第326話裏ボスユーアと新しい家族と




「そうかそうか、お主がスミカの妹じゃったか」


「は、はい、そうですっ!」

「そしてアタシもよっ!」


「それにしては、随分と似ておらぬようじゃが。いや、見た目の話ではなく。雰囲気というか、物腰というか」


「そ、そうですか?」

「そ、そう?」


「うむ。お主の姉のスミカは、物怖じしない性格だしのぅ。言いたい事はハッキリと言うし、やりたい事は周りを巻き込んででも行う。いや、こっちは悪い意味ではないのじゃがな」


 ビエ婆さんはここまで話して、ユーアを見る。

 その表情はボウとホウを見る目に似ていた。




 道中、ユーアと合流した私たちは、ビエ婆さんたちを孤児院に案内して、今はみんなで用意した昼食を食べている。


 ただ、カイたち大豆組は、私たちと別れてマズナさんのお店に行っている。

 早く自分たちが関わる仕事を見たかったのと、昼食もそちらで食べてみたいからという理由だった。



 そんな訳で、今は孤児院組のビエ婆さんとニカ姉さん、そしてボウとホウ姉妹で、食卓を囲みながら談笑しているところだ。


 もちろん、これからお世話されるであろう、孤児院の子供たちも一緒だ。



「はいっ! スミカお姉ちゃんには色々と好きな事をして欲しいんですっ!」


 ビエ婆さんの話に戻ってユーアが答える。


「そうねっ! スミ姉は基本放置でいいわよねっ! 正しい事するからっ!」

「確かに、お姉さまはご自身の思うがままに行動する方がいいですね」

「そうだなっ! お姉ぇはそれでみんなを幸せにするからなっ!」


 ユーアに続き、ちょくちょく反応していたラブナが答える。

 その後に、負けじと参加するナゴタとゴナタ。


『う~ん、これって褒められてるの? もしかして厄介払いされてないよね? 関わると面倒だから好きにさせるとか……』


 パーティーのリーダーのはずなのに、単独行動を推奨されるって……



「ふふ、スミカは見た目はあれじゃが、しっかりとみなに姉として認められてる様じゃな。ボウとホウもよく懐いてる様じゃし」


「そうね、スミカちゃんがいない時は、ずっと二人はスミカちゃんの話ばかりしてるわね。何だか長く暮らしている、私より懐かれてちょっと悔しいけど」


 独り疎外感を感じていると、ビエ婆さんとニカ姉さんがこちらに笑顔を向けている。

 どうやら私とボウとホウの姉妹の話題になっているようだ。

  

 そんな姉妹は、私を挟んで夢中に食事をしていたが顔を上げる。

 自分たちに話が移ったのを聞いていたのだろう。


「もぐ、だってスミカ姉ちゃんカッコイイんだもんっ! もぐもぐ」

「そうですね、わたしとボウお姉ちゃんをあっという間に助けてくれたし。 もぐもぐ」


「だから、誰も取らないからお行儀よく食べなよ」


 口に頬張りながら、話す姉妹に注意する。

 褒めてくれるのは嬉しいけど、他の子も真似するからね。



「それで、お主もスミカの妹なのじゃな? ラブナとやら」

「うん、そうよっ! アタシは4番目だけど」

「それで、お主がここの年長のシーラじゃな?」

「は、はいっ! お姉さまたちには今でもお世話になってますっ!」


 ビエ婆さんは今度はラブナとシーラに声を掛ける。

 そんな二人はユーアを挟んで座っている。


 

「そうか、今まではお主らも子供たちの面倒を見ていたのじゃな」


「まあねっ! アタシは最近までここにいたからその延長みたいな感じっ! 何だかんだ良い子ばっかだから手が掛からないしっ!」

「わ、わたしはお姉さま方に憧れて引き継いでいます。みんなも良い子ですし」


「なるほど、確かにみんな行儀よく、礼儀正しいのぅ」


 ビエ婆さんはそう言って、笑顔で食事についている子供たちを見渡す。


 そんな子供たちは、小さな子には大きな子が付き、面倒を見ている。

 フォークやナイフの持ち方や使い方。口元の汚れを拭いてあげたりもしていた。


 それはテーブルマナーの教育と言った、堅苦しい食事ではなく、どっちかっていうと兄や姉が、弟や妹に優しく教えている、そんな暖かい食卓に見えた。


 これがユーアやラブナ、今はシーナが引継ぎ、築いてきたものだ。



「お主らみんなも聞いておろうが、わしたちスラムの人間が近々ここで働かせてもらう。なのでこれからはわしたちと一緒に、子供たちを、そして孤児院を守って行こうぞ」


 子供たちを見渡し、そう公言するビエ婆さん。 

 口調こそ厳しめだけど、柔らかい笑みを浮かべていた。


「はいっ! よろしくお願いいたしますっ! ビエ婆ちゃんとニカお姉さんっ!」

「まぁ、何かあったらアタシに頼りなさいよねっ! 一応一番のお姉さんだから」

「は、はいっ わたしたち共々よろしくお願いいたします」


「「「よろしくお願いいたしま~すっ!!!」」」


 そんなビエ婆さんの発言に、ユーア、ラブナ、シーラ、

 そして子供たちが元気に返事を返す。



「どう? ボウとホウもみんなと仲良くやっていけそう?」


 それを見ながら、両脇の姉妹に聞いてみる。


「え? え~と、うん、大丈夫。多分……」

「わ、わたしも大丈夫です…… きっと……」


 みんなの元気な雰囲気に飲まれたのか、自信なさげなボウとホウ。

 私を挟んで、お互いの顔を見合わせている。


 それはそうだろう。

 まだ会って数時間だし、全員と話したわけでもないし。



「ボウとホウなら、みんなと一緒で良い子だから大丈夫だよ。それに私の妹もいるから、何かあったら頼りなよ。実質、裏でみんなを仕切ってるのはユーアだから」


 両脇の姉妹を撫でながらそう話す。


「そ、そうなのか? だってわたしたちと同じくらいだよなっ!」

「え? ユーアちゃんってラブナさんやシーラさんより年下ですよね?」


 そんなユーアの、裏ボス的存在を聞いて驚く姉妹。

 まぁ、見た目的にはそう思われても仕方ないけど。小っちゃくて可愛いし。



「もう何言ってんの? ユーアはこれでも立派な冒険者だよ」


「へ?」

「あっ!」


「この街を救った時だって、ユーアの活躍があったからだからね? それに従魔のハラミの主人でもあるし。ラブナより1つ下で、シーラよりはお姉さんだからね?」


 ボウとホウの、両方の顔を交互に見ながら追加で説明をする。

 そして以前の話を思い出したかのように固まる姉妹。



「だから何も心配しないでいいからね? ここには二人の今までの生活を責める人もいないから。それとさっきも言ったけどユーアもいるからさ。だからこれからは楽しんで生きていこうよ。その方がビエ婆さんもニカ姉さんも、カイも喜ぶだろうからさ」

 

「うんっ! わかった、スミカ姉ちゃんっ!」

「はい、そうしますっ! スミカお姉さんっ!」


 そう返事をして、食事も途中で子供たちに駆け寄る姉妹。

 さすが子供は行動が早い。



「ボウちゃんと、ホウちゃん、これからよろしくねっ!」

「ボウとホウねっ! 何かあったらアタシを頼りなさいよねっ!」

「あ、あのぉ、わたしにも何でも話してくださいね」


 その姉妹を笑顔で迎え入れる、ユーアと子供たち。



 そしてその場には、一瞬でみんなの笑顔の花が咲く。

 向日葵のような、満面の笑顔が咲き乱れる。



『うん、やっぱり大丈夫だね、ユーアとラブナが面倒見た子供たちだしね』


 ワイワイと笑顔で談笑する子供たちを見て安堵する。

 さすがはユーアたちを慕っている子供たちだと。 



 これでボウとホウも、孤児院の子供たちときっと家族のようになれるだろう。





あとがき


妹のユーアを信用している姉のお話でした。

あ、それとまた澄香の呼び方が増えたので記載しておきます。(女性版)


ユーア=スミカお姉ちゃん

ラブナ=スミ姉

ナゴタ=お姉さま

ゴナタ=お姉ぇ

ナジメ=ねぇね

ボウ=スミカお姉ちゃん

ホウ=スミカお姉さん

ビエ婆さん=スミカ

ニカ姉さん=スミカちゃん


もう種類が限界です。

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