボウお姉ちゃんも、もしかして今まで?」

「え? やっぱりホウもかっ」

「う、うん、なんか言いづらいんだけど普通の子みたいなんだもん」

「うん、ホウもそうなんだな、だったら――――」

「うん、だったら姉妹で協力して――――」



 『ユーアちゃんに負けないように堪えるんだっ!』

 『ユーアちゃんに声を出したら負けなんだ』



 そう姉妹で結託して、勝手にユーアちゃんと勝負する事になった。



「はい、それじゃ背中からだよっ!」


「う、うん」

「は、はい」


 わたしは全身に力を入れる。

 ユーアちゃんの技に負けないように気を張る。


 ぷに


『ひゃっ!』

『ひやぁっ!?』


 すると背中にぬるっとした感触と、つるっとした感触が同時にやって来た。

 びっくりしたけど、何とか声を出さずに堪えた。


「ちょっと動くけど我慢してね~っ!」


「って、ちょっと待ってユーアちゃんもしかして?」

「裸でわたしとボウお姉ちゃんを洗うんですかっ?」


 バッと後ろを振り向き聞いてみる。


 すると真っすぐなテカテカしたユーアちゃんの裸が目に入る。

 つもり何も、裸でわたしたちを洗うつもりだ。


「え? だってこの方が良いって、スミカお姉ちゃんやってくれるよ? 固いタオルとかじゃ肌が傷ついちゃうからって」


「えっ! そ、そうなの? ほんと?」

「し、知らなかったです……」


 ぬりぬりと体に液体を伸ばしながら教えてくれるユーアちゃん。


 でもスミカ姉ちゃんはそんな事しなさそうだけど……

 だって大人だし、普段の態度もなんかカッコいいし……


 ぴと


『あっ!?』

『ひゃっ!!』


「ちょっとだけくすぐったいけど、少しだけ我慢してねっ!」


 スミカ姉ちゃんの事を考えていると、ユーアちゃんが動き出した。

 背中にちょっとだけ柔らかい温もりとぬるぬるを感じる。


『な、何これっ! く、くすぐったいけど、なんか――――』


 背中で肌が上下に擦れるたびに気持ち良くなる。

 でも何か変な感じもする。


「どう? 気持ちいいでしょ? これなら傷もつかないできれいになるんだ」


「ま、まぁ、そこそこかな? わたしは」

「わ、わたしもですっ」


 わたしは強がってそう答える。きっとホウも同じだ。


「えっと、それじゃね、次は手を挙げてね」


「う、うん」

「はい」


 手を挙げると、後ろからユーアちゃんに握られた。

 そして指の間に小さな指が侵入してくる。ユーアちゃんが指を絡めたからだ。


「今度は指の間もきれいにって、指先まで丁寧にって~っ!」


『ぐっ!?』

『ぐぅっ!?』


 楽しそうに指の間を洗うユーアちゃん。

 わたしはそれを我慢する。


「あ、背中も忘れず一緒にね~っ!」


『ああ~~っ!』

『は、はぅ~!』


 さらに背中のつるつると同時に、指の間もぬるぬる洗われる。


『な、何これ~~っ! 絶対スミカ姉ちゃんこんな事やらないよっ!』


 わたしは段々疑い出してきた。そして気が付いた。

 きっとこの子はスミカ姉ちゃんの名前を出して、わたしと勝負しているんだと。


『そ、そうなら絶対に負けないぞっ! ホウも頑張れっ!』


 わたしはそう強く心の中で決心した。この勝負は負けてはならないと。

 きっとこれからの関係に関わる事だと思うから。



 そう思ってたんだけど――――



「指は終わったからこのまま前も洗うね? 少しだけ痛がる子もいるけど、優しく洗うから我慢してねっ!」


 背中からそう言って、ユーアちゃんはわたしたちの前に手を伸ばす。

 脇の下から抱きかかえられる感じだ。


 むにっ


「ひゃあっ!」

「きゃっ!」


「あれ、痛かった? でもまだ動かしてないよ。あ、ボウちゃんもホウちゃんもお胸が大きくなってきてるんだねっ!」


 さわさわ


「んなぁっ!」

「ああっ!」


「あ、先っぽは肌が敏感だからゆっくりと洗うね?」


 くりくり


「うひぃっ!」

「きゃふぅっ!」


「あ、足の指の間もきれいにしないとねっ!」


 にゅるっ


「うひぃ!」

「なああっ!」


「それとお股もきれいにするから足を開いてねっ!」


 ぬるんっ


「あひゃひゃっ!」

「うきゃぁあっ!」


「脇の下も汗かくからねっ!」

 

 しゅるんっ


「うにゃにゃにゃ~~~~っ!!」

「あきゃきゃきゃ~~~~っ!!」


「え~と、次はお尻ね――――」


「~~~~っ!!」

「~~~~っ!!」



――――――



 そうしてわたしたち姉妹はユーアちゃんに徹底的にきれいにされた。

 肌も髪も見た事もないぐらいにきれいになった。


 お風呂にも入ったはずだけど、ボーっとして覚えていなかった。

 まさかユーアちゃんがあんなに強いなんて思わなかったから。

 


 ガアァ――――


『わたしたちは負けちゃったよ……』

『うん、そうだねボウお姉ちゃん』


 変な装置で髪を乾かしてくれるユーアちゃんを見てそう口に出した。

 隣の妹のホウもすぐに分かってくれた。


 ユーアちゃんの戦闘力を思い知ったから。



「うん、熱かった? 大丈夫?」


 コソコソ話す私たちの顔を覗き込むユーアちゃん。

 濡れた銀色の髪がきれいだった。笑顔もとても可愛かった。


 きっともう少し大人になったらスミカ姉ちゃんみたいに…………



「うん、大丈夫だよっ! ユーアっ!」

「はい、大丈夫ですっ! ユーアっ!」



 わたしと妹のホウは敬愛を込めて笑顔でそう答えた。

 これからずっと一緒にいたいと思って。


 そしてまたお風呂を教えて欲しいとも思って。


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